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国際海上物品運送法

昭和32年法律第172号
最終改正:平成30年5月25日法律第29号
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(適用範囲)

第1条 この法律(第16条を除く。)の規定は船舶による物品運送で船積港又は陸揚港が本邦外にあるものに、同条の規定は運送人及びその被用者の不法行為による損害賠償の責任に適用する。


(定義)

第2条 この法律において「船舶」とは、商法(明治32年法律第48号)第684条に規定する船舶をいう。

 この法律において「運送人」とは、前条の運送を引き受ける者をいう。

 この法律において「荷送人」とは、前条の運送を委託する者をいう。

 この法律において「一計算単位」とは、国際通貨基金協定第3条第1項に規定する特別引出権による一特別引出権に相当する金額をいう。


(運送品に関する注意義務)

第3条 運送人は、自己又はその使用する者が運送品の受取、船積、積付、運送、保管、荷揚及び引渡につき注意を怠つたことにより生じた運送品の滅失、損傷又は延着について、損害賠償の責を負う。

 前項の規定は、船長、海員、水先人その他運送人の使用する者の航行若しくは船舶の取扱に関する行為又は船舶における火災(運送人の故意又は過失に基くものを除く。)により生じた損害には、適用しない。


第4条 運送人は、前条の注意が尽されたことを証明しなければ、同条の責を免かれることができない。

 運送人は、次の事実があつたこと及び運送品に関する損害がその事実により通常生ずべきものであることを証明したときは、前項の規定にかかわらず、前条の責を免かれる。ただし、同条の注意が尽されたならばその損害を避けることができたにかかわらず、その注意が尽されなかつたことの証明があつたときは、この限りでない。

 海上その他可航水域に特有の危険

 天災

 戦争、暴動又は内乱

 海賊行為その他これに準ずる行為

 裁判上の差押、検疫上の制限その他公権力による処分

 荷送人若しくは運送品の所有者又はその使用する者の行為

 同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他の争議行為

 海上における人命若しくは財産の救助行為又はそのためにする離路若しくはその他の正当な理由に基く離路

 運送品の特殊な性質又は隠れた欠陥

 運送品の荷造又は記号の表示の不完全

十一 起重機その他これに準ずる施設の隠れた欠陥

 前項の規定は、商法第760条の規定の適用を妨げない。


(航海に堪える能力に関する注意義務)

第5条 運送人は、発航の当時次に掲げる事項を欠いたことにより生じた運送品の滅失、損傷又は延着について、損害賠償の責任を負う。ただし、運送人が自己及びその使用する者がその当時当該事項について注意を怠らなかつたことを証明したときは、この限りでない。

 船舶を航海に堪える状態に置くこと。

 船員の乗組み、船舶の艤装及び需品の補給を適切に行うこと。

 船倉、冷蔵室その他運送品を積み込む場所を運送品の受入れ、運送及び保存に適する状態に置くこと。


(危険物の処分)

第6条 引火性、爆発性その他の危険性を有する運送品で、船積みの際運送人、船長及び運送人の代理人がその性質を知らなかつたものは、いつでも、陸揚げし、破壊し、又は無害にすることができる。

 前項の規定は、運送人の荷送人に対する損害賠償の請求を妨げない。

 引火性、爆発性その他の危険性を有する運送品で、船積みの際運送人、船長又は運送人の代理人がその性質を知つていたものは、船舶又は積荷に危害を及ぼすおそれが生じたときは、陸揚げし、破壊し、又は無害にすることができる。

 運送人は、第1項又は前項の処分により当該運送品につき生じた損害については、賠償の責任を負わない。


(荷受人等の通知義務)

第7条 荷受人又は船荷証券所持人は、運送品の一部滅失又は損傷があつたときは、受取の際運送人に対しその滅失又は損傷の概況につき書面による通知を発しなければならない。ただし、その滅失又は損傷が直ちに発見することができないものであるときは、受取の日から3日以内にその通知を発すれば足りる。

 前項の通知がなかつたときは、運送品は、滅失及び損傷がなく引き渡されたものと推定する。

 前二項の規定は、運送品の状態が引渡しの際当事者の立会いによつて確認された場合には、適用しない。

 運送品につき滅失又は損傷が生じている疑いがあるときは、運送人と荷受人又は船荷証券所持人とは、相互に、運送品の点検のため必要な便宜を与えなければならない。


(損害賠償の額)

第8条 運送品に関する損害賠償の額は、荷揚げされるべき地及び時における運送品の市場価格(取引所の相場がある物品については、その相場)によつて定める。ただし、市場価格がないときは、その地及び時における同種類で同一の品質の物品の正常な価格によつて定める。

 商法第576条第2項の規定は、前項の場合に準用する。


(責任の限度)

第9条 運送品に関する運送人の責任は、次に掲げる金額のうちいずれか多い金額を限度とする。

 滅失、損傷又は延着に係る運送品の包又は単位の数に一計算単位の六百六十六・六七倍を乗じて得た金額

 前号の運送品の総重量について1キログラムにつき一計算単位の二倍を乗じて得た金額

 前項各号の一計算単位は、運送人が運送品に関する損害を賠償する日において公表されている最終のものとする。

 運送品がコンテナー、パレットその他これらに類する輸送用器具(以下この項において「コンテナー等」という。)を用いて運送される場合における第1項の規定の適用については、その運送品の包若しくは個品の数又は容積若しくは重量が船荷証券又は海上運送状に記載されているときを除き、コンテナー等の数を包又は単位の数とみなす。

 運送品に関する運送人の被用者の責任が、第16条第3項の規定により、同条第1項において準用する前三項の規定により運送人の責任が軽減される限度で軽減される場合において、運送人の被用者が損害を賠償したときは、前三項の規定による運送品に関する運送人の責任は、運送人の被用者が賠償した金額の限度において、更に軽減される。

 前各項の規定は、運送品の種類及び価額が、運送の委託の際荷送人により通告され、かつ、船荷証券が交付されるときは、船荷証券に記載されている場合には、適用しない。

 前項の場合において、荷送人が実価を著しく超える価額を故意に通告したときは、運送人は、運送品に関する損害については、賠償の責任を負わない。

 第5項の場合において、荷送人が実価より著しく低い価額を故意に通告したときは、その価額は、運送品に関する損害については、運送品の価額とみなす。

 前二項の規定は、運送人に悪意があつた場合には、適用しない。


(損害賠償の額及び責任の限度の特例)

第10条 運送人は、運送品に関する損害が、自己の故意により、又は損害の発生のおそれがあることを認識しながらした自己の無謀な行為により生じたものであるときは、第8条及び前条第1項から第4項までの規定にかかわらず、一切の損害を賠償する責任を負う。


(特約禁止)

第11条 第3条から第5条まで若しくは第7条から前条まで又は商法第585条、第759条若しくは第760条の規定に反する特約で、荷送人、荷受人又は船荷証券所持人に不利益なものは、無効とする。運送品の保険契約によつて生ずる権利を運送人に譲渡する契約その他これに類似する契約も、同様とする。

 前項の規定は、運送人に不利益な特約をすることを妨げない。この場合には、荷送人は、船荷証券にその特約を記載すべきことを請求することができる。

 第1項の規定は、運送品の船積み前又は荷揚げ後の事実により生じた損害には、適用しない。

 前項の損害につき第1項の特約がされた場合において、その特約が船荷証券に記載されていないときは、運送人は、その特約をもつて船荷証券所持人に対抗することができない。


(特約禁止の特例)

第12条 前条第1項の規定は、船舶の全部又は一部を運送契約の目的とする場合には、適用しない。ただし、運送人と船荷証券所持人との関係については、この限りでない。


第13条 前条の規定は、運送品の特殊な性質若しくは状態又は運送が行われる特殊な事情により、運送品に関する運送人の責任を免除し、又は軽減することが相当と認められる運送に準用する。


第14条 第11条第1項の規定は、生動物の運送及び甲板積みの運送には、適用しない。

 前項の運送につき第11条第1項の特約がされた場合において、その特約が船荷証券に記載されていないときは、運送人は、その特約をもつて船荷証券所持人に対抗することができない。甲板積みの運送につきその旨が船荷証券に記載されていないときも、同様とする。


(商法の適用)

第15条 第1条の運送には、商法第575条、第576条、第584条、第587条、第588条、第739条第1項(同法第756条第1項において準用する場合を含む。)及び第2項、第756条第2項並びに第769条の規定を除き、同法第2編第8章第2節及び第3編第3章の規定を適用する。


(運送人等の不法行為責任)

第16条 第3条第2項、第6条第4項及び第8条から第10条まで並びに商法第577条及び第585条の規定は、運送品に関する運送人の荷送人、荷受人又は船荷証券所持人に対する不法行為による損害賠償の責任に準用する。この場合において、第3条第2項中「前項」とあるのは、「民法(明治29年法律第89号)第715条第1項本文及び商法第690条(同法第703条第1項の規定により船舶賃借人が船舶所有者と同一の権利義務を有することとされる場合を含む。)」と読み替えるものとする。

 前項の規定は、荷受人があらかじめ荷送人の委託による運送を拒んでいたにもかかわらず荷送人から運送を引き受けた運送人の荷受人に対する責任には、適用しない。

 第1項の規定により運送品に関する運送人の責任が免除され、又は軽減される場合には、その責任が免除され、又は軽減される限度において、当該運送品に関する運送人の被用者の荷送人、荷受人又は船荷証券所持人に対する不法行為による損害賠償の責任も、免除され、又は軽減される。

 第9条第4項の規定は、運送品に関する運送人の責任が同条第1項から第3項までの規定(第1項において準用する場合を含む。)により軽減される場合において、運送人が損害を賠償したときの、運送品に関する運送人の被用者の責任に準用する。

 前二項の規定は、運送品に関する損害が、運送人の被用者の故意により、又は損害の発生のおそれがあることを認識しながらしたその者の無謀な行為により生じたものであるときには、適用しない。


(郵便物の運送)

第17条 この法律は、郵便物の運送には、適用しない。

附 則

 この法律は、1924年8月25日にブラツセルで署名された船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約が日本国について効力を生ずる日から施行する。

 この法律は、この法律の施行前に締結された運送契約には、適用しない。

附 則(昭和50年12月27日法律第94号)
(施行期日等)

 この法律は、海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約が日本国について効力を生ずる日から施行する。

 この法律は、この法律の施行前に発生した事故により生じた損害に基づく債権については適用せず、この法律の施行前に生じた債権及びこの法律の施行前に発生した事故によりこの法律の施行後に生じた損害に基づく債権については、なお従前の例による。

附 則(平成4年6月3日法律第69号)

 この法律は、1968年2月23日の議定書によって改正された1924年8月25日の船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約を改正する議定書が日本国について効力を生ずる日から施行する。

 この法律の施行前に締結された運送契約並びにその契約に係る運送品に関する運送人及びその使用する者の不法行為による損害賠償の責任に関しては、なお従前の例による。

附 則(平成30年5月25日法律第29号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第50条及び第52条の規定は、公布の日から施行する。


(船舶先取特権に関する経過措置)

第16条 施行日前に船舶(製造中の船舶を含む。)、その属具及び受領していない運送賃に関し国税徴収法(昭和34年法律第147号)第2条第12号に規定する強制換価手続、再生手続、更生手続又は特別清算手続が開始された場合における旧商法第842条の先取特権又は第2条の規定による改正前の国際海上物品運送法第19条第1項の先取特権の効力及び順位については、なお従前の例による。


(政令への委任)

第52条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。

関連法令(e-Gov法令検索)
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