犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律
第1章 総則
第1条 この法律は、犯罪により害を被った者(以下「被害者」という。)及びその遺族がその被害に係る刑事事件の審理の状況及び内容について深い関心を有するとともに、これらの者の受けた身体的、財産的被害その他の被害の回復には困難を伴う場合があることにかんがみ、刑事手続に付随するものとして、被害者及びその遺族の心情を尊重し、かつその被害の回復に資するための措置を定め、並びにこれらの者による損害賠償請求に係る紛争を簡易かつ迅速に解決することに資するための裁判手続の特例を定め、もってその権利利益の保護を図ることを目的とする。
第2章 公判手続の傍聴
第2条 刑事被告事件の係属する裁判所の裁判長は、当該被告事件の被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)又は当該被害者の法定代理人から、当該被告事件の公判手続の傍聴の申出があるときは、傍聴席及び傍聴を希望する者の数その他の事情を考慮しつつ、申出をした者が傍聴できるよう配慮しなければならない。
第3章 公判記録の閲覧及び謄写
第3条 刑事被告事件の係属する裁判所は、第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において、当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合及び犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合を除き、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせるものとする。
2 裁判所は、前項の規定により謄写をさせる場合において、謄写した訴訟記録の使用目的を制限し、その他適当と認める条件を付することができる。
3 第1項の規定により訴訟記録を閲覧し又は謄写した者は、閲覧又は謄写により知り得た事項を用いるに当たり、不当に関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は捜査若しくは公判に支障を生じさせることのないよう注意しなければならない。
第4条 刑事被告事件の係属する裁判所は、第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において、次に掲げる者から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、第1号又は第2号に掲げる者の損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合であって、犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせることができる。
一 被告人又は共犯により被告事件に係る犯罪行為と同様の態様で継続的に又は反復して行われたこれと同一又は同種の罪の犯罪行為の被害者
二 前号に掲げる者が死亡した場合又はその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹
三 第1号に掲げる者の法定代理人
四 前三号に掲げる者から委託を受けた弁護士
2 前項の申出は、検察官を経由してしなければならない。この場合においては、その申出をする者は、同項各号のいずれかに該当する者であることを疎明する資料を提出しなければならない。
3 検察官は、第1項の申出があったときは、裁判所に対し、意見を付してこれを通知するとともに、前項の規定により提出を受けた資料があるときは、これを送付するものとする。
4 前条第2項及び第3項の規定は、第1項の規定による訴訟記録の閲覧又は謄写について準用する。
第4章 被害者参加旅費等
第5条 被害者参加人(刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第316条の33第3項に規定する被害者参加人をいう。以下同じ。)が同法第316条の34第1項(同条第5項において準用する場合を含む。次条第2項において同じ。)の規定により公判期日又は公判準備に出席した場合には、法務大臣は、当該被害者参加人に対し、旅費、日当及び宿泊料を支給する。
2 前項の規定により支給する旅費、日当及び宿泊料(以下「被害者参加旅費等」という。)の額については、政令で定める。
第6条 被害者参加旅費等の支給を受けようとする被害者参加人は、所定の請求書に法務省令で定める被害者参加旅費等の算定に必要な資料を添えて、これを、裁判所を経由して、法務大臣に提出しなければならない。この場合において、必要な資料の全部又は一部を提出しなかった者は、その請求に係る被害者参加旅費等の額のうちその資料を提出しなかったため、その被害者参加旅費等の必要が明らかにされなかった部分の金額の支給を受けることができない。
2 裁判所は、前項の規定により請求書及び資料を受け取ったときは、当該被害者参加人が刑事訴訟法第316条の34第1項の規定により公判期日又は公判準備に出席したことを証明する書面を添えて、これらを法務大臣に送付しなければならない。
3 第1項の規定による被害者参加旅費等の請求の期限については、政令で定める。
第7条 法務大臣は、被害者参加旅費等の支給に関し、裁判所に対して必要な協力を求めることができる。
第8条 次に掲げる法務大臣の権限に係る事務は、日本司法支援センター(総合法律支援法(平成16年法律第74号)第13条に規定する日本司法支援センターをいう。以下同じ。)に行わせるものとする。
一 第5条第1項の規定による被害者参加旅費等の支給
二 第6条第1項の規定による請求の受理
三 前条の規定による協力の求め
2 法務大臣は、日本司法支援センターが天災その他の事由により前項各号に掲げる権限に係る事務の全部又は一部を行うことが困難又は不適当となったと認めるときは、同項各号に掲げる権限の全部又は一部を自ら行うものとする。
3 法務大臣は、前項の規定により第1項各号に掲げる権限の全部若しくは一部を自ら行うこととし、又は前項の規定により自ら行っている第1項各号に掲げる権限の全部若しくは一部を行わないこととするときは、あらかじめ、その旨を公示しなければならない。
4 法務大臣が、第2項の規定により第1項各号に掲げる権限の全部若しくは一部を自ら行うこととし、又は第2項の規定により自ら行っている第1項各号に掲げる権限の全部若しくは一部を行わないこととする場合における同項各号に掲げる権限に係る事務の引継ぎその他の必要な事項は、法務省令で定める。
第9条 この法律の規定による日本司法支援センターの処分又はその不作為について不服がある者は、法務大臣に対して審査請求をすることができる。この場合において、法務大臣は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第25条第2項及び第3項、第46条第1項及び第2項、第47条並びに第49条第3項の規定の適用については、日本司法支援センターの上級行政庁とみなす。
第10条 第5条から前条までに定めるもののほか、被害者参加旅費等の支給に関し必要な事項(第6条第1項及び第2項の規定により裁判所が行う手続に関する事項を除く。)は、法務省令で定める。
第5章 被害者参加弁護士の選定等
第11条 刑事訴訟法第316条の34から第316条の38までに規定する行為を弁護士に委託しようとする被害者参加人であって、その資力(その者に属する現金、預金その他政令で定めるこれらに準ずる資産の合計額をいう。以下同じ。)から、手続への参加を許された刑事被告事件に係る犯罪行為により生じた負傷又は疾病の療養に要する費用その他の当該犯罪行為を原因として請求の日から6月以内に支出することとなると認められる費用の額(以下「療養費等の額」という。)を控除した額が基準額(標準的な6月間の必要生計費を勘案して一般に被害者参加弁護士(被害者参加人の委託を受けて同法第316条の34から第316条の38までに規定する行為を行う弁護士をいう。以下同じ。)の報酬及び費用を賄うに足りる額として政令で定める額をいう。以下同じ。)に満たないものは、当該被告事件の係属する裁判所に対し、被害者参加弁護士を選定することを請求することができる。
2 前項の規定による請求は、日本司法支援センターを経由してしなければならない。この場合においては、被害者参加人は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める書面を提出しなければならない。
一 その資力が基準額に満たない者 資力及びその内訳を申告する書面
二 前号に掲げる者以外の者 資力及び療養費等の額並びにこれらの内訳を申告する書面
3 日本司法支援センターは、第1項の規定による請求があったときは、裁判所に対し、これを通知するとともに、前項の規定により提出を受けた書面を送付しなければならない。
第12条 日本司法支援センターは、前条第1項の規定による請求があったときは、裁判所が選定する被害者参加弁護士の候補を指名し、裁判所に通知しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、日本司法支援センターは、次条第1項各号のいずれかに該当することが明らかであると認めるときは、前項の規定による指名及び通知をしないことができる。この場合においては、日本司法支援センターは、裁判所にその旨を通知しなければならない。
3 日本司法支援センターは、第1項の規定による指名をするに当たっては、前条第1項の規定による請求をした者の意見を聴かなければならない。
第13条 裁判所は、第11条第1項の規定による請求があったときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、当該被害者参加人のため被害者参加弁護士を選定するものとする。
一 請求が不適法であるとき。
二 請求をした者が第11条第1項に規定する者に該当しないとき。
三 請求をした者がその責めに帰すべき事由により被害者参加弁護士の選定を取り消された者であるとき。
2 裁判所は、前項の規定により被害者参加弁護士を選定する場合において、必要があるときは、日本司法支援センターに対し、被害者参加弁護士の候補を指名して通知するよう求めることができる。この場合においては、前条第1項及び第3項の規定を準用する。
第14条 裁判所による被害者参加弁護士の選定は、審級ごとにしなければならない。
2 被害者参加弁護士の選定は、弁論が併合された事件についてもその効力を有する。ただし、被害者参加人が手続への参加を許されていない事件については、この限りでない。
3 被害者参加弁護士の選定は、刑事訴訟法第316条の33第3項の決定があったときは、その効力を失う。
4 裁判所により選定された被害者参加弁護士は、旅費、日当、宿泊料及び報酬を請求することができる。
5 前項の規定により被害者参加弁護士に支給すべき旅費、日当、宿泊料及び報酬の額については、刑事訴訟法第38条第2項の規定により弁護人に支給すべき旅費、日当、宿泊料及び報酬の例による。
第15条 裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、被害者参加弁護士の選定を取り消すことができる。
一 被害者参加人が自ら刑事訴訟法第316条の34から第316条の38までに規定する行為を他の弁護士に委託したことその他の事由により被害者参加弁護士にその職務を行わせる必要がなくなったとき。
二 被害者参加人と被害者参加弁護士との利益が相反する状況にあり被害者参加弁護士にその職務を継続させることが相当でないとき。
三 心身の故障その他の事由により、被害者参加弁護士が職務を行うことができず、又は職務を行うことが困難となったとき。
四 被害者参加弁護士がその任務に著しく反したことによりその職務を継続させることが相当でないとき。
五 被害者参加弁護士に対する暴行、脅迫その他の被害者参加人の責めに帰すべき事由により被害者参加弁護士にその職務を継続させることが相当でないとき。
2 裁判所は、前項第2号から第4号までに掲げる事由により被害者参加弁護士の選定を取り消したときは、更に被害者参加弁護士を選定するものとする。この場合においては、第13条第2項の規定を準用する。
第16条 被害者参加人が、裁判所の判断を誤らせる目的で、その資力又は療養費等の額について虚偽の記載のある第11条第2項各号に定める書面を提出したときは、10万円以下の過料に処する。
第17条 被害者参加人が、裁判所の判断を誤らせる目的で、その資力又は療養費等の額について虚偽の記載のある第11条第2項各号に定める書面を提出したことによりその判断を誤らせたときは、裁判所は、決定で、当該被害者参加人から、被害者参加弁護士に支給した旅費、日当、宿泊料及び報酬の全部又は一部を徴収することができる。
2 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。この場合においては、即時抗告に関する刑事訴訟法の規定を準用する。
3 費用賠償の裁判の執行に関する刑事訴訟法の規定は、第1項の決定の執行について準用する。
第18条 刑事訴訟法第43条第3項及び第4項の規定は被害者参加弁護士の選定及びその取消しについて、同条第3項及び第4項並びに同法第44条第1項の規定は前条第1項の決定について、それぞれ準用する。
第6章 民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解
第19条 刑事被告事件の被告人と被害者等は、両者の間における民事上の争い(当該被告事件に係る被害についての争いを含む場合に限る。)について合意が成立した場合には、当該被告事件の係属する第一審裁判所又は控訴裁判所に対し、共同して当該合意の公判調書への記載を求める申立てをすることができる。
2 前項の合意が被告人の被害者等に対する金銭の支払を内容とする場合において、被告人以外の者が被害者等に対し当該債務について保証する旨又は連帯して責任を負う旨を約したときは、その者も、同項の申立てとともに、被告人及び被害者等と共同してその旨の公判調書への記載を求める申立てをすることができる。
3 前二項の規定による申立ては、弁論の終結までに、公判期日に出頭し、当該申立てに係る合意及びその合意がされた民事上の争いの目的である権利を特定するに足りる事実を記載した書面を提出してしなければならない。
4 第1項又は第2項の規定による申立てに係る合意を公判調書に記載したときは、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
第20条 前条第1項若しくは第2項の規定による申立てに基づき公判調書に記載された合意をした者又は利害関係を疎明した第三者は、第3章及び刑事訴訟法第49条の規定にかかわらず、裁判所書記官に対し、当該公判調書(当該合意及びその合意がされた民事上の争いの目的である権利を特定するに足りる事実が記載された部分に限る。)、当該申立てに係る前条第3項の書面その他の当該合意に関する記録(以下「和解記録」という。)の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は和解に関する事項の証明書の交付を請求することができる。ただし、和解記録の閲覧及び謄写の請求は、和解記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。
2 前項に規定する和解記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は和解に関する事項の証明書の交付の請求に関する裁判所書記官の処分に対する異議の申立てについては民事訴訟法(平成8年法律第109号)第121条の例により、和解記録についての秘密保護のための閲覧等の制限の手続については同法第92条の例による。
3 和解記録は、刑事被告事件の終結後は、当該被告事件の第一審裁判所において保管するものとする。
第21条 前二条に規定する民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解に関する手続については、その性質に反しない限り、民事訴訟法第1編第3章第1節(選定当事者及び特別代理人に関する規定を除く。)及び第4節(第60条を除く。)の規定を準用する。
第22条 第19条に規定する民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解に係る執行文付与の訴え、執行文付与に対する異議の訴え及び請求異議の訴えは、民事執行法(昭和54年法律第4号)第33条第2項(同法第34条第3項及び第35条第3項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、当該被告事件の第一審裁判所(第一審裁判所が簡易裁判所である場合において、その和解に係る請求が簡易裁判所の管轄に属しないものであるときは、その簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所)の管轄に専属する。
第7章 刑事訴訟手続に伴う犯罪被害者等の損害賠償請求に係る裁判手続の特例
第1節 損害賠償命令の申立て等
第23条 次に掲げる罪に係る刑事被告事件(刑事訴訟法第451条第1項の規定により更に審判をすることとされたものを除く。)の被害者又はその一般承継人は、当該被告事件の係属する裁判所(地方裁判所に限る。)に対し、その弁論の終結までに、損害賠償命令(当該被告事件に係る訴因として特定された事実を原因とする不法行為に基づく損害賠償の請求(これに附帯する損害賠償の請求を含む。)について、その賠償を被告人に命ずることをいう。以下同じ。)の申立てをすることができる。
一 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪又はその未遂罪
二 次に掲げる罪又はその未遂罪
イ 刑法(明治40年法律第45号)第176条から第179条まで(強制わいせつ、強制性交等、準強制わいせつ及び準強制性交等、監護者わいせつ及び監護者性交等)の罪
ロ 刑法第220条(逮捕及び監禁)の罪
ハ 刑法第224条から第227条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等)の罪
ニ イからハまでに掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(前号に掲げる罪を除く。)
2 損害賠償命令の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面を提出してしなければならない。
一 当事者及び法定代理人
二 請求の趣旨及び刑事被告事件に係る訴因として特定された事実その他請求を特定するに足りる事実
3 前項の書面には、同項各号に掲げる事項その他最高裁判所規則で定める事項以外の事項を記載してはならない。
第24条 裁判所は、前条第2項の書面の提出を受けたときは、第27条第1項第1号の規定により損害賠償命令の申立てを却下する場合を除き、遅滞なく、当該書面を申立ての相手方である被告人に送達しなければならない。
第25条 刑事被告事件について刑事訴訟法第7条、第8条、第11条第2項若しくは第19条第1項の決定又は同法第17条若しくは第18条の規定による管轄移転の請求に対する決定があったときは、これらの決定により当該被告事件の審判を行うこととなった裁判所が、損害賠償命令の申立てについての審理及び裁判を行う。
第26条 損害賠償命令の申立てについての審理(請求の放棄及び認諾並びに和解(第19条の規定による民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解を除く。)のための手続を含む。)及び裁判(次条第1項第1号又は第2号の規定によるものを除く。)は、刑事被告事件について終局裁判の告知があるまでは、これを行わない。
2 裁判所は、前項に規定する終局裁判の告知があるまでの間、申立人に、当該刑事被告事件の公判期日を通知しなければならない。
第27条 裁判所は、次に掲げる場合には、決定で、損害賠償命令の申立てを却下しなければならない。
一 損害賠償命令の申立てが不適法であると認めるとき(刑事被告事件に係る罰条が撤回又は変更されたため、当該被告事件が第23条第1項各号に掲げる罪に係るものに該当しなくなったときを除く。)。
二 刑事訴訟法第4条、第5条又は第10条第2項の決定により、刑事被告事件が地方裁判所以外の裁判所に係属することとなったとき。
三 刑事被告事件について、刑事訴訟法第329条若しくは第336条から第338条までの判決若しくは同法第339条の決定又は少年法(昭和23年法律第168号)第55条の決定があったとき。
四 刑事被告事件について、刑事訴訟法第335条第1項に規定する有罪の言渡しがあった場合において、当該言渡しに係る罪が第23条第1項各号に掲げる罪に該当しないとき。
2 前項第1号に該当することを理由とする同項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
3 前項の規定による場合のほか、第1項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
第28条 損害賠償命令の申立てについて、前条第1項の決定(同項第1号に該当することを理由とするものを除く。)の告知があったときは、当該告知を受けた時から6月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
第2節 審理及び裁判等
第29条 損害賠償命令の申立てについての裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
2 前項の規定により口頭弁論をしない場合には、裁判所は、当事者を審尋することができる。
第30条 刑事被告事件について刑事訴訟法第335条第1項に規定する有罪の言渡しがあった場合(当該言渡しに係る罪が第23条第1項各号に掲げる罪に該当する場合に限る。)には、裁判所は、直ちに、損害賠償命令の申立てについての審理のための期日(以下「審理期日」という。)を開かなければならない。ただし、直ちに審理期日を開くことが相当でないと認めるときは、裁判長は、速やかに、最初の審理期日を定めなければならない。
2 審理期日には、当事者を呼び出さなければならない。
3 損害賠償命令の申立てについては、特別の事情がある場合を除き、四回以内の審理期日において、審理を終結しなければならない。
4 裁判所は、最初の審理期日において、刑事被告事件の訴訟記録のうち必要でないと認めるものを除き、その取調べをしなければならない。
第31条 裁判所は、審理を終結するときは、審理期日においてその旨を宣言しなければならない。
第32条 損害賠償命令の申立てについての裁判(第27条第1項の決定を除く。以下この条から第34条までにおいて同じ。)は、次に掲げる事項を記載した決定書を作成して行わなければならない。
一 主文
二 請求の趣旨及び当事者の主張の要旨
三 理由の要旨
四 審理の終結の日
五 当事者及び法定代理人
六 裁判所
2 損害賠償命令については、裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言することができる。
3 第1項の決定書は、当事者に送達しなければならない。この場合においては、損害賠償命令の申立てについての裁判の効力は、当事者に送達された時に生ずる。
4 裁判所は、相当と認めるときは、第1項の規定にかかわらず、決定書の作成に代えて、当事者が出頭する審理期日において主文及び理由の要旨を口頭で告知する方法により、損害賠償命令の申立てについての裁判を行うことができる。この場合においては、当該裁判の効力は、その告知がされた時に生ずる。
5 裁判所は、前項の規定により損害賠償命令の申立てについての裁判を行った場合には、裁判所書記官に、第1項各号に掲げる事項を調書に記載させなければならない。
第3節 異議等
第33条 当事者は、損害賠償命令の申立てについての裁判に対し、前条第3項の規定による送達又は同条第4項の規定による告知を受けた日から2週間の不変期間内に、裁判所に異議の申立てをすることができる。
2 裁判所は、異議の申立てが不適法であると認めるときは、決定で、これを却下しなければならない。
3 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
4 適法な異議の申立てがあったときは、損害賠償命令の申立てについての裁判は、仮執行の宣言を付したものを除き、その効力を失う。
5 適法な異議の申立てがないときは、損害賠償命令の申立てについての裁判は、確定判決と同一の効力を有する。
6 民事訴訟法第358条及び第360条の規定は、第1項の異議について準用する。
第34条 損害賠償命令の申立てについての裁判に対し適法な異議の申立てがあったときは、損害賠償命令の申立てに係る請求については、その目的の価額に従い、当該申立ての時に、当該申立てをした者が指定した地(その指定がないときは、当該申立ての相手方である被告人の普通裁判籍の所在地)を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所に訴えの提起があったものとみなす。この場合においては、第23条第2項の書面を訴状と、第24条の規定による送達を訴状の送達とみなす。
2 前項の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、損害賠償命令の申立てに係る事件(以下「損害賠償命令事件」という。)に関する手続の費用は、訴訟費用の一部とする。
3 第1項の地方裁判所又は簡易裁判所は、その訴えに係る訴訟の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、決定で、これを管轄裁判所に移送しなければならない。
4 前項の規定による移送の決定及び当該移送の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第35条 前条第1項の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見(刑事被告事件に係る訴訟が終結した後においては、当該訴訟の記録を保管する検察官の意見)を聴き、第30条第4項の規定により取り調べた当該被告事件の訴訟記録(以下「刑事関係記録」という。)中、関係者の名誉又は生活の平穏を著しく害するおそれがあると認めるもの、捜査又は公判に支障を及ぼすおそれがあると認めるものその他前条第1項の地方裁判所又は簡易裁判所に送付することが相当でないと認めるものを特定しなければならない。
2 裁判所書記官は、前条第1項の地方裁判所又は簡易裁判所の裁判所書記官に対し、損害賠償命令事件の記録(前項の規定により裁判所が特定したものを除く。)を送付しなければならない。
第36条 第34条第1項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における前条第2項の規定により送付された記録についての書証の申出は、民事訴訟法第219条の規定にかかわらず、書証とすべきものを特定することによりすることができる。
第37条 仮執行の宣言を付した損害賠償命令に係る請求について第34条第1項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合において、当該訴えについてすべき判決が損害賠償命令と符合するときは、その判決において、損害賠償命令を認可しなければならない。ただし、損害賠償命令の手続が法律に違反したものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償命令を認可する場合を除き、仮執行の宣言を付した損害賠償命令に係る請求について第34条第1項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における当該訴えについてすべき判決においては、損害賠償命令を取り消さなければならない。
3 民事訴訟法第363条の規定は、仮執行の宣言を付した損害賠償命令に係る請求について第34条第1項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における訴訟費用について準用する。この場合において、同法第363条第1項中「異議を却下し、又は手形訴訟」とあるのは、「損害賠償命令」と読み替えるものとする。
第4節 民事訴訟手続への移行
第38条 裁判所は、最初の審理期日を開いた後、審理に日時を要するため第30条第3項に規定するところにより審理を終結することが困難であると認めるときは、申立てにより又は職権で、損害賠償命令事件を終了させる旨の決定をすることができる。
2 次に掲げる場合には、裁判所は、損害賠償命令事件を終了させる旨の決定をしなければならない。
一 刑事被告事件について終局裁判の告知があるまでに、申立人から、損害賠償命令の申立てに係る請求についての審理及び裁判を民事訴訟手続で行うことを求める旨の申述があったとき。
二 損害賠償命令の申立てについての裁判の告知があるまでに、当事者から、当該申立てに係る請求についての審理及び裁判を民事訴訟手続で行うことを求める旨の申述があり、かつ、これについて相手方の同意があったとき。
3 前二項の決定及び第1項の申立てを却下する決定に対しては、不服を申し立てることができない。
4 第34条から第36条までの規定は、第1項又は第2項の規定により損害賠償命令事件が終了した場合について準用する。
第5節 補則
第39条 当事者又は利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、損害賠償命令事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は損害賠償命令事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
2 前項の規定は、損害賠償命令事件の記録中の録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、これらの物について当事者又は利害関係を疎明した第三者の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならない。
3 前二項の規定にかかわらず、刑事関係記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下この条において「閲覧等」という。)の請求については、裁判所が許可したときに限り、することができる。
4 裁判所は、当事者から刑事関係記録の閲覧等の許可の申立てがあったときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見(刑事被告事件に係る訴訟が終結した後においては、当該訴訟の記録を保管する検察官の意見)を聴き、不当な目的によるものと認める場合、関係者の名誉又は生活の平穏を著しく害するおそれがあると認める場合、捜査又は公判に支障を及ぼすおそれがあると認める場合その他相当でないと認める場合を除き、その閲覧等を許可しなければならない。
5 裁判所は、利害関係を疎明した第三者から刑事関係記録の閲覧等の許可の申立てがあったときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見(刑事被告事件に係る訴訟が終結した後においては、当該訴訟の記録を保管する検察官の意見)を聴き、正当な理由がある場合であって、関係者の名誉又は生活の平穏を害するおそれの有無、捜査又は公判に支障を及ぼすおそれの有無その他の事情を考慮して相当と認めるときは、その閲覧等を許可することができる。
6 損害賠償命令事件の記録の閲覧、謄写及び複製の請求は、当該記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。
7 第4項の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
8 第5項の申立てを却下する決定に対しては、不服を申し立てることができない。
第40条 特別の定めがある場合を除き、損害賠償命令事件に関する手続については、その性質に反しない限り、民事訴訟法第2条、第14条、第1編第2章第3節、第3章(第47条から第51条までを除く。)、第4章、第5章(第87条、第91条、第2節第2款、第116条及び第118条を除く。)、第6章及び第7章、第2編第1章(第133条、第134条、第137条第2項及び第3項、第138条第1項、第139条、第140条、第145条並びに第146条を除く。)、第3章(第156条の2、第157条の2、第158条、第159条第3項、第161条第3項及び第3節を除く。)、第4章(第235条第1項ただし書及び第236条を除く。)、第5章(第249条から第255条まで並びに第259条第1項及び第2項を除く。)及び第6章(第262条第2項、第263条及び第266条第2項を除く。)、第3編第3章、第4編並びに第8編(第403条第1項第1号、第2号及び第4号から第6号までを除く。)の規定を準用する。
第8章 雑則
第41条 第3条第1項又は第4条第1項の規定による訴訟記録の閲覧又は謄写の手数料については、その性質に反しない限り、民事訴訟費用等に関する法律(昭和46年法律第40号)第7条から第10条まで及び別表第二の一の項から三の項までの規定(同表一の項上欄中「(事件の係属中に当事者等が請求するものを除く。)」とある部分を除く。)を準用する。
2 第6章に規定する民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解に関する手続の手数料については、その性質に反しない限り、民事訴訟費用等に関する法律第3条第1項及び第7条から第10条まで並びに別表第一の九の項、一七の項及び一八の項(上欄(4)に係る部分に限る。)並びに別表第二の一の項から三の項までの規定(同表一の項上欄中「(事件の係属中に当事者等が請求するものを除く。)」とある部分を除く。)を準用する。
第42条 損害賠償命令の申立てをするには、2000円の手数料を納めなければならない。
2 民事訴訟費用等に関する法律第3条第1項及び別表第一の一七の項の規定は、第33条第1項の規定による異議の申立ての手数料について準用する。
3 損害賠償命令の申立てをした者は、第34条第1項(第38条第4項において準用する場合を含む。)の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、速やかに、民事訴訟費用等に関する法律第3条第1項及び別表第一の一の項の規定により納めるべき手数料の額から損害賠償命令の申立てについて納めた手数料の額を控除した額の手数料を納めなければならない。
4 前三項に規定するもののほか、損害賠償命令事件に関する手続の費用については、その性質に反しない限り、民事訴訟費用等に関する法律の規定を準用する。
第43条 この法律に定めるもののほか、第3章に規定する訴訟記録の閲覧又は謄写、第6条第1項及び第2項の規定により裁判所が行う手続、第5章に規定する被害者参加弁護士の選定等、第6章に規定する民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解並びに損害賠償命令事件に関する手続について必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
1 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、それぞれ当該各号に定める日から施行する。
一 略
二 第1条(刑事訴訟法第290条の次に一条を加える改正規定、同法第291条第1項の次に一項を加える改正規定、同法第291条の2及び第295条の改正規定、同法第299条の2の次に一条を加える改正規定並びに同法第305条、第316条の23、第321条の2第2項及び第350条の8の改正規定に限る。)及び第3条の規定 公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日
第3条
2 第4条の規定による改正後の犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第5章及び第28条の規定は、この法律の施行の際現に係属している刑事被告事件については、適用しない。
第9条 政府は、この法律の施行後3年を経過した場合において、この法律による改正後の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
第10条 政府は、被害者参加人(第1条の規定による改正後の刑事訴訟法第316条の33第3項に規定する被害者参加人をいう。以下同じ。)の委託を受けた弁護士の役割の重要性にかんがみ、資力の乏しい被害者参加人も弁護士の法的援助を受けられるようにするため、必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
1 この法律は、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成19年法律第95号)の施行の日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
この法律は、新非訟事件手続法の施行の日から施行する。
1 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
2 第1条の規定による改正後の犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第5条第1項の規定は、この法律の施行の日以後に出発する旅行から適用する。
第1条 この法律は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)の施行の日から施行する。
第5条 行政庁の処分その他の行為又は不作為についての不服申立てであってこの法律の施行前にされた行政庁の処分その他の行為又はこの法律の施行前にされた申請に係る行政庁の不作為に係るものについては、この附則に特別の定めがある場合を除き、なお従前の例による。
第6条 この法律による改正前の法律の規定により不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為を経た後でなければ訴えを提起できないこととされる事項であって、当該不服申立てを提起しないでこの法律の施行前にこれを提起すべき期間を経過したもの(当該不服申立てが他の不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為を経た後でなければ提起できないとされる場合にあっては、当該他の不服申立てを提起しないでこの法律の施行前にこれを提起すべき期間を経過したものを含む。)の訴えの提起については、なお従前の例による。
2 この法律の規定による改正前の法律の規定(前条の規定によりなお従前の例によることとされる場合を含む。)により異議申立てが提起された処分その他の行為であって、この法律の規定による改正後の法律の規定により審査請求に対する裁決を経た後でなければ取消しの訴えを提起することができないこととされるものの取消しの訴えの提起については、なお従前の例による。
3 不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為の取消しの訴えであって、この法律の施行前に提起されたものについては、なお従前の例による。
第9条 この法律の施行前にした行為並びに附則第5条及び前二条の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第10条 附則第5条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。
この法律は、民法改正法の施行の日から施行する。ただし、第103条の2、第103条の3、第267条の2、第267条の3及び第362条の規定は、公布の日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して20日を経過した日から施行する。
第9条 政府は、この法律の施行後3年を目途として、性犯罪における被害の実情、この法律による改正後の規定の施行の状況等を勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。