入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律
第1章 総則
第1条 この法律は、入会林野又は旧慣使用林野である土地の農林業上の利用を増進するため、これらの土地に係る権利関係の近代化を助長するための措置を定め、もつて農林業経営の健全な発展に資することを目的とする。
第2条 この法律において「入会権」とは、民法(明治29年法律第89号)第263条及び第294条に規定する入会権をいい、「入会林野」とは、入会権の目的となつている土地で主として木竹の生育に供され又は採草若しくは家畜の放牧の目的に供されるものをいい、「入会権者」とは、入会林野につき入会権に基づいて使用又は収益をする者をいう。
2 この法律において「入会林野整備」とは、入会林野である土地について、その農林業上の利用を増進するため、入会権を消滅させること及びこれに伴い入会権以外の権利を設定し、移転し、又は消滅させることをいう。
3 この法律において「旧慣使用権」とは、地方自治法(昭和22年法律第67号)第238条の6第1項に規定する権利をいい、「旧慣使用林野」とは、旧慣使用権の目的となつている土地で主として木竹の生育に供され又は採草若しくは家畜の放牧の目的に供されるものをいい、「旧慣使用権者」とは、旧慣使用林野につき旧慣使用権を有する者をいう。
4 この法律において「旧慣使用林野整備」とは、旧慣使用林野である土地について、その農林業上の利用を増進するため、旧慣使用権を消滅させること及びこれに伴い旧慣使用権以外の権利を設定し、又は移転することをいう。
第2章 入会林野整備
第3条 入会林野整備は、その対象とする入会林野に係るすべての入会権者が、その全員の合意によつて、入会林野整備に要する経費の分担の方法、代表者の選任の方法、代表権の範囲、事務所の所在地等農林水産省令で定める事項を内容とする規約及び入会林野整備に関する計画を定め、その代表者によつて、当該計画書を当該入会林野の所在地を管轄する都道府県知事に提出し、その認可を受けて、行なうことができる。
第4条 前条の入会林野整備に関する計画(以下「入会林野整備計画」という。)においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 その対象とする入会林野たる土地の所在、地番、地目及び面積
二 前号の入会林野に係るすべての入会権の内容並びに当該入会林野に係るすべての入会権者の氏名及び住所
三 第1号の入会林野につき入会権を消滅させることに伴い所有権又は地上権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を取得させるべき各入会権者の氏名及び住所、当該各入会権者に取得させるべき権利の種類、当該権利に係る土地の所在、地番、地目及び面積並びに当該権利が所有権以外の権利である場合には、その存続期間、対価その他の条件
四 第1号の入会林野につき入会権を消滅させることに伴い、前号の各入会権者に所有権が移転されるべき土地又は同号の権利が設定されるべき土地の所有者の氏名若しくは名称及び住所並びに消滅させるべき権利がある場合には、その種類及び内容並びに当該権利を有する者の氏名若しくは名称及び住所
五 第1号の入会林野について存する所有権及び入会権以外の権利で前号の消滅させるべき権利でないもの(第三者に対抗することができる権利及びこれに設定されている権利を除く。)の種類及び内容並びに当該権利を有する者の氏名又は名称及び住所
六 第1号の入会林野につき入会権を消滅させた後における当該土地の利用に関する計画
七 第1号の入会林野につき入会権を消滅させること及びこれに伴い第3号の各入会権者に所有権が移転され若しくは同号の権利が設定され又は入会権以外の権利が消滅することにより、金銭の支払又は徴収をする必要がある場合には、その相手方の氏名又は名称、金額及び支払又は徴収の時期、方法その他の条件
八 その他農林水産省令で定める事項
2 前項第5号に掲げる事項に関して前条の入会権者が過失がなくて知ることができないものについては、入会林野整備計画において定めることを要しない。
3 第1項第6号に掲げる土地の利用に関する計画においては、同項第3号の権利を取得させるべき入会権者の全部又は一部が当該権利を取得した後にその取得に係る権利の全部又は一部を生産森林組合又は農地所有適格法人(農地法(昭和27年法律第229号)第2条第3項に規定する農地所有適格法人をいう。以下同じ。)に出資する計画(以下「出資計画」という。)がある場合には、その出資計画を当該土地の利用に関する計画の一部として定めなければならない。
4 入会林野整備計画においては、第1項各号に掲げる事項以外の事項を定めてはならない。
5 処分の制限がある入会林野で農林水産省令で定めるもの並びに地上権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利が設定されている入会林野で当該権利が差押、仮差押又は仮処分の目的となつているものについては、入会林野整備計画を定めることができない。
第5条 第3条の認可を申請しようとする入会権者は、その代表者によつて、農林水産省令で定めるところにより、当該認可の申請に係る入会林野整備計画において定められた事項のうち前条第1項第4号及び第5号に掲げる者に係る部分につき、それぞれ、それらの者の同意を得なければならない。
2 前項の入会権者の代表者は、同項に規定する者の同意を求める場合には、それらの者に規約及び代表者の資格を証する書面を提示しなければならない。
3 第3条の認可の申請は、農林水産省令で定めるところにより、申請書に、入会林野整備計画書のほか次に掲げる書類を添付してしなければならない。ただし、第5号に掲げる意見書は、当該入会林野の所在する市町村が農業委員会等に関する法律(昭和26年法律第88号)第3条第1項ただし書又は第5項の規定により農業委員会を置かない市町村である場合には、添付することを要しない。
一 規約
二 入会権に係る慣行を記載した書面
三 第1項に規定する者の同意があつたことを証する書面
四 入会林野の所在地を管轄する市町村長の意見書
五 入会林野整備計画に係る土地の全部又は一部が農地又は採草放牧地(農地法第2条第1項に規定する農地(同法第43条第1項の規定により農作物の栽培を耕作に該当するものとみなして適用する同法第2条第1項に規定する農地を含む。)又は採草放牧地をいう。以下同じ。)である場合には、農業委員会の意見書
六 入会林野整備計画に係る土地の利用について法令の規定による制限がある場合には、当該法令の施行について権限を有する行政機関の意見書
七 その他農林水産省令で定める書類
4 前項第4号から第6号までに掲げる意見書は、第1項の入会権者の代表者が意見を求めた日から40日を経過しても、これを得ることができなかつたときは、添附することを要しない。この場合には、その意見書を得ることができなかつた事情を明らかにした書面を添附しなければならない。
第6条 都道府県知事は、第3条の認可の申請があつたときは、当該申請に係る入会林野整備計画につき詳細な審査を行なつてその適否を決定し、その旨を当該申請をした入会権者の代表者(以下「申請人代表者」という。)に通知しなければならない。
2 都道府県知事は、第3条の認可の申請について、次の各号の一に該当する場合を除き、前項の規定により適当とする旨の決定をしなければならない。
一 申請の手続又は入会林野整備計画の決定の手続若しくは内容が、法令又は法令に基づいてする行政庁の処分に違反しているとき。
二 入会林野整備計画の内容が、当該入会林野整備計画に係る土地の農林業上の利用を増進することが確実であると認められるものでないとき。
三 入会林野整備計画の内容が、当該入会林野についての入会権に係る慣行その他当該入会林野について存する権利関係からみて、一部の者に対し権利の集中その他の不当な利益をもたらすものであると認められるとき。
四 入会林野整備計画に係る土地の全部又は一部が農地又は採草放牧地である場合には、当該入会林野整備計画において定める当該農地又は採草放牧地に係る権利の設定又は移転の内容が、農地法第3条第2項各号の一に該当するものであるとき(同項第5号に掲げる場合であつて同項ただし書の政令で定める相当の事由があるとき、及び同法第5条第1項本文に規定する場合に該当するときを除く。)。
3 前条第4項の場合において、第1項の規定により適否の決定をしようとするときは、都道府県知事は、当該市町村長、農業委員会又は行政機関の意見をきかなければならない。
4 都道府県知事は、第1項の規定により第3条の認可の申請を適当とする旨の決定をしたときは、遅滞なくその旨を公告し、かつ、30日以上の相当の期間を定めてその決定に係る入会林野整備計画書の写しを公衆の縦覧に供しなければならない。
第7条 当該入会林野整備計画に関係のある土地又はその土地に定着する物件の所有者その他これらの土地又は物件に関し権利を有する者は、前条第4項の規定による公告に係る決定に対して異議があるときは、同項に規定する縦覧期間の満了する日の翌日から起算して30日を経過する日までに、都道府県知事にこれを申し出ることができる。
2 都道府県知事は、前項の規定による異議の申出を受けた場合には、当該異議の申出が同項に規定する期日後にされたものであるとき、その他不適法であるとき、及び当該異議の申出が理由がないときを除き、当該申請人代表者に対し、相当の期間を定めてその期間内に当該異議の申出をした者(以下「異議申出人」という。)との協議をすべき旨を命じなければならない。
3 前項の規定により協議をすべき旨を命ぜられた場合には、当該申請人代表者は、次条第1項の規定による調停の申請をする場合を除き、前項の期間の満了する日の翌日から起算して10日を経過する日までに、農林水産省令で定めるところにより、その協議の結果を都道府県知事に報告しなければならない。
4 行政不服審査法(平成26年法律第68号)中審査請求に関する規定(同法第15条、第18条第1項及び第2項、第43条、第45条第3項並びに第46条を除く。)は、第1項の規定による異議の申出について準用する。
5 第2項の規定による処分又は前項において準用する行政不服審査法第45条第1項若しくは第2項の規定による裁決については、審査請求をすることができない。
第8条 前条第2項の期間の満了する日までに同項の協議をすることができなかつたとき、又はその協議がととのわなかつたときは、当該申請人代表者は、その満了する日の翌日から起算して10日を経過する日までに、農林水産省令で定めるところにより、都道府県知事に対し、必要な調停を行なうべき旨の申請をすることができる。
2 都道府県知事は、前項の申請があつた場合には、すみやかに調停を行なうものとする。
3 都道府県知事は、前項の調停を行なう場合には、当事者の意見をきいて調停案を作成しなければならない。
4 都道府県知事は、前項の規定により調停案を作成したときは、これを当事者に示してその受諾を勧告するものとする。
第9条 都道府県知事が第6条第1項の規定により第3条の認可の申請を適当とする旨の決定をした後において当該入会林野に係る入会権者についての変更(入会権者の死亡を除く。以下この項において「入会権者変更」という。)があつたとき、又は第7条第2項の協議がととのい若しくは前条第2項の調停が成立したことにより入会林野整備計画の変更を必要とするときは、当該入会林野整備計画につき第3条の認可を申請した入会権者(入会権者変更があつた場合には、その変更後のすべての入会権者。以下この条において同じ。)は、その申請人代表者によつて、都道府県知事に当該入会林野整備計画の変更の申請をしなければならない。
2 前項の場合を除くほか、第6条第1項の規定により適当とする旨の決定があつた第3条の認可の申請に係る入会林野整備計画の変更を必要とする場合には、当該入会林野整備計画につき同条の認可を申請した入会権者は、その申請人代表者によつて、都道府県知事に当該変更の申請をすることができる。
3 前二項の規定により変更の申請をしようとする場合において、当該変更に係る事項のうちに第4条第1項第4号又は第5号に掲げる者に係る部分があるときは、当該変更の申請をしようとする入会権者は、その申請人代表者によつて、農林水産省令で定めるところにより、当該部分につき、それぞれ、それらの者の同意を得なければならない。この場合には、第5条第2項の規定を準用する。
4 第5条第3項(同項第1号及び第2号を除く。)及び第4項並びに第6条第1項から第3項までの規定は、第1項又は第2項の規定による変更の申請について準用する。この場合において、第5条第3項第3号中「第1項」とあるのは「第9条第3項」と、同条第4項中「第1項の入会権者の代表者」とあり、第6条第1項中「当該申請をした入会権者の代表者(以下「申請人代表者」という。)」とあるのは「当該申請人代表者」と読み替えるものとする。
5 都道府県知事が前項において準用する第6条第1項の規定により第1項又は第2項の規定による変更の申請を適当とする旨の決定をした場合には、当該変更に係る事項についてさらに第6条第4項及び第7条からこの条までに規定する手続を行なうべきものとする。
6 第3条の認可を申請した入会権者は、規約又は代表者を変更したときは、遅滞なく、その代表者によつて、農林水産省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
第10条 都道府県知事は、第7条第2項の規定により協議をすべき旨を命じた場合(前条第5項の規定による場合を含む。)において、第7条第3項に規定する期日までに同項の規定による報告がなかつたとき、同条第2項の協議をすることができなかつた旨若しくはその協議がととのわなかつた旨の同条第3項の規定による報告があつたとき、又は第8条第2項の調停が成立しなかつたときは、第6条第1項の規定により適当とする旨の決定をした第3条の認可の申請を却下しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の規定による却下をしたときは、その旨を当該異議申出人に通知しなければならない。
3 第1項の規定による却下又はその不作為については、審査請求をすることができない。
第11条 都道府県知事は、第7条第1項の規定による異議の申出(第9条第5項の規定によるものを含む。)がないとき、又は当該異議の申出があつた場合において、その全てについて、第7条第4項において準用する行政不服審査法第45条第1項若しくは第2項の規定による裁決をしたとき、若しくは第7条第2項の協議が調つた旨の同条第3項の規定による報告があり若しくは第8条第2項の調停が成立したとき(当該協議が調い又は当該調停が成立したことにより入会林野整備計画の変更を必要とするときを除く。)は、第3条の認可の申請に係る入会林野整備計画(第9条第1項又は第2項の規定による変更の申請があつた場合には、当該申請に係る変更後の入会林野整備計画。以下この条において同じ。)の認可をしなければならない。
2 都道府県知事は、前項の規定により認可をしようとする場合において、当該認可をしようとする第3条の認可の申請に係る入会林野整備計画において入会権者が入会権者以外の者に対し当該認可につき次項の規定による公告のある日の翌日までに金銭を支払うべきこととされているときは、当該申請人代表者に、当該入会権者以外の者ごとにその支払うべきこととされている金銭(当該入会林野整備計画において当該入会権者以外の者が入会権者に対し当該認可につき同項の規定による公告のある日の翌日までに支払うべきこととされている金銭がある場合には、その額を控除した額の金銭)の供託をさせなければならない。ただし、当該申請人代表者が当該入会権者以外の者から供託をしなくてもよい旨の申出があつたことを都道府県知事に届け出た場合は、この限りでない。
3 都道府県知事は、第1項の規定により認可をしたときは、遅滞なく、その旨を公告し、かつ、当該認可に係る入会林野整備計画を記載した書面を管轄登記所に送付しなければならない。
4 第1項の規定による認可については、審査請求をすることができない。
5 第3条の認可の申請に係る入会林野整備計画に係る土地の全部又は一部が農地又は採草放牧地である場合において、当該入会林野整備計画につき第1項の規定による認可があつたときは、当該入会林野整備計画において定められている当該農地又は採草放牧地に係る権利の設定又は移転については、農地法第3条第1項又は第5条第1項の許可があつたものとみなす。
第12条 前条第3項の規定による公告があつたときは、その公告があつた入会林野整備計画の定めるところにより、その公告があつた日限りすべての入会権及びその他の権利が消滅し、その公告があつた日の翌日において、所有権が移転し、又は地上権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利が設定される。
第13条 第11条第3項の規定による公告があつたときは、その公告があつた入会林野整備計画につき同条第1項の規定による認可を受けた者は、その代表者によつて、当該入会林野整備計画の定めるところに従い、金銭(同条第2項の規定により申請人代表者によつて供託がされた金銭を除く。)を支払わなければならない。
2 前項の場合には、同項に規定する認可を受けた者は、その代表者によつて、当該入会林野整備計画の定めるところに従い、金銭(第11条第2項の規定により供託をするため申請人代表者によつて徴収された金銭を除く。)を徴収することができる。
3 第1項の場合には、第11条第2項本文に規定する入会権者以外の者は、当該入会林野整備計画の定めるところに従い、同項の規定により供託がされた金銭に対してその権利を行なうことができる。
第14条 都道府県知事は、第11条第3項の規定による公告をした場合において必要があるときは、所有者に代わつて、その公告をした入会林野整備計画に関係のある土地の分割又は合併の手続をすることができる。
2 都道府県知事は、第11条第3項の規定による公告をしたときは、遅滞なくその公告をした入会林野整備計画に係る土地についての必要な登記を嘱託しなければならない。
3 第12条の規定により所有権又は地上権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を取得した者からその取得に係る権利の全部又は一部の出資(その者が、第11条第3項の規定による公告があつた入会林野整備計画において定められている出資計画を実施するために行なうものに限る。)を受けた生産森林組合又は農地所有適格法人が、第11条第3項の規定による公告があつた日の翌日から起算して20日を経過する日までに、農林水産省令で定めるところにより、当該出資をした者の氏名及び住所、当該出資の目的たる権利の種類、当該権利に係る土地の所在、地番、地目及び面積並びに当該権利が所有権以外の権利である場合には、その存続期間、対価その他の条件を都道府県知事に届け出たときは、都道府県知事は、遅滞なく当該法人のために当該権利の取得に関し必要な登記を嘱託しなければならない。
4 第11条第3項の規定による公告があつた後においては、その公告があつた入会林野整備計画に係る土地に関しては、前二項の規定による登記がされるまでは、他の登記をすることができない。ただし、登記の申請人が確定日付のある書類によりその公告前に登記原因が生じたことを証明した場合は、この限りでない。
第15条 第11条第3項の規定による公告があつた場合において、その公告があつた日までに死亡した入会権者でその公告があつた入会林野整備計画において権利を取得し又は金銭の支払をし若しくはこれを受けるべきこととされていたものがあるときは、その者の地位は、その相続人が承継する。
第16条 第3条の認可を申請しようとする入会権者の代表者、申請人代表者若しくは第11条第1項の規定による認可を受けた者の代表者の変更があつた場合又は第3条の認可の申請があつた日以後において入会林野整備計画に関係のある土地若しくはその土地に定着する物件の所有者その他これらの土地若しくは物件に関し権利を有する者の変更があつた場合には、この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定により又はこの法律の規定に基づいてする行政庁の処分により従前のこれらの者がした手続その他の行為は、新たにこれらの者となつた者がしたものとみなし、従前のこれらの者に対してした処分、手続その他の行為は、新たにこれらの者となつた者に対してしたものとみなす。
第17条 都道府県及び市町村は、この章の規定による入会林野整備の円滑な実施を確保するため、当該入会林野整備を行なおうとする入会権者に対して、規約又は入会林野整備計画の作成又は変更に関し、助言、指導その他の援助を行なうように努めるものとする。
第18条 入会林野整備の対象とする入会林野が二以上の都府県にわたる場合には、この章において都道府県知事の権限に属させた事項は、農林水産大臣が処理する。
第3章 旧慣使用林野整備
第19条 旧慣使用林野整備は、市町村長が、当該市町村又は当該市町村にある財産区の所有に属する旧慣使用林野につき、その農林業上の利用を増進するための他の事業で国若しくは都道府県の行なうもの又はこれらの補助に係るものの効率的な実施を促進するため、あらかじめ旧慣使用林野整備を行なうことにつき当該市町村の議会(当該旧慣使用林野が、議会又は総会が設けられている財産区の所有に属する場合には、当該財産区の議会又は総会。以下同じ。)の議決を経て、旧慣使用林野整備に関する計画を定め、当該計画書を都道府県知事に提出し、その認可を受けて、行なうことができる。
第20条 市町村長は、前条の旧慣使用林野整備に関する計画(以下「旧慣使用林野整備計画」という。)を定めるには、その対象とする旧慣使用林野に係るすべての旧慣使用権者の意見をきくとともに、それらの者が当該旧慣使用林野を旧慣使用権以外の権利の目的としていないことの確認を得なければならない。
2 旧慣使用林野で所有権及び旧慣使用権以外の権利(電線路施設用地に係る権利その他の権利で農林水産省令で定めるものを除く。)の目的となつているもの並びに処分の制限がある旧慣使用林野で農林水産省令で定めるものについては、旧慣使用林野整備計画を定めることができない。
3 旧慣使用林野整備計画においては、前項の農林水産省令で定める権利の消滅又は当該権利の目的となつている土地についての権利の設定若しくは移転を内容とする事項を定めてはならない。
4 第4条第1項(同項第4号及び第5号を除く。)、第3項及び第4項の規定は、旧慣使用林野整備計画について準用する。この場合において、同条第1項第7号中「若しくは同号の権利が設定され又は入会権以外の権利が消滅する」とあるのは「又は同号の権利が設定される」と、同条第4項中「第1項各号」とあるのは「第20条第4項において準用する第4条第1項各号(同項第4号及び第5号を除く。)」と読み替えるものとする。
第21条 市町村長は、第19条の認可を申請しようとする場合には、当該認可の申請に係る旧慣使用林野整備計画につき当該市町村の議会の議決を経るとともに、当該旧慣使用林野整備計画において定められた事項のうち所有権又は地上権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を取得させるべき旧慣使用権者に係る部分につき、それぞれ、それらの者の同意を得なければならない。
2 第5条第3項(同項第1号を除く。)及び第4項の規定は、第19条の認可の申請について準用する。この場合において、第5条第3項第2号中「入会権に係る慣行」とあるのは「旧慣」と、「書面」とあるのは「書面並びに旧慣使用林野の一部が第20条第2項の農林水産省令で定める権利の目的となつている土地である場合には、当該権利の種類及び内容を記載した書面」と、同項第3号中「第1項に規定する者」とあるのは「第20条第1項の意見の内容を記載した書面及び同項の確認を得たことを証する書面並びに第21条第1項の当該市町村の議会の議決があつたことを証する書面及び同項に規定する旧慣使用権者」と、同項第4号中「入会林野の所在地」とあるのは「旧慣使用林野の全部又は一部が当該市町村の区域外にある場合には、当該旧慣使用林野の全部又は一部の所在地」と、同条第4項中「第1項の入会権者の代表者」とあるのは「第19条の認可を申請しようとする市町村長」と読み替えるものとする。
第22条 都道府県知事は、第19条の認可の申請があつたときは、当該申請が次の各号の一に該当する場合を除き、当該申請に係る旧慣使用林野整備計画の認可をしなければならない。
一 申請の手続又は旧慣使用林野整備計画の決定の手続若しくは内容が、法令又は法令に基づいてする行政庁の処分に違反しているとき。
二 旧慣使用林野整備計画の内容が、当該旧慣使用林野整備計画に係る土地の農林業上の利用を増進するための他の事業で国若しくは都道府県の行なうもの又はこれらの補助に係るものの効率的な実施を促進することが確実であると認められるものでないとき。
三 旧慣使用林野整備計画の内容が、当該旧慣使用林野についての旧慣からみて、一部の者に対し権利の集中その他の不当な利益をもたらすものであると認められるとき。
四 旧慣使用林野整備計画に係る土地の全部又は一部が農地又は採草放牧地である場合には、当該旧慣使用林野整備計画において定める当該農地又は採草放牧地に係る権利の設定又は移転の内容が、農地法第3条第2項各号の一に該当するものであるとき(同項第5号に掲げる場合であつて同項ただし書の政令で定める相当の事由があるとき、及び同法第5条第1項本文に規定する場合に該当するときを除く。)。
2 前条第2項において準用する第5条第4項の場合において、前項の規定により認可をしようとするときは、都道府県知事は、当該市町村長、農業委員会又は行政機関の意見をきかなければならない。
3 都道府県知事は、第1項の規定により認可をしようとする場合において、当該認可をしようとする旧慣使用林野整備計画において旧慣使用権者が市町村又は財産区に対し当該認可につき次項の規定による公告のある日の翌日までに金銭を支払うべきこととされているときは、当該旧慣使用林野整備計画につき第19条の認可を申請した市町村長に当該認可をしようとする旨の通知をするものとし、当該市町村長は、当該通知を受けたときは、遅滞なく、当該旧慣使用権者にその支払うべきこととされている金銭の供託をさせ、又は当該金銭の支払を確実に行なわせるためのその他の措置を講じなければならない。
4 都道府県知事は、第1項の規定により認可をしたときは、遅滞なく、その旨を公告し、かつ、当該認可に係る旧慣使用林野整備計画を記載した書面を管轄登記所に送付しなければならない。
5 旧慣使用林野整備計画に係る土地の全部又は一部が農地又は採草放牧地である場合において、当該旧慣使用林野整備計画につき第1項の規定による認可があつたときは、当該旧慣使用林野整備計画において定められている当該農地又は採草放牧地に係る権利の設定又は移転については、農地法第3条第1項又は第5条第1項の許可があつたものとみなす。
第23条 前条第4項の規定による公告があつたときは、その公告があつた旧慣使用林野整備計画の定めるところにより、その公告があつた日限りすべての旧慣使用権が消滅し、その公告があつた日の翌日において、所有権が移転し、又は地上権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利が設定される。
2 第13条第3項、第14条及び第15条の規定は、前条第4項の規定により旧慣使用林野整備計画につき認可の公告があつた場合に準用する。この場合において、第13条第3項中「第11条第2項本文に規定する入会権者以外の者」とあるのは「第22条第3項の規定により金銭の供託をさせた市町村長」と、第14条第3項中「第12条」とあるのは「第23条第1項」と、第15条中「入会権者」とあるのは「旧慣使用権者」と読み替えるものとする。
第24条 この章の規定による旧慣使用林野整備については、地方自治法第237条第2項及び第238条の6第1項(同法第294条第1項においてこれらの規定によることとされる場合を含む。)の規定は、適用しない。
2 旧慣使用林野整備計画について当該市町村の議会が第21条第1項の議決をしたときは、当該旧慣使用林野整備計画において定められている旧慣使用林野に係る権利の設定又は移転については、更に地方自治法第96条第1項第6号及び第8号に掲げる事項についての同項の規定による議決(同法第295条の規定による議決を含む。)をすることを要しない。
第4章 雑則
第25条 都道府県又は市町村の職員は第2章の規定による入会林野整備又は前章の規定による旧慣使用林野整備に関し、当該入会林野整備を行なおうとする入会権者は当該入会林野整備に関し、土地又は土地に定着する物件の測量又は実地調査をするため必要があるときは、その必要の限度内において、他人の土地に立ち入り、又は測量若しくは実地調査の支障となる立木竹を伐採することができる。
2 前項の入会権者が同項の行為をするには、あらかじめ、当該土地の所在地を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。
3 市町村長は、前項の許可の申請があつたときは、当該土地の占有者及び立木竹の所有者にその旨を通知し、意見書を提出する機会を与えなければならない。
4 都道府県若しくは市町村の職員又は第2項の許可を受けた入会権者は、第1項の行為をする場合には、あらかじめ、当該土地の占有者又は立木竹の所有者に通知しなければならない。
5 前二項の規定による通知をすることができないか、又は困難である場合には、農林水産省令で定めるところにより、公告をもつて通知に代えることができる。
6 第1項の場合には、都道府県又は市町村の職員はその身分を示す証明書を、第2項の許可を受けた入会権者はその許可を受けたことを証する書面を携帯し、当該土地の占有者又は立木竹の所有者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
7 第1項の場合には、同項の都道府県若しくは市町村又は入会権者は、同項の行為によつて通常生ずべき損失を補償しなければならない。
8 都道府県又は市町村の職員は第1項の入会林野整備又は旧慣使用林野整備に関し、当該入会林野整備を行おうとする入会権者の代表者は当該入会林野整備に関し、当該入会林野整備若しくは旧慣使用林野整備に関係のある土地の所在地を管轄する登記所に対し、又はその他の官公署の長に対し、無償で必要な簿書の閲覧若しくは謄写又はその謄本若しくは抄本若しくは登記事項証明書の交付(以下「簿書の閲覧等」という。)を求めることができる。
9 第1項及び第4項から前項までの規定は、農林水産大臣が第18条の規定による処理をする場合において国の職員が行なう土地若しくは土地に定着する物件の測量若しくは実地調査又は簿書の閲覧等の請求について準用する。この場合において、第7項中「同項の都道府県若しくは市町村又は入会権者」とあるのは、「国」と読み替えるものとする。
第26条 第12条又は第23条第1項の規定により所有権又は地上権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を取得した者は、当該権利の目的たる土地の農林業上の利用を効率的に行なうように努めなければならない。
第27条 第11条第3項の規定による公告があつた入会林野整備計画及び第22条第4項の規定による公告があつた旧慣使用林野整備計画に係る土地の登記については、政令で不動産登記法(平成16年法律第123号)の特例を定めることができる。
第28条 第12条又は第23条第1項の規定により所有権又は地上権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を取得した者の当該権利の取得による経済的な利益については、租税を課さない。
第29条 国は、政令で定めるところにより、この法律の規定により都道府県知事が行なうべき事務に要する経費の二分の一を補助する。
第5章 罰則
第30条 第25条第1項の規定により都道府県の職員が行なう立入り又は立木竹の伐採(同条第9項において準用する同条第1項の規定により国の職員が行なうこれらの行為を含む。)を拒み、又は妨げた者は、3万円以下の罰金に処する。
1 この法律は、公布の日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して6月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から施行する。
1 この法律は、公布の日から施行する。
第1条 この法律は、新不動産登記法の施行の日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第1条 この法律は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)の施行の日から施行する。
第5条 行政庁の処分その他の行為又は不作為についての不服申立てであってこの法律の施行前にされた行政庁の処分その他の行為又はこの法律の施行前にされた申請に係る行政庁の不作為に係るものについては、この附則に特別の定めがある場合を除き、なお従前の例による。
第6条 この法律による改正前の法律の規定により不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為を経た後でなければ訴えを提起できないこととされる事項であって、当該不服申立てを提起しないでこの法律の施行前にこれを提起すべき期間を経過したもの(当該不服申立てが他の不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為を経た後でなければ提起できないとされる場合にあっては、当該他の不服申立てを提起しないでこの法律の施行前にこれを提起すべき期間を経過したものを含む。)の訴えの提起については、なお従前の例による。
2 この法律の規定による改正前の法律の規定(前条の規定によりなお従前の例によることとされる場合を含む。)により異議申立てが提起された処分その他の行為であって、この法律の規定による改正後の法律の規定により審査請求に対する裁決を経た後でなければ取消しの訴えを提起することができないこととされるものの取消しの訴えの提起については、なお従前の例による。
3 不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為の取消しの訴えであって、この法律の施行前に提起されたものについては、なお従前の例による。
第9条 この法律の施行前にした行為並びに附則第5条及び前二条の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第10条 附則第5条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。
第1条 この法律は、平成28年4月1日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 附則第28条、第29条第1項及び第3項、第30条から第40条まで、第47条(都道府県農業会議及び全国農業会議所の役員に係る部分に限る。)、第50条、第109条並びに第115条の規定 公布の日(以下「公布日」という。)
第114条 この法律の施行前にした行為並びにこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合及びこの附則の規定によりなおその効力を有することとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第115条 この附則に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。
第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第2条 この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
第3条 政府は、この法律の施行後5年を目途として、この法律による改正後の農業経営基盤強化促進法、農地法及び農業振興地域の整備に関する法律の規定の施行の状況等を勘案し、必要があると認めるときは、これらの規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。