戦没者の遺骨収集の推進に関する法律
第1条 この法律は、今次の大戦から長期間が経過し、戦没者の遺族をはじめ今次の大戦を体験した国民の高齢化が進展している現状において、いまだ多くの戦没者の遺骨の収集が行われていないことに鑑み、戦没者の遺骨収集の推進に関し国の責務を明らかにするとともに、戦没者の遺骨収集の実施に関し基本となる事項等を定めることにより、戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を総合的かつ確実に講ずることを目的とする。
第2条 この法律において「戦没者の遺骨収集」とは、今次の大戦(昭和12年7月7日以後における事変を含む。以下同じ。)により沖縄、東京都小笠原村硫黄島その他厚生労働省令で定める本邦の地域又は本邦以外の地域において死亡した我が国の戦没者(今次の大戦の結果、昭和20年9月2日以後本邦以外の地域において強制抑留された者で、当該強制抑留中に死亡したものを含む。以下同じ。)の遺骨であって、いまだ収容され、又は本邦に送還されていないものを収容し、本邦に送還し、及び当該戦没者の遺族に引き渡すこと等をいう。
第3条 国は、戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を総合的に策定し、及び確実に実施する責務を有する。
2 国は、戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を講ずるに当たっては、平成28年度から平成36年度までの間(第5条第1項において「集中実施期間」という。)を、戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を集中的に実施する期間とし、戦没者の遺骨収集を計画的かつ効果的に推進するよう必要な措置を講ずるものとする。
3 厚生労働大臣は、戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を実施するに当たっては、その円滑かつ確実な実施を図るため、外務大臣、防衛大臣その他の関係行政機関の長との連携協力を図るものとする。
第4条 政府は、戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
第5条 政府は、集中実施期間における戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を総合的かつ計画的に行うため、戦没者の遺骨収集の推進に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を策定しなければならない。
2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 戦没者の遺骨収集の推進に関する施策についての基本的な方針
二 戦没者の遺骨収集の推進に関し政府が総合的かつ計画的に実施すべき施策
三 前二号に掲げるもののほか、戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を総合的かつ計画的に行うために必要な事項
3 厚生労働大臣は、基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 厚生労働大臣は、基本計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ、外務大臣、防衛大臣その他の関係行政機関の長に協議しなければならない。
5 厚生労働大臣は、第3項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本計画を公表しなければならない。
6 前三項の規定は、基本計画の変更について準用する。
第6条 国は、戦没者の遺骨収集に必要な情報の収集、整理及び分析を推進するため、国内外の施設等において保管されている関係する文献の調査その他の情報の収集を行うために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。
第7条 国は、本邦以外の地域における戦没者の遺骨収集に必要な情報の収集及び戦没者の遺骨収集の円滑な実施を図るため、関係国の政府等と協議等を行い、その理解と協力を得るよう努めなければならない。
第8条 国は、今次の大戦において戦闘が行われた地域その他戦没者の遺骨収集が行われるべき地域について、その地域の状況に応じ、戦没者の遺骨収集を計画的かつ効果的に実施するものとする。
第9条 国は、戦没者の遺骨収集により収容された遺骨について、当該遺骨に係る戦没者の特定を進めるため、遺骨の鑑定及び遺留品の分析に関する体制の整備及び研究の推進その他の必要な措置を講ずるものとする。
第10条 厚生労働大臣は、戦没者の遺骨収集に関する活動を行うことを目的とする一般社団法人又は一般財団法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一個に限り、同条に規定する業務を行う者として指定することができる。
2 厚生労働大臣は、前項の規定による指定をしたときは、当該指定を受けた者(以下「指定法人」という。)の名称及び主たる事務所の所在地を公示しなければならない。
3 指定法人は、その名称又は主たる事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を厚生労働大臣に届け出なければならない。
4 厚生労働大臣は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る事項を公示しなければならない。
第11条 指定法人は、次に掲げる業務を行うものとする。
一 戦没者の遺骨収集のために必要な情報を収集すること。
二 戦没者の遺骨であって、いまだ収容され、又は本邦に送還されていないものを収容し、及び本邦に送還すること。
三 前二号の業務に附帯する業務を行うこと。
第12条 指定法人は、毎事業年度、厚生労働省令で定めるところにより、事業計画書及び収支予算書を作成し、厚生労働大臣に提出しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の事業計画書は、基本計画の内容に即して定めなければならない。
3 指定法人は、厚生労働省令で定めるところにより、毎事業年度終了後、事業報告書及び収支決算書を作成し、厚生労働大臣に提出しなければならない。
第13条 厚生労働大臣は、この法律の施行に必要な限度において、指定法人に対し、その業務若しくは財産に関し報告若しくは資料の提出をさせ、又は当該職員に、指定法人の事務所に立ち入り、業務若しくは財産の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
3 第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第14条 厚生労働大臣は、指定法人の業務の運営又は財産の状況に関し改善が必要であると認めるときは、指定法人に対し、その改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
第15条 厚生労働大臣は、指定法人が前条の規定による命令に違反したときは、その指定を取り消すことができる。
2 厚生労働大臣は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。
第16条 第13条第1項の規定による報告をせず、若しくは資料を提出せず、若しくは同項の報告若しくは資料の提出について虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出し、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者は、20万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務又は財産に関し、前項の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して同項の刑を科する。
1 この法律は、平成28年4月1日から施行する。