法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律
第1条 この法律は、法曹の養成に関し、その基本理念並びに次条第1号に規定する法科大学院における教育の充実、法科大学院における教育と司法試験及び司法修習生の修習との有機的連携の確保に関する事項その他の基本となる事項を定めることにより、高度の専門的な能力及び優れた資質を有する多数の法曹の養成を図り、もって司法制度を支える人的体制の充実強化に資することを目的とする。
第2条 法曹の養成は、国の規制の撤廃又は緩和の一層の進展その他の内外の社会経済情勢の変化に伴い、より自由かつ公正な社会の形成を図る上で法及び司法の果たすべき役割がより重要なものとなり、多様かつ広範な国民の要請にこたえることができる高度の専門的な法律知識、幅広い教養、国際的な素養、豊かな人間性及び職業倫理を備えた多数の法曹が求められていることにかんがみ、国の機関、大学その他の法曹の養成に関係する機関の密接な連携の下に、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。
一 法科大学院(学校教育法(昭和22年法律第26号)第99条第2項に規定する専門職大学院であって、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とするものをいう。以下同じ。)において、法曹の養成のための中核的な教育機関として、各法科大学院の創意をもって、入学者の適性の適確な評価及び多様性の確保に配慮した公平な入学者選抜を行い、少人数による密度の高い授業により、将来の法曹としての実務に必要な学識及びその応用能力(弁論の能力を含む。次条第3項において同じ。)並びに法律に関する実務の基礎的素養を涵養するための理論的かつ実践的な教育を体系的に実施し、その上で厳格な成績評価及び修了の認定を行うこと。
二 司法試験において、前号の法科大学院における教育との有機的連携の下に、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかの判定を行うこと。
三 司法修習生の修習において、第1号の法科大学院における教育との有機的連携の下に、裁判官、検察官又は弁護士としての実務に必要な能力を修得させること。
第3条 国は、前条の基本理念(以下「法曹養成の基本理念」という。)にのっとり、法科大学院における教育の充実(第6条第2項第1号に規定する連携法曹基礎課程における教育の充実を含む。以下同じ。)並びに法科大学院における教育と司法試験及び司法修習生の修習との有機的連携を図る責務を有する。
2 国は、法曹の養成が国の機関、大学その他の法曹の養成に関係する機関の密接な連携の下に行われることを確保するため、これらの機関の相互の協力の強化に必要な施策を講ずるものとする。
3 国は、法科大学院において将来の法曹としての実務に必要な学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を涵養するための教育が行われることを確保するため、法科大学院における法曹である教員の確保及び教員の教育上の能力の向上のために必要な施策を講ずるとともに、関係する審議会等における調査審議に法曹である委員を参画させるものとする。
4 国は、法科大学院における教育に関する施策を策定し、及びこれを実施するに当たっては、大学における教育の特性に配慮しなければならない。
5 政府は、法曹養成の基本理念にのっとり、法曹の養成のための施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
第4条 大学は、法曹養成の基本理念にのっとり、法科大学院において、次に掲げる学識及び能力並びに素養を涵養するための教育を段階的かつ体系的に実施するとともに、法科大学院における教育の充実に自主的かつ積極的に努めるものとする。
一 法曹となろうとする者に共通して必要とされる専門的学識(専門的な法律知識その他の学識をいう。以下この条において同じ。)
二 法曹となろうとする者に共通して必要とされる前号に掲げる専門的学識の応用能力(法的な推論、分析、構成及び論述の能力をいう。以下この条において同じ。)
三 前二号に掲げるもののほか、法曹となろうとする者に必要とされる専門的な法律の分野に関する専門的学識及びその応用能力
四 次に掲げるものその他前三号に掲げる専門的学識及びその応用能力の基盤の上に涵養すべき将来の法曹としての実務に必要な学識及び能力並びに素養
イ 法的な推論、分析及び構成に基づいて弁論をする能力
ロ 法律に関する実務の基礎的素養
第5条 法科大学院を設置する大学は、当該法科大学院における教育の充実及び将来の法曹としての適性を有する多様な入学者の確保に資するため、次に掲げる事項を公表するものとする。
一 当該法科大学院の教育課程並びに当該教育課程を履修する上で求められる学識及び能力
二 当該法科大学院における成績評価の基準及び実施状況
三 当該法科大学院における修了の認定の基準及び実施状況
四 当該法科大学院の課程を修了した者の進路に関する状況
五 その他文部科学省令で定める事項
第6条 法科大学院を設置する大学は、当該法科大学院における教育との円滑な接続を図るための課程を置こうとする大学と、当該課程における教育の実施及び当該法科大学院における教育との円滑な接続に関する協定(以下「法曹養成連携協定」という。)を締結し、当該法曹養成連携協定が適当である旨の文部科学大臣の認定を受けることができる。
2 法曹養成連携協定においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 法曹養成連携協定の目的となる法科大学院(以下「連携法科大学院」という。)及び当該連携法科大学院における教育との円滑な接続を図るための大学の課程(以下この条において「連携法曹基礎課程」という。)
二 連携法科大学院の入学者に求められる基礎的な学識及び能力を修得させるために必要な教育を行うための連携法曹基礎課程における教育課程の編成その他の連携法科大学院における教育と連携法曹基礎課程における教育との円滑な接続を図るために必要な措置に関する事項
三 連携法曹基礎課程における成績評価の基準
四 連携法曹基礎課程における教育の実施のために必要な連携法科大学院を設置する大学の協力に関する事項
五 連携法曹基礎課程を修了して連携法科大学院に入学しようとする者を対象とする入学者選抜の方法
六 法曹養成連携協定の有効期間
七 法曹養成連携協定に違反した場合の措置
八 その他必要な事項
3 文部科学大臣は、第1項の認定に係る申請が次の各号のいずれにも該当するときは、同項の認定をするものとする。
一 連携法科大学院を設置する大学が、当該連携法科大学院の教育課程、教員組織その他教育研究活動の状況(以下単に「教育研究活動の状況」という。)について、学校教育法第109条第6項に規定する適合認定を受けていること。
二 連携法曹基礎課程を修了して連携法科大学院に入学しようとする者を対象とする入学者選抜に関し、文部科学省令で定めるところにより、連携法曹基礎課程における科目の単位の修得の状況を踏まえ、入学者の適性の適確な評価に配慮した公平な入学者選抜を行うこととされていること。
三 法曹養成連携協定に違反した場合の措置その他の法曹養成連携協定の内容が、連携法曹基礎課程の学生の不利益とならないよう配慮されたものであること。
四 前二号に掲げるもののほか、連携法科大学院における教育と連携法曹基礎課程における教育との円滑な接続に資するものとして文部科学省令で定める基準に適合するものであること。
4 文部科学大臣は、第1項の認定をしたときは、文部科学省令で定めるところにより、当該認定に係る法曹養成連携協定の内容を公表するものとする。
第7条 連携法科大学院を設置する大学は、前条第1項の認定を受けた法曹養成連携協定において定めた事項を変更しようとするときは、文部科学大臣の認定を受けなければならない。
2 前条第3項及び第4項の規定は、前項の変更の認定について準用する。
第8条 文部科学大臣は、次の各号のいずれかに該当するときは、第6条第1項の認定を取り消すことができる。
一 第6条第1項の認定を受けた法曹養成連携協定(前条第1項の変更の認定があったときは、その変更後のもの。次号及び第12条第2項において「認定法曹養成連携協定」という。)の内容が、第6条第3項各号のいずれかに適合しなくなったと認めるとき。
二 正当な理由がないのに認定法曹養成連携協定において定められた事項が適切に実施されていないと認めるとき。
2 文部科学大臣は、前項の規定による認定の取消しをしたときは、その旨を公表するものとする。
第9条 法科大学院を設置する大学は、当該法科大学院における教育との円滑な接続を図るための課程を置き法曹養成連携協定を締結しようとする大学に対し、当該課程の教育課程の編成に関し参考となる情報の提供その他の協力を行うよう努めるものとする。
第10条 法科大学院を設置する大学は、当該法科大学院の入学者の適性の適確な評価及び多様性の確保に資するよう、入学者選抜の実施方法、実施時期その他の入学者選抜の実施に関する事項について、次に掲げる者に対する適切な配慮を行うものとする。
一 就業者その他の職業経験を有する者であって法科大学院に入学しようとする者
二 法学を履修する課程以外の大学の課程を修了して法科大学院に入学しようとする者
三 学校教育法第89条の規定により大学を卒業して法科大学院に入学しようとする者及び同法第102条第2項の規定により法科大学院に入学しようとする者
第11条 文部科学大臣は、法科大学院に係る学校教育法第3条に規定する設置基準(次条第1項及び第13条第2項第1号において単に「設置基準」という。)を定めるときは、法科大学院における教育が法曹養成の基本理念及び第4条に規定する大学の責務を踏まえたものとなるように意を用いなければならない。
第12条 文部科学大臣は、法科大学院の教育研究活動の状況についての評価を行う者の認証の基準に係る学校教育法第110条第3項に規定する細目を定めるときは、その者の定める法科大学院に係る同法第109条第4項に規定する大学評価基準の内容が法曹養成の基本理念及び第4条に規定する大学の責務(これらを踏まえて定められる法科大学院に係る設置基準を含む。)を踏まえたものとなるように意を用いなければならない。
2 学校教育法第109条第2項に規定する認証評価機関(次項において単に「認証評価機関」という。)が行う認定法曹養成連携協定の目的となっている連携法科大学院の教育研究活動の状況についての同条第3項の規定による認証評価(次項において単に「認証評価」という。)については、当該認定法曹養成連携協定において当該連携法科大学院が行うこととされている事項の実施状況を含めて行うものとする。
3 文部科学大臣は、法科大学院の教育研究活動の状況について認証評価を行った認証評価機関から学校教育法第110条第4項の規定によりその結果の報告を受けたときは、遅滞なく、これを法務大臣に通知するものとする。
第13条 法務大臣及び文部科学大臣は、法科大学院における教育の充実及び法科大学院における教育と司法試験との有機的連携の確保を図るため、相互に協力しなければならない。
2 文部科学大臣は、次に掲げる場合には、あらかじめ、その旨を法務大臣に通知するものとする。この場合において、法務大臣は、文部科学大臣に対し、必要な意見を述べることができる。
一 法科大学院に係る設置基準を定め、又はこれを改廃しようとするとき。
二 法科大学院の教育研究活動の状況についての評価を行う者の認証の基準に係る学校教育法第110条第3項に規定する細目を定め、又はこれを改廃しようとするとき。
三 学校教育法第109条第2項の規定により法科大学院の教育研究活動の状況についての評価を行う者を認証し、又は同法第111条第2項の規定によりその認証を取り消そうとするとき。
3 法務大臣は、特に必要があると認めるときは、文部科学大臣に対し、法科大学院について、学校教育法第15条第4項の規定による報告又は資料の提出の要求、同条第1項の規定による勧告、同条第2項の規定による命令その他の必要な措置を講ずることを求めることができる。
4 法務大臣及び文部科学大臣は、法科大学院における教育と司法試験との有機的連携を確保するため、必要があると認めるときは、法科大学院の学生の収容定員の総数その他の法曹の養成に関する事項について、相互に協議を求め、又は大学その他の法曹の養成に関係する機関の意見を聴くことができる。
第1条 この法律は、平成15年4月1日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、それぞれ当該各号に定める日から施行する。
一 第3条第3項から第5項まで及び第6条第2項第1号の規定 公布の日
二 第5条第2項、第4項及び第5項並びに第6条第2項第3号の規定 平成16年4月1日
第2条 政府は、法科大学院における教育、司法試験及び司法修習生の修習の実施状況等を勘案し、国民の信頼に足る法曹の養成に関する制度について、学識経験を有する者等により構成される合議制の組織の意見等を踏まえつつ、裁判所法及び法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律の一部を改正する法律(平成24年法律第54号)の施行後1年以内に検討を加えて一定の結論を得た上、速やかに必要な措置を講ずるものとする。
第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
この法律は、公布の日から施行する。
第1条 この法律は、平成32年4月1日から施行する。
第1条 この法律は、平成32年4月1日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第1条中法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律第6条第4項の改正規定及び次条から附則第4条までの規定 公布の日
二 略
三 第2条、第4条(前号に掲げる改正規定を除く。)及び第5条並びに附則第5条から第8条までの規定 平成34年10月1日
第2条 第1条の規定による改正後の法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律(以下この項において「新連携法」という。)第6条第1項の認定及びこれに関し必要な手続その他の行為は、この法律の施行の日前においても、同条及び新連携法第7条の規定の例により行うことができる。
第4条 前二条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。