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ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律

平成13年法律第63号
最終改正:平成18年2月10日法律第2号
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ハンセン病の患者は、これまで、偏見と差別の中で多大の苦痛と苦難を強いられてきた。我が国においては、昭和28年制定の「らい予防法」においても引き続きハンセン病の患者に対する隔離政策がとられ、加えて、昭和30年代に至ってハンセン病に対するそれまでの認識の誤りが明白となったにもかかわらず、なお、依然としてハンセン病に対する誤った認識が改められることなく、隔離政策の変更も行われることなく、ハンセン病の患者であった者等にいたずらに耐え難い苦痛と苦難を継続せしめるままに経過し、ようやく「らい予防法の廃止に関する法律」が施行されたのは平成8年であった。

我らは、これらの悲惨な事実を悔悟と反省の念を込めて深刻に受け止め、深くおわびするとともに、ハンセン病の患者であった者等に対するいわれのない偏見を根絶する決意を新たにするものである。

ここに、ハンセン病の患者であった者等のいやし難い心身の傷跡の回復と今後の生活の平穏に資することを希求して、ハンセン病療養所入所者等がこれまでに被った精神的苦痛を慰謝するとともに、ハンセン病の患者であった者等の名誉の回復及び福祉の増進を図り、あわせて、死没者に対する追悼の意を表するため、この法律を制定する。

(趣旨)

第1条 この法律は、ハンセン病療養所入所者等の被った精神的苦痛を慰謝するための補償金(以下「補償金」という。)の支給に関し必要な事項を定めるとともに、ハンセン病の患者であった者等の名誉の回復等について定めるものとする。


(定義)

第2条 この法律において「ハンセン病療養所入所者等」とは、次に掲げる者をいう。

 らい予防法の廃止に関する法律(平成8年法律第28号。以下「廃止法」という。)によりらい予防法(昭和28年法律第214号)が廃止されるまでの間に、国立ハンセン病療養所(廃止法第1条の規定による廃止前のらい予防法(以下「旧らい予防法」という。)第11条の規定により国が設置したらい療養所をいう。)その他の本邦に設置された厚生労働大臣が定めるハンセン病療養所(以下「国内ハンセン病療養所」という。)に入所していた者であって、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)において生存しているもの

 昭和20年8月15日までの間に、行政諸法台湾施行令(大正11年勅令第521号)第1条の規定により台湾に施行された旧らい予防法附則第2項の規定による廃止前の癩予防法(明治40年法律第11号)第3条第1項の国立癩療養所、朝鮮癩予防令(昭和10年制令第4号)第5条の朝鮮総督府癩療養所その他の本邦以外の地域に設置された厚生労働大臣が定めるハンセン病療養所(以下「国外ハンセン病療養所」という。)に入所していた者であって、施行日において生存しているもの(前号に掲げる者を除く。)


(補償金の支給)

第3条 国は、ハンセン病療養所入所者等に対し、その者の請求により、補償金を支給する。


(請求の期限)

第4条 補償金の支給の請求は、次の各号に掲げるハンセン病療養所入所者等の区分に従い、当該各号に掲げる日から起算して5年以内に行わなければならない。

 第2条第1号に掲げる者 施行日。ただし、昭和20年8月15日までの間に国外ハンセン病療養所に入所していた者については、ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律の一部を改正する法律(平成18年法律第2号。以下「改正法」という。)の施行の日とする。

 第2条第2号に掲げる者 改正法の施行の日

 前項の期間内に補償金の支給の請求をしなかった者には、補償金を支給しない。


(補償金の額)

第5条 補償金の額は、次の各号に掲げるハンセン病療養所入所者等の区分に従い、当該各号に掲げる額とする。

 昭和35年12月31日までに、初めて国内ハンセン病療養所に入所した者 1400万円

 昭和36年1月1日から昭和39年12月31日までの間に、初めて国内ハンセン病療養所に入所した者 1200万円

 昭和40年1月1日から昭和47年12月31日までの間に、初めて国内ハンセン病療養所に入所した者 1000万円

 昭和48年1月1日から平成8年3月31日までの間に、初めて国内ハンセン病療養所に入所した者 800万円

 第2条第2号に掲げる者 800万円

 前項の規定にかかわらず、同項第1号から第3号までに掲げる者であって、昭和35年1月1日から昭和49年12月31日までの間に国内ハンセン病療養所から退所していたことがあるものに支給する補償金の額は、次の表の上欄に掲げるハンセン病療養所入所者等の区分及び同表の中欄に掲げる退所期間(昭和35年1月1日から昭和49年12月31日までの間に国内ハンセン病療養所から退所していた期間を合計した期間をいう。以下同じ。)に応じ、それぞれ、同表の下欄に掲げる額を同項第1号から第3号までに掲げる額から控除した額とする。

ハンセン病療養所入所者等の区分

退所期間

前項第1号に掲げる者

24月以上120月未満

200万円

120月以上216月未満

400万円

216月以上

600万円

前項第2号に掲げる者

24月以上120月未満

200万円

120月以上

400万円

前項第3号に掲げる者

24月以上

200万円

 退所期間の計算は、退所した日の属する月の翌月から改めて入所した日の属する月の前月までの月数による。

 昭和35年1月1日から昭和39年12月31日までの間の退所期間の月数については、前項の規定により計算した退所期間の月数に二を乗じて得た月数とする。

 前条第1項第1号ただし書に規定する者が施行日から起算して5年を経過した後に補償金の支給の請求をした場合における補償金の額は、前各項の規定にかかわらず、800万円とする。


(支払未済の補償金)

第6条 ハンセン病療養所入所者等が補償金の支給の請求をした後に死亡した場合において、その者が支給を受けるべき補償金でその支払を受けなかったものがあるときは、これをその者の配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたもの(以下「遺族」という。)に支給し、支給すべき遺族がないときは、当該死亡した者の相続人に支給する。

 前項の規定による補償金を受けるべき遺族の順位は、同項に規定する順序による。

 第1項の規定による補償金を受けるべき同順位者が2人以上あるときは、その全額をその1人に支給することができるものとし、この場合において、その1人にした支給は、全員に対してしたものとみなす。


(損害賠償等がされた場合の調整)

第7条 補償金の支給を受けるべき者が同一の事由について国から国家賠償法(昭和22年法律第125号)による損害賠償その他の損害のてん補を受けたときは、国は、その価額の限度で、補償金を支給する義務を免れる。

 国は、補償金を支給したときは、同一の事由については、その価額の限度で、国家賠償法による損害賠償の責めを免れる。


(譲渡等の禁止)

第8条 補償金の支給を受ける権利は、譲渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。


(非課税)

第9条 租税その他の公課は、補償金を標準として課することができない。


(不正利得の徴収)

第10条 偽りその他不正の手段により補償金の支給を受けた者があるときは、厚生労働大臣は、国税徴収の例により、その者から、当該補償金の価額の全部又は一部を徴収することができる。

 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。


(名誉の回復等)

第11条 国は、ハンセン病の患者であった者等(第2条第2号に掲げる者を除く。次項において同じ。)について、名誉の回復及び福祉の増進を図るとともに、死没者に対する追悼の意を表するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 前項の措置を講ずるに当たっては、ハンセン病の患者であった者等の意見を尊重するものとする。


(厚生労働省令への委任)

第12条 この法律に定めるもののほか、補償金の支給の手続その他の必要な事項は、厚生労働省令で定める。

附 則

この法律は、公布の日から施行する。

附 則(平成18年2月10日法律第2号)
(施行期日)

 この法律は、公布の日から施行する。

(経過措置)

 この法律による改正後のハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律(以下「新法」という。)第2条第2号に掲げる者(この法律の施行前に死亡した者を含む。)であってこの法律の施行前に新法の規定により支給される補償金に相当する補償金の支給を請求する意思を有していることが書面により表示されていたものとして厚生労働省令で定める者については、この法律の施行の日において新法第3条の規定による補償金の支給の請求があったものとみなして、新法の規定を適用する。この場合において、その者がこの法律の施行前に死亡したときにおける新法第6条第1項の規定の適用については、同項中「ハンセン病療養所入所者等が補償金の支給の請求をした後に死亡した場合において、その者が支給を受けるべき補償金でその支払を受けなかったものがあるときは、これ」とあるのは、「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律の一部を改正する法律(平成18年法律第2号)附則第2項に規定する者が同法の施行前に死亡したときは、その者に係る補償金」とする。