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警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律

平成24年法律第34号
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(目的)

第1条 この法律は、警察等(警察及び海上保安庁をいう。以下同じ。)が取り扱う死体について、調査、検査、解剖その他死因又は身元を明らかにするための措置に関し必要な事項を定めることにより、死因が災害、事故、犯罪その他市民生活に危害を及ぼすものであることが明らかとなった場合にその被害の拡大及び再発の防止その他適切な措置の実施に寄与するとともに、遺族等の不安の緩和又は解消及び公衆衛生の向上に資し、もって市民生活の安全と平穏を確保することを目的とする。


(礼意の保持)

第2条 警察官は、死体の取扱いに当たっては、礼意を失わないように注意しなければならない。


(遺族等への配慮)

第3条 警察官は、死体の取扱いに当たっては、遺族等の心身の状況、その置かれている環境等について適切な配慮をしなければならない。


(死体発見時の調査等)

第4条 警察官は、その職務に関して、死体を発見し、又は発見した旨の通報を受けた場合には、速やかに当該死体を取り扱うことが適当と認められる警察署の警察署長にその旨を報告しなければならない。

 警察署長は、前項の規定による報告又は死体に関する法令に基づく届出に係る死体(犯罪行為により死亡したと認められる死体又は変死体(変死者又は変死の疑いがある死体をいう。次条第3項において同じ。)を除く。次項において同じ。)について、その死因及び身元を明らかにするため、外表の調査、死体の発見された場所の調査、関係者に対する質問等の必要な調査をしなければならない。

 警察署長は、前項の規定による調査を実施するに当たっては、医師又は歯科医師に対し、立会い、死体の歯牙の調査その他必要な協力を求めることができる。


(検査)

第5条 警察署長は、前条第1項の規定による報告又は死体に関する法令に基づく届出に係る死体(犯罪捜査の手続が行われる死体を除く。以下「取扱死体」という。)について、その死因を明らかにするために体内の状況を調査する必要があると認めるときは、その必要な限度において、体内から体液を採取して行う出血状況の確認、体液又は尿を採取して行う薬物又は毒物に係る検査、死亡時画像診断(磁気共鳴画像診断装置その他の画像による診断を行うための装置を用いて、死体の内部を撮影して死亡の原因を診断することをいう。第13条において同じ。)その他の政令で定める検査を実施することができる。

 前項の規定による検査は、医師に行わせるものとする。ただし、専門的知識及び技能を要しない検査であって政令で定めるものについては、警察官に行わせることができる。

 第1項の場合において、取扱死体が変死体であるときは、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第229条の規定による検視があった後でなければ、同項の規定による検査を実施することができない。


(解剖)

第6条 警察署長は、取扱死体について、第3項に規定する法人又は機関に所属する医師その他法医学に関する専門的な知識経験を有する者の意見を聴き、死因を明らかにするため特に必要があると認めるときは、解剖を実施することができる。この場合において、当該解剖は、医師に行わせるものとする。

 警察署長は、前項の規定により解剖を実施するに当たっては、あらかじめ、遺族に対して解剖が必要である旨を説明しなければならない。ただし、遺族がないとき、遺族の所在が不明であるとき又は遺族への説明を終えてから解剖するのではその目的がほとんど達せられないことが明らかであるときは、この限りでない。

 警察署長は、国立大学法人法(平成15年法律第112号)第2条第1項に規定する国立大学法人、地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第68条第1項に規定する公立大学法人、私立学校法(昭和24年法律第270号)第3条に規定する学校法人その他の法人又は国若しくは地方公共団体の機関であって、国家公安委員会が厚生労働大臣と協議して定める基準に該当すると都道府県公安委員会が認めたものに、第1項の規定による解剖の実施を委託することができる。

 前条第3項の規定は、第1項の規定により解剖を実施する場合について準用する。


(守秘義務等)

第7条 前条第3項の規定により解剖の実施の委託を受けた法人又は機関の役員若しくは職員又はこれらの職にあった者であって、当該解剖の実施に関する事務に従事したものは、当該事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

 前項の規定は、同項に規定する者が、同項に規定する事務によって得られた医学的知見を公衆衛生の向上又は医学の教育若しくは研究のために活用することを妨げるものではない。


(身元を明らかにするための措置)

第8条 警察署長は、取扱死体について、その身元を明らかにするため必要があると認めるときは、その必要な限度において、血液、歯牙、骨等の当該取扱死体の組織の一部を採取し、又は当該取扱死体から人の体内に植え込む方法で用いられる医療機器を摘出するために当該取扱死体を切開することができる。

 前項の規定による身元を明らかにするための措置は、医師又は歯科医師に行わせるものとする。ただし、血液の採取、爪の切除その他組織の採取の程度が軽微な措置であって政令で定めるものについては、警察官に行わせることができる。

 第5条第3項の規定は、第1項の規定による身元を明らかにするための措置について準用する。


(関係行政機関への通報)

第9条 警察署長は、第4条第2項、第5条第1項又は第6条第1項の規定による措置の結果明らかになった死因が、その後同種の被害を発生させるおそれのあるものである場合において、必要があると認めるときは、その旨を関係行政機関に通報するものとする。


(死体の引渡し)

第10条 警察署長は、死因を明らかにするために必要な措置がとられた取扱死体について、その身元が明らかになったときは、速やかに、遺族その他当該取扱死体を引き渡すことが適当と認められる者に対し、その死因その他参考となるべき事項の説明を行うとともに、着衣及び所持品と共に当該取扱死体を引き渡さなければならない。ただし、当該者に引き渡すことができないときは、死亡地の市町村長(特別区の区長を含む。次項において同じ。)に引き渡すものとする。

 警察署長は、死因を明らかにするために必要な措置がとられた取扱死体について、その身元を明らかにすることができないと認めるときは、遅滞なく、着衣及び所持品と共に当該取扱死体をその所在地の市町村長に引き渡すものとする。


(国家公安委員会規則への委任)

第11条 第2条から前条までに定めるもののほか、警察が取り扱う死体の死因又は身元を明らかにするための措置に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。


(準用)

第12条 第2条から前条までの規定は、海上保安庁が死体を取り扱う場合について準用する。この場合において、これらの規定中「警察官」とあるのは「海上保安官又は海上保安官補」と、第4条第1項中「警察署の警察署長」とあるのは「海上保安部長等(政令で定める管区海上保安本部の事務所の長をいう。以下同じ。)」と、同条第2項及び第3項、第5条第1項、第6条第1項から第3項まで、第8条第1項、第9条並びに第10条中「警察署長」とあるのは「海上保安部長等」と、前条中「警察」とあるのは「海上保安庁」と、「国家公安委員会規則」とあるのは「国土交通省令」と読み替えるほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。


(人材の育成等)

第13条 政府は、警察等が取り扱う死体の死因又は身元を明らかにするための措置が正確かつ適切に遂行されるよう、当該措置に係る業務に従事する警察官、海上保安官、海上保安官補、医師、歯科医師等の人材の育成及び資質の向上、大学における法医学に係る教育及び研究の充実、死体の検案及び解剖並びに死体の科学調査(死因又は身元を明らかにするため死体に対して行う薬物及び毒物に係る検査、死亡時画像診断、遺伝子構造の検査、歯牙の調査その他の科学的な調査をいう。)の実施体制の充実その他必要な体制の整備を図るものとする。


(財政上の措置)

第14条 政府は、警察等が取り扱う死体の死因又は身元を明らかにするための措置が円滑に実施されるようにするため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。


(罰則)

第15条 第7条第1項(第12条において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

附 則
(施行期日)

第1条 この法律は、平成25年4月1日から施行する。