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武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律

平成15年法律第79号
最終改正:平成27年9月30日法律第76号
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第1章 総則

(目的)

第1条 この法律は、武力攻撃事態等(武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態をいう。以下同じ。)及び存立危機事態への対処について、基本理念、国、地方公共団体等の責務、国民の協力その他の基本となる事項を定めることにより、武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処のための態勢を整備し、もって我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資することを目的とする。


(定義)

第2条 この法律(第1号に掲げる用語にあっては、第4号及び第8号ハ(1)を除く。)において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 武力攻撃 我が国に対する外部からの武力攻撃をいう。

 武力攻撃事態 武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態をいう。

 武力攻撃予測事態 武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態をいう。

 存立危機事態 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態をいう。

 指定行政機関 次に掲げる機関で政令で定めるものをいう。

 内閣府、宮内庁並びに内閣府設置法(平成11年法律第89号)第49条第1項及び第2項に規定する機関並びに国家行政組織法(昭和23年法律第120号)第3条第2項に規定する機関

 内閣府設置法第37条及び第54条並びに宮内庁法(昭和22年法律第70号)第16条第1項並びに国家行政組織法第8条に規定する機関

 内閣府設置法第39条及び第55条並びに宮内庁法第16条第2項並びに国家行政組織法第8条の2に規定する機関

 内閣府設置法第40条及び第56条並びに国家行政組織法第8条の3に規定する機関

 指定地方行政機関 指定行政機関の地方支分部局(内閣府設置法第43条及び第57条(宮内庁法第18条第1項において準用する場合を含む。)並びに宮内庁法第17条第1項並びに国家行政組織法第9条の地方支分部局をいう。)その他の国の地方行政機関で、政令で定めるものをいう。

 指定公共機関 独立行政法人(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人をいう。)、日本銀行、日本赤十字社、日本放送協会その他の公共的機関及び電気、ガス、輸送、通信その他の公益的事業を営む法人で、政令で定めるものをいう。

 対処措置 第9条第1項の対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関が法律の規定に基づいて実施する次に掲げる措置をいう。

 武力攻撃事態等を終結させるためにその推移に応じて実施する次に掲げる措置

(1) 武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動

(2) (1)に掲げる自衛隊の行動、アメリカ合衆国の軍隊が実施する日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(以下「日米安保条約」という。)に従って武力攻撃を排除するために必要な行動及びその他の外国の軍隊が実施する自衛隊と協力して武力攻撃を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に行われるために実施する物品、施設又は役務の提供その他の措置

(3) (1)及び(2)に掲げるもののほか、外交上の措置その他の措置

 武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護するため、又は武力攻撃が国民生活及び国民経済に影響を及ぼす場合において当該影響が最小となるようにするために武力攻撃事態等の推移に応じて実施する次に掲げる措置

(1) 警報の発令、避難の指示、被災者の救助、施設及び設備の応急の復旧その他の措置

(2) 生活関連物資等の価格安定、配分その他の措置

 存立危機事態を終結させるためにその推移に応じて実施する次に掲げる措置

(1) 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃であって、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるもの(以下「存立危機武力攻撃」という。)を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動

(2) (1)に掲げる自衛隊の行動及び外国の軍隊が実施する自衛隊と協力して存立危機武力攻撃を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に行われるために実施する物品、施設又は役務の提供その他の措置

(3) (1)及び(2)に掲げるもののほか、外交上の措置その他の措置

 存立危機武力攻撃による深刻かつ重大な影響から国民の生命、身体及び財産を保護するため、又は存立危機武力攻撃が国民生活及び国民経済に影響を及ぼす場合において当該影響が最小となるようにするために存立危機事態の推移に応じて実施する公共的な施設の保安の確保、生活関連物資等の安定供給その他の措置


(武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処に関する基本理念)

第3条 武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処においては、国、地方公共団体及び指定公共機関が、国民の協力を得つつ、相互に連携協力し、万全の措置が講じられなければならない。

 武力攻撃予測事態においては、武力攻撃の発生が回避されるようにしなければならない。

 武力攻撃事態においては、武力攻撃の発生に備えるとともに、武力攻撃が発生した場合には、これを排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。ただし、武力攻撃が発生した場合においてこれを排除するに当たっては、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。

 存立危機事態においては、存立危機武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。ただし、存立危機武力攻撃を排除するに当たっては、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。

 武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処においては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合にあっても、その制限は当該武力攻撃事態等及び存立危機事態に対処するため必要最小限のものに限られ、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。この場合において、日本国憲法第14条、第18条、第19条、第21条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。

 武力攻撃事態等及び存立危機事態においては、当該武力攻撃事態等及び存立危機事態並びにこれらへの対処に関する状況について、適時に、かつ、適切な方法で国民に明らかにされるようにしなければならない。

 武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処においては、日米安保条約に基づいてアメリカ合衆国と緊密に協力するほか、関係する外国との協力を緊密にしつつ、国際連合を始めとする国際社会の理解及び協調的行動が得られるようにしなければならない。


(国の責務)

第4条 国は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため、武力攻撃事態等及び存立危機事態において、我が国を防衛し、国土並びに国民の生命、身体及び財産を保護する固有の使命を有することから、前条の基本理念にのっとり、組織及び機能の全てを挙げて、武力攻撃事態等及び存立危機事態に対処するとともに、国全体として万全の措置が講じられるようにする責務を有する。

 国は、前項の責務を果たすため、武力攻撃事態等及び存立危機事態への円滑かつ効果的な対処が可能となるよう、関係機関が行うこれらの事態への対処についての訓練その他の関係機関相互の緊密な連携協力の確保に資する施策を実施するものとする。


(地方公共団体の責務)

第5条 地方公共団体は、当該地方公共団体の地域並びに当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産を保護する使命を有することにかんがみ、国及び他の地方公共団体その他の機関と相互に協力し、武力攻撃事態等への対処に関し、必要な措置を実施する責務を有する。


(指定公共機関の責務)

第6条 指定公共機関は、国及び地方公共団体その他の機関と相互に協力し、武力攻撃事態等への対処に関し、その業務について、必要な措置を実施する責務を有する。


(国と地方公共団体との役割分担)

第7条 武力攻撃事態等への対処の性格にかんがみ、国においては武力攻撃事態等への対処に関する主要な役割を担い、地方公共団体においては武力攻撃事態等における当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産の保護に関して、国の方針に基づく措置の実施その他適切な役割を担うことを基本とするものとする。


(国民の協力)

第8条 国民は、国及び国民の安全を確保することの重要性に鑑み、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関が武力攻撃事態等において対処措置を実施する際は、必要な協力をするよう努めるものとする。

第2章 武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処のための手続等

(対処基本方針)

第9条 政府は、武力攻撃事態等又は存立危機事態に至ったときは、武力攻撃事態等又は存立危機事態への対処に関する基本的な方針(以下「対処基本方針」という。)を定めるものとする。

 対処基本方針に定める事項は、次のとおりとする。

 対処すべき事態に関する次に掲げる事項

 事態の経緯、事態が武力攻撃事態であること、武力攻撃予測事態であること又は存立危機事態であることの認定及び当該認定の前提となった事実

 事態が武力攻撃事態又は存立危機事態であると認定する場合にあっては、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がなく、事態に対処するため武力の行使が必要であると認められる理由

 当該武力攻撃事態等又は存立危機事態への対処に関する全般的な方針

 対処措置に関する重要事項

 武力攻撃事態又は存立危機事態においては、対処基本方針には、前項第3号に定める事項として、次に掲げる内閣総理大臣の承認を行う場合はその旨を記載しなければならない。

 防衛大臣が自衛隊法(昭和29年法律第165号)第70条第1項又は第8項の規定に基づき発する同条第1項第1号に定める防衛招集命令書による防衛招集命令に関して同項又は同条第8項の規定により内閣総理大臣が行う承認

 防衛大臣が自衛隊法第75条の4第1項又は第6項の規定に基づき発する同条第1項第1号に定める防衛招集命令書による防衛招集命令に関して同項又は同条第6項の規定により内閣総理大臣が行う承認

 防衛大臣が自衛隊法第77条の規定に基づき発する防衛出動待機命令に関して同条の規定により内閣総理大臣が行う承認

 防衛大臣が自衛隊法第77条の2の規定に基づき命ずる防御施設構築の措置に関して同条の規定により内閣総理大臣が行う承認

 防衛大臣が武力攻撃事態等及び存立危機事態におけるアメリカ合衆国等の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律(平成16年法律第113号)第10条第3項の規定に基づき実施を命ずる行動関連措置としての役務の提供に関して同項の規定により内閣総理大臣が行う承認

 防衛大臣が武力攻撃事態及び存立危機事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律(平成16年法律第116号)第4条の規定に基づき命ずる同法第4章の規定による措置に関して同条の規定により内閣総理大臣が行う承認

 武力攻撃事態又は存立危機事態においては、対処基本方針には、前項に定めるもののほか、第2項第3号に定める事項として、第1号に掲げる内閣総理大臣が行う国会の承認(衆議院が解散されているときは、日本国憲法第54条に規定する緊急集会による参議院の承認。以下この条において同じ。)の求めを行う場合にあってはその旨を、内閣総理大臣が第2号に掲げる防衛出動を命ずる場合にあってはその旨を記載しなければならない。ただし、同号に掲げる防衛出動を命ずる旨の記載は、特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合でなければ、することができない。

 内閣総理大臣が防衛出動を命ずることについての自衛隊法第76条第1項の規定に基づく国会の承認の求め

 自衛隊法第76条第1項の規定に基づき内閣総理大臣が命ずる防衛出動

 武力攻撃予測事態においては、対処基本方針には、第2項第3号に定める事項として、次に掲げる内閣総理大臣の承認を行う場合はその旨を記載しなければならない。

 防衛大臣が自衛隊法第70条第1項又は第8項の規定に基づき発する同条第1項第1号に定める防衛招集命令書による防衛招集命令(事態が緊迫し、同法第76条第1項の規定による防衛出動命令が発せられることが予測される場合に係るものに限る。)に関して同法第70条第1項又は第8項の規定により内閣総理大臣が行う承認

 防衛大臣が自衛隊法第75条の4第1項又は第6項の規定に基づき発する同条第1項第1号に定める防衛招集命令書による防衛招集命令(事態が緊迫し、同法第76条第1項の規定による防衛出動命令が発せられることが予測される場合に係るものに限る。)に関して同法第75条の4第1項又は第6項の規定により内閣総理大臣が行う承認

 防衛大臣が自衛隊法第77条の規定に基づき発する防衛出動待機命令に関して同条の規定により内閣総理大臣が行う承認

 防衛大臣が自衛隊法第77条の2の規定に基づき命ずる防御施設構築の措置に関して同条の規定により内閣総理大臣が行う承認

 防衛大臣が武力攻撃事態等及び存立危機事態におけるアメリカ合衆国等の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律第10条第3項の規定に基づき実施を命ずる行動関連措置としての役務の提供に関して同項の規定により内閣総理大臣が行う承認

 内閣総理大臣は、対処基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

 内閣総理大臣は、前項の閣議の決定があったときは、直ちに、対処基本方針(第4項第1号に規定する国会の承認の求めに関する部分を除く。)につき、国会の承認を求めなければならない。

 内閣総理大臣は、第6項の閣議の決定があったときは、直ちに、対処基本方針を公示してその周知を図らなければならない。

 内閣総理大臣は、第7項の規定に基づく対処基本方針の承認があったときは、直ちに、その旨を公示しなければならない。

10 第4項第1号に規定する防衛出動を命ずることについての承認の求めに係る国会の承認が得られたときは、対処基本方針を変更して、これに当該承認に係る防衛出動を命ずる旨を記載するものとする。

11 第7項の規定に基づく対処基本方針の承認の求めに対し、不承認の議決があったときは、当該議決に係る対処措置は、速やかに、終了されなければならない。この場合において、内閣総理大臣は、第4項第2号に規定する防衛出動を命じた自衛隊については、直ちに撤収を命じなければならない。

12 内閣総理大臣は、対処措置を実施するに当たり、対処基本方針に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する。

13 第6項から第9項まで及び第11項の規定は、対処基本方針の変更について準用する。ただし、第10項の規定に基づく変更及び対処措置を構成する措置の終了を内容とする変更については、第7項、第9項及び第11項の規定は、この限りでない。

14 内閣総理大臣は、対処措置を実施する必要がなくなったと認めるとき又は国会が対処措置を終了すべきことを議決したときは、対処基本方針の廃止につき、閣議の決定を求めなければならない。

15 内閣総理大臣は、前項の閣議の決定があったときは、速やかに、対処基本方針が廃止された旨及び対処基本方針に定める対処措置の結果を国会に報告するとともに、これを公示しなければならない。


(対策本部の設置)

第10条 内閣総理大臣は、対処基本方針が定められたときは、当該対処基本方針に係る対処措置の実施を推進するため、内閣法(昭和22年法律第5号)第12条第4項の規定にかかわらず、閣議にかけて、臨時に内閣に事態対策本部(以下「対策本部」という。)を設置するものとする。

 内閣総理大臣は、対策本部を置いたときは、当該対策本部の名称並びに設置の場所及び期間を国会に報告するとともに、これを公示しなければならない。


(対策本部の組織)

第11条 対策本部の長は、事態対策本部長(以下「対策本部長」という。)とし、内閣総理大臣(内閣総理大臣に事故があるときは、そのあらかじめ指名する国務大臣)をもって充てる。

 対策本部長は、対策本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

 対策本部に、事態対策副本部長(以下「対策副本部長」という。)、事態対策本部員(以下「対策本部員」という。)その他の職員を置く。

 対策副本部長は、国務大臣をもって充てる。

 対策副本部長は、対策本部長を助け、対策本部長に事故があるときは、その職務を代理する。対策副本部長が2人以上置かれている場合にあっては、あらかじめ対策本部長が定めた順序で、その職務を代理する。

 対策本部員は、対策本部長及び対策副本部長以外のすべての国務大臣をもって充てる。この場合において、国務大臣が不在のときは、そのあらかじめ指名する副大臣(内閣官房副長官を含む。)がその職務を代行することができる。

 対策副本部長及び対策本部員以外の対策本部の職員は、内閣官房の職員、指定行政機関の長(国務大臣を除く。)その他の職員又は関係する指定地方行政機関の長その他の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。


(対策本部の所掌事務)

第12条 対策本部は、次に掲げる事務をつかさどる。

 指定行政機関、地方公共団体及び指定公共機関が実施する対処措置に関する対処基本方針に基づく総合的な推進に関すること。

 前号に掲げるもののほか、法令の規定によりその権限に属する事務


(指定行政機関の長の権限の委任)

第13条 指定行政機関の長(当該指定行政機関が内閣府設置法第49条第1項若しくは第2項若しくは国家行政組織法第3条第2項の委員会若しくは第2条第5号ロに掲げる機関又は同号ニに掲げる機関のうち合議制のものである場合にあっては、当該指定行政機関。次項において同じ。)は、対策本部が設置されたときは、対処措置を実施するため必要な権限の全部又は一部を当該対策本部の職員である当該指定行政機関の職員又は当該指定地方行政機関の長若しくはその職員に委任することができる。

 指定行政機関の長は、前項の規定による委任をしたときは、直ちに、その旨を公示しなければならない。


(対策本部長の権限)

第14条 対策本部長は、対処措置を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、対処基本方針に基づき、指定行政機関の長及び関係する指定地方行政機関の長並びに前条の規定により権限を委任された当該指定行政機関の職員及び当該指定地方行政機関の職員、関係する地方公共団体の長その他の執行機関並びに関係する指定公共機関に対し、指定行政機関、関係する地方公共団体及び関係する指定公共機関が実施する対処措置に関する総合調整を行うことができる。

 前項の場合において、当該地方公共団体の長その他の執行機関及び指定公共機関(次条及び第16条において「地方公共団体の長等」という。)は、当該地方公共団体又は指定公共機関が実施する対処措置に関して対策本部長が行う総合調整に関し、対策本部長に対して意見を申し出ることができる。


(内閣総理大臣の権限)

第15条 内閣総理大臣は、国民の生命、身体若しくは財産の保護又は武力攻撃の排除に支障があり、特に必要があると認める場合であって、前条第1項の総合調整に基づく所要の対処措置が実施されないときは、対策本部長の求めに応じ、別に法律で定めるところにより、関係する地方公共団体の長等に対し、当該対処措置を実施すべきことを指示することができる。

 内閣総理大臣は、次に掲げる場合において、対策本部長の求めに応じ、別に法律で定めるところにより、関係する地方公共団体の長等に通知した上で、自ら又は当該対処措置に係る事務を所掌する大臣を指揮し、当該地方公共団体又は指定公共機関が実施すべき当該対処措置を実施し、又は実施させることができる。

 前項の指示に基づく所要の対処措置が実施されないとき。

 国民の生命、身体若しくは財産の保護又は武力攻撃の排除に支障があり、特に必要があると認める場合であって、事態に照らし緊急を要すると認めるとき。


(損失に関する財政上の措置)

第16条 政府は、第14条第1項又は前条第1項の規定により、対処措置の実施に関し、関係する地方公共団体の長等に対する総合調整又は指示が行われた場合において、その総合調整又は指示に基づく措置の実施により当該地方公共団体又は指定公共機関が損失を受けたときは、その損失に関し、必要な財政上の措置を講ずるものとする。


(安全の確保)

第17条 政府は、地方公共団体及び指定公共機関が実施する対処措置について、その内容に応じ、安全の確保に配慮しなければならない。


(国際連合安全保障理事会への報告)

第18条 政府は、武力攻撃又は存立危機武力攻撃の排除に当たって我が国が講じた措置について、国際連合憲章第51条(武力攻撃の排除に当たって我が国が講じた措置にあっては、同条及び日米安保条約第5条第2項)の規定に従って、直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。


(対策本部の廃止)

第19条 対策本部は、対処基本方針が廃止されたときに、廃止されるものとする。

 内閣総理大臣は、対策本部が廃止されたときは、直ちに、その旨を公示しなければならない。


(主任の大臣)

第20条 対策本部に係る事項については、内閣法にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。

第3章 緊急対処事態その他の緊急事態への対処のための措置

(その他の緊急事態対処のための措置)

第21条 政府は、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保を図るため、次条から第24条までに定めるもののほか、武力攻撃事態等及び存立危機事態以外の国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態に的確かつ迅速に対処するものとする。

 政府は、前項の目的を達成するため、武装した不審船の出現、大規模なテロリズムの発生等の我が国を取り巻く諸情勢の変化を踏まえ、次に掲げる措置その他の必要な施策を速やかに講ずるものとする。

 情勢の集約並びに事態の分析及び評価を行うための態勢の充実

 各種の事態に応じた対処方針の策定の準備

 警察、海上保安庁等と自衛隊の連携の強化


(緊急対処事態対処方針)

第22条 政府は、緊急対処事態(武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態又は当該行為が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態(後日対処基本方針において武力攻撃事態であることの認定が行われることとなる事態を含む。)で、国家として緊急に対処することが必要なものをいう。以下同じ。)に至ったときは、緊急対処事態に関する対処方針(以下「緊急対処事態対処方針」という。)を定めるものとする。

 緊急対処事態対処方針に定める事項は、次のとおりとする。

 緊急対処事態であることの認定及び当該認定の前提となった事実

 当該緊急対処事態への対処に関する全般的な方針

 緊急対処措置に関する重要事項

 前項第3号の緊急対処措置とは、緊急対処事態対処方針が定められてから廃止されるまでの間に、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関が法律の規定に基づいて実施する次に掲げる措置をいう。

 緊急対処事態を終結させるためにその推移に応じて実施する緊急対処事態における攻撃の予防、鎮圧その他の措置

 緊急対処事態における攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護するため、又は緊急対処事態における攻撃が国民生活及び国民経済に影響を及ぼす場合において当該影響が最小となるようにするために緊急対処事態の推移に応じて実施する警報の発令、避難の指示、被災者の救助、施設及び設備の応急の復旧その他の措置

 内閣総理大臣は、緊急対処事態対処方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

 内閣総理大臣は、前項の閣議の決定があったときは、当該決定があった日から20日以内に国会に付議して、緊急対処事態対処方針につき、国会の承認を求めなければならない。ただし、国会が閉会中の場合又は衆議院が解散されている場合には、その後最初に召集される国会において、速やかに、その承認を求めなければならない。

 内閣総理大臣は、第4項の閣議の決定があったときは、直ちに、緊急対処事態対処方針を公示してその周知を図らなければならない。

 内閣総理大臣は、第5項の規定に基づく緊急対処事態対処方針の承認があったときは、直ちに、その旨を公示しなければならない。

 第5項の規定に基づく緊急対処事態対処方針の承認の求めに対し、不承認の議決があったときは、当該議決に係る緊急対処措置は、速やかに、終了されなければならない。

 内閣総理大臣は、緊急対処措置を実施するに当たり、緊急対処事態対処方針に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する。

10 第4項から第8項までの規定は、緊急対処事態対処方針の変更について準用する。ただし、緊急対処措置を構成する措置の終了を内容とする変更については、第5項、第7項及び第8項の規定は、この限りでない。

11 内閣総理大臣は、緊急対処措置を実施する必要がなくなったと認めるとき又は国会が緊急対処措置を終了すべきことを議決したときは、緊急対処事態対処方針の廃止につき、閣議の決定を求めなければならない。

12 内閣総理大臣は、前項の閣議の決定があったときは、速やかに、緊急対処事態対処方針が廃止された旨及び緊急対処事態対処方針に定める緊急対処措置の結果を国会に報告するとともに、これを公示しなければならない。


(緊急対処事態対策本部の設置)

第23条 内閣総理大臣は、緊急対処事態対処方針が定められたときは、当該緊急対処事態対処方針に係る緊急対処措置の実施を推進するため、内閣法第12条第4項の規定にかかわらず、閣議にかけて、臨時に内閣に緊急対処事態対策本部を設置するものとする。

 内閣総理大臣は、緊急対処事態対策本部を置いたときは、当該緊急対処事態対策本部の名称並びに設置の場所及び期間を国会に報告するとともに、これを公示しなければならない。


(準用)

第24条 第3条(第2項、第3項ただし書、第4項及び第7項を除く。)、第4条から第8条まで、第11条から第13条まで、第17条、第19条及び第20条の規定は、緊急対処事態及び緊急対処事態対策本部について準用する。この場合において、第3条第3項中「、武力攻撃」とあるのは「、緊急対処事態における攻撃」と、第4条第1項中「我が国を防衛し」とあるのは「公共の安全と秩序を維持し」と、第8条、第13条第1項及び第17条中「対処措置」とあるのは「緊急対処措置」と、第12条第1号中「対処措置に関する対処基本方針」とあるのは「緊急対処措置に関する緊急対処事態対処方針」と、第19条第1項中「対処基本方針」とあるのは「緊急対処事態対処方針」と読み替えるものとする。

附 則

 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第14条から第16条までの規定は、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成16年法律第112号)の施行の日から施行する。

 政府は、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態へのより的確かつ迅速な対処に資する組織の在り方について検討を行うものとする。

附 則(平成16年6月18日法律第112号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

附 則(平成16年6月18日法律第113号)
(施行期日)

第1条 この法律は、日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の効力発生の日から施行する。

附 則(平成16年6月18日法律第116号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

附 則(平成18年12月22日法律第118号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

附 則(平成27年9月30日法律第76号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。