かっこ色付け
移動

有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律

平成14年法律第120号
最終改正:平成23年8月30日法律第105号
ツイート
シェア
印刷用画面
検索
条へ移動
全条文表示に戻る
(目的)

第1条 この法律は、有明海及び八代海等が、国民にとって貴重な自然環境及び水産資源の宝庫として、その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきものであることに鑑み、有明海及び八代海等の再生に関する基本方針を定めるとともに、有明海及び八代海等の海域の特性に応じた当該海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興に関し実施すべき施策に関する計画を策定し、その実施を促進する等特別の措置を講ずることにより、国民的資産である有明海及び八代海等を豊かな海として再生することを目的とする。


(定義)

第2条 この法律において「有明海」とは、次に掲げる直線及び陸岸によって囲まれた海面をいう。

 長崎県瀬詰崎から熊本県天神山に至る直線

 熊本県染岳から高松山三角点に至る直線

 熊本県天草上島恵比須鼻から大矢野岳に至る直線

 熊本県三角灯台から中神島を経て三角岳に至る直線

 この法律において「八代海」とは、次に掲げる直線及び陸岸によって囲まれた海面をいう。

 熊本県三角岳から中神島を経て三角灯台に至る直線

 熊本県大矢野岳から天草上島恵比須鼻に至る直線

 熊本県高松山三角点から染岳に至る直線

 熊本県天草下島台場ノ鼻から鹿児島県長島大崎に至る直線

 鹿児島県長島神崎鼻から鵜瀬鼻に至る直線

 この法律において「有明海及び八代海に隣接する海面」とは、次に掲げる海面をいう。

 橘湾(長崎県野母崎から樺島南端に至る直線、同地点から熊本県四季咲岬灯台に至る直線及び熊本県天神山から長崎県瀬詰崎に至る直線並びに陸岸によって囲まれた海面をいう。)

 熊本県天草市牛深町周辺の海面(熊本県天草下島魚貫崎から牛深大島灯台に至る直線、同地点から片島山頂に至る直線、同地点から築ノ島東端に至る直線、同地点から鹿児島県長島大崎に至る直線及び同地点から熊本県天草下島台場ノ鼻に至る直線並びに陸岸によって囲まれた海面をいう。)

 この法律において「有明海及び八代海等」とは、有明海及び八代海並びに有明海及び八代海に隣接する海面をいう。

 この法律において「関係県」とは、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県及び鹿児島県をいう。

 この法律において「指定地域」とは、関係県の市町村の区域のうち、有明海及び八代海等の海域の環境の保全若しくは改善又は当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興に関する施策を講ずべき地域で次条第1項の規定により指定されたものをいう。


(地域の指定)

第3条 指定地域は、主務大臣が、関係県の申請に基づき、関係行政機関の長に協議して指定するものとする。

 関係県は、前項の申請をしようとするときは、あらかじめ、関係市町村に協議しなければならない。

 主務大臣は、第1項の指定をしたときは、その旨及びその区域を公示しなければならない。

 前三項の規定は、指定地域の変更について準用する。


(基本方針)

第4条 主務大臣は、有明海及び八代海等の海域の特性に応じた当該海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興に関する施策を推進するため、有明海及び八代海等の再生に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。

 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 有明海及び八代海等の海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興に関する基本的な指針

 次条第1項の県計画の策定に関する基本的な事項

 主務大臣は、基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、関係県の意見を聴くとともに、関係行政機関の長に協議しなければならない。

 主務大臣は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するとともに、関係県に通知しなければならない。

 主務大臣は、情勢の推移により必要が生じたときは、基本方針を変更するものとする。

 第3項及び第4項の規定は、基本方針の変更について準用する。


(県計画)

第5条 関係県は、基本方針に基づき、当該関係県の区域内の指定地域について、有明海及び八代海等の海域の特性に応じた当該海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興に関し実施すべき施策に関する計画(以下「県計画」という。)を定めるものとする。

 県計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 有明海及び八代海等の海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興に関する方針

 有明海及び八代海等の海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興のための次に掲げる事項

 水質等の保全に関する事項

 干潟等の浄化機能の維持及び向上に関する事項

 河川における流況の調整及び土砂の適正な管理に関する事項

 河川、海岸、港湾及び漁港の整備に関する事項

 森林の機能の向上に関する事項

 漁場の生産力の増進に関する事項

 水産動植物の増殖及び養殖の推進に関する事項

 有害動植物の駆除に関する事項

 前号に掲げる事項に係る次に掲げる事業の実施に関する事項

 下水道、浄化槽その他排水処理施設の整備に関する事業

 海域の環境の保全及び改善に関する事業

 河川、海岸、港湾、漁港及び森林の整備に関する事業

 漁場の保全及び整備に関する事業

 漁業関連施設の整備に関する事業

 有明海及び八代海等の海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興のための調査研究に関する事項

 関係県は、県計画を定めようとするときは、あらかじめ、関係市町村から意見を聴かなければならない。

 関係県は、県計画を定めようとするときは、主務大臣に協議し、その同意を得なければならない。

 主務大臣は、前項の協議をするに当たっては、それぞれの県計画の調和が図られるよう配慮するものとする。

 主務大臣は、第4項の同意をしようとするときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。

 関係県は、県計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めるとともに、関係市町村に通知しなければならない。

 第3項から前項までの規定は、県計画の変更について準用する。


(事業の実施)

第6条 県計画に基づく事業は、当該事業に関する法律(これに基づく命令を含む。)の規定に従い、国、地方公共団体その他の者が実施するものとする。


(促進協議会)

第7条 主務大臣、関係行政機関の長及び関係県の知事(以下この条において「主務大臣等」という。)は、それぞれの県計画の調和を図りつつ、その実施を促進するために必要な協議を行うため、促進協議会を組織することができる。

 前項の協議を行うための会議(次項において「会議」という。)は、主務大臣等又はその指名する職員をもって構成する。

 会議において協議が調った事項については、主務大臣等は、その協議の結果を尊重しなければならない。

 第2項に定めるもののほか、促進協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、促進協議会が定める。

 第1項の協議を行う場合において必要と認められるときは、関係市町村及び学識経験のある者の意見を聴くものとする。


(国の補助の割合の特例)

第8条 県計画に基づいて平成14年度から平成33年度までの各年度において関係県が国から補助金の交付を受けて行う漁港漁場整備法(昭和25年法律第137号)第4条第1項に規定する漁港漁場整備事業(同項第2号に掲げるものに限る。)のうち、有明海及び八代海等の海域の環境の保全及び改善を図るために行う事業で政令で定めるもの(以下「特定事業」という。)に係る経費に対する国の補助の割合は、他の法令の規定にかかわらず、次条に定めるところにより算定するものとする。


第9条 特定事業に係る経費に対する国の補助の割合は、関係県ごとに当該特定事業に係る経費に対する通常の国の補助の割合に次の式により算定した数(小数点以下二位未満は、切り上げるものとする。第4項において「引上率」という。)を乗じて算定するものとする。

1+0.1×調整率

 前項の式において「調整率」とは、次の式により算定した数値をいう。

0.75+0.25×(0.46-当該県の財政力指数(財政力指数が0.46を超えるときは0.46)÷(0.46-すべての関係県のうち財政力指数が最低の関係県の財政力指数)

 前項の式において「財政力指数」とは、地方交付税法(昭和25年法律第211号)第14条の規定により算定した基準財政収入額を同法第11条の規定により算定した基準財政需要額で除して得た数値で当該年度前3年度内の各年度に係るものを合算したものの三分の一の数値をいう。

 農林水産大臣は、引上率を算定し、関係県に通知するものとする。


第10条 第8条の規定により特定事業に係る経費に対して国が通常の補助の割合を超えて補助することとなる額の交付に関し必要な事項は、政令で定める。


(地方債についての配慮)

第11条 地方公共団体が県計画を達成するために行う事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとする。


(資金の確保等)

第12条 国は、県計画に基づいて行う漁業の振興のための事業その他の事業の実施に関し、必要な資金の確保その他の措置を講ずるよう努めなければならない。


(下水道の整備等)

第13条 国及び地方公共団体は、指定地域において、下水道、浄化槽その他排水処理施設の整備その他有明海及び八代海等の海域の水質の保全のために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 関係県は、県計画に基づき、水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)第14条の8第1項の規定による生活排水対策重点地域の指定その他の生活排水対策の実施を推進しなければならない。


(漂流物の除去等)

第14条 国及び地方公共団体は、有明海及び八代海等の海域等において、漂流物の除去その他広域的な海域の環境の保全及び改善のために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。


(河川の流況の調整)

第15条 河川管理者(河川法(昭和39年法律第167号)第7条(同法第100条において準用する場合を含む。)に規定する河川管理者をいう。)及び同法第44条第1項に規定するダムを設置する者は、有明海及び八代海等の海域の環境の保全及び改善を図るため、ダムの貯留水を利用して、当該ダムの目的に支障のない範囲内において、河川の流況の調整に努めなければならない。


(森林の保全及び整備)

第16条 国及び地方公共団体は、有明海及び八代海等の海域における水産動植物の生育環境の保全及び改善を図るため、森林の保全及び整備に努めなければならない。


(水産動物の種苗の放流等)

第17条 国及び地方公共団体は、有明海及び八代海等の海域における水産動植物の増殖及び養殖の推進を図るため、水産動物の種苗の放流、養殖漁場の改善等の措置を講ずるよう努めなければならない。


(調査研究の実施及び体制の整備等)

第18条 国及び関係県は、有明海及び八代海等の海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興を図るため、次に掲げる調査を行うとともに、その結果を公表するものとする。

 干潟と有明海及び八代海等の海域の環境との関係に関する調査

 潮流、潮汐等と有明海及び八代海等の海域の環境との関係に関する調査

 有明海及び八代海等の海域に流入する水の汚濁負荷量と当該海域の環境との関係に関する調査

 有明海及び八代海等の海域に流入する河川の流況と当該海域の環境との関係に関する調査

 有明海及び八代海等の海域に流入する河川の流域における森林と当該海域の環境との関係に関する調査

 土砂の採取と有明海及び八代海等の海域の環境との関係に関する調査

 有明海及び八代海等における赤潮、貧酸素水塊等の発生機構に関する調査

 有明海及び八代海等の海域の環境と当該海域における水産資源との関係に関する調査

 前各号に掲げるもののほか、有明海及び八代海等の海域の環境並びに当該海域における水産資源に関する調査

 国及び関係県は、前項各号に掲げる調査の推進等を図るための漁業者等との連携を含めた総合的な調査研究の体制の整備、赤潮の防除技術の開発その他の有明海及び八代海等の海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等に係る研究開発の推進及びその成果の普及、研究者の養成等の措置並びに有明海及び八代海等の海域に流入する水の汚濁負荷量の総量の削減に資する措置を講ずるものとする。


(酸処理剤の適正な使用等)

第19条 有明海及び八代海等の海域において水産動植物の養殖の事業を営む者は、のりの品質の向上等のために使用する酸処理剤及び肥料の適正な使用等当該海域の環境の保全について適切な配慮をしなければならない。


(自然災害の発生の防止)

第20条 国及び地方公共団体は、自然災害の発生を防止するため、指定地域における河川、海岸、港湾、漁港、森林等の整備を推進するよう努めなければならない。


(赤潮等による漁業被害等に係る支援等)

第21条 国及び地方公共団体は、有明海及び八代海等の海域において赤潮等による漁業被害が発生した場合においては、その経営に影響を受ける水産業者その他の関係事業者に対し、必要な資金の確保又はその融通のあっせんに努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、代替となる養殖漁場等の施設の整備、赤潮の除去に係る措置の実施等に対する支援その他有明海及び八代海等の海域における赤潮等による漁業被害を回避するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。


(赤潮等による漁業被害者等の救済)

第22条 国は、有明海及び八代海等の海域において赤潮等により著しい漁業被害が発生した場合においては、当該漁業被害を受けた漁業者の救済について、当該漁業被害に係る損失の補填その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 国は、前項に規定する場合において、漁業者以外の関係事業者等の救済について、事業の再建に対する支援、雇用の機会の確保その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。


(知識の普及)

第23条 国及び地方公共団体は、有明海及び八代海等の海域の環境の保全及び改善を図るため、指定地域の住民等に対し、当該海域の環境の保全及び改善に関する知識の普及を図るよう努めなければならない。


(有明海・八代海等総合調査評価委員会)

第24条 環境省に、有明海・八代海等総合調査評価委員会(以下「委員会」という。)を置く。


(委員会の所掌事務等)

第25条 委員会は、次に掲げる事務をつかさどる。

 国及び関係県が第18条第1項の規定により行う総合的な調査の結果に基づいて有明海及び八代海等の再生に係る評価を行うこと。

 前号に規定する事項に関し、主務大臣等に意見を述べること。

 委員会は、その所掌事務を遂行するために必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができる。


(委員の任命)

第26条 委員は、環境の保全及び改善又は水産資源の回復等に関し十分な知識と経験を有する者のうちから、主務大臣と協議の上、環境大臣が任命する。


(政令への委任)

第27条 前三条に規定するもののほか、委員会に関し必要な事項は、政令で定める。


(主務大臣)

第28条 この法律における主務大臣は、総務大臣、文部科学大臣、農林水産大臣、経済産業大臣、国土交通大臣及び環境大臣とする。

附 則
(施行期日)

 この法律は、公布の日から施行する。

(適用)

 第8条から第10条までの規定は、平成14年度の予算に係る国の補助金から適用し、平成13年度までの予算に係る国の補助金で平成14年度以降に繰り越されたものについては、なお従前の例による。

(見直し)

 この法律は、この法律の施行の日から5年以内に、この法律の施行の状況及び第18条第1項の規定により行う総合的な調査の結果を踏まえ、必要な見直しを行うものとする。

附 則(平成19年5月30日法律第61号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から施行する。

附 則(平成22年5月10日法律第31号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第1条の規定(大気汚染防止法第14条第1項及び第3項並びに第16条の改正規定並びに同法第35条の改正規定(同条第1号及び第2号に係る部分を除く。)を除く。)、第2条中水質汚濁防止法の目次の改正規定、同法第2章の2中第14条の10を第14条の11とし、第14条の4から第14条の9までを一条ずつ繰り下げる改正規定、同法第2章中第14条の3の次に一条を加える改正規定及び同法第28条第1項の改正規定並びに附則第3条及び第9条の規定は、公布の日から起算して3月を経過した日から施行する。

附 則(平成23年8月12日法律第97号)
(施行期日)

 この法律は、公布の日から施行する。

(適用)

 この法律による改正後の有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律(以下「新法」という。)第8条に規定する特定事業のうち新法第2条第3項の有明海及び八代海に隣接する海面の海域に係るものについては、新法第8条から第10条までの規定は、平成23年度の予算に係る国の補助金から適用し、平成22年度までの予算に係る国の補助金で平成23年度以降に繰り越されたものについては、なお従前の例による。

(見直し等)

 新法第2条第4項の有明海及び八代海等の海域に隣接する海域において、新たに有明海又は八代海の海域の環境に起因する赤潮等による漁業被害が発生した場合においては、新法に規定する施策に係る海域の範囲について、速やかに見直しを行うものとする。

 前項に規定する場合においては、国及び地方公共団体は、同項の規定による見直しが行われるまでの間、当該赤潮等による漁業被害に関し、赤潮等による漁業被害等に係る支援、赤潮等による漁業被害者等の救済等について、新法の規定により講ぜられる措置と同様の措置を講ずるよう努めるものとする。

附 則(平成23年8月30日法律第105号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から施行する。


(政令への委任)

第82条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。