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自殺対策基本法

平成18年法律第85号
最終改正:平成28年3月30日法律第11号
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第1章 総則

(目的)

第1条 この法律は、近年、我が国において自殺による死亡者数が高い水準で推移している状況にあり、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して、これに対処していくことが重要な課題となっていることに鑑み、自殺対策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、自殺対策の基本となる事項を定めること等により、自殺対策を総合的に推進して、自殺の防止を図り、あわせて自殺者の親族等の支援の充実を図り、もって国民が健康で生きがいを持って暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。


(基本理念)

第2条 自殺対策は、生きることの包括的な支援として、全ての人がかけがえのない個人として尊重されるとともに、生きる力を基礎として生きがいや希望を持って暮らすことができるよう、その妨げとなる諸要因の解消に資するための支援とそれを支えかつ促進するための環境の整備充実が幅広くかつ適切に図られることを旨として、実施されなければならない。

 自殺対策は、自殺が個人的な問題としてのみ捉えられるべきものではなく、その背景に様々な社会的な要因があることを踏まえ、社会的な取組として実施されなければならない。

 自殺対策は、自殺が多様かつ複合的な原因及び背景を有するものであることを踏まえ、単に精神保健的観点からのみならず、自殺の実態に即して実施されるようにしなければならない。

 自殺対策は、自殺の事前予防、自殺発生の危機への対応及び自殺が発生した後又は自殺が未遂に終わった後の事後対応の各段階に応じた効果的な施策として実施されなければならない。

 自殺対策は、保健、医療、福祉、教育、労働その他の関連施策との有機的な連携が図られ、総合的に実施されなければならない。


(国及び地方公共団体の責務)

第3条 国は、前条の基本理念(次項において「基本理念」という。)にのっとり、自殺対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

 地方公共団体は、基本理念にのっとり、自殺対策について、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 国は、地方公共団体に対し、前項の責務が十分に果たされるように必要な助言その他の援助を行うものとする。


(事業主の責務)

第4条 事業主は、国及び地方公共団体が実施する自殺対策に協力するとともに、その雇用する労働者の心の健康の保持を図るため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。


(国民の責務)

第5条 国民は、生きることの包括的な支援としての自殺対策の重要性に関する理解と関心を深めるよう努めるものとする。


(国民の理解の増進)

第6条 国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じて、自殺対策に関する国民の理解を深めるよう必要な措置を講ずるものとする。


(自殺予防週間及び自殺対策強化月間)

第7条 国民の間に広く自殺対策の重要性に関する理解と関心を深めるとともに、自殺対策の総合的な推進に資するため、自殺予防週間及び自殺対策強化月間を設ける。

 自殺予防週間は9月10日から9月16日までとし、自殺対策強化月間は3月とする。

 国及び地方公共団体は、自殺予防週間においては、啓発活動を広く展開するものとし、それにふさわしい事業を実施するよう努めるものとする。

 国及び地方公共団体は、自殺対策強化月間においては、自殺対策を集中的に展開するものとし、関係機関及び関係団体と相互に連携協力を図りながら、相談事業その他それにふさわしい事業を実施するよう努めるものとする。


(関係者の連携協力)

第8条 国、地方公共団体、医療機関、事業主、学校(学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校をいい、幼稚園及び特別支援学校の幼稚部を除く。第17条第1項及び第3項において同じ。)、自殺対策に係る活動を行う民間の団体その他の関係者は、自殺対策の総合的かつ効果的な推進のため、相互に連携を図りながら協力するものとする。


(名誉及び生活の平穏への配慮)

第9条 自殺対策の実施に当たっては、自殺者及び自殺未遂者並びにそれらの者の親族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、いやしくもこれらを不当に侵害することのないようにしなければならない。


(法制上の措置等)

第10条 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。


(年次報告)

第11条 政府は、毎年、国会に、我が国における自殺の概況及び講じた自殺対策に関する報告書を提出しなければならない。

第2章 自殺総合対策大綱及び都道府県自殺対策計画等

(自殺総合対策大綱)

第12条 政府は、政府が推進すべき自殺対策の指針として、基本的かつ総合的な自殺対策の大綱(次条及び第23条第2項第1号において「自殺総合対策大綱」という。)を定めなければならない。


(都道府県自殺対策計画等)

第13条 都道府県は、自殺総合対策大綱及び地域の実情を勘案して、当該都道府県の区域内における自殺対策についての計画(次項及び次条において「都道府県自殺対策計画」という。)を定めるものとする。

 市町村は、自殺総合対策大綱及び都道府県自殺対策計画並びに地域の実情を勘案して、当該市町村の区域内における自殺対策についての計画(次条において「市町村自殺対策計画」という。)を定めるものとする。


(都道府県及び市町村に対する交付金の交付)

第14条 国は、都道府県自殺対策計画又は市町村自殺対策計画に基づいて当該地域の状況に応じた自殺対策のために必要な事業、その総合的かつ効果的な取組等を実施する都道府県又は市町村に対し、当該事業等の実施に要する経費に充てるため、推進される自殺対策の内容その他の事項を勘案して、厚生労働省令で定めるところにより、予算の範囲内で、交付金を交付することができる。

第3章 基本的施策

(調査研究等の推進及び体制の整備)

第15条 国及び地方公共団体は、自殺対策の総合的かつ効果的な実施に資するため、自殺の実態、自殺の防止、自殺者の親族等の支援の在り方、地域の状況に応じた自殺対策の在り方、自殺対策の実施の状況等又は心の健康の保持増進についての調査研究及び検証並びにその成果の活用を推進するとともに、自殺対策について、先進的な取組に関する情報その他の情報の収集、整理及び提供を行うものとする。

 国及び地方公共団体は、前項の施策の効率的かつ円滑な実施に資するための体制の整備を行うものとする。


(人材の確保等)

第16条 国及び地方公共団体は、大学、専修学校、関係団体等との連携協力を図りながら、自殺対策に係る人材の確保、養成及び資質の向上に必要な施策を講ずるものとする。


(心の健康の保持に係る教育及び啓発の推進等)

第17条 国及び地方公共団体は、職域、学校、地域等における国民の心の健康の保持に係る教育及び啓発の推進並びに相談体制の整備、事業主、学校の教職員等に対する国民の心の健康の保持に関する研修の機会の確保等必要な施策を講ずるものとする。

 国及び地方公共団体は、前項の施策で大学及び高等専門学校に係るものを講ずるに当たっては、大学及び高等専門学校における教育の特性に配慮しなければならない。

 学校は、当該学校に在籍する児童、生徒等の保護者、地域住民その他の関係者との連携を図りつつ、当該学校に在籍する児童、生徒等に対し、各人がかけがえのない個人として共に尊重し合いながら生きていくことについての意識の涵養等に資する教育又は啓発、困難な事態、強い心理的負担を受けた場合等における対処の仕方を身に付ける等のための教育又は啓発その他当該学校に在籍する児童、生徒等の心の健康の保持に係る教育又は啓発を行うよう努めるものとする。


(医療提供体制の整備)

第18条 国及び地方公共団体は、心の健康の保持に支障を生じていることにより自殺のおそれがある者に対し必要な医療が早期かつ適切に提供されるよう、精神疾患を有する者が精神保健に関して学識経験を有する医師(以下この条において「精神科医」という。)の診療を受けやすい環境の整備、良質かつ適切な精神医療が提供される体制の整備、身体の傷害又は疾病についての診療の初期の段階における当該診療を行う医師と精神科医との適切な連携の確保、救急医療を行う医師と精神科医との適切な連携の確保、精神科医とその地域において自殺対策に係る活動を行うその他の心理、保健福祉等に関する専門家、民間の団体等の関係者との円滑な連携の確保等必要な施策を講ずるものとする。


(自殺発生回避のための体制の整備等)

第19条 国及び地方公共団体は、自殺をする危険性が高い者を早期に発見し、相談その他の自殺の発生を回避するための適切な対処を行う体制の整備及び充実に必要な施策を講ずるものとする。


(自殺未遂者等の支援)

第20条 国及び地方公共団体は、自殺未遂者が再び自殺を図ることのないよう、自殺未遂者等への適切な支援を行うために必要な施策を講ずるものとする。


(自殺者の親族等の支援)

第21条 国及び地方公共団体は、自殺又は自殺未遂が自殺者又は自殺未遂者の親族等に及ぼす深刻な心理的影響が緩和されるよう、当該親族等への適切な支援を行うために必要な施策を講ずるものとする。


(民間団体の活動の支援)

第22条 国及び地方公共団体は、民間の団体が行う自殺の防止、自殺者の親族等の支援等に関する活動を支援するため、助言、財政上の措置その他の必要な施策を講ずるものとする。

第4章 自殺総合対策会議等

(設置及び所掌事務)

第23条 厚生労働省に、特別の機関として、自殺総合対策会議(以下「会議」という。)を置く。

 会議は、次に掲げる事務をつかさどる。

 自殺総合対策大綱の案を作成すること。

 自殺対策について必要な関係行政機関相互の調整をすること。

 前二号に掲げるもののほか、自殺対策に関する重要事項について審議し、及び自殺対策の実施を推進すること。


(会議の組織等)

第24条 会議は、会長及び委員をもって組織する。

 会長は、厚生労働大臣をもって充てる。

 委員は、厚生労働大臣以外の国務大臣のうちから、厚生労働大臣の申出により、内閣総理大臣が指定する者をもって充てる。

 会議に、幹事を置く。

 幹事は、関係行政機関の職員のうちから、厚生労働大臣が任命する。

 幹事は、会議の所掌事務について、会長及び委員を助ける。

 前各項に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。


(必要な組織の整備)

第25条 前二条に定めるもののほか、政府は、自殺対策を推進するにつき、必要な組織の整備を図るものとする。

附 則
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

附 則(平成27年9月11日法律第66号)
(施行期日)

第1条 この法律は、平成28年4月1日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

 附則第7条の規定 公布の日


(自殺対策基本法の一部改正に伴う経過措置)

第6条 この法律の施行の際現に第27条の規定による改正前の自殺対策基本法第20条第1項の規定により置かれている自殺総合対策会議は、第27条の規定による改正後の自殺対策基本法第20条第1項の規定により置かれる自殺総合対策会議となり、同一性をもって存続するものとする。


(政令への委任)

第7条 附則第2条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。

附 則(平成28年3月30日法律第11号)
(施行期日)

 この法律は、平成28年4月1日から施行する。ただし、次項の規定は、公布の日から施行する。