戦後強制抑留者に係る問題に関する特別措置法
第1条 この法律は、戦後強制抑留者が、戦後、酷寒の地において、長期間にわたって劣悪な環境の下で強制抑留され、多大の苦難を強いられたこと、その間において過酷な強制労働に従事させられたこと等の特別の事情にかんがみ、及び戦後強制抑留者に係る強制抑留の実態がいまだ十分に判明していない状況等を踏まえ、これらの戦後強制抑留者に係る問題に対処するため、戦後強制抑留者の労苦を慰藉するための特別給付金を支給するための措置を講じ、併せて強制抑留の実態調査等に関する基本的な方針の策定について定めることを目的とする。
第2条 この法律において「戦後強制抑留者」とは、昭和20年8月9日以来の戦争の結果、同年9月2日以後ソヴィエト社会主義共和国連邦又はモンゴル人民共和国の地域において強制抑留された者をいう。
第3条 本邦に帰還した戦後強制抑留者でこの法律の施行の日において日本の国籍を有するものには、独立行政法人平和祈念事業特別基金(以下「基金」という。)が特別給付金を支給する。
2 特別給付金の支給を受ける権利の認定は、これを受けようとする者の請求に基づいて、基金が行う。
3 前項の請求は、総務省令で定めるところにより、平成24年3月31日までに行わなければならない。
4 前項の期間内に特別給付金の支給を請求しなかった者には、特別給付金は、支給しない。
第4条 特別給付金の額は、次の表の上欄に掲げる戦後強制抑留者の帰還の時期の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に定める額とし、これを一時金として支給する。
帰還の時期 |
特別給付金の額 |
昭和23年12月31日まで |
250,000円 |
昭和24年1月1日から昭和25年12月31日まで |
350,000円 |
昭和26年1月1日から昭和27年12月31日まで |
700,000円 |
昭和28年1月1日から昭和29年12月31日まで |
1,100,000円 |
昭和30年1月1日以降 |
1,500,000円 |
第5条 特別給付金の支給を受ける権利を有する者が死亡した場合において、その者がその死亡前に特別給付金の支給の請求をしていなかったときは、その者の相続人は、自己の名で、当該特別給付金の支給を請求することができる。
2 前項の場合において、同順位の相続人が数人あるときは、その1人のした特別給付金の支給の請求は、全員のためにその全額につきしたものとみなし、その1人に対してした特別給付金の支給を受ける権利の認定は、全員に対してしたものとみなす。
第6条 特別給付金に関する処分に不服がある者は、総務大臣に対し、審査請求をすることができる。
2 前項の審査請求に関する行政不服審査法(平成26年法律第68号)第18条第1項本文の期間は、その処分の通知を受けた日の翌日から起算して1年とする。
3 第1項の審査請求については、行政不服審査法第18条第2項の規定は、適用しない。
第7条 特別給付金の支給を受ける権利は、譲渡し、又は担保に供することができない。
第8条 特別給付金の支給を受ける権利は、差し押さえることができない。ただし、国税滞納処分(その例による処分を含む。)による場合は、この限りでない。
第9条 租税その他の公課は、特別給付金を標準として、課することができない。
第10条 偽りその他不正の手段により特別給付金の支給を受けた者があるときは、基金は、国税徴収の例により、その者から、その支給を受けた特別給付金の額に相当する金額の全部又は一部を徴収することができる。
2 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
第11条 基金の役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、特別給付金の支給に関して知ることができた秘密を漏らしてはならない。
第12条 第3条から前条までに定めるもののほか、特別給付金の支給に関し必要な事項は、総務省令で定める。
第13条 政府は、強制抑留の実態調査等(戦後強制抑留者に係る問題のうち特別給付金の支給により対処するもの以外のものに対処するために行う、その強制抑留の実態調査その他の措置をいう。次項において同じ。)を総合的に行うための基本的な方針(同項及び第3項において「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 強制抑留の実態調査等に関する基本的方向
二 次に掲げる措置の実施に関する基本的事項
イ 強制抑留下において死亡した戦後強制抑留者についての調査(その埋葬された場所についての調査を含む。)
ロ 強制抑留下において死亡した戦後強制抑留者の遺骨及び遺留品についてのその収集及び本邦への送還その他の必要な措置
ハ イ又はロに掲げる措置と併せて行う戦後強制抑留者に係る強制抑留の実態の解明に資するための調査
三 戦後強制抑留者の労苦についての国民の理解を深め、及びその戦争犠牲としての体験の後代の国民への継承を図るための事業並びに本邦に帰還することなく死亡した戦後強制抑留者に対する追悼の意を表すための事業の実施に関する基本的事項
四 強制抑留の実態調査等として行う措置のうち前二号に規定するもの以外のものの実施に関する基本的事項
五 強制抑留の実態調査等についての関係行政機関相互間の連携協力体制の整備に関する基本的事項
六 強制抑留の実態調査等についての地方公共団体及び戦後強制抑留者に関する支援等の活動を行う国内外の民間の団体その他の関係者との連携に関する基本的事項
七 その他強制抑留の実態調査等に関する重要事項
3 政府は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
第14条 第11条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第1条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第13条の規定は公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から、第14条の規定は公布の日から起算して20日を経過した日から施行する。
第2条 第3条第2項の規定にかかわらず、特別給付金の支給の請求は、この法律の施行の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日までの間は、行うことができない。
第1条 この法律は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)の施行の日から施行する。
第5条 行政庁の処分その他の行為又は不作為についての不服申立てであってこの法律の施行前にされた行政庁の処分その他の行為又はこの法律の施行前にされた申請に係る行政庁の不作為に係るものについては、この附則に特別の定めがある場合を除き、なお従前の例による。
第6条 この法律による改正前の法律の規定により不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為を経た後でなければ訴えを提起できないこととされる事項であって、当該不服申立てを提起しないでこの法律の施行前にこれを提起すべき期間を経過したもの(当該不服申立てが他の不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為を経た後でなければ提起できないとされる場合にあっては、当該他の不服申立てを提起しないでこの法律の施行前にこれを提起すべき期間を経過したものを含む。)の訴えの提起については、なお従前の例による。
2 この法律の規定による改正前の法律の規定(前条の規定によりなお従前の例によることとされる場合を含む。)により異議申立てが提起された処分その他の行為であって、この法律の規定による改正後の法律の規定により審査請求に対する裁決を経た後でなければ取消しの訴えを提起することができないこととされるものの取消しの訴えの提起については、なお従前の例による。
3 不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為の取消しの訴えであって、この法律の施行前に提起されたものについては、なお従前の例による。
第9条 この法律の施行前にした行為並びに附則第5条及び前二条の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第10条 附則第5条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。