原子力損害の補完的な補償に関する条約の実施に伴う原子力損害賠償資金の補助等に関する法律
第1章 総則
第1条 この法律は、原子力損害の補完的な補償に関する条約(以下「条約」という。)の実施に伴い、原子力損害を賠償するために必要な資金(第3条及び第11条において「原子力損害賠償資金」という。)の補助その他必要な事項を定めるものとする。
第2条 この法律において「原子力損害」とは、原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号。以下この条において「賠償法」という。)第2条第2項に規定する原子力損害(賠償法第3条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者が工場又は事業所内に設置した原子力施設(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号。次項において「規制法」という。)第2条第7項に規定する原子力施設をいう。)において使用される設備について生じた損害を除く。)をいう。
2 この法律において「原子力事業者」とは、規制法第23条第1項の許可(船舶に設置する試験研究用等原子炉(同項に規定する試験研究用等原子炉をいう。)に係る許可を除く。)を受けた者及び賠償法第2条第3項第3号から第8号までに掲げる者(国を除く。)並びにこれらの者であった者であって、原子炉の運転等(同条第1項に規定する原子炉の運転等をいう。以下同じ。)をしているもの(原子炉の運転等をしていたものを含む。)をいう。
第2章 原子力損害賠償資金の補助
第3条 国は、原子力事業者が原子力損害の賠償請求権に係る債務について弁済をした金額及び当該賠償請求権を有する者の承諾があった金額の合計額に相当する金額が原子力損害の発生の原因となった事実一について政令で定める金額を超える場合において、当該原子力事業者に対する原子力損害の賠償の請求の訴えについて、条約第13条1から4までの規定により日本の裁判所が管轄権を有することとされているときは、当該原子力事業者に対し、政令で定めるところにより、予算の範囲内において、当該原子力損害のうち次に掲げるもの(第10条第1項及び第11条において「対象原子力損害」という。)に係る原子力損害賠償資金の一部を補助するものとする。
一 条約の締約国(次号において単に「締約国」という。)の領域内において生じたもの
二 公海(海洋法に関する国際連合条約(ニにおいて「国連海洋法条約」という。)に規定する排他的経済水域(ニにおいて単に「排他的経済水域」という。)を含む。)又はその上空において生じたものであって、次のいずれかに該当するもの
イ 締約国、締約国の公共団体若しくはこれに準ずるもの、締約国の法令に基づいて設立された法人その他の団体、締約国の国籍を有する者又は条約に基づき締約国がその国民とみなす者(ハにおいて「締約国等」という。)が受けたもの
ロ 締約国の国籍を有する船舶若しくは航空機内で生じたもの又は当該船舶若しくは航空機について生じたもの
ハ 締約国等が設置する人工島、施設若しくは構築物において生じたもの又は当該人工島、施設若しくは構築物について生じたもの
ニ 締約国の排他的経済水域若しくはその上空又は国連海洋法条約に規定する大陸棚における天然資源の探査又は開発のための活動に関し生じたもの
第3章 負担金
第1節 一般負担金
第4条 文部科学大臣は、条約第4条1(c)の規定によりその額が算定される拠出金に要する費用に充てるため、原子力事業者(原子炉の運転等をしているものに限る。以下この節において同じ。)から、毎年度、一般負担金を徴収する。
2 原子力事業者は、一般負担金を納付する義務を負う。
第5条 各原子力事業者から徴収する一般負担金の額の算定方法は、条約第4条1(c)の規定により我が国についてその額が算定される拠出金の額、各原子力事業者が行う原子炉の運転等の行為の種類その他の事情を考慮して、政令で定める。
第6条 文部科学大臣は、前条の政令で定める一般負担金の額の算定方法に従い、各原子力事業者が納付すべき一般負担金の額を決定し、当該各原子力事業者に対し、その者が納付すべき一般負担金の額及び納付期限その他必要な事項を通知しなければならない。
2 文部科学大臣は、一般負担金の額を算定するため必要があるときは、原子力事業者に対し、資料の提出を求めることができる。
第7条 文部科学大臣は、前条第1項の規定による通知を受けた原子力事業者がその納付期限までに一般負担金を納付しないときは、督促状によって納付すべき期限を指定して督促しなければならない。
2 文部科学大臣は、前項の規定による督促をした場合においては、文部科学省令で定めるところにより、延滞金を徴収することができる。この場合において、延滞金は、年14.5パーセントの割合で計算した額を超えない範囲内で定めなければならない。
第8条 一般負担金その他この節の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
第9条 一般負担金その他この節の規定による徴収金は、この節に別段の定めがある場合を除き、国税徴収の例により徴収する。
第2節 特別負担金
第10条 文部科学大臣は、条約第4条1(b)の規定によりその額が算定される拠出金に要する費用に充てるため、原子力事業者であって、その原子力損害(対象原子力損害を含む場合に限る。)の賠償請求権に係る債務について弁済をした金額及び当該賠償請求権を有する者の承諾があった金額の合計額に相当する金額が原子力損害の発生の原因となった事実一について政令で定める金額を超えたものから、特別負担金を徴収する。
2 前項に規定する原子力事業者は、特別負担金を納付する義務を負う。
第11条 前条第1項に規定する原子力事業者から徴収する特別負担金の額の算定方法は、条約第4条1(b)の規定により我が国についてその額が算定される拠出金の額、当該原子力事業者の対象原子力損害に係る原子力損害賠償資金の額その他の事情を考慮して、政令で定める。
第12条 第6条から第9条までの規定は、第10条第1項に規定する原子力事業者から徴収する特別負担金について準用する。この場合において、第6条第1項中「前条」とあるのは「第11条」と、第8条及び第9条中「この節」とあるのは「次節」と読み替えるものとする。
第4章 雑則
第13条 文部科学大臣は、この法律の施行に必要な限度において、原子力事業者に対し必要な報告を求め、又はその職員に、原子力事業者の事務所若しくは工場若しくは事業所に立ち入り、その者の帳簿、書類その他必要な物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
3 第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第14条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、文部科学省令で定める。
第15条 第13条第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者は、30万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同項の刑を科する。
1 この法律は、条約が日本国について効力を生ずる日から施行する。
2 第2章及び第3章第2節の規定は、この法律の施行前に原子力損害の発生の原因となった事実が生じた場合における当該原子力損害の賠償については、適用しない。