領海等における外国船舶の航行に関する法律
第1章 総則
第1条 この法律は、海に囲まれた我が国にとって海洋の安全を確保することが我が国の安全を確保する上で重要であることにかんがみ、領海等における外国船舶の航行方法、外国船舶の航行の規制に関する措置その他の必要な事項を定めることにより、領海等における外国船舶の航行の秩序を維持するとともにその不審な行動を抑止し、もって領海等の安全を確保することを目的とする。
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 領海等 我が国の領海及び内水をいう。
二 新内水 我が国の内水のうち、領海及び接続水域に関する法律(昭和52年法律第30号)第2条第1項に規定する直線基線により新たに我が国の内水となった部分をいう。
三 外国船舶 船舶法(明治32年法律第46号)第1条に規定する日本船舶以外の船舶(軍艦及び各国政府が所有し又は運航する船舶であって非商業的目的のみに使用されるものを除く。)をいう。
四 船長等 船長又は船長に代わって船舶を指揮する者をいう。
五 水域施設 我が国の港にある泊地その他の船舶の停留又はびょう泊の用に供する施設又は場所として国土交通省令で定めるものをいう。
六 係留施設 我が国の港にある岸壁その他の船舶の係留の用に供する施設又は場所として国土交通省令で定めるものをいう。
七 水域施設等 水域施設又は係留施設をいう。
第2章 外国船舶の航行方法等
第3条 領海等における外国船舶の航行は、通過(内水においては、新内水に係るものに限る。)又は水域施設等との往来を目的として継続的かつ迅速に行われるものでなければならない。
第4条 外国船舶の船長等は、領海等において、当該外国船舶に次に掲げる行為(以下「停留等」という。)を伴う航行をさせてはならない。ただし、当該停留等について荒天、海難その他の危難を避ける場合、人命、他の船舶又は航空機を救助する場合、海上衝突予防法(昭和52年法律第62号)その他の法令の規定を遵守する場合その他の国土交通省令で定めるやむを得ない理由がある場合は、この限りでない。
一 停留(水域施設におけるものを除く。)
二 びょう泊(水域施設におけるものを除く。)
三 係留(係留施設にするものを除く。)
四 はいかい等(気象、海象、船舶交通の状況、進路前方の障害物の有無その他周囲の事情に照らして、船舶の航行において通常必要なものとは認められない進路又は速力による進行をいう。)
2 前項に定めるもののほか、外国船舶の船長等は、内水(新内水を除く。以下同じ。)において、当該外国船舶に水域施設等に到着し、又は水域施設等から出発するための航行以外の航行(以下「通過航行」という。)をさせてはならない。ただし、同項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
第5条 外国船舶の船長等は、領海等において当該外国船舶に停留等をさせ、又は内水において当該外国船舶に通過航行をさせる必要があるときは、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、当該外国船舶の名称、船籍港、停留等又は通過航行をさせようとする理由その他の国土交通省令で定める事項(次項において「通報事項」という。)を最寄りの海上保安庁の事務所に通報しなければならない。ただし、停留等又は通過航行をさせようとする理由が明らかである場合として国土交通省令で定める場合は、この限りでない。
2 前項の場合において、急迫した危険を避けるためあらかじめ通報することができないときは、外国船舶の船長等は、当該危険を避けた後直ちに、通報事項を最寄りの海上保安庁の事務所に通報しなければならない。
3 前二項の規定により外国船舶の船長等がしなければならない通報は、当該外国船舶の所有者又は船長等若しくは所有者の代理人もすることができる。
4 第1項又は第2項の規定による通報(前項の規定によりされたものを含む。次条第1項において同じ。)を受けた海上保安庁の事務所の長は、必要があると認めるときは、当該通報に係る外国船舶の船長等に対して、助言又は指導をするものとする。
第6条 海上保安庁長官は、領海等において現に停留等を伴う航行を行っており、又は内水において現に通過航行を行っている外国船舶と思料される船舶があり、当該停留等又は当該通過航行について、前条第1項若しくは第2項の規定による通報がされておらず、又はその通報の内容に虚偽の事実が含まれている疑いがあると認められる場合において、周囲の事情から合理的に判断して、当該船舶の船長等が第4条の規定に違反している疑いがあると認められ、かつ、この法律の目的を達成するため、当該船舶が当該停留等を伴う航行又は当該通過航行を行っている理由を確かめる必要があると認めるときは、海上保安官に、当該船舶に立ち入り、書類その他の物件を検査させ、又は当該船舶の乗組員その他の関係者に質問させることができる。
2 前項の規定による立入検査をする海上保安官は、制服を着用し、又はその身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
3 第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第7条 海上保安官は、領海等において現に停留等を伴う航行を行っている外国船舶と認められる船舶があり、当該船舶の外観、航海の態様、乗組員等の挙動その他周囲の事情から合理的に判断して、当該船舶の船長等が第4条第1項の規定に違反していることが明らかであると認められるときは、当該船長等に対し、領海等において当該船舶に停留等を伴わない航行をさせるべきことを勧告することができる。
第8条 海上保安庁長官は、第6条第1項の規定による立入検査の結果、当該船舶の船長等が第4条の規定に違反していると認めるときは、当該船長等に対し、当該船舶を領海等から退去させるべきことを命ずることができる。
2 海上保安庁長官は、前条の勧告を受けた船長等が当該勧告に従わない場合であって、領海等における外国船舶の航行の秩序を維持するために必要があると認めるときは、当該船長等に対し、当該船舶を領海等から退去させるべきことを命ずることができる。
第3章 雑則
第9条 この法律の規定により海上保安庁長官の権限に属する事項は、国土交通省令で定めるところにより、管区海上保安本部長に行わせることができる。
第10条 第8条の規定による命令については、行政手続法(平成5年法律第88号)第3章の規定は、適用しない。
第11条 この法律の施行に当たっては、我が国が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行を妨げることがないよう留意しなければならない。
第4章 罰則
第12条 第8条の規定による命令に違反した船長等は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第13条 第6条第1項の規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の陳述をした者は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
1 この法律は、公布の日から起算して20日を経過した日から施行する。
1 この法律は、公布の日から起算して20日を経過した日から施行する。