水銀等による水産動植物の汚染に係る被害漁業者等に対する資金の融通に関する特別措置法
第1条 この法律は、事業活動に伴い排出された水銀等により水産動植物が汚染されていること又は汚染されているおそれがあることに起因する漁業の操業の停止、水産物(水産加工物を含む。以下同じ。)の販売の不振等により損失を受けた漁業者、水産加工業者、水産物販売業者等に対する事業の経営又は生活に必要な資金の融通を円滑にする措置を講じ、もつてこれらの者の事業の経営と生活の安定に資することを目的とする。
第2条 この法律において「水銀等」とは、水銀、ポリ塩化ビフェニールその他人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質として政令で定める物質をいう。
2 この法律において「被害漁業者等」とは、次の各号に掲げる者であつて、指定区域内に住所を有し、かつ、事業活動に伴い排出された水銀等により水産動植物が汚染されていること又は汚染されているおそれがあることに起因する漁業の操業の停止、水産物の販売の不振等による昭和48年5月22日以後における収入の減少の額が政令で定める基準に該当する旨の市町村長(特別区の区長を含む。)の認定を受けたもの及び第1号に掲げる者に係る指定区域内に住所を有する水産業協同組合をいう。
一 漁業をおもな業務とする者(水産業協同組合を除く。)であつて政令で定めるもの
二 水産加工業をおもな業務とする者(水産業協同組合を除く。)であつて政令で定めるもの
三 水産物の販売業をおもな業務とする者(水産業協同組合を除く。)であつて政令で定めるもの
四 前各号に掲げる者のほか、これらの者に準ずる者として政令で定める者
3 前項の指定区域は、次の各号に掲げる者の区分に従い、当該各号に掲げる区域とする。
一 前項第1号に掲げる者 旧市町村の区域(昭和28年9月30日現在における市町村の区域をいう。以下この号において同じ。)内に住所を有する同項第1号及び第2号に掲げる者(以下この号において「居住漁業者等」という。)であつて同項に規定する収入の減少の額が同項の政令で定める基準に該当するものの数が当該居住漁業者等の総数の百分の十以上であると認めて都道府県知事が指定する旧市町村の区域
二 前項第2号に掲げる者 前号に掲げる区域及び第3号に掲げる区域
三 前項第3号及び第4号に掲げる者 市町村(特別区を含む。以下同じ。)の区域内に住所を有する同項第2号、第3号及び第4号に掲げる者(以下この号において「居住水産物販売業者等」という。)であつて同項に規定する収入の減少の額が同項の政令で定める基準に該当するものの数が当該居住水産物販売業者等の総数の百分の十以上であると認めて都道府県知事が指定する市町村の区域
4 この法律において「特定地域」とは、事業活動に伴い排出された水銀等により水産動植物が汚染され又は汚染されているおそれがある水域に係る地域及び当該水域の周辺水域に係る地域であつて、漁業、水産加工業又は水産物の販売業の経営に対する当該汚染等の影響が著しいと認められる地域として政令で定める地域をいう。
5 この法律において「経営資金」とは、水産業協同組合、農林中央金庫、中小企業等協同組合、商工組合、商工組合連合会、商店街振興組合、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫、国民生活金融公庫その他政令で定める金融機関(以下「融資機関」という。)が、被害漁業者等に対し、当該事業の経営に必要な資金又は生活に必要な資金として昭和48年12月31日までに貸し付ける資金であつて貸付金額、償還期限、利率等が政令で定める基準に該当するものをいう。
第3条 都道府県及び市町村は、融資機関が経営資金を貸し付けるときは、当該貸付けに係る経営資金につき利子補給を行なう旨の契約及び当該経営資金を貸し付けたことによつて当該融資機関が受けた損失を補償する旨の契約を、当該融資機関と結ぶことができる。
2 政府は、都道府県に対し、予算の範囲内で、次の各号に掲げる経費の全部又は一部を補助する。
一 市町村が、融資機関との契約により、当該融資機関が貸し付けた経営資金につき利子補給を行なうのに要する経費の一部を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
二 都道府県が、融資機関との契約により、当該融資機関が貸し付けた経営資金につき利子補給を行なう場合における当該利子補給に要する経費
三 市町村が、融資機関との契約により、当該融資機関が経営資金(特定地域内に住所を有する被害漁業者等に対して貸し付けるものに限る。以下この条において同じ。)を貸し付けたことによつて受けた損失を、当該融資機関に対し補償するのに要する経費の百分の八十以内を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
四 都道府県が、融資機関との契約により、当該融資機関が経営資金を貸し付けたことによつて受けた損失を補償する場合における当該損失補償に要する経費
五 市町村が、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合連合会、農林中央金庫、中小企業等協同組合である協同組合連合会、商工組合連合会、商店街振興組合連合会、中小企業金融公庫又は商工組合中央金庫(以下「連合会等」という。)との契約により、経営資金を貸し付けようとする漁業協同組合、水産加工業協同組合、事業協同組合、事業協同小組合、商工組合又は商店街振興組合(以下「組合」という。)に対し当該資金に充てるための資金を当該連合会等が貸し付けたことによつて受けた損失を、当該連合会等に対し補償するのに要する経費の百分の八十以内を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
六 都道府県が、連合会等との契約により、経営資金を貸し付けようとする組合に対し当該資金に充てるための資金を当該連合会等が貸し付けたことによつて受けた損失を、当該連合会等に対し補償する場合における当該損失補償に要する経費
3 前項第3号から第6号までの契約には、次の各号に掲げる事項を含まなければならない。
一 融資機関又は連合会等は、当該契約により損失補償を受けた後も、善良な管理者の注意をもつて当該融資に係る債権の回収に努めなければならないこと。
二 融資機関又は連合会等は、当該契約により損失補償を受けた後に当該融資に係る債権の回収によつて得た金額のうちから、債権行使のために必要とした費用を控除し、残額があるときは、これをもつて当該融資について損失補償を受けない損失をうめ、なお残額があるときは、当該契約により都道府県又は市町村から受けた損失補償の金額に達するまでの金額を当該都道府県又は当該市町村に納付しなければならないこと。
三 融資機関は、被害漁業者等に対する経営資金の貸付けの契約において、当該被害漁業者等が水産動植物の汚染の原因となつた水銀等を排出した事業者から当該貸付けに係る損失の塡補を受けたときは、すみやかに、その塡補を受けた額の限度において、当該契約に係る債務を弁済すべき旨を定めるべきこと。
4 第2項第3号から第6号までの損失は、融資元本の償還期限の到来後政令で定める期間を経過してもなお元本又は利息(政令で定める遅延利息を含む。)の全部又は一部が回収されなかつた場合におけるその回収されなかつた金額とする。
第4条 前条第2項の規定により政府が都道府県に対して交付する補助金の額は、次の各号に掲げる経費の区分に従い、当該各号に掲げる額の範囲内とする。
一 前条第2項第1号及び第2号に掲げる経費のうち、特定地域内に住所を有する被害漁業者等に対して貸し付けられた経営資金に係る経費 当該利子補給額の百分の六十五に相当する額又は当該利子補給の対象となつた融資機関ごとの貸付金の総額に年3.575パーセント以内において融資機関ごとに政令で定める率を乗じて得た額の合計額のいずれか低い額
二 前条第2項第1号及び第2号に掲げる経費のうち、前号の被害漁業者等以外の被害漁業者等に対して貸し付けられた経営資金に係る経費 当該利子補給額の百分の五十に相当する額又は当該利子補給の対象となつた融資機関ごとの貸付金の総額に年2.75パーセント以内において融資機関ごとに政令で定める率を乗じて得た額の合計額のいずれか低い額
三 前条第2項第3号から第6号までに掲げる経費 当該損失補償額の百分の五十に相当する額又は当該損失補償の対象となつた貸付金の総額の百分の二十五に相当する額のいずれか低い額
第5条 第3条第2項の規定により補助金の交付を受けた都道府県は、融資機関又は連合会等から同条第3項第2号の事項を含む損失補償契約により同号の納付金の納付を受けたときは、その一部を政府から補助を受けた割合に応じて政府に納付しなければならない。
2 第3条第2項の規定により補助金の交付を受けた都道府県は、当該都道府県から補助金の交付を受けた市町村が融資機関又は連合会等から同条第3項第2号の事項を含む損失補償契約により同号の納付金の納付を受けたときは、その一部を当該市町村が都道府県から補助を受けた割合に応じて当該市町村から納付させ、その納付金の一部を政府から補助を受けた割合に応じて政府に納付しなければならない。
第6条 政府は、都道府県若しくは市町村がこの法律若しくはこの法律に基づく命令に違反したとき、又は都道府県若しくは市町村と第3条第2項第3号から第6号までの契約を結んだ融資機関若しくは連合会等が同条第3項各号の契約事項に違反したときは、当該都道府県に対し交付すべき補助金の全部若しくは一部を交付せず、又はすでに交付した補助金の全部若しくは一部の返還を命ずることができる。
第7条 主務大臣は、経営資金の貸付けが適正に行なわれているかどうかを知るために必要があると認めるときは、当該経営資金を貸し付けた融資機関から報告を徴し、又はその職員をして融資機関の事務所に立ち入り、帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第8条 前条第1項の規定による主務大臣の権限の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事に委任することができる。
この法律は、公布の日から施行する。
第1条 この法律は、平成11年10月1日から施行する。