民事執行法
第1章 総則
第1条 強制執行、担保権の実行としての競売及び民法(明治29年法律第89号)、商法(明治32年法律第48号)その他の法律の規定による換価のための競売並びに債務者の財産状況の調査(以下「民事執行」と総称する。)については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。
第2条 民事執行は、申立てにより、裁判所又は執行官が行う。
第3条 裁判所が行う民事執行に関してはこの法律の規定により執行処分を行うべき裁判所をもつて、執行官が行う執行処分に関してはその執行官の所属する地方裁判所をもつて執行裁判所とする。
第4条 執行裁判所のする裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
第5条 執行裁判所は、執行処分をするに際し、必要があると認めるときは、利害関係を有する者その他参考人を審尋することができる。
第6条 執行官は、職務の執行に際し抵抗を受けるときは、その抵抗を排除するために、威力を用い、又は警察上の援助を求めることができる。ただし、第64条の2第5項(第188条において準用する場合を含む。)の規定に基づく職務の執行については、この限りでない。
2 執行官以外の者で執行裁判所の命令により民事執行に関する職務を行うものは、職務の執行に際し抵抗を受けるときは、執行官に対し、援助を求めることができる。
第7条 執行官又は執行裁判所の命令により民事執行に関する職務を行う者(以下「執行官等」という。)は、人の住居に立ち入つて職務を執行するに際し、住居主、その代理人又は同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものに出会わないときは、市町村の職員、警察官その他証人として相当と認められる者を立ち会わせなければならない。執行官が前条第1項の規定により威力を用い、又は警察上の援助を受けるときも、同様とする。
第8条 執行官等は、日曜日その他の一般の休日又は午後七時から翌日の午前七時までの間に人の住居に立ち入つて職務を執行するには、執行裁判所の許可を受けなければならない。
2 執行官等は、職務の執行に当たり、前項の規定により許可を受けたことを証する文書を提示しなければならない。
第9条 執行官等は、職務を執行する場合には、その身分又は資格を証する文書を携帯し、利害関係を有する者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
第10条 民事執行の手続に関する裁判に対しては、特別の定めがある場合に限り、執行抗告をすることができる。
2 執行抗告は、裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内に、抗告状を原裁判所に提出してしなければならない。
3 抗告状に執行抗告の理由の記載がないときは、抗告人は、抗告状を提出した日から1週間以内に、執行抗告の理由書を原裁判所に提出しなければならない。
4 執行抗告の理由は、最高裁判所規則で定めるところにより記載しなければならない。
5 次の各号に該当するときは、原裁判所は、執行抗告を却下しなければならない。
一 抗告人が第3項の規定による執行抗告の理由書の提出をしなかつたとき。
二 執行抗告の理由の記載が明らかに前項の規定に違反しているとき。
三 執行抗告が不適法であつてその不備を補正することができないことが明らかであるとき。
四 執行抗告が民事執行の手続を不当に遅延させることを目的としてされたものであるとき。
6 抗告裁判所は、執行抗告についての裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで原裁判の執行の停止若しくは民事執行の手続の全部若しくは一部の停止を命じ、又は担保を立てさせてこれらの続行を命ずることができる。事件の記録が原裁判所に存する間は、原裁判所も、これらの処分を命ずることができる。
7 抗告裁判所は、抗告状又は執行抗告の理由書に記載された理由に限り、調査する。ただし、原裁判に影響を及ぼすべき法令の違反又は事実の誤認の有無については、職権で調査することができる。
8 第5項の規定による決定に対しては、執行抗告をすることができる。
9 第6項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
10 民事訴訟法(平成8年法律第109号)第349条の規定は、執行抗告をすることができる裁判が確定した場合について準用する。
第11条 執行裁判所の執行処分で執行抗告をすることができないものに対しては、執行裁判所に執行異議を申し立てることができる。執行官の執行処分及びその遅怠に対しても、同様とする。
2 前条第6項前段及び第9項の規定は、前項の規定による申立てがあつた場合について準用する。
第12条 民事執行の手続を取り消す旨の決定に対しては、執行抗告をすることができる。民事執行の手続を取り消す執行官の処分に対する執行異議の申立てを却下する裁判又は執行官に民事執行の手続の取消しを命ずる決定に対しても、同様とする。
2 前項の規定により執行抗告をすることができる裁判は、確定しなければその効力を生じない。
第13条 民事訴訟法第54条第1項の規定により訴訟代理人となることができる者以外の者は、執行裁判所でする手続については、訴え又は執行抗告に係る手続を除き、執行裁判所の許可を受けて代理人となることができる。
2 執行裁判所は、いつでも前項の許可を取り消すことができる。
第14条 執行裁判所に対し民事執行の申立てをするときは、申立人は、民事執行の手続に必要な費用として裁判所書記官の定める金額を予納しなければならない。予納した費用が不足する場合において、裁判所書記官が相当の期間を定めてその不足する費用の予納を命じたときも、同様とする。
2 前項の規定による裁判所書記官の処分に対しては、その告知を受けた日から1週間の不変期間内に、執行裁判所に異議を申し立てることができる。
3 第1項の規定による裁判所書記官の処分は、確定しなければその効力を生じない。
4 申立人が費用を予納しないときは、執行裁判所は、民事執行の申立てを却下し、又は民事執行の手続を取り消すことができる。
5 前項の規定により申立てを却下する決定に対しては、執行抗告をすることができる。
第15条 この法律の規定により担保を立てるには、担保を立てるべきことを命じた裁判所(以下この項において「発令裁判所」という。)又は執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に金銭又は発令裁判所が相当と認める有価証券(社債、株式等の振替に関する法律(平成13年法律第75号)第278条第1項に規定する振替債を含む。)を供託する方法その他最高裁判所規則で定める方法によらなければならない。ただし、当事者が特別の契約をしたときは、その契約による。
2 民事訴訟法第77条、第79条及び第80条の規定は、前項の担保について準用する。
第16条 民事執行の手続について、執行裁判所に対し申立て、申出若しくは届出をし、又は執行裁判所から文書の送達を受けた者は、送達を受けるべき場所(日本国内に限る。)を執行裁判所に届け出なければならない。この場合においては、送達受取人をも届け出ることができる。
2 民事訴訟法第104条第2項及び第3項並びに第107条の規定は、前項前段の場合について準用する。
3 第1項前段の規定による届出をしない者(前項において準用する民事訴訟法第104条第3項に規定する者を除く。)に対する送達は、事件の記録に表れたその者の住所、居所、営業所又は事務所においてする。
4 前項の規定による送達をすべき場合において、第20条において準用する民事訴訟法第106条の規定により送達をすることができないときは、裁判所書記官は、同項の住所、居所、営業所又は事務所にあてて、書類を書留郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成14年法律第99号)第2条第6項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第9項に規定する特定信書便事業者の提供する同条第2項に規定する信書便の役務のうち書留郵便に準ずるものとして最高裁判所規則で定めるものに付して発送することができる。この場合においては、民事訴訟法第107条第2項及び第3項の規定を準用する。
第17条 執行裁判所の行う民事執行について、利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し、事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
第18条 民事執行のため必要がある場合には、執行裁判所又は執行官は、官庁又は公署に対し、援助を求めることができる。
2 前項に規定する場合には、執行裁判所又は執行官は、民事執行の目的である財産(財産が土地である場合にはその上にある建物を、財産が建物である場合にはその敷地を含む。)に対して課される租税その他の公課について、所管の官庁又は公署に対し、必要な証明書の交付を請求することができる。
3 前項の規定は、民事執行の申立てをしようとする者がその申立てのため同項の証明書を必要とする場合について準用する。
第19条 この法律に規定する裁判所の管轄は、専属とする。
第20条 特別の定めがある場合を除き、民事執行の手続に関しては、民事訴訟法の規定を準用する。
第21条 この法律に定めるもののほか、民事執行の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第2章 強制執行
第1節 総則
第22条 強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
一 確定判決
二 仮執行の宣言を付した判決
三 抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあつては、確定したものに限る。)
三の二 仮執行の宣言を付した損害賠償命令
三の三 仮執行の宣言を付した届出債権支払命令
四 仮執行の宣言を付した支払督促
四の二 訴訟費用、和解の費用若しくは非訟事件(他の法令の規定により非訟事件手続法(平成23年法律第51号)の規定を準用することとされる事件を含む。)、家事事件若しくは国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(平成25年法律第48号)第29条に規定する子の返還に関する事件の手続の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分又は第42条第4項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定める裁判所書記官の処分(後者の処分にあつては、確定したものに限る。)
五 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)
六 確定した執行判決のある外国裁判所の判決(家事事件における裁判を含む。第24条において同じ。)
六の二 確定した執行決定のある仲裁判断
七 確定判決と同一の効力を有するもの(第3号に掲げる裁判を除く。)
第23条 執行証書以外の債務名義による強制執行は、次に掲げる者に対し、又はその者のためにすることができる。
一 債務名義に表示された当事者
二 債務名義に表示された当事者が他人のために当事者となつた場合のその他人
三 前二号に掲げる者の債務名義成立後の承継人(前条第1号、第2号又は第6号に掲げる債務名義にあつては口頭弁論終結後の承継人、同条第3号の2に掲げる債務名義又は同条第7号に掲げる債務名義のうち損害賠償命令に係るものにあつては審理終結後の承継人)
2 執行証書による強制執行は、執行証書に表示された当事者又は執行証書作成後のその承継人に対し、若しくはこれらの者のためにすることができる。
3 第1項に規定する債務名義による強制執行は、同項各号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者に対しても、することができる。
第24条 外国裁判所の判決についての執行判決を求める訴えは、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所(家事事件における裁判に係るものにあつては、家庭裁判所。以下この項において同じ。)が管轄し、この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
2 前項に規定する地方裁判所は、同項の訴えの全部又は一部が家庭裁判所の管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、同項の規定にかかわらず、申立てにより又は職権で、当該訴えに係る訴訟の全部又は一部について自ら審理及び裁判をすることができる。
3 第1項に規定する家庭裁判所は、同項の訴えの全部又は一部が地方裁判所の管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、同項の規定にかかわらず、申立てにより又は職権で、当該訴えに係る訴訟の全部又は一部について自ら審理及び裁判をすることができる。
4 執行判決は、裁判の当否を調査しないでしなければならない。
5 第1項の訴えは、外国裁判所の判決が、確定したことが証明されないとき、又は民事訴訟法第118条各号(家事事件手続法(平成23年法律第52号)第79条の2において準用する場合を含む。)に掲げる要件を具備しないときは、却下しなければならない。
6 執行判決においては、外国裁判所の判決による強制執行を許す旨を宣言しなければならない。
第25条 強制執行は、執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施する。ただし、少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促により、これに表示された当事者に対し、又はその者のためにする強制執行は、その正本に基づいて実施する。
第26条 執行文は、申立てにより、執行証書以外の債務名義については事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官が、執行証書についてはその原本を保存する公証人が付与する。
2 執行文の付与は、債権者が債務者に対しその債務名義により強制執行をすることができる場合に、その旨を債務名義の正本の末尾に付記する方法により行う。
第27条 請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合においては、執行文は、債権者がその事実の到来したことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。
2 債務名義に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者とする執行文は、その者に対し、又はその者のために強制執行をすることができることが裁判所書記官若しくは公証人に明白であるとき、又は債権者がそのことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。
3 執行文は、債務名義について次に掲げる事由のいずれかがあり、かつ、当該債務名義に基づく不動産の引渡し又は明渡しの強制執行をする前に当該不動産を占有する者を特定することを困難とする特別の事情がある場合において、債権者がこれらを証する文書を提出したときに限り、債務者を特定しないで、付与することができる。
一 債務名義が不動産の引渡し又は明渡しの請求権を表示したものであり、これを本案とする占有移転禁止の仮処分命令(民事保全法(平成元年法律第91号)第25条の2第1項に規定する占有移転禁止の仮処分命令をいう。)が執行され、かつ、同法第62条第1項の規定により当該不動産を占有する者に対して当該債務名義に基づく引渡し又は明渡しの強制執行をすることができるものであること。
二 債務名義が強制競売の手続(担保権の実行としての競売の手続を含む。以下この号において同じ。)における第83条第1項本文(第188条において準用する場合を含む。)の規定による命令(以下「引渡命令」という。)であり、当該強制競売の手続において当該引渡命令の引渡義務者に対し次のイからハまでのいずれかの保全処分及び公示保全処分(第55条第1項に規定する公示保全処分をいう。以下この項において同じ。)が執行され、かつ、第83条の2第1項(第187条第5項又は第188条において準用する場合を含む。)の規定により当該不動産を占有する者に対して当該引渡命令に基づく引渡しの強制執行をすることができるものであること。
イ 第55条第1項第3号(第188条において準用する場合を含む。)に掲げる保全処分及び公示保全処分
ロ 第77条第1項第3号(第188条において準用する場合を含む。)に掲げる保全処分及び公示保全処分
ハ 第187条第1項に規定する保全処分又は公示保全処分(第55条第1項第3号に掲げるものに限る。)
4 前項の執行文の付された債務名義の正本に基づく強制執行は、当該執行文の付与の日から4週間を経過する前であつて、当該強制執行において不動産の占有を解く際にその占有者を特定することができる場合に限り、することができる。
5 第3項の規定により付与された執行文については、前項の規定により当該執行文の付された債務名義の正本に基づく強制執行がされたときは、当該強制執行によつて当該不動産の占有を解かれた者が、債務者となる。
第28条 執行文は、債権の完全な弁済を得るため執行文の付された債務名義の正本が数通必要であるとき、又はこれが滅失したときに限り、更に付与することができる。
2 前項の規定は、少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促の正本を更に交付する場合について準用する。
第29条 強制執行は、債務名義又は確定により債務名義となるべき裁判の正本又は謄本が、あらかじめ、又は同時に、債務者に送達されたときに限り、開始することができる。第27条の規定により執行文が付与された場合においては、執行文及び同条の規定により債権者が提出した文書の謄本も、あらかじめ、又は同時に、送達されなければならない。
第30条 請求が確定期限の到来に係る場合においては、強制執行は、その期限の到来後に限り、開始することができる。
2 担保を立てることを強制執行の実施の条件とする債務名義による強制執行は、債権者が担保を立てたことを証する文書を提出したときに限り、開始することができる。
第31条 債務者の給付が反対給付と引換えにすべきものである場合においては、強制執行は、債権者が反対給付又はその提供のあつたことを証明したときに限り、開始することができる。
2 債務者の給付が、他の給付について強制執行の目的を達することができない場合に、他の給付に代えてすべきものであるときは、強制執行は、債権者が他の給付について強制執行の目的を達することができなかつたことを証明したときに限り、開始することができる。
第32条 執行文の付与の申立てに関する処分に対しては、裁判所書記官の処分にあつてはその裁判所書記官の所属する裁判所に、公証人の処分にあつてはその公証人の役場の所在地を管轄する地方裁判所に異議を申し立てることができる。
2 執行文の付与に対し、異議の申立てがあつたときは、裁判所は、異議についての裁判をするまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで強制執行の停止を命じ、又は担保を立てさせてその続行を命ずることができる。急迫の事情があるときは、裁判長も、これらの処分を命ずることができる。
3 第1項の規定による申立てについての裁判及び前項の規定による裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
4 前項に規定する裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
5 前各項の規定は、第28条第2項の規定による少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促の正本の交付について準用する。
第33条 第27条第1項又は第2項に規定する文書の提出をすることができないときは、債権者は、執行文(同条第3項の規定により付与されるものを除く。)の付与を求めるために、執行文付与の訴えを提起することができる。
2 前項の訴えは、次の各号に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める裁判所が管轄する。
一 第22条第1号から第3号まで、第6号又は第6号の2に掲げる債務名義並びに同条第7号に掲げる債務名義のうち次号、第1号の3及び第6号に掲げるもの以外のもの 第一審裁判所
一の二 第22条第3号の2に掲げる債務名義並びに同条第7号に掲げる債務名義のうち損害賠償命令並びに損害賠償命令事件に関する手続における和解及び請求の認諾に係るもの 損害賠償命令事件が係属していた地方裁判所
一の三 第22条第3号の3に掲げる債務名義並びに同条第7号に掲げる債務名義のうち届出債権支払命令並びに簡易確定手続における届出債権の認否及び和解に係るもの 簡易確定手続が係属していた地方裁判所
二 第22条第4号に掲げる債務名義のうち次号に掲げるもの以外のもの 仮執行の宣言を付した支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所(仮執行の宣言を付した支払督促に係る請求が簡易裁判所の管轄に属しないものであるときは、その簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所)
三 第22条第4号に掲げる債務名義のうち民事訴訟法第132条の10第1項本文の規定による支払督促の申立て又は同法第402条第1項に規定する方式により記載された書面をもつてされた支払督促の申立てによるもの 当該支払督促の申立てについて同法第398条(同法第402条第2項において準用する場合を含む。)の規定により訴えの提起があつたものとみなされる裁判所
四 第22条第4号の2に掲げる債務名義 同号の処分をした裁判所書記官の所属する裁判所
五 第22条第5号に掲げる債務名義 債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所(この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する裁判所)
六 第22条第7号に掲げる債務名義のうち和解若しくは調停(上級裁判所において成立した和解及び調停を除く。)又は労働審判に係るもの(第1号の2及び第1号の3に掲げるものを除く。) 和解若しくは調停が成立した簡易裁判所、地方裁判所若しくは家庭裁判所(簡易裁判所において成立した和解又は調停に係る請求が簡易裁判所の管轄に属しないものであるときは、その簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所)又は労働審判が行われた際に労働審判事件が係属していた地方裁判所
第34条 第27条の規定により執行文が付与された場合において、債権者の証明すべき事実の到来したこと又は債務名義に表示された当事者以外の者に対し、若しくはその者のために強制執行をすることができることについて異議のある債務者は、その執行文の付された債務名義の正本に基づく強制執行の不許を求めるために、執行文付与に対する異議の訴えを提起することができる。
2 異議の事由が数個あるときは、債務者は、同時に、これを主張しなければならない。
3 前条第2項の規定は、第1項の訴えについて準用する。
第35条 債務名義(第22条第2号又は第3号の2から第4号までに掲げる債務名義で確定前のものを除く。以下この項において同じ。)に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は、その債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができる。裁判以外の債務名義の成立について異議のある債務者も、同様とする。
2 確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限る。
3 第33条第2項及び前条第2項の規定は、第1項の訴えについて準用する。
第36条 執行文付与に対する異議の訴え又は請求異議の訴えの提起があつた場合において、異議のため主張した事情が法律上理由があるとみえ、かつ、事実上の点について疎明があつたときは、受訴裁判所は、申立てにより、終局判決において次条第1項の裁判をするまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで強制執行の停止を命じ、又はこれとともに、担保を立てさせて強制執行の続行を命じ、若しくは担保を立てさせて既にした執行処分の取消しを命ずることができる。急迫の事情があるときは、裁判長も、これらの処分を命ずることができる。
2 前項の申立てについての裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
3 第1項に規定する事由がある場合において、急迫の事情があるときは、執行裁判所は、申立てにより、同項の規定による裁判の正本を提出すべき期間を定めて、同項に規定する処分を命ずることができる。この裁判は、執行文付与に対する異議の訴え又は請求異議の訴えの提起前においても、することができる。
4 前項の規定により定められた期間を経過したとき、又はその期間内に第1項の規定による裁判が執行裁判所若しくは執行官に提出されたときは、前項の裁判は、その効力を失う。
5 第1項又は第3項の申立てについての裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
第37条 受訴裁判所は、執行文付与に対する異議の訴え又は請求異議の訴えについての終局判決において、前条第1項に規定する処分を命じ、又は既にした同項の規定による裁判を取り消し、変更し、若しくは認可することができる。この裁判については、仮執行の宣言をしなければならない。
2 前項の規定による裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
第38条 強制執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者は、債権者に対し、その強制執行の不許を求めるために、第三者異議の訴えを提起することができる。
2 前項に規定する第三者は、同項の訴えに併合して、債務者に対する強制執行の目的物についての訴えを提起することができる。
3 第1項の訴えは、執行裁判所が管轄する。
4 前二条の規定は、第1項の訴えに係る執行停止の裁判について準用する。
第39条 強制執行は、次に掲げる文書の提出があつたときは、停止しなければならない。
一 債務名義(執行証書を除く。)若しくは仮執行の宣言を取り消す旨又は強制執行を許さない旨を記載した執行力のある裁判の正本
二 債務名義に係る和解、認諾、調停又は労働審判の効力がないことを宣言する確定判決の正本
三 第22条第2号から第4号の2までに掲げる債務名義が訴えの取下げその他の事由により効力を失つたことを証する調書の正本その他の裁判所書記官の作成した文書
四 強制執行をしない旨又はその申立てを取り下げる旨を記載した裁判上の和解若しくは調停の調書の正本又は労働審判法(平成16年法律第45号)第21条第4項の規定により裁判上の和解と同一の効力を有する労働審判の審判書若しくは同法第20条第7項の調書の正本
五 強制執行を免れるための担保を立てたことを証する文書
六 強制執行の停止及び執行処分の取消しを命ずる旨を記載した裁判の正本
七 強制執行の一時の停止を命ずる旨を記載した裁判の正本
八 債権者が、債務名義の成立後に、弁済を受け、又は弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書
2 前項第8号に掲げる文書のうち弁済を受けた旨を記載した文書の提出による強制執行の停止は、4週間に限るものとする。
3 第1項第8号に掲げる文書のうち弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書の提出による強制執行の停止は、二回に限り、かつ、通じて6月を超えることができない。
第40条 前条第1項第1号から第6号までに掲げる文書が提出されたときは、執行裁判所又は執行官は、既にした執行処分をも取り消さなければならない。
2 第12条の規定は、前項の規定により執行処分を取り消す場合については適用しない。
第41条 強制執行は、その開始後に債務者が死亡した場合においても、続行することができる。
2 前項の場合において、債務者の相続人の存在又はその所在が明らかでないときは、執行裁判所は、申立てにより、相続財産又は相続人のために、特別代理人を選任することができる。
3 民事訴訟法第35条第2項及び第3項の規定は、前項の特別代理人について準用する。
第42条 強制執行の費用で必要なもの(以下「執行費用」という。)は、債務者の負担とする。
2 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行にあつては、執行費用は、その執行手続において、債務名義を要しないで、同時に、取り立てることができる。
3 強制執行の基本となる債務名義(執行証書を除く。)を取り消す旨の裁判又は債務名義に係る和解、認諾、調停若しくは労働審判の効力がないことを宣言する判決が確定したときは、債権者は、支払を受けた執行費用に相当する金銭を債務者に返還しなければならない。
4 第1項の規定により債務者が負担すべき執行費用で第2項の規定により取り立てられたもの以外のもの及び前項の規定により債権者が返還すべき金銭の額は、申立てにより、執行裁判所の裁判所書記官が定める。
5 前項の申立てについての裁判所書記官の処分に対しては、その告知を受けた日から1週間の不変期間内に、執行裁判所に異議を申し立てることができる。
6 執行裁判所は、第4項の規定による裁判所書記官の処分に対する異議の申立てを理由があると認める場合において、同項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定めるべきときは、自らその額を定めなければならない。
7 第5項の規定による異議の申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。
8 第4項の規定による裁判所書記官の処分は、確定しなければその効力を生じない。
9 民事訴訟法第74条第1項の規定は、第4項の規定による裁判所書記官の処分について準用する。この場合においては、第5項、第7項及び前項並びに同条第3項の規定を準用する。
第2節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行
第1款 不動産に対する強制執行
第1目 通則
第43条 不動産(登記することができない土地の定着物を除く。以下この節において同じ。)に対する強制執行(以下「不動産執行」という。)は、強制競売又は強制管理の方法により行う。これらの方法は、併用することができる。
2 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行については、不動産の共有持分、登記された地上権及び永小作権並びにこれらの権利の共有持分は、不動産とみなす。
第44条 不動産執行については、その所在地(前条第2項の規定により不動産とみなされるものにあつては、その登記をすべき地)を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。
2 建物が数個の地方裁判所の管轄区域にまたがつて存在する場合には、その建物に対する強制執行については建物の存する土地の所在地を管轄する各地方裁判所が、その土地に対する強制執行については土地の所在地を管轄する地方裁判所又は建物に対する強制執行の申立てを受けた地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。
3 前項の場合において、執行裁判所は、必要があると認めるときは、事件を他の管轄裁判所に移送することができる。
4 前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
第2目 強制競売
第45条 執行裁判所は、強制競売の手続を開始するには、強制競売の開始決定をし、その開始決定において、債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言しなければならない。
2 前項の開始決定は、債務者に送達しなければならない。
3 強制競売の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
第46条 差押えの効力は、強制競売の開始決定が債務者に送達された時に生ずる。ただし、差押えの登記がその開始決定の送達前にされたときは、登記がされた時に生ずる。
2 差押えは、債務者が通常の用法に従つて不動産を使用し、又は収益することを妨げない。
第47条 強制競売又は担保権の実行としての競売(以下この節において「競売」という。)の開始決定がされた不動産について強制競売の申立てがあつたときは、執行裁判所は、更に強制競売の開始決定をするものとする。
2 先の開始決定に係る強制競売若しくは競売の申立てが取り下げられたとき、又は先の開始決定に係る強制競売若しくは競売の手続が取り消されたときは、執行裁判所は、後の強制競売の開始決定に基づいて手続を続行しなければならない。
3 前項の場合において、後の強制競売の開始決定が配当要求の終期後の申立てに係るものであるときは、裁判所書記官は、新たに配当要求の終期を定めなければならない。この場合において、既に第50条第1項(第188条において準用する場合を含む。)の届出をした者に対しては、第49条第2項の規定による催告は、要しない。
4 前項の規定による裁判所書記官の処分に対しては、執行裁判所に異議を申し立てることができる。
5 第10条第6項前段及び第9項の規定は、前項の規定による異議の申立てがあつた場合について準用する。
6 先の開始決定に係る強制競売又は競売の手続が停止されたときは、執行裁判所は、申立てにより、後の強制競売の開始決定(配当要求の終期までにされた申立てに係るものに限る。)に基づいて手続を続行する旨の裁判をすることができる。ただし、先の開始決定に係る強制競売又は競売の手続が取り消されたとすれば、第62条第1項第2号に掲げる事項について変更が生ずるときは、この限りでない。
7 前項の申立てを却下する決定に対しては、執行抗告をすることができる。
第48条 強制競売の開始決定がされたときは、裁判所書記官は、直ちに、その開始決定に係る差押えの登記を嘱託しなければならない。
2 登記官は、前項の規定による嘱託に基づいて差押えの登記をしたときは、その登記事項証明書を執行裁判所に送付しなければならない。
第49条 強制競売の開始決定に係る差押えの効力が生じた場合(その開始決定前に強制競売又は競売の開始決定がある場合を除く。)においては、裁判所書記官は、物件明細書の作成までの手続に要する期間を考慮して、配当要求の終期を定めなければならない。
2 裁判所書記官は、配当要求の終期を定めたときは、開始決定がされた旨及び配当要求の終期を公告し、かつ、次に掲げるものに対し、債権(利息その他の附帯の債権を含む。)の存否並びにその原因及び額を配当要求の終期までに執行裁判所に届け出るべき旨を催告しなければならない。
一 第87条第1項第3号に掲げる債権者
二 第87条第1項第4号に掲げる債権者(抵当証券の所持人にあつては、知れている所持人に限る。)
三 租税その他の公課を所管する官庁又は公署
3 裁判所書記官は、特に必要があると認めるときは、配当要求の終期を延期することができる。
4 裁判所書記官は、前項の規定により配当要求の終期を延期したときは、延期後の終期を公告しなければならない。
5 第1項又は第3項の規定による裁判所書記官の処分に対しては、執行裁判所に異議を申し立てることができる。
6 第10条第6項前段及び第9項の規定は、前項の規定による異議の申立てがあつた場合について準用する。
第50条 前条第2項の規定による催告を受けた同項第1号又は第2号に掲げる者は、配当要求の終期までに、その催告に係る事項について届出をしなければならない。
2 前項の届出をした者は、その届出に係る債権の元本の額に変更があつたときは、その旨の届出をしなければならない。
3 前二項の規定により届出をすべき者は、故意又は過失により、その届出をしなかつたとき、又は不実の届出をしたときは、これによつて生じた損害を賠償する責めに任ずる。
第51条 第25条の規定により強制執行を実施することができる債務名義の正本(以下「執行力のある債務名義の正本」という。)を有する債権者、強制競売の開始決定に係る差押えの登記後に登記された仮差押債権者及び第181条第1項各号に掲げる文書により一般の先取特権を有することを証明した債権者は、配当要求をすることができる。
2 配当要求を却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
第52条 配当要求の終期から、3月以内に売却許可決定がされないとき、又は3月以内にされた売却許可決定が取り消され、若しくは効力を失つたときは、配当要求の終期は、その終期から3月を経過した日に変更されたものとみなす。ただし、配当要求の終期から3月以内にされた売却許可決定が効力を失つた場合において、第67条の規定による次順位買受けの申出について売却許可決定がされたとき(その決定が取り消され、又は効力を失つたときを除く。)は、この限りでない。
第53条 不動産の滅失その他売却による不動産の移転を妨げる事情が明らかとなつたときは、執行裁判所は、強制競売の手続を取り消さなければならない。
第54条 強制競売の申立てが取り下げられたとき、又は強制競売の手続を取り消す決定が効力を生じたときは、裁判所書記官は、その開始決定に係る差押えの登記の抹消を嘱託しなければならない。
2 前項の規定による嘱託に要する登録免許税その他の費用は、その取下げ又は取消決定に係る差押債権者の負担とする。
第55条 執行裁判所は、債務者又は不動産の占有者が価格減少行為(不動産の価格を減少させ、又は減少させるおそれがある行為をいう。以下この項において同じ。)をするときは、差押債権者(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。)の申立てにより、買受人が代金を納付するまでの間、次に掲げる保全処分又は公示保全処分(執行官に、当該保全処分の内容を、不動産の所在する場所に公示書その他の標識を掲示する方法により公示させることを内容とする保全処分をいう。以下同じ。)を命ずることができる。ただし、当該価格減少行為による不動産の価格の減少又はそのおそれの程度が軽微であるときは、この限りでない。
一 当該価格減少行為をする者に対し、当該価格減少行為を禁止し、又は一定の行為をすることを命ずる保全処分(執行裁判所が必要があると認めるときは、公示保全処分を含む。)
二 次に掲げる事項を内容とする保全処分(執行裁判所が必要があると認めるときは、公示保全処分を含む。)
イ 当該価格減少行為をする者に対し、不動産に対する占有を解いて執行官に引き渡すことを命ずること。
ロ 執行官に不動産の保管をさせること。
三 次に掲げる事項を内容とする保全処分及び公示保全処分
イ 前号イ及びロに掲げる事項
ロ 前号イに規定する者に対し、不動産の占有の移転を禁止することを命じ、及び当該不動産の使用を許すこと。
2 前項第2号又は第3号に掲げる保全処分は、次に掲げる場合のいずれかに該当するときでなければ、命ずることができない。
一 前項の債務者が不動産を占有する場合
二 前項の不動産の占有者の占有の権原が差押債権者、仮差押債権者又は第59条第1項の規定により消滅する権利を有する者に対抗することができない場合
3 執行裁判所は、債務者以外の占有者に対し第1項の規定による決定をする場合において、必要があると認めるときは、その者を審尋しなければならない。
4 執行裁判所が第1項の規定による決定をするときは、申立人に担保を立てさせることができる。ただし、同項第2号に掲げる保全処分については、申立人に担保を立てさせなければ、同項の規定による決定をしてはならない。
5 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、第1項の規定による決定を取り消し、又は変更することができる。
6 第1項又は前項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
7 第5項の規定による決定は、確定しなければその効力を生じない。
8 第1項第2号又は第3号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずる決定は、申立人に告知された日から2週間を経過したときは、執行してはならない。
9 前項に規定する決定は、相手方に送達される前であつても、執行することができる。
10 第1項の申立て又は同項(第1号を除く。)の規定による決定の執行に要した費用(不動産の保管のために要した費用を含む。)は、その不動産に対する強制競売の手続においては、共益費用とする。
第55条の2 前条第1項第2号又は第3号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずる決定については、当該決定の執行前に相手方を特定することを困難とする特別の事情があるときは、執行裁判所は、相手方を特定しないで、これを発することができる。
2 前項の規定による決定の執行は、不動産の占有を解く際にその占有者を特定することができない場合は、することができない。
3 第1項の規定による決定の執行がされたときは、当該執行によつて不動産の占有を解かれた者が、当該決定の相手方となる。
4 第1項の規定による決定は、前条第8項の期間内にその執行がされなかつたときは、相手方に対して送達することを要しない。この場合において、第15条第2項において準用する民事訴訟法第79条第1項の規定による担保の取消しの決定で前条第4項の規定により立てさせた担保に係るものは、執行裁判所が相当と認める方法で申立人に告知することによつて、その効力を生ずる。
第56条 建物に対し強制競売の開始決定がされた場合において、その建物の所有を目的とする地上権又は賃借権について債務者が地代又は借賃を支払わないときは、執行裁判所は、申立てにより、差押債権者(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。)がその不払の地代又は借賃を債務者に代わつて弁済することを許可することができる。
2 第55条第10項の規定は、前項の申立てに要した費用及び同項の許可を得て支払つた地代又は借賃について準用する。
第57条 執行裁判所は、執行官に対し、不動産の形状、占有関係その他の現況について調査を命じなければならない。
2 執行官は、前項の調査をするに際し、不動産に立ち入り、又は債務者若しくはその不動産を占有する第三者に対し、質問をし、若しくは文書の提示を求めることができる。
3 執行官は、前項の規定により不動産に立ち入る場合において、必要があるときは、閉鎖した戸を開くため必要な処分をすることができる。
4 執行官は、第1項の調査のため必要がある場合には、市町村(特別区の存する区域にあつては、都)に対し、不動産(不動産が土地である場合にはその上にある建物を、不動産が建物である場合にはその敷地を含む。)に対して課される固定資産税に関して保有する図面その他の資料の写しの交付を請求することができる。
5 執行官は、前項に規定する場合には、電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を行う公益事業を営む法人に対し、必要な事項の報告を求めることができる。
第58条 執行裁判所は、評価人を選任し、不動産の評価を命じなければならない。
2 評価人は、近傍同種の不動産の取引価格、不動産から生ずべき収益、不動産の原価その他の不動産の価格形成上の事情を適切に勘案して、遅滞なく、評価をしなければならない。この場合において、評価人は、強制競売の手続において不動産の売却を実施するための評価であることを考慮しなければならない。
3 評価人は、第6条第2項の規定により執行官に対し援助を求めるには、執行裁判所の許可を受けなければならない。
4 第18条第2項並びに前条第2項、第4項及び第5項の規定は、評価人が評価をする場合について準用する。
第59条 不動産の上に存する先取特権、使用及び収益をしない旨の定めのある質権並びに抵当権は、売却により消滅する。
2 前項の規定により消滅する権利を有する者、差押債権者又は仮差押債権者に対抗することができない不動産に係る権利の取得は、売却によりその効力を失う。
3 不動産に係る差押え、仮差押えの執行及び第1項の規定により消滅する権利を有する者、差押債権者又は仮差押債権者に対抗することができない仮処分の執行は、売却によりその効力を失う。
4 不動産の上に存する留置権並びに使用及び収益をしない旨の定めのない質権で第2項の規定の適用がないものについては、買受人は、これらによつて担保される債権を弁済する責めに任ずる。
5 利害関係を有する者が次条第1項に規定する売却基準価額が定められる時までに第1項、第2項又は前項の規定と異なる合意をした旨の届出をしたときは、売却による不動産の上の権利の変動は、その合意に従う。
第60条 執行裁判所は、評価人の評価に基づいて、不動産の売却の額の基準となるべき価額(以下「売却基準価額」という。)を定めなければならない。
2 執行裁判所は、必要があると認めるときは、売却基準価額を変更することができる。
3 買受けの申出の額は、売却基準価額からその十分の二に相当する額を控除した価額(以下「買受可能価額」という。)以上でなければならない。
第61条 執行裁判所は、相互の利用上不動産を他の不動産(差押債権者又は債務者を異にするものを含む。)と一括して同一の買受人に買い受けさせることが相当であると認めるときは、これらの不動産を一括して売却することを定めることができる。ただし、一個の申立てにより強制競売の開始決定がされた数個の不動産のうち、あるものの買受可能価額で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる見込みがある場合には、債務者の同意があるときに限る。
第62条 裁判所書記官は、次に掲げる事項を記載した物件明細書を作成しなければならない。
一 不動産の表示
二 不動産に係る権利の取得及び仮処分の執行で売却によりその効力を失わないもの
三 売却により設定されたものとみなされる地上権の概要
2 裁判所書記官は、前項の物件明細書の写しを執行裁判所に備え置いて一般の閲覧に供し、又は不特定多数の者が当該物件明細書の内容の提供を受けることができるものとして最高裁判所規則で定める措置を講じなければならない。
3 前二項の規定による裁判所書記官の処分に対しては、執行裁判所に異議を申し立てることができる。
4 第10条第6項前段及び第9項の規定は、前項の規定による異議の申立てがあつた場合について準用する。
第63条 執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、その旨を差押債権者(最初の強制競売の開始決定に係る差押債権者をいう。ただし、第47条第6項の規定により手続を続行する旨の裁判があつたときは、その裁判を受けた差押債権者をいう。以下この条において同じ。)に通知しなければならない。
一 差押債権者の債権に優先する債権(以下この条において「優先債権」という。)がない場合において、不動産の買受可能価額が執行費用のうち共益費用であるもの(以下「手続費用」という。)の見込額を超えないとき。
二 優先債権がある場合において、不動産の買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないとき。
2 差押債権者が、前項の規定による通知を受けた日から1週間以内に、優先債権がない場合にあつては手続費用の見込額を超える額、優先債権がある場合にあつては手続費用及び優先債権の見込額の合計額以上の額(以下この項において「申出額」という。)を定めて、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める申出及び保証の提供をしないときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。ただし、差押債権者が、その期間内に、前項各号のいずれにも該当しないことを証明したとき、又は同項第2号に該当する場合であつて不動産の買受可能価額が手続費用の見込額を超える場合において、不動産の売却について優先債権を有する者(買受可能価額で自己の優先債権の全部の弁済を受けることができる見込みがある者を除く。)の同意を得たことを証明したときは、この限りでない。
一 差押債権者が不動産の買受人になることができる場合 申出額に達する買受けの申出がないときは、自ら申出額で不動産を買い受ける旨の申出及び申出額に相当する保証の提供
二 差押債権者が不動産の買受人になることができない場合 買受けの申出の額が申出額に達しないときは、申出額と買受けの申出の額との差額を負担する旨の申出及び申出額と買受可能価額との差額に相当する保証の提供
3 前項第2号の申出及び保証の提供があつた場合において、買受可能価額以上の額の買受けの申出がないときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。
4 第2項の保証の提供は、執行裁判所に対し、最高裁判所規則で定める方法により行わなければならない。
第64条 不動産の売却は、裁判所書記官の定める売却の方法により行う。
2 不動産の売却の方法は、入札又は競り売りのほか、最高裁判所規則で定める。
3 裁判所書記官は、入札又は競り売りの方法により売却をするときは、売却の日時及び場所を定め、執行官に売却を実施させなければならない。
4 前項の場合においては、第20条において準用する民事訴訟法第93条第1項の規定にかかわらず、売却決定期日は、裁判所書記官が、売却を実施させる旨の処分と同時に指定する。
5 第3項の場合においては、裁判所書記官は、売却すべき不動産の表示、売却基準価額並びに売却の日時及び場所を公告しなければならない。
6 第1項、第3項又は第4項の規定による裁判所書記官の処分に対しては、執行裁判所に異議を申し立てることができる。
7 第10条第6項前段及び第9項の規定は、前項の規定による異議の申立てがあつた場合について準用する。
第64条の2 執行裁判所は、差押債権者(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。)の申立てがあるときは、執行官に対し、内覧(不動産の買受けを希望する者をこれに立ち入らせて見学させることをいう。以下この条において同じ。)の実施を命じなければならない。ただし、当該不動産の占有者の占有の権原が差押債権者、仮差押債権者及び第59条第1項の規定により消滅する権利を有する者に対抗することができる場合で当該占有者が同意しないときは、この限りでない。
2 前項の申立ては、最高裁判所規則で定めるところにより、売却を実施させる旨の裁判所書記官の処分の時までにしなければならない。
3 第1項の命令を受けた執行官は、売却の実施の時までに、最高裁判所規則で定めるところにより内覧への参加の申出をした者(不動産を買い受ける資格又は能力を有しない者その他最高裁判所規則で定める事由がある者を除く。第5項及び第6項において「内覧参加者」という。)のために、内覧を実施しなければならない。
4 執行裁判所は、内覧の円滑な実施が困難であることが明らかであるときは、第1項の命令を取り消すことができる。
5 執行官は、内覧の実施に際し、自ら不動産に立ち入り、かつ、内覧参加者を不動産に立ち入らせることができる。
6 執行官は、内覧参加者であつて内覧の円滑な実施を妨げる行為をするものに対し、不動産に立ち入ることを制限し、又は不動産から退去させることができる。
第65条 執行官は、次に掲げる者に対し、売却の場所に入ることを制限し、若しくはその場所から退場させ、又は買受けの申出をさせないことができる。
一 他の者の買受けの申出を妨げ、若しくは不当に価額を引き下げる目的をもつて連合する等売却の適正な実施を妨げる行為をし、又はその行為をさせた者
二 他の民事執行の手続の売却不許可決定において前号に該当する者と認定され、その売却不許可決定の確定の日から2年を経過しない者
三 民事執行の手続における売却に関し刑法(明治40年法律第45号)第95条から第96条の5まで、第197条から第197条の4まで若しくは第198条、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成11年法律第136号)第3条第1項第1号から第4号まで若しくは第2項(同条第1項第1号から第4号までに係る部分に限る。)又は公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律(平成12年法律第130号)第1条第1項、第2条第1項若しくは第4条の規定により刑に処せられ、その裁判の確定の日から2年を経過しない者
第65条の2 不動産の買受けの申出は、次の各号のいずれにも該当しない旨を買受けの申出をしようとする者(その者に法定代理人がある場合にあつては当該法定代理人、その者が法人である場合にあつてはその代表者)が最高裁判所規則で定めるところにより陳述しなければ、することができない。
一 買受けの申出をしようとする者(その者が法人である場合にあつては、その役員)が暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第6号に規定する暴力団員(以下この号において「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなつた日から5年を経過しない者(以下この目において「暴力団員等」という。)であること。
二 自己の計算において当該買受けの申出をさせようとする者(その者が法人である場合にあつては、その役員)が暴力団員等であること。
第66条 不動産の買受けの申出をしようとする者は、最高裁判所規則で定めるところにより、執行裁判所が定める額及び方法による保証を提供しなければならない。
第67条 最高価買受申出人に次いで高額の買受けの申出をした者は、その買受けの申出の額が、買受可能価額以上で、かつ、最高価買受申出人の申出の額から買受けの申出の保証の額を控除した額以上である場合に限り、売却の実施の終了までに、執行官に対し、最高価買受申出人に係る売却許可決定が第80条第1項の規定により効力を失うときは、自己の買受けの申出について売却を許可すべき旨の申出(以下「次順位買受けの申出」という。)をすることができる。
第68条 債務者は、買受けの申出をすることができない。
第68条の2 執行裁判所は、裁判所書記官が入札又は競り売りの方法により売却を実施させても買受けの申出がなかつた場合において、債務者又は不動産の占有者が不動産の売却を困難にする行為をし、又はその行為をするおそれがあるときは、差押債権者(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。次項において同じ。)の申立てにより、買受人が代金を納付するまでの間、担保を立てさせて、次に掲げる事項を内容とする保全処分(執行裁判所が必要があると認めるときは、公示保全処分を含む。)を命ずることができる。
一 債務者又は不動産の占有者に対し、不動産に対する占有を解いて執行官又は申立人に引き渡すことを命ずること。
二 執行官又は申立人に不動産の保管をさせること。
2 差押債権者は、前項の申立てをするには、買受可能価額以上の額(以下この項において「申出額」という。)を定めて、次の入札又は競り売りの方法による売却の実施において申出額に達する買受けの申出がないときは自ら申出額で不動産を買い受ける旨の申出をし、かつ、申出額に相当する保証の提供をしなければならない。
3 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより又は職権で、第1項の規定による決定を取り消し、又は変更することができる。
4 第55条第2項の規定は第1項に規定する保全処分について、同条第3項の規定は第1項の規定による決定について、同条第6項の規定は第1項の申立てについての裁判、前項の規定による裁判又は同項の申立てを却下する裁判について、同条第7項の規定は前項の規定による決定について、同条第8項及び第9項並びに第55条の2の規定は第1項に規定する保全処分を命ずる決定について、第55条第10項の規定は第1項の申立て又は同項の規定による決定の執行に要した費用について、第63条第4項の規定は第2項の保証の提供について準用する。
第68条の3 執行裁判所は、裁判所書記官が入札又は競り売りの方法による売却を三回実施させても買受けの申出がなかつた場合において、不動産の形状、用途、法令による利用の規制その他の事情を考慮して、更に売却を実施させても売却の見込みがないと認めるときは、強制競売の手続を停止することができる。この場合においては、差押債権者に対し、その旨を通知しなければならない。
2 差押債権者が、前項の規定による通知を受けた日から3月以内に、執行裁判所に対し、買受けの申出をしようとする者があることを理由として、売却を実施させるべき旨を申し出たときは、裁判所書記官は、第64条の定めるところにより売却を実施させなければならない。
3 差押債権者が前項の期間内に同項の規定による売却実施の申出をしないときは、執行裁判所は、強制競売の手続を取り消すことができる。同項の規定により裁判所書記官が売却を実施させた場合において買受けの申出がなかつたときも、同様とする。
第68条の4 執行裁判所は、最高価買受申出人(その者が法人である場合にあつては、その役員。以下この項において同じ。)が暴力団員等に該当するか否かについて、必要な調査を執行裁判所の所在地を管轄する都道府県警察に嘱託しなければならない。ただし、最高価買受申出人が暴力団員等に該当しないと認めるべき事情があるものとして最高裁判所規則で定める場合は、この限りでない。
2 執行裁判所は、自己の計算において最高価買受申出人に買受けの申出をさせた者があると認める場合には、当該買受けの申出をさせた者(その者が法人である場合にあつては、その役員。以下この項において同じ。)が暴力団員等に該当するか否かについて、必要な調査を執行裁判所の所在地を管轄する都道府県警察に嘱託しなければならない。ただし、買受けの申出をさせた者が暴力団員等に該当しないと認めるべき事情があるものとして最高裁判所規則で定める場合は、この限りでない。
第69条 執行裁判所は、売却決定期日を開き、売却の許可又は不許可を言い渡さなければならない。
第70条 不動産の売却の許可又は不許可に関し利害関係を有する者は、次条各号に掲げる事由で自己の権利に影響のあるものについて、売却決定期日において意見を陳述することができる。
第71条 執行裁判所は、次に掲げる事由があると認めるときは、売却不許可決定をしなければならない。
一 強制競売の手続の開始又は続行をすべきでないこと。
二 最高価買受申出人が不動産を買い受ける資格若しくは能力を有しないこと又はその代理人がその権限を有しないこと。
三 最高価買受申出人が不動産を買い受ける資格を有しない者の計算において買受けの申出をした者であること。
四 最高価買受申出人、その代理人又は自己の計算において最高価買受申出人に買受けの申出をさせた者が次のいずれかに該当すること。
イ その強制競売の手続において第65条第1号に規定する行為をした者
ロ その強制競売の手続において、代金の納付をしなかつた者又は自己の計算においてその者に買受けの申出をさせたことがある者
ハ 第65条第2号又は第3号に掲げる者
五 最高価買受申出人又は自己の計算において最高価買受申出人に買受けの申出をさせた者が次のいずれかに該当すること。
イ 暴力団員等(買受けの申出がされた時に暴力団員等であつた者を含む。)
ロ 法人でその役員のうちに暴力団員等に該当する者があるもの(買受けの申出がされた時にその役員のうちに暴力団員等に該当する者があつたものを含む。)
六 第75条第1項の規定による売却の不許可の申出があること。
七 売却基準価額若しくは一括売却の決定、物件明細書の作成又はこれらの手続に重大な誤りがあること。
八 売却の手続に重大な誤りがあること。
第72条 売却の実施の終了から売却決定期日の終了までの間に第39条第1項第7号に掲げる文書の提出があつた場合には、執行裁判所は、他の事由により売却不許可決定をするときを除き、売却決定期日を開くことができない。この場合においては、最高価買受申出人又は次順位買受申出人は、執行裁判所に対し、買受けの申出を取り消すことができる。
2 売却決定期日の終了後に前項に規定する文書の提出があつた場合には、その期日にされた売却許可決定が取り消され、若しくは効力を失つたとき、又はその期日にされた売却不許可決定が確定したときに限り、第39条の規定を適用する。
3 売却の実施の終了後に第39条第1項第8号に掲げる文書の提出があつた場合には、その売却に係る売却許可決定が取り消され、若しくは効力を失つたとき、又はその売却に係る売却不許可決定が確定したときに限り、同条の規定を適用する。
第73条 数個の不動産を売却した場合において、あるものの買受けの申出の額で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる見込みがあるときは、執行裁判所は、他の不動産についての売却許可決定を留保しなければならない。
2 前項の場合において、その買受けの申出の額で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる見込みがある不動産が数個あるときは、執行裁判所は、売却の許可をすべき不動産について、あらかじめ、債務者の意見を聴かなければならない。
3 第1項の規定により売却許可決定が留保された不動産の最高価買受申出人又は次順位買受申出人は、執行裁判所に対し、買受けの申出を取り消すことができる。
4 売却許可決定のあつた不動産について代金が納付されたときは、執行裁判所は、前項の不動産に係る強制競売の手続を取り消さなければならない。
第74条 売却の許可又は不許可の決定に対しては、その決定により自己の権利が害されることを主張するときに限り、執行抗告をすることができる。
2 売却許可決定に対する執行抗告は、第71条各号に掲げる事由があること又は売却許可決定の手続に重大な誤りがあることを理由としなければならない。
3 民事訴訟法第338条第1項各号に掲げる事由は、前二項の規定にかかわらず、売却の許可又は不許可の決定に対する執行抗告の理由とすることができる。
4 抗告裁判所は、必要があると認めるときは、抗告人の相手方を定めることができる。
5 売却の許可又は不許可の決定は、確定しなければその効力を生じない。
第75条 最高価買受申出人又は買受人は、買受けの申出をした後天災その他自己の責めに帰することができない事由により不動産が損傷した場合には、執行裁判所に対し、売却許可決定前にあつては売却の不許可の申出をし、売却許可決定後にあつては代金を納付する時までにその決定の取消しの申立てをすることができる。ただし、不動産の損傷が軽微であるときは、この限りでない。
2 前項の規定による売却許可決定の取消しの申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。
3 前項に規定する申立てにより売却許可決定を取り消す決定は、確定しなければその効力を生じない。
第76条 買受けの申出があつた後に強制競売の申立てを取り下げるには、最高価買受申出人又は買受人及び次順位買受申出人の同意を得なければならない。ただし、他に差押債権者(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。)がある場合において、取下げにより第62条第1項第2号に掲げる事項について変更が生じないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、買受けの申出があつた後に第39条第1項第4号又は第5号に掲げる文書を提出する場合について準用する。
第77条 執行裁判所は、債務者又は不動産の占有者が、価格減少行為等(不動産の価格を減少させ、又は不動産の引渡しを困難にする行為をいう。以下この項において同じ。)をし、又は価格減少行為等をするおそれがあるときは、最高価買受申出人又は買受人の申立てにより、引渡命令の執行までの間、その買受けの申出の額(金銭により第66条の保証を提供した場合にあつては、当該保証の額を控除した額)に相当する金銭を納付させ、又は代金を納付させて、次に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずることができる。
一 債務者又は不動産の占有者に対し、価格減少行為等を禁止し、又は一定の行為をすることを命ずる保全処分(執行裁判所が必要があると認めるときは、公示保全処分を含む。)
二 次に掲げる事項を内容とする保全処分(執行裁判所が必要があると認めるときは、公示保全処分を含む。)
イ 当該価格減少行為等をし、又はそのおそれがある者に対し、不動産に対する占有を解いて執行官に引き渡すことを命ずること。
ロ 執行官に不動産の保管をさせること。
三 次に掲げる事項を内容とする保全処分及び公示保全処分
イ 前号イ及びロに掲げる事項
ロ 前号イに規定する者に対し、不動産の占有の移転を禁止することを命じ、及び不動産の使用を許すこと。
2 第55条第2項(第1号に係る部分に限る。)の規定は前項第2号又は第3号に掲げる保全処分について、同条第2項(第2号に係る部分に限る。)の規定は前項に掲げる保全処分について、同条第3項、第4項本文及び第5項の規定は前項の規定による決定について、同条第6項の規定は前項の申立て又はこの項において準用する同条第5項の申立てについての裁判について、同条第7項の規定はこの項において準用する同条第5項の規定による決定について、同条第8項及び第9項並びに第55条の2の規定は前項第2号又は第3号に掲げる保全処分を命ずる決定について準用する。
第78条 売却許可決定が確定したときは、買受人は、裁判所書記官の定める期限までに代金を執行裁判所に納付しなければならない。
2 買受人が買受けの申出の保証として提供した金銭及び前条第1項の規定により納付した金銭は、代金に充てる。
3 買受人が第63条第2項第1号又は第68条の2第2項の保証を金銭の納付以外の方法で提供しているときは、執行裁判所は、最高裁判所規則で定めるところによりこれを換価し、その換価代金から換価に要した費用を控除したものを代金に充てる。この場合において、換価に要した費用は、買受人の負担とする。
4 買受人は、売却代金から配当又は弁済を受けるべき債権者であるときは、売却許可決定が確定するまでに執行裁判所に申し出て、配当又は弁済を受けるべき額を差し引いて代金を配当期日又は弁済金の交付の日に納付することができる。ただし、配当期日において、買受人の受けるべき配当の額について異議の申出があつたときは、買受人は、当該配当期日から1週間以内に、異議に係る部分に相当する金銭を納付しなければならない。
5 裁判所書記官は、特に必要があると認めるときは、第1項の期限を変更することができる。
6 第1項又は前項の規定による裁判所書記官の処分に対しては、執行裁判所に異議を申し立てることができる。
7 第10条第6項前段及び第9項の規定は、前項の規定による異議の申立てがあつた場合について準用する。
第79条 買受人は、代金を納付した時に不動産を取得する。
第80条 買受人が代金を納付しないときは、売却許可決定は、その効力を失う。この場合においては、買受人は、第66条の規定により提供した保証の返還を請求することができない。
2 前項前段の場合において、次順位買受けの申出があるときは、執行裁判所は、その申出について売却の許可又は不許可の決定をしなければならない。
第81条 土地及びその上にある建物が債務者の所有に属する場合において、その土地又は建物の差押えがあり、その売却により所有者を異にするに至つたときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合においては、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
第82条 買受人が代金を納付したときは、裁判所書記官は、次に掲げる登記及び登記の抹消を嘱託しなければならない。
一 買受人の取得した権利の移転の登記
二 売却により消滅した権利又は売却により効力を失つた権利の取得若しくは仮処分に係る登記の抹消
三 差押え又は仮差押えの登記の抹消
2 買受人及び買受人から不動産の上に抵当権の設定を受けようとする者が、最高裁判所規則で定めるところにより、代金の納付の時までに申出をしたときは、前項の規定による嘱託は、登記の申請の代理を業とすることができる者で申出人の指定するものに嘱託情報を提供して登記所に提供させる方法によつてしなければならない。この場合において、申出人の指定する者は、遅滞なく、その嘱託情報を登記所に提供しなければならない。
3 第1項の規定による嘱託をするには、その嘱託情報と併せて売却許可決定があつたことを証する情報を提供しなければならない。
4 第1項の規定による嘱託に要する登録免許税その他の費用は、買受人の負担とする。
第83条 執行裁判所は、代金を納付した買受人の申立てにより、債務者又は不動産の占有者に対し、不動産を買受人に引き渡すべき旨を命ずることができる。ただし、事件の記録上買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者に対しては、この限りでない。
2 買受人は、代金を納付した日から6月(買受けの時に民法第395条第1項に規定する抵当建物使用者が占有していた建物の買受人にあつては、9月)を経過したときは、前項の申立てをすることができない。
3 執行裁判所は、債務者以外の占有者に対し第1項の規定による決定をする場合には、その者を審尋しなければならない。ただし、事件の記録上その者が買受人に対抗することができる権原により占有しているものでないことが明らかであるとき、又は既にその者を審尋しているときは、この限りでない。
4 第1項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
5 第1項の規定による決定は、確定しなければその効力を生じない。
第83条の2 強制競売の手続において、第55条第1項第3号又は第77条第1項第3号に掲げる保全処分及び公示保全処分を命ずる決定の執行がされ、かつ、買受人の申立てにより当該決定の被申立人に対して引渡命令が発せられたときは、買受人は、当該引渡命令に基づき、次に掲げる者に対し、不動産の引渡しの強制執行をすることができる。
一 当該決定の執行がされたことを知つて当該不動産を占有した者
二 当該決定の執行後に当該執行がされたことを知らないで当該決定の被申立人の占有を承継した者
2 前項の決定の執行後に同項の不動産を占有した者は、その執行がされたことを知つて占有したものと推定する。
3 第1項の引渡命令について同項の決定の被申立人以外の者に対する執行文が付与されたときは、その者は、執行文の付与に対する異議の申立てにおいて、買受人に対抗することができる権原により不動産を占有していること、又は自己が同項各号のいずれにも該当しないことを理由とすることができる。
第84条 執行裁判所は、代金の納付があつた場合には、次項に規定する場合を除き、配当表に基づいて配当を実施しなければならない。
2 債権者が1人である場合又は債権者が2人以上であつて売却代金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる場合には、執行裁判所は、売却代金の交付計算書を作成して、債権者に弁済金を交付し、剰余金を債務者に交付する。
3 代金の納付後に第39条第1項第1号から第6号までに掲げる文書の提出があつた場合において、他に売却代金の配当又は弁済金の交付(以下「配当等」という。)を受けるべき債権者があるときは、執行裁判所は、その債権者のために配当等を実施しなければならない。
4 代金の納付後に第39条第1項第7号又は第8号に掲げる文書の提出があつた場合においても、執行裁判所は、配当等を実施しなければならない。
第85条 執行裁判所は、配当期日において、第87条第1項各号に掲げる各債権者について、その債権の元本及び利息その他の附帯の債権の額、執行費用の額並びに配当の順位及び額を定める。ただし、配当の順位及び額については、配当期日においてすべての債権者間に合意が成立した場合は、この限りでない。
2 執行裁判所は、前項本文の規定により配当の順位及び額を定める場合には、民法、商法その他の法律の定めるところによらなければならない。
3 配当期日には、第1項に規定する債権者及び債務者を呼び出さなければならない。
4 執行裁判所は、配当期日において、第1項本文に規定する事項を定めるため必要があると認めるときは、出頭した債権者及び債務者を審尋し、かつ、即時に取り調べることができる書証の取調べをすることができる。
5 第1項の規定により同項本文に規定する事項(同項ただし書に規定する場合には、配当の順位及び額を除く。)が定められたときは、裁判所書記官は、配当期日において、配当表を作成しなければならない。
6 配当表には、売却代金の額及び第1項本文に規定する事項についての執行裁判所の定めの内容(同項ただし書に規定する場合にあつては、配当の順位及び額については、その合意の内容)を記載しなければならない。
7 第16条第3項及び第4項の規定は、第1項に規定する債権者(同条第1項前段に規定する者を除く。)に対する呼出状の送達について準用する。
第86条 売却代金は、次に掲げるものとする。
一 不動産の代金
二 第63条第2項第2号の規定により提供した保証のうち申出額から代金の額を控除した残額に相当するもの
三 第80条第1項後段の規定により買受人が返還を請求することができない保証
2 第61条の規定により不動産が一括して売却された場合において、各不動産ごとに売却代金の額を定める必要があるときは、その額は、売却代金の総額を各不動産の売却基準価額に応じて案分して得た額とする。各不動産ごとの執行費用の負担についても、同様とする。
3 第78条第3項の規定は、第1項第2号又は第3号に規定する保証が金銭の納付以外の方法で提供されている場合の換価について準用する。
第87条 売却代金の配当等を受けるべき債権者は、次に掲げる者とする。
一 差押債権者(配当要求の終期までに強制競売又は一般の先取特権の実行としての競売の申立てをした差押債権者に限る。)
二 配当要求の終期までに配当要求をした債権者
三 差押え(最初の強制競売の開始決定に係る差押えをいう。次号において同じ。)の登記前に登記された仮差押えの債権者
四 差押えの登記前に登記(民事保全法第53条第2項に規定する仮処分による仮登記を含む。)がされた先取特権(第1号又は第2号に掲げる債権者が有する一般の先取特権を除く。)、質権又は抵当権で売却により消滅するものを有する債権者(その抵当権に係る抵当証券の所持人を含む。)
2 前項第4号に掲げる債権者の権利が仮差押えの登記後に登記されたものである場合には、その債権者は、仮差押債権者が本案の訴訟において敗訴し、又は仮差押えがその効力を失つたときに限り、配当等を受けることができる。
3 差押えに係る強制競売の手続が停止され、第47条第6項の規定による手続を続行する旨の裁判がある場合において、執行を停止された差押債権者がその停止に係る訴訟等において敗訴したときは、差押えの登記後続行の裁判に係る差押えの登記前に登記された第1項第4号に規定する権利を有する債権者は、配当等を受けることができる。
第88条 確定期限の到来していない債権は、配当等については、弁済期が到来したものとみなす。
2 前項の債権が無利息であるときは、配当等の日から期限までの配当等の日における法定利率による利息との合算額がその債権の額となるべき元本額をその債権の額とみなして、配当等の額を計算しなければならない。
第89条 配当表に記載された各債権者の債権又は配当の額について不服のある債権者及び債務者は、配当期日において、異議の申出(以下「配当異議の申出」という。)をすることができる。
2 執行裁判所は、配当異議の申出のない部分に限り、配当を実施しなければならない。
第90条 配当異議の申出をした債権者及び執行力のある債務名義の正本を有しない債権者に対し配当異議の申出をした債務者は、配当異議の訴えを提起しなければならない。
2 前項の訴えは、執行裁判所が管轄する。
3 第1項の訴えは、原告が最初の口頭弁論期日に出頭しない場合には、その責めに帰することができない事由により出頭しないときを除き、却下しなければならない。
4 第1項の訴えの判決においては、配当表を変更し、又は新たな配当表の調製のために、配当表を取り消さなければならない。
5 執行力のある債務名義の正本を有する債権者に対し配当異議の申出をした債務者は、請求異議の訴え又は民事訴訟法第117条第1項の訴えを提起しなければならない。
6 配当異議の申出をした債権者又は債務者が、配当期日(知れていない抵当証券の所持人に対する配当異議の申出にあつては、その所持人を知つた日)から1週間以内(買受人が第78条第4項ただし書の規定により金銭を納付すべき場合にあつては、2週間以内)に、執行裁判所に対し、第1項の訴えを提起したことの証明をしないとき、又は前項の訴えを提起したことの証明及びその訴えに係る執行停止の裁判の正本の提出をしないときは、配当異議の申出は、取り下げたものとみなす。
第91条 配当等を受けるべき債権者の債権について次に掲げる事由があるときは、裁判所書記官は、その配当等の額に相当する金銭を供託しなければならない。
一 停止条件付又は不確定期限付であるとき。
二 仮差押債権者の債権であるとき。
三 第39条第1項第7号又は第183条第1項第6号に掲げる文書が提出されているとき。
四 その債権に係る先取特権、質権又は抵当権(以下この項において「先取特権等」という。)の実行を一時禁止する裁判の正本が提出されているとき。
五 その債権に係る先取特権等につき仮登記又は民事保全法第53条第2項に規定する仮処分による仮登記がされたものであるとき。
六 仮差押え又は執行停止に係る差押えの登記後に登記された先取特権等があるため配当額が定まらないとき。
七 配当異議の訴えが提起されたとき。
2 裁判所書記官は、配当等の受領のために執行裁判所に出頭しなかつた債権者(知れていない抵当証券の所持人を含む。)に対する配当等の額に相当する金銭を供託しなければならない。
第92条 前条第1項の規定による供託がされた場合において、その供託の事由が消滅したときは、執行裁判所は、供託金について配当等を実施しなければならない。
2 前項の規定により配当を実施すべき場合において、前条第1項第1号から第5号までに掲げる事由による供託に係る債権者若しくは同項第6号に掲げる事由による供託に係る仮差押債権者若しくは執行を停止された差押債権者に対して配当を実施することができなくなつたとき、又は同項第7号に掲げる事由による供託に係る債権者が債務者の提起した配当異議の訴えにおいて敗訴したときは、執行裁判所は、配当異議の申出をしなかつた債権者のためにも配当表を変更しなければならない。
第3目 強制管理
第93条 執行裁判所は、強制管理の手続を開始するには、強制管理の開始決定をし、その開始決定において、債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言し、かつ、債務者に対し収益の処分を禁止し、及び債務者が賃貸料の請求権その他の当該不動産の収益に係る給付を求める権利(以下「給付請求権」という。)を有するときは、債務者に対して当該給付をする義務を負う者(以下「給付義務者」という。)に対しその給付の目的物を管理人に交付すべき旨を命じなければならない。
2 前項の収益は、後に収穫すべき天然果実及び既に弁済期が到来し、又は後に弁済期が到来すべき法定果実とする。
3 第1項の開始決定は、債務者及び給付義務者に送達しなければならない。
4 給付義務者に対する第1項の開始決定の効力は、開始決定が当該給付義務者に送達された時に生ずる。
5 強制管理の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
第93条の2 既に強制管理の開始決定がされ、又は第180条第2号に規定する担保不動産収益執行の開始決定がされた不動産について強制管理の申立てがあつたときは、執行裁判所は、更に強制管理の開始決定をするものとする。
第93条の3 裁判所書記官は、給付義務者に強制管理の開始決定を送達するに際し、当該給付義務者に対し、開始決定の送達の日から2週間以内に給付請求権に対する差押命令又は差押処分の存否その他の最高裁判所規則で定める事項について陳述すべき旨を催告しなければならない。この場合においては、第147条第2項の規定を準用する。
第93条の4 第93条第4項の規定により強制管理の開始決定の効力が給付義務者に対して生じたときは、給付請求権に対する差押命令又は差押処分であつて既に効力が生じていたものは、その効力を停止する。ただし、強制管理の開始決定の給付義務者に対する効力の発生が第165条各号(第167条の14第1項において第165条各号(第3号及び第4号を除く。)の規定を準用する場合及び第193条第2項において準用する場合を含む。)に掲げる時後であるときは、この限りでない。
2 第93条第4項の規定により強制管理の開始決定の効力が給付義務者に対して生じたときは、給付請求権に対する仮差押命令であつて既に効力が生じていたものは、その効力を停止する。
3 第1項の差押命令又は差押処分の債権者、同項の差押命令又は差押処分が効力を停止する時までに当該債権執行(第143条に規定する債権執行をいう。)又は少額訴訟債権執行(第167条の2第2項に規定する少額訴訟債権執行をいう。)の手続において配当要求をした債権者及び前項の仮差押命令の債権者は、第107条第4項の規定にかかわらず、前二項の強制管理の手続において配当等を受けることができる。
第94条 執行裁判所は、強制管理の開始決定と同時に、管理人を選任しなければならない。
2 信託会社(信託業法(平成16年法律第154号)第3条又は第53条第1項の免許を受けた者をいう。)、銀行その他の法人は、管理人となることができる。
第95条 管理人は、強制管理の開始決定がされた不動産について、管理並びに収益の収取及び換価をすることができる。
2 管理人は、民法第602条に定める期間を超えて不動産を賃貸するには、債務者の同意を得なければならない。
3 管理人が数人あるときは、共同してその職務を行う。ただし、執行裁判所の許可を受けて、職務を分掌することができる。
4 管理人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その1人に対してすれば足りる。
第96条 管理人は、不動産について、債務者の占有を解いて自らこれを占有することができる。
2 管理人は、前項の場合において、閉鎖した戸を開く必要があると認めるときは、執行官に対し援助を求めることができる。
3 第57条第3項の規定は、前項の規定により援助を求められた執行官について準用する。
第97条 債務者の居住する建物について強制管理の開始決定がされた場合において、債務者が他に居住すべき場所を得ることができないときは、執行裁判所は、申立てにより、債務者及びその者と生計を一にする同居の親族(婚姻又は縁組の届出をしていないが債務者と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にある者を含む。以下「債務者等」という。)の居住に必要な限度において、期間を定めて、その建物の使用を許可することができる。
2 債務者が管理人の管理を妨げたとき、又は事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定による決定を取り消し、又は変更することができる。
3 前二項の申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。
第98条 強制管理により債務者の生活が著しく困窮することとなるときは、執行裁判所は、申立てにより、管理人に対し、収益又はその換価代金からその困窮の程度に応じ必要な金銭又は収益を債務者に分与すべき旨を命ずることができる。
2 前条第2項の規定は前項の規定による決定について、同条第3項の規定は前項の申立て又はこの項において準用する前条第2項の申立てについての決定について準用する。
第99条 管理人は、執行裁判所が監督する。
第100条 管理人は、善良な管理者の注意をもつてその職務を行わなければならない。
2 管理人が前項の注意を怠つたときは、その管理人は、利害関係を有する者に対し、連帯して損害を賠償する責めに任ずる。
第101条 管理人は、強制管理のため必要な費用の前払及び執行裁判所の定める報酬を受けることができる。
2 前項の規定による決定に対しては、執行抗告をすることができる。
第102条 重要な事由があるときは、執行裁判所は、利害関係を有する者の申立てにより、又は職権で、管理人を解任することができる。この場合においては、その管理人を審尋しなければならない。
第103条 管理人の任務が終了した場合においては、管理人又はその承継人は、遅滞なく、執行裁判所に計算の報告をしなければならない。
第104条 第39条第1項第7号又は第8号に掲げる文書の提出があつた場合においては、強制管理は、配当等の手続を除き、その時の態様で継続することができる。この場合においては、管理人は、配当等に充てるべき金銭を供託し、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。
2 前項の規定により供託された金銭の額で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができるときは、執行裁判所は、配当等の手続を除き、強制管理の手続を取り消さなければならない。
第105条 執行力のある債務名義の正本を有する債権者及び第181条第1項各号に掲げる文書により一般の先取特権を有することを証明した債権者は、執行裁判所に対し、配当要求をすることができる。
2 配当要求を却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
第106条 配当等に充てるべき金銭は、第98条第1項の規定による分与をした後の収益又はその換価代金から、不動産に対して課される租税その他の公課及び管理人の報酬その他の必要な費用を控除したものとする。
2 配当等に充てるべき金銭を生ずる見込みがないときは、執行裁判所は、強制管理の手続を取り消さなければならない。
第107条 管理人は、前条第1項に規定する費用を支払い、執行裁判所の定める期間ごとに、配当等に充てるべき金銭の額を計算して、配当等を実施しなければならない。
2 債権者が1人である場合又は債権者が2人以上であつて配当等に充てるべき金銭で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる場合には、管理人は、債権者に弁済金を交付し、剰余金を債務者に交付する。
3 前項に規定する場合を除き、配当等に充てるべき金銭の配当について債権者間に協議が調つたときは、管理人は、その協議に従い配当を実施する。
4 配当等を受けるべき債権者は、次に掲げる者とする。
一 差押債権者のうち次のイからハまでのいずれかに該当するもの
イ 第1項の期間の満了までに強制管理の申立てをしたもの
ロ 第1項の期間の満了までに一般の先取特権の実行として第180条第2号に規定する担保不動産収益執行の申立てをしたもの
ハ 第1項の期間の満了までに第180条第2号に規定する担保不動産収益執行の申立てをしたもの(ロに掲げるものを除く。)であつて、当該申立てが最初の強制管理の開始決定に係る差押えの登記前に登記(民事保全法第53条第2項に規定する保全仮登記を含む。)がされた担保権に基づくもの
二 仮差押債権者(第1項の期間の満了までに、強制管理の方法による仮差押えの執行の申立てをしたものに限る。)
三 第1項の期間の満了までに配当要求をした債権者
5 第3項の協議が調わないときは、管理人は、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。
第108条 配当等を受けるべき債権者の債権について第91条第1項各号(第7号を除く。)に掲げる事由があるときは、管理人は、その配当等の額に相当する金銭を供託し、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。債権者が配当等の受領のために出頭しなかつたときも、同様とする。
第109条 執行裁判所は、第107条第5項の規定による届出があつた場合には直ちに、第104条第1項又は前条の規定による届出があつた場合には供託の事由が消滅したときに、配当等の手続を実施しなければならない。
第110条 各債権者が配当等によりその債権及び執行費用の全部の弁済を受けたときは、執行裁判所は、強制管理の手続を取り消さなければならない。
第111条 第46条第1項、第47条第2項、第6項本文及び第7項、第48条、第53条、第54条、第84条第3項及び第4項、第87条第2項及び第3項並びに第88条の規定は強制管理について、第84条第1項及び第2項、第85条並びに第89条から第92条までの規定は第109条の規定により執行裁判所が実施する配当等の手続について準用する。この場合において、第84条第3項及び第4項中「代金の納付後」とあるのは、「第107条第1項の期間の経過後」と読み替えるものとする。
第2款 船舶に対する強制執行
第112条 総トン数20トン以上の船舶(端舟その他ろかい又は主としてろかいをもつて運転する舟を除く。以下この節及び次章において「船舶」という。)に対する強制執行(以下「船舶執行」という。)は、強制競売の方法により行う。
第113条 船舶執行については、強制競売の開始決定の時の船舶の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。
第114条 執行裁判所は、強制競売の手続を開始するには、強制競売の開始決定をし、かつ、執行官に対し、船舶の国籍を証する文書その他の船舶の航行のために必要な文書(以下「船舶国籍証書等」という。)を取り上げて執行裁判所に提出すべきことを命じなければならない。ただし、その開始決定前にされた開始決定により船舶国籍証書等が取り上げられているときは、執行官に対する命令を要しない。
2 強制競売の開始決定においては、債権者のために船舶を差し押さえる旨を宣言し、かつ、債務者に対し船舶の出航を禁止しなければならない。
3 強制競売の開始決定の送達又は差押えの登記前に執行官が船舶国籍証書等を取り上げたときは、差押えの効力は、その取上げの時に生ずる。
第115条 船舶執行の申立て前に船舶国籍証書等を取り上げなければ船舶執行が著しく困難となるおそれがあるときは、その船舶の船籍の所在地(船籍のない船舶にあつては、最高裁判所の指定する地)を管轄する地方裁判所は、申立てにより、債務者に対し、船舶国籍証書等を執行官に引き渡すべき旨を命ずることができる。急迫の事情があるときは、船舶の所在地を管轄する地方裁判所も、この命令を発することができる。
2 前項の規定による裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
3 第1項の申立てをするには、執行力のある債務名義の正本を提示し、かつ、同項に規定する事由を疎明しなければならない。
4 執行官は、船舶国籍証書等の引渡しを受けた日から5日以内に債権者が船舶執行の申立てをしたことを証する文書を提出しないときは、その船舶国籍証書等を債務者に返還しなければならない。
5 第1項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
6 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
7 第55条第8項から第10項までの規定は、第1項の規定による決定について準用する。
第116条 執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、必要があると認めるときは、強制競売の開始決定がされた船舶について保管人を選任することができる。
2 前項の保管人が船舶の保管のために要した費用(第4項において準用する第101条第1項の報酬を含む。)は、手続費用とする。
3 第1項の申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。
4 第94条第2項、第96条及び第99条から第103条までの規定は、第1項の保管人について準用する。
第117条 差押債権者の債権について、第39条第1項第7号又は第8号に掲げる文書が提出されている場合において、債務者が差押債権者及び保証の提供の時(配当要求の終期後にあつては、その終期)までに配当要求をした債権者の債権及び執行費用の総額に相当する保証を買受けの申出前に提供したときは、執行裁判所は、申立てにより、配当等の手続を除き、強制競売の手続を取り消さなければならない。
2 前項に規定する文書の提出による執行停止がその効力を失つたときは、執行裁判所は、同項の規定により提供された保証について、同項の債権者のために配当等を実施しなければならない。この場合において、執行裁判所は、保証の提供として供託された有価証券を取り戻すことができる。
3 第1項の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
4 第12条の規定は、第1項の規定による決定については適用しない。
5 第15条の規定は第1項の保証の提供について、第78条第3項の規定は第1項の保証が金銭の供託以外の方法で提供されている場合の換価について準用する。
第118条 執行裁判所は、営業上の必要その他相当の事由があると認める場合において、各債権者並びに最高価買受申出人又は買受人及び次順位買受申出人の同意があるときは、債務者の申立てにより、船舶の航行を許可することができる。
2 前項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
3 第1項の規定による決定は、確定しなければその効力を生じない。
第119条 執行裁判所は、強制競売の開始決定がされた船舶が管轄区域外の地に所在することとなつた場合には、船舶の所在地を管轄する地方裁判所に事件を移送することができる。
2 前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
第120条 執行官が強制競売の開始決定の発せられた日から2週間以内に船舶国籍証書等を取り上げることができないときは、執行裁判所は、強制競売の手続を取り消さなければならない。
第121条 前款第2目(第45条第1項、第46条第2項、第48条、第54条、第55条第1項第2号、第56条、第64条の2、第65条の2、第68条の4、第71条第5号、第81条及び第82条を除く。)の規定は船舶執行について、第48条、第54条及び第82条の規定は船舶法(明治32年法律第46号)第1条に規定する日本船舶に対する強制執行について、それぞれ準用する。この場合において、第51条第1項中「第181条第1項各号に掲げる文書」とあるのは「文書」と、「一般の先取特権」とあるのは「先取特権」と読み替えるものとする。
第3款 動産に対する強制執行
第122条 動産(登記することができない土地の定着物、土地から分離する前の天然果実で1月以内に収穫することが確実であるもの及び裏書の禁止されている有価証券以外の有価証券を含む。以下この節、次章及び第4章において同じ。)に対する強制執行(以下「動産執行」という。)は、執行官の目的物に対する差押えにより開始する。
2 動産執行においては、執行官は、差押債権者のためにその債権及び執行費用の弁済を受領することができる。
第123条 債務者の占有する動産の差押えは、執行官がその動産を占有して行う。
2 執行官は、前項の差押えをするに際し、債務者の住居その他債務者の占有する場所に立ち入り、その場所において、又は債務者の占有する金庫その他の容器について目的物を捜索することができる。この場合において、必要があるときは、閉鎖した戸及び金庫その他の容器を開くため必要な処分をすることができる。
3 執行官は、相当であると認めるときは、債務者に差し押さえた動産(以下「差押物」という。)を保管させることができる。この場合においては、差押えは、差押物について封印その他の方法で差押えの表示をしたときに限り、その効力を有する。
4 執行官は、前項の規定により債務者に差押物を保管させる場合において、相当であると認めるときは、その使用を許可することができる。
5 執行官は、必要があると認めるときは、第3項の規定により債務者に保管させた差押物を自ら保管し、又は前項の規定による許可を取り消すことができる。
第124条 前条第1項及び第3項から第5項までの規定は、債権者又は提出を拒まない第三者の占有する動産の差押えについて準用する。
第125条 執行官は、差押物又は仮差押えの執行をした動産を更に差し押さえることができない。
2 差押えを受けた債務者に対しその差押えの場所について更に動産執行の申立てがあつた場合においては、執行官は、まだ差し押さえていない動産があるときはこれを差し押さえ、差し押さえるべき動産がないときはその旨を明らかにして、その動産執行事件と先の動産執行事件とを併合しなければならない。仮差押えの執行を受けた債務者に対しその執行の場所について更に動産執行の申立てがあつたときも、同様とする。
3 前項前段の規定により二個の動産執行事件が併合されたときは、後の事件において差し押さえられた動産は、併合の時に、先の事件において差し押さえられたものとみなし、後の事件の申立ては、配当要求の効力を生ずる。先の差押債権者が動産執行の申立てを取り下げたとき、又はその申立てに係る手続が停止され、若しくは取り消されたときは、先の事件において差し押さえられた動産は、併合の時に、後の事件のために差し押さえられたものとみなす。
4 第2項後段の規定により仮差押執行事件と動産執行事件とが併合されたときは、仮差押えの執行がされた動産は、併合の時に、動産執行事件において差し押さえられたものとみなし、仮差押執行事件の申立ては、配当要求の効力を生ずる。差押債権者が動産執行の申立てを取り下げたとき、又はその申立てに係る手続が取り消されたときは、動産執行事件において差し押さえられた動産は、併合の時に、仮差押執行事件において仮差押えの執行がされたものとみなす。
第126条 差押えの効力は、差押物から生ずる天然の産出物に及ぶ。
第127条 差押物を第三者が占有することとなつたときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、その第三者に対し、差押物を執行官に引き渡すべき旨を命ずることができる。
2 前項の申立ては、差押物を第三者が占有していることを知つた日から1週間以内にしなければならない。
3 第1項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
4 第55条第8項から第10項までの規定は、第1項の規定による決定について準用する。
第128条 動産の差押えは、差押債権者の債権及び執行費用の弁済に必要な限度を超えてはならない。
2 差押えの後にその差押えが前項の限度を超えることが明らかとなつたときは、執行官は、その超える限度において差押えを取り消さなければならない。
第129条 差し押さえるべき動産の売得金の額が手続費用の額を超える見込みがないときは、執行官は、差押えをしてはならない。
2 差押物の売得金の額が手続費用及び差押債権者の債権に優先する債権の額の合計額以上となる見込みがないときは、執行官は、差押えを取り消さなければならない。
第130条 差押物について相当な方法による売却の実施をしてもなお売却の見込みがないときは、執行官は、その差押物の差押えを取り消すことができる。
第131条 次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。
一 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
二 債務者等の1月間の生活に必要な食料及び燃料
三 標準的な世帯の2月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
四 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
五 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
六 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
七 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
八 仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物
九 債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
十 債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
十一 債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
十二 発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
十三 債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
十四 建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品
第132条 執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押えの全部若しくは一部の取消しを命じ、又は前条各号に掲げる動産の差押えを許すことができる。
2 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定により差押えが取り消された動産の差押えを許し、又は同項の規定による差押えの全部若しくは一部の取消しを命ずることができる。
3 前二項の規定により差押えの取消しの命令を求める申立てがあつたときは、執行裁判所は、その裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、又は立てさせないで強制執行の停止を命ずることができる。
4 第1項又は第2項の申立てを却下する決定及びこれらの規定により差押えを許す決定に対しては、執行抗告をすることができる。
5 第3項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
第133条 先取特権又は質権を有する者は、その権利を証する文書を提出して、配当要求をすることができる。
第134条 執行官は、差押物を売却するには、入札又は競り売りのほか、最高裁判所規則で定める方法によらなければならない。
第135条 第65条及び第68条の規定は、差押物を売却する場合について準用する。
第136条 執行官は、手形、小切手その他の金銭の支払を目的とする有価証券でその権利の行使のため定められた期間内に引受け若しくは支払のための提示又は支払の請求(以下「提示等」という。)を要するもの(以下「手形等」という。)を差し押さえた場合において、その期間の始期が到来したときは、債務者に代わつて手形等の提示等をしなければならない。
第137条 第39条第1項第7号又は第8号に掲げる文書の提出があつた場合において、差押物について著しい価額の減少を生ずるおそれがあるとき、又はその保管のために不相応な費用を要するときは、執行官は、その差押物を売却することができる。
2 執行官は、前項の規定により差押物を売却したときは、その売得金を供託しなければならない。
第138条 執行官は、有価証券を売却したときは、買受人のために、債務者に代わつて裏書又は名義書換えに必要な行為をすることができる。
第139条 債権者が1人である場合又は債権者が2人以上であつて売得金、差押金銭若しくは手形等の支払金(以下「売得金等」という。)で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる場合には、執行官は、債権者に弁済金を交付し、剰余金を債務者に交付する。
2 前項に規定する場合を除き、売得金等の配当について債権者間に協議が調つたときは、執行官は、その協議に従い配当を実施する。
3 前項の協議が調わないときは、執行官は、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。
4 第84条第3項及び第4項並びに第88条の規定は、第1項又は第2項の規定により配当等を実施する場合について準用する。
第140条 配当等を受けるべき債権者は、差押債権者のほか、売得金については執行官がその交付を受けるまで(第137条又は民事保全法第49条第3項の規定により供託された売得金については、動産執行が続行されることとなるまで)に、差押金銭についてはその差押えをするまでに、手形等の支払金についてはその支払を受けるまでに配当要求をした債権者とする。
第141条 第139条第1項又は第2項の規定により配当等を実施する場合において、配当等を受けるべき債権者の債権について次に掲げる事由があるときは、執行官は、その配当等の額に相当する金銭を供託し、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。
一 停止条件付又は不確定期限付であるとき。
二 仮差押債権者の債権であるとき。
三 第39条第1項第7号又は第192条において準用する第183条第1項第6号に掲げる文書が提出されているとき。
四 その債権に係る先取特権又は質権の実行を一時禁止する裁判の正本が提出されているとき。
2 執行官は、配当等の受領のために出頭しなかつた債権者に対する配当等の額に相当する金銭を供託しなければならない。
第142条 執行裁判所は、第139条第3項の規定による届出があつた場合には直ちに、前条第1項の規定による届出があつた場合には供託の事由が消滅したときに、配当等の手続を実施しなければならない。
2 第84条、第85条及び第88条から第92条までの規定は、前項の規定により執行裁判所が実施する配当等の手続について準用する。
第4款 債権及びその他の財産権に対する強制執行
第1目 債権執行等
第143条 金銭の支払又は船舶若しくは動産の引渡しを目的とする債権(動産執行の目的となる有価証券が発行されている債権を除く。以下この節において「債権」という。)に対する強制執行(第167条の2第2項に規定する少額訴訟債権執行を除く。以下この節において「債権執行」という。)は、執行裁判所の差押命令により開始する。
第144条 債権執行については、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が、この普通裁判籍がないときは差し押さえるべき債権の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。
2 差し押さえるべき債権は、その債権の債務者(以下「第三債務者」という。)の普通裁判籍の所在地にあるものとする。ただし、船舶又は動産の引渡しを目的とする債権及び物上の担保権により担保される債権は、その物の所在地にあるものとする。
3 差押えに係る債権(差押命令により差し押さえられた債権に限る。以下この目において同じ。)について更に差押命令が発せられた場合において、差押命令を発した執行裁判所が異なるときは、執行裁判所は、事件を他の執行裁判所に移送することができる。
4 前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
第145条 執行裁判所は、差押命令において、債務者に対し債権の取立てその他の処分を禁止し、かつ、第三債務者に対し債務者への弁済を禁止しなければならない。
2 差押命令は、債務者及び第三債務者を審尋しないで発する。
3 差押命令は、債務者及び第三債務者に送達しなければならない。
4 裁判所書記官は、差押命令を送達するに際し、債務者に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、第153条第1項又は第2項の規定による当該差押命令の取消しの申立てをすることができる旨その他最高裁判所規則で定める事項を教示しなければならない。
5 差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生ずる。
6 差押命令の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
7 執行裁判所は、債務者に対する差押命令の送達をすることができない場合には、差押債権者に対し、相当の期間を定め、その期間内に債務者の住所、居所その他差押命令の送達をすべき場所の申出(第20条において準用する民事訴訟法第110条第1項各号に掲げる場合にあつては、公示送達の申立て。次項において同じ。)をすべきことを命ずることができる。
8 執行裁判所は、前項の申出を命じた場合において、差押債権者が同項の申出をしないときは、差押命令を取り消すことができる。
第146条 執行裁判所は、差し押さえるべき債権の全部について差押命令を発することができる。
2 差し押さえた債権の価額が差押債権者の債権及び執行費用の額を超えるときは、執行裁判所は、他の債権を差し押さえてはならない。
第147条 差押債権者の申立てがあるときは、裁判所書記官は、差押命令を送達するに際し、第三債務者に対し、差押命令の送達の日から2週間以内に差押えに係る債権の存否その他の最高裁判所規則で定める事項について陳述すべき旨を催告しなければならない。
2 第三債務者は、前項の規定による催告に対して、故意又は過失により、陳述をしなかつたとき、又は不実の陳述をしたときは、これによつて生じた損害を賠償する責めに任ずる。
第148条 差押えに係る債権について証書があるときは、債務者は、差押債権者に対し、その証書を引き渡さなければならない。
2 差押債権者は、差押命令に基づいて、第169条に規定する動産の引渡しの強制執行の方法により前項の証書の引渡しを受けることができる。
第149条 債権の一部が差し押さえられ、又は仮差押えの執行を受けた場合において、その残余の部分を超えて差押命令が発せられたときは、各差押え又は仮差押えの執行の効力は、その債権の全部に及ぶ。債権の全部が差し押さえられ、又は仮差押えの執行を受けた場合において、その債権の一部について差押命令が発せられたときのその差押えの効力も、同様とする。
第150条 登記又は登録(以下「登記等」という。)のされた先取特権、質権又は抵当権によつて担保される債権に対する差押命令が効力を生じたときは、裁判所書記官は、申立てにより、その債権について差押えがされた旨の登記等を嘱託しなければならない。
第151条 給料その他継続的給付に係る債権に対する差押えの効力は、差押債権者の債権及び執行費用の額を限度として、差押えの後に受けるべき給付に及ぶ。
第151条の2 債権者が次に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において、その一部に不履行があるときは、第30条第1項の規定にかかわらず、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができる。
一 民法第752条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
二 民法第760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
三 民法第766条(同法第749条、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
四 民法第877条から第880条までの規定による扶養の義務
2 前項の規定により開始する債権執行においては、各定期金債権について、その確定期限の到来後に弁済期が到来する給料その他継続的給付に係る債権のみを差し押さえることができる。
第152条 次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
一 債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
二 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権
2 退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。
3 債権者が前条第1項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。
第153条 執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し、又は前条の規定により差し押さえてはならない債権の部分について差押命令を発することができる。
2 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定により差押命令が取り消された債権を差し押さえ、又は同項の規定による差押命令の全部若しくは一部を取り消すことができる。
3 前二項の申立てがあつたときは、執行裁判所は、その裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、又は立てさせないで、第三債務者に対し、支払その他の給付の禁止を命ずることができる。
4 第1項又は第2項の規定による差押命令の取消しの申立てを却下する決定に対しては、執行抗告をすることができる。
5 第3項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
第154条 執行力のある債務名義の正本を有する債権者及び文書により先取特権を有することを証明した債権者は、配当要求をすることができる。
2 前項の配当要求があつたときは、その旨を記載した文書は、第三債務者に送達しなければならない。
3 配当要求を却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
第155条 金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。ただし、差押債権者の債権及び執行費用の額を超えて支払を受けることができない。
2 差し押さえられた金銭債権が第152条第1項各号に掲げる債権又は同条第2項に規定する債権である場合(差押債権者の債権に第151条の2第1項各号に掲げる義務に係る金銭債権が含まれているときを除く。)における前項の規定の適用については、同項中「1週間」とあるのは、「4週間」とする。
3 差押債権者が第三債務者から支払を受けたときは、その債権及び執行費用は、支払を受けた額の限度で、弁済されたものとみなす。
4 差押債権者は、前項の支払を受けたときは、直ちに、その旨を執行裁判所に届け出なければならない。
5 差押債権者は、第1項の規定により金銭債権を取り立てることができることとなつた日(前項又はこの項の規定による届出をした場合にあつては、最後に当該届出をした日。次項において同じ。)から第3項の支払を受けることなく2年を経過したときは、同項の支払を受けていない旨を執行裁判所に届け出なければならない。
6 第1項の規定により金銭債権を取り立てることができることとなつた日から2年を経過した後4週間以内に差押債権者が前二項の規定による届出をしないときは、執行裁判所は、差押命令を取り消すことができる。
7 差押債権者が前項の規定により差押命令を取り消す旨の決定の告知を受けてから1週間の不変期間内に第4項の規定による届出(差し押さえられた金銭債権の全部の支払を受けた旨の届出を除く。)又は第5項の規定による届出をしたときは、当該決定は、その効力を失う。
8 差押債権者が第5項に規定する期間を経過する前に執行裁判所に第3項の支払を受けていない旨の届出をしたときは、第5項及び第6項の規定の適用については、第5項の規定による届出があつたものとみなす。
第156条 第三債務者は、差押えに係る金銭債権(差押命令により差し押さえられた金銭債権に限る。次項において同じ。)の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる。
2 第三債務者は、次条第1項に規定する訴えの訴状の送達を受ける時までに、差押えに係る金銭債権のうち差し押さえられていない部分を超えて発せられた差押命令、差押処分又は仮差押命令の送達を受けたときはその債権の全額に相当する金銭を、配当要求があつた旨を記載した文書の送達を受けたときは差し押さえられた部分に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託しなければならない。
3 第三債務者は、前二項の規定による供託をしたときは、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。
第157条 差押債権者が第三債務者に対し差し押さえた債権に係る給付を求める訴え(以下「取立訴訟」という。)を提起したときは、受訴裁判所は、第三債務者の申立てにより、他の債権者で訴状の送達の時までにその債権を差し押さえたものに対し、共同訴訟人として原告に参加すべきことを命ずることができる。
2 前項の裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
3 取立訴訟の判決の効力は、第1項の規定により参加すべきことを命じられた差押債権者で参加しなかつたものにも及ぶ。
4 前条第2項の規定により供託の義務を負う第三債務者に対する取立訴訟において、原告の請求を認容するときは、受訴裁判所は、請求に係る金銭の支払は供託の方法によりすべき旨を判決の主文に掲げなければならない。
5 強制執行又は競売において、前項に規定する判決の原告が配当等を受けるべきときは、その配当等の額に相当する金銭は、供託しなければならない。
第158条 差押債権者は、債務者に対し、差し押さえた債権の行使を怠つたことによつて生じた損害を賠償する責めに任ずる。
第159条 執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、支払に代えて券面額で差し押さえられた金銭債権を差押債権者に転付する命令(以下「転付命令」という。)を発することができる。
2 転付命令は、債務者及び第三債務者に送達しなければならない。
3 転付命令が第三債務者に送達される時までに、転付命令に係る金銭債権について、他の債権者が差押え、仮差押えの執行又は配当要求をしたときは、転付命令は、その効力を生じない。
4 第1項の申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。
5 転付命令は、確定しなければその効力を生じない。
6 差し押さえられた金銭債権が第152条第1項各号に掲げる債権又は同条第2項に規定する債権である場合(差押債権者の債権に第151条の2第1項各号に掲げる義務に係る金銭債権が含まれているときを除く。)における前項の規定の適用については、同項中「確定しなければ」とあるのは、「確定し、かつ、債務者に対して差押命令が送達された日から4週間を経過するまでは、」とする。
7 転付命令が発せられた後に第39条第1項第7号又は第8号に掲げる文書を提出したことを理由として執行抗告がされたときは、抗告裁判所は、他の理由により転付命令を取り消す場合を除き、執行抗告についての裁判を留保しなければならない。
第160条 転付命令が効力を生じた場合においては、差押債権者の債権及び執行費用は、転付命令に係る金銭債権が存する限り、その券面額で、転付命令が第三債務者に送達された時に弁済されたものとみなす。
第161条 差し押さえられた債権が、条件付若しくは期限付であるとき、又は反対給付に係ることその他の事由によりその取立てが困難であるときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、その債権を執行裁判所が定めた価額で支払に代えて差押債権者に譲渡する命令(以下「譲渡命令」という。)、取立てに代えて、執行裁判所の定める方法によりその債権の売却を執行官に命ずる命令(以下「売却命令」という。)又は管理人を選任してその債権の管理を命ずる命令(以下「管理命令」という。)その他相当な方法による換価を命ずる命令を発することができる。
2 執行裁判所は、前項の規定による決定をする場合には、債務者を審尋しなければならない。ただし、債務者が外国にあるとき、又はその住所が知れないときは、この限りでない。
3 第1項の申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。
4 第1項の規定による決定は、確定しなければその効力を生じない。
5 差し押さえられた債権が第152条第1項各号に掲げる債権又は同条第2項に規定する債権である場合(差押債権者の債権に第151条の2第1項各号に掲げる義務に係る金銭債権が含まれているときを除く。)における前項の規定の適用については、同項中「確定しなければ」とあるのは、「確定し、かつ、債務者に対して差押命令が送達された日から4週間を経過するまでは、」とする。
6 執行官は、差し押さえられた債権を売却したときは、債務者に代わり、第三債務者に対し、確定日付のある証書によりその譲渡の通知をしなければならない。
7 第159条第2項及び第3項並びに前条の規定は譲渡命令について、第159条第7項の規定は譲渡命令に対する執行抗告について、第65条及び第68条の規定は売却命令に基づく執行官の売却について、第159条第2項の規定は管理命令について、第84条第3項及び第4項、第88条、第94条第2項、第95条第1項、第3項及び第4項、第98条から第104条まで並びに第106条から第110条までの規定は管理命令に基づく管理について、それぞれ準用する。この場合において、第84条第3項及び第4項中「代金の納付後」とあるのは、「第161条第7項において準用する第107条第1項の期間の経過後」と読み替えるものとする。
第162条 船舶の引渡請求権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間を経過したときは、第三債務者に対し、船舶の所在地を管轄する地方裁判所の選任する保管人にその船舶を引き渡すべきことを請求することができる。
2 前項の規定により保管人が引渡しを受けた船舶の強制執行は、船舶執行の方法により行う。
3 第1項に規定する保管人が船舶の引渡しを受けた場合において、その船舶について強制競売の開始決定がされたときは、その保管人は、第116条第1項の規定により選任された保管人とみなす。
第163条 動産の引渡請求権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間を経過したときは、第三債務者に対し、差押債権者の申立てを受けた執行官にその動産を引き渡すべきことを請求することができる。
2 執行官は、動産の引渡しを受けたときは、動産執行の売却の手続によりこれを売却し、その売得金を執行裁判所に提出しなければならない。
第164条 第150条に規定する債権について、転付命令若しくは譲渡命令が効力を生じたとき、又は売却命令による売却が終了したときは、裁判所書記官は、申立てにより、その債権を取得した差押債権者又は買受人のために先取特権、質権又は抵当権の移転の登記等を嘱託し、及び同条の規定による登記等の抹消を嘱託しなければならない。
2 前項の規定による嘱託をする場合(次項に規定する場合を除く。)においては、嘱託書に、転付命令若しくは譲渡命令の正本又は売却命令に基づく売却について執行官が作成した文書の謄本を添付しなければならない。
3 第1項の規定による嘱託をする場合において、不動産登記法(平成16年法律第123号)第16条第2項(他の法令において準用する場合を含む。)において準用する同法第18条の規定による嘱託をするときは、その嘱託情報と併せて転付命令若しくは譲渡命令があつたことを証する情報又は売却命令に基づく売却について執行官が作成した文書の内容を証する情報を提供しなければならない。
4 第1項の規定による嘱託に要する登録免許税その他の費用は、同項に規定する差押債権者又は買受人の負担とする。
5 第150条の規定により登記等がされた場合において、差し押さえられた債権について支払又は供託があつたことを証する文書が提出されたときは、裁判所書記官は、申立てにより、その登記等の抹消を嘱託しなければならない。債権執行の申立てが取り下げられたとき、又は差押命令の取消決定が確定したときも、同様とする。
6 前項の規定による嘱託に要する登録免許税その他の費用は、同項前段の場合にあつては債務者の負担とし、同項後段の場合にあつては差押債権者の負担とする。
第165条 配当等を受けるべき債権者は、次に掲げる時までに差押え、仮差押えの執行又は配当要求をした債権者とする。
一 第三債務者が第156条第1項又は第2項の規定による供託をした時
二 取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された時
三 売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時
四 動産引渡請求権の差押えの場合にあつては、執行官がその動産の引渡しを受けた時
第166条 執行裁判所は、第161条第7項において準用する第109条に規定する場合のほか、次に掲げる場合には、配当等を実施しなければならない。
一 第156条第1項若しくは第2項又は第157条第5項の規定による供託がされた場合
二 売却命令による売却がされた場合
三 第163条第2項の規定により売得金が提出された場合
2 第84条、第85条及び第88条から第92条までの規定は、前項の規定により執行裁判所が実施する配当等の手続について準用する。
3 差し押さえられた債権が第152条第1項各号に掲げる債権又は同条第2項に規定する債権である場合(差押債権者(数人あるときは、そのうち少なくとも1人以上)の債権に第151条の2第1項各号に掲げる義務に係る金銭債権が含まれているときを除く。)には、債務者に対して差押命令が送達された日から4週間を経過するまでは、配当等を実施してはならない。
第167条 不動産、船舶、動産及び債権以外の財産権(以下この条において「その他の財産権」という。)に対する強制執行については、特別の定めがあるもののほか、債権執行の例による。
2 その他の財産権で権利の移転について登記等を要するものは、強制執行の管轄については、その登記等の地にあるものとする。
3 その他の財産権で第三債務者又はこれに準ずる者がないものに対する差押えの効力は、差押命令が債務者に送達された時に生ずる。
4 その他の財産権で権利の移転について登記等を要するものについて差押えの登記等が差押命令の送達前にされた場合には、差押えの効力は、差押えの登記等がされた時に生ずる。ただし、その他の財産権で権利の処分の制限について登記等をしなければその効力が生じないものに対する差押えの効力は、差押えの登記等が差押命令の送達後にされた場合においても、差押えの登記等がされた時に生ずる。
5 第48条、第54条及び第82条の規定は、権利の移転について登記等を要するその他の財産権の強制執行に関する登記等について準用する。
第2目 少額訴訟債権執行
第167条の2 次に掲げる少額訴訟に係る債務名義による金銭債権に対する強制執行は、前目の定めるところにより裁判所が行うほか、第2条の規定にかかわらず、申立てにより、この目の定めるところにより裁判所書記官が行う。
一 少額訴訟における確定判決
二 仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決
三 少額訴訟における訴訟費用又は和解の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分
四 少額訴訟における和解又は認諾の調書
五 少額訴訟における民事訴訟法第275条の2第1項の規定による和解に代わる決定
2 前項の規定により裁判所書記官が行う同項の強制執行(以下この目において「少額訴訟債権執行」という。)は、裁判所書記官の差押処分により開始する。
3 少額訴訟債権執行の申立ては、次の各号に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める簡易裁判所の裁判所書記官に対してする。
一 第1項第1号に掲げる債務名義 同号の判決をした簡易裁判所
二 第1項第2号に掲げる債務名義 同号の判決をした簡易裁判所
三 第1項第3号に掲げる債務名義 同号の処分をした裁判所書記官の所属する簡易裁判所
四 第1項第4号に掲げる債務名義 同号の和解が成立し、又は同号の認諾がされた簡易裁判所
五 第1項第5号に掲げる債務名義 同号の和解に代わる決定をした簡易裁判所
4 第144条第3項及び第4項の規定は、差押えに係る金銭債権(差押処分により差し押さえられた金銭債権に限る。以下この目において同じ。)について更に差押処分がされた場合について準用する。この場合において、同条第3項中「差押命令を発した執行裁判所」とあるのは「差押処分をした裁判所書記官の所属する簡易裁判所」と、「執行裁判所は」とあるのは「裁判所書記官は」と、「他の執行裁判所」とあるのは「他の簡易裁判所の裁判所書記官」と、同条第4項中「決定」とあるのは「裁判所書記官の処分」と読み替えるものとする。
第167条の3 少額訴訟債権執行の手続において裁判所書記官が行う執行処分に関しては、その裁判所書記官の所属する簡易裁判所をもつて執行裁判所とする。
第167条の4 少額訴訟債権執行の手続において裁判所書記官が行う執行処分は、特別の定めがある場合を除き、相当と認める方法で告知することによつて、その効力を生ずる。
2 前項に規定する裁判所書記官が行う執行処分に対しては、執行裁判所に執行異議を申し立てることができる。
3 第10条第6項前段及び第9項の規定は、前項の規定による執行異議の申立てがあつた場合について準用する。
第167条の5 裁判所書記官は、差押処分において、債務者に対し金銭債権の取立てその他の処分を禁止し、かつ、第三債務者に対し債務者への弁済を禁止しなければならない。
2 第145条第2項、第3項、第5項、第7項及び第8項の規定は差押処分について、同条第4項の規定は差押処分を送達する場合について、それぞれ準用する。この場合において、同項中「第153条第1項又は第2項」とあるのは「第167条の8第1項又は第2項」と、同条第7項及び第8項中「執行裁判所」とあるのは「裁判所書記官」と読み替えるものとする。
3 差押処分の申立てについての裁判所書記官の処分に対する執行異議の申立ては、その告知を受けた日から1週間の不変期間内にしなければならない。
4 前項の執行異議の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
5 民事訴訟法第74条第1項の規定は、差押処分の申立てについての裁判所書記官の処分について準用する。この場合においては、前二項及び同条第3項の規定を準用する。
6 第2項において読み替えて準用する第145条第8項の規定による裁判所書記官の処分に対する執行異議の申立ては、その告知を受けた日から1週間の不変期間内にしなければならない。
7 前項の執行異議の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
8 第2項において読み替えて準用する第145条第8項の規定による裁判所書記官の処分は、確定しなければその効力を生じない。
第167条の6 少額訴訟債権執行についての第14条第1項及び第4項の規定の適用については、これらの規定中「執行裁判所」とあるのは、「裁判所書記官」とする。
2 第14条第2項及び第3項の規定は、前項の規定により読み替えて適用する同条第1項の規定による裁判所書記官の処分については、適用しない。
3 第1項の規定により読み替えて適用する第14条第4項の規定による裁判所書記官の処分に対する執行異議の申立ては、その告知を受けた日から1週間の不変期間内にしなければならない。
4 前項の執行異議の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
5 第1項の規定により読み替えて適用する第14条第4項の規定により少額訴訟債権執行の手続を取り消す旨の裁判所書記官の処分は、確定しなければその効力を生じない。
第167条の7 少額訴訟債権執行の不許を求める第三者異議の訴えは、第38条第3項の規定にかかわらず、執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
第167条の8 執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押処分の全部若しくは一部を取り消し、又は第167条の14第1項において準用する第152条の規定により差し押さえてはならない金銭債権の部分について差押処分をすべき旨を命ずることができる。
2 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定により差押処分が取り消された金銭債権について差押処分をすべき旨を命じ、又は同項の規定によりされた差押処分の全部若しくは一部を取り消すことができる。
3 第153条第3項から第5項までの規定は、前二項の申立てがあつた場合について準用する。この場合において、同条第4項中「差押命令」とあるのは、「差押処分」と読み替えるものとする。
第167条の9 執行力のある債務名義の正本を有する債権者及び文書により先取特権を有することを証明した債権者は、裁判所書記官に対し、配当要求をすることができる。
2 第154条第2項の規定は、前項の配当要求があつた場合について準用する。
3 第1項の配当要求を却下する旨の裁判所書記官の処分に対する執行異議の申立ては、その告知を受けた日から1週間の不変期間内にしなければならない。
4 前項の執行異議の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
第167条の10 差押えに係る金銭債権について転付命令又は譲渡命令、売却命令、管理命令その他相当な方法による換価を命ずる命令(以下この条において「転付命令等」という。)のいずれかの命令を求めようとするときは、差押債権者は、執行裁判所に対し、転付命令等のうちいずれの命令を求めるかを明らかにして、債権執行の手続に事件を移行させることを求める旨の申立てをしなければならない。
2 前項に規定する命令の種別を明らかにしてされた同項の申立てがあつたときは、執行裁判所は、その所在地を管轄する地方裁判所における債権執行の手続に事件を移行させなければならない。
3 前項の規定による決定が効力を生ずる前に、既にされた執行処分について執行異議の申立て又は執行抗告があつたときは、当該決定は、当該執行異議の申立て又は執行抗告についての裁判が確定するまでは、その効力を生じない。
4 第2項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
5 第1項の申立てを却下する決定に対しては、執行抗告をすることができる。
6 第2項の規定による決定が効力を生じたときは、差押処分の申立て又は第1項の申立てがあつた時に第2項に規定する地方裁判所にそれぞれ差押命令の申立て又は転付命令等の申立てがあつたものとみなし、既にされた執行処分その他の行為は債権執行の手続においてされた執行処分その他の行為とみなす。
第167条の11 第167条の14第1項において準用する第156条第1項若しくは第2項又は第157条第5項の規定により供託がされた場合において、債権者が2人以上であつて供託金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができないため配当を実施すべきときは、執行裁判所は、その所在地を管轄する地方裁判所における債権執行の手続に事件を移行させなければならない。
2 前項に規定する場合において、差押えに係る金銭債権について更に差押命令又は差押処分が発せられたときは、執行裁判所は、同項に規定する地方裁判所における債権執行の手続のほか、当該差押命令を発した執行裁判所又は当該差押処分をした裁判所書記官の所属する簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所における債権執行の手続にも事件を移行させることができる。
3 第1項に規定する供託がされた場合において、債権者が1人であるとき、又は債権者が2人以上であつて供託金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができるときは、裁判所書記官は、供託金の交付計算書を作成して、債権者に弁済金を交付し、剰余金を債務者に交付する。
4 前項に規定する場合において、差押えに係る金銭債権について更に差押命令が発せられたときは、執行裁判所は、同項の規定にかかわらず、その所在地を管轄する地方裁判所又は当該差押命令を発した執行裁判所における債権執行の手続に事件を移行させることができる。
5 差押えに係る金銭債権について更に差押命令が発せられた場合において、当該差押命令を発した執行裁判所が第161条第7項において準用する第109条の規定又は第166条第1項第2号の規定により配当等を実施するときは、執行裁判所は、当該差押命令を発した執行裁判所における債権執行の手続に事件を移行させなければならない。
6 第1項、第2項、第4項又は前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
7 第84条第3項及び第4項、第88条、第91条(第1項第6号及び第7号を除く。)、第92条第1項並びに第166条第3項の規定は第3項の規定により裁判所書記官が実施する弁済金の交付の手続について、前条第3項の規定は第1項、第2項、第4項又は第5項の規定による決定について、同条第6項の規定は第1項、第2項、第4項又は第5項の規定による決定が効力を生じた場合について、それぞれ準用する。この場合において、第166条第3項中「差押命令」とあるのは、「差押処分」と読み替えるものとする。
第167条の12 執行裁判所は、差し押さえるべき金銭債権の内容その他の事情を考慮して相当と認めるときは、その所在地を管轄する地方裁判所における債権執行の手続に事件を移行させることができる。
2 前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
3 第167条の10第3項の規定は第1項の規定による決定について、同条第6項の規定は第1項の規定による決定が効力を生じた場合について準用する。この場合において、同条第6項中「差押処分の申立て又は第1項の申立て」とあるのは「差押処分の申立て」と、「それぞれ差押命令の申立て又は転付命令等の申立て」とあるのは「差押命令の申立て」と読み替えるものとする。
第167条の13 少額訴訟債権執行についての第1章及び第2章第1節の規定の適用については、第13条第1項中「執行裁判所でする手続」とあるのは「第167条の2第2項に規定する少額訴訟債権執行の手続」と、第16条第1項中「執行裁判所」とあるのは「裁判所書記官」と、第17条中「執行裁判所の行う民事執行」とあるのは「第167条の2第2項に規定する少額訴訟債権執行」と、第40条第1項中「執行裁判所又は執行官」とあるのは「裁判所書記官」と、第42条第4項中「執行裁判所の裁判所書記官」とあるのは「裁判所書記官」とする。
第167条の14 第146条から第152条まで、第155条から第158条まで、第164条第5項及び第6項並びに第165条(第3号及び第4号を除く。)の規定は、少額訴訟債権執行について準用する。この場合において、第146条、第155条第4項から第6項まで及び第8項並びに第156条第3項中「執行裁判所」とあるのは「裁判所書記官」と、第146条第1項中「差押命令を発する」とあるのは「差押処分をする」と、第147条第1項、第148条第2項、第150条、第155条第1項、第6項及び第7項並びに第156条第1項中「差押命令」とあるのは「差押処分」と、第147条第1項及び第148条第1項中「差押えに係る債権」とあるのは「差押えに係る金銭債権」と、第149条中「差押命令が発せられたとき」とあるのは「差押処分がされたとき」と、第155条第7項中「決定」とあるのは「裁判所書記官の処分」と、第164条第5項中「差押命令の取消決定」とあるのは「差押処分の取消決定若しくは差押処分を取り消す旨の裁判所書記官の処分」と、第165条(見出しを含む。)中「配当等」とあるのは「弁済金の交付」と読み替えるものとする。
2 第167条の5第6項から第8項までの規定は、前項において読み替えて準用する第155条第6項の規定による裁判所書記官の処分がされた場合について準用する。
第5款 扶養義務等に係る金銭債権についての強制執行の特例
第167条の15 第151条の2第1項各号に掲げる義務に係る金銭債権についての強制執行は、前各款の規定により行うほか、債権者の申立てがあるときは、執行裁判所が第172条第1項に規定する方法により行う。ただし、債務者が、支払能力を欠くためにその金銭債権に係る債務を弁済することができないとき、又はその債務を弁済することによつてその生活が著しく窮迫するときは、この限りでない。
2 前項の規定により同項に規定する金銭債権について第172条第1項に規定する方法により強制執行を行う場合において、債務者が債権者に支払うべき金銭の額を定めるに当たつては、執行裁判所は、債務不履行により債権者が受けるべき不利益並びに債務者の資力及び従前の債務の履行の態様を特に考慮しなければならない。
3 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、債務者の申立てにより、その申立てがあつた時(その申立てがあつた後に事情の変更があつたときは、その事情の変更があつた時)までさかのぼつて、第1項の規定による決定を取り消すことができる。
4 前項の申立てがあつたときは、執行裁判所は、その裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、又は立てさせないで、第1項の規定による決定の執行の停止を命ずることができる。
5 前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
6 第172条第2項から第5項までの規定は第1項の場合について、同条第3項及び第5項の規定は第3項の場合について、第173条第2項の規定は第1項の執行裁判所について準用する。
第167条の16 債権者が第151条の2第1項各号に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において、その一部に不履行があるときは、第30条第1項の規定にかかわらず、当該定期金債権のうち6月以内に確定期限が到来するものについても、前条第1項に規定する方法による強制執行を開始することができる。
第3節 金銭の支払を目的としない請求権についての強制執行
第168条 不動産等(不動産又は人の居住する船舶等をいう。以下この条及び次条において同じ。)の引渡し又は明渡しの強制執行は、執行官が債務者の不動産等に対する占有を解いて債権者にその占有を取得させる方法により行う。
2 執行官は、前項の強制執行をするため同項の不動産等の占有者を特定する必要があるときは、当該不動産等に在る者に対し、当該不動産等又はこれに近接する場所において、質問をし、又は文書の提示を求めることができる。
3 第1項の強制執行は、債権者又はその代理人が執行の場所に出頭したときに限り、することができる。
4 執行官は、第1項の強制執行をするに際し、債務者の占有する不動産等に立ち入り、必要があるときは、閉鎖した戸を開くため必要な処分をすることができる。
5 執行官は、第1項の強制執行においては、その目的物でない動産を取り除いて、債務者、その代理人又は同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものに引き渡さなければならない。この場合において、その動産をこれらの者に引き渡すことができないときは、執行官は、最高裁判所規則で定めるところにより、これを売却することができる。
6 執行官は、前項の動産のうちに同項の規定による引渡し又は売却をしなかつたものがあるときは、これを保管しなければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する。
7 前項の規定による保管の費用は、執行費用とする。
8 第5項(第6項後段において準用する場合を含む。)の規定により動産を売却したときは、執行官は、その売得金から売却及び保管に要した費用を控除し、その残余を供託しなければならない。
9 第57条第5項の規定は、第1項の強制執行について準用する。
第168条の2 執行官は、不動産等の引渡し又は明渡しの強制執行の申立てがあつた場合において、当該強制執行を開始することができるときは、次項に規定する引渡し期限を定めて、明渡しの催告(不動産等の引渡し又は明渡しの催告をいう。以下この条において同じ。)をすることができる。ただし、債務者が当該不動産等を占有していないときは、この限りでない。
2 引渡し期限(明渡しの催告に基づき第6項の規定による強制執行をすることができる期限をいう。以下この条において同じ。)は、明渡しの催告があつた日から1月を経過する日とする。ただし、執行官は、執行裁判所の許可を得て、当該日以後の日を引渡し期限とすることができる。
3 執行官は、明渡しの催告をしたときは、その旨、引渡し期限及び第5項の規定により債務者が不動産等の占有を移転することを禁止されている旨を、当該不動産等の所在する場所に公示書その他の標識を掲示する方法により、公示しなければならない。
4 執行官は、引渡し期限が経過するまでの間においては、執行裁判所の許可を得て、引渡し期限を延長することができる。この場合においては、執行官は、引渡し期限の変更があつた旨及び変更後の引渡し期限を、当該不動産等の所在する場所に公示書その他の標識を掲示する方法により、公示しなければならない。
5 明渡しの催告があつたときは、債務者は、不動産等の占有を移転してはならない。ただし、債権者に対して不動産等の引渡し又は明渡しをする場合は、この限りでない。
6 明渡しの催告後に不動産等の占有の移転があつたときは、引渡し期限が経過するまでの間においては、占有者(第1項の不動産等を占有する者であつて債務者以外のものをいう。以下この条において同じ。)に対して、第1項の申立てに基づく強制執行をすることができる。この場合において、第42条及び前条の規定の適用については、当該占有者を債務者とみなす。
7 明渡しの催告後に不動産等の占有の移転があつたときは、占有者は、明渡しの催告があつたことを知らず、かつ、債務者の占有の承継人でないことを理由として、債権者に対し、強制執行の不許を求める訴えを提起することができる。この場合においては、第36条、第37条及び第38条第3項の規定を準用する。
8 明渡しの催告後に不動産等を占有した占有者は、明渡しの催告があつたことを知つて占有したものと推定する。
9 第6項の規定により占有者に対して強制執行がされたときは、当該占有者は、執行異議の申立てにおいて、債権者に対抗することができる権原により目的物を占有していること、又は明渡しの催告があつたことを知らず、かつ、債務者の占有の承継人でないことを理由とすることができる。
10 明渡しの催告に要した費用は、執行費用とする。
第169条 第168条第1項に規定する動産以外の動産(有価証券を含む。)の引渡しの強制執行は、執行官が債務者からこれを取り上げて債権者に引き渡す方法により行う。
2 第122条第2項、第123条第2項及び第168条第5項から第8項までの規定は、前項の強制執行について準用する。
第170条 第三者が強制執行の目的物を占有している場合においてその物を債務者に引き渡すべき義務を負つているときは、物の引渡しの強制執行は、執行裁判所が、債務者の第三者に対する引渡請求権を差し押さえ、請求権の行使を債権者に許す旨の命令を発する方法により行う。
2 第144条、第145条(第4項を除く。)、第147条、第148条、第155条第1項及び第3項並びに第158条の規定は、前項の強制執行について準用する。
第171条 次の各号に掲げる強制執行は、執行裁判所がそれぞれ当該各号に定める旨を命ずる方法により行う。
一 作為を目的とする債務についての強制執行 債務者の費用で第三者に当該作為をさせること。
二 不作為を目的とする債務についての強制執行 債務者の費用で、債務者がした行為の結果を除去し、又は将来のため適当な処分をすべきこと。
2 前項の執行裁判所は、第33条第2項第1号又は第6号に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める裁判所とする。
3 執行裁判所は、第1項の規定による決定をする場合には、債務者を審尋しなければならない。
4 執行裁判所は、第1項の規定による決定をする場合には、申立てにより、債務者に対し、その決定に掲げる行為をするために必要な費用をあらかじめ債権者に支払うべき旨を命ずることができる。
5 第1項の強制執行の申立て又は前項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
6 第6条第2項の規定は、第1項の規定による決定を執行する場合について準用する。
第172条 作為又は不作為を目的とする債務で前条第1項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。
2 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定による決定を変更することができる。
3 執行裁判所は、前二項の規定による決定をする場合には、申立ての相手方を審尋しなければならない。
4 第1項の規定により命じられた金銭の支払があつた場合において、債務不履行により生じた損害の額が支払額を超えるときは、債権者は、その超える額について損害賠償の請求をすることを妨げられない。
5 第1項の強制執行の申立て又は第2項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
6 前条第2項の規定は、第1項の執行裁判所について準用する。
第173条 第168条第1項、第169条第1項、第170条第1項及び第171条第1項に規定する強制執行は、それぞれ第168条から第171条までの規定により行うほか、債権者の申立てがあるときは、執行裁判所が前条第1項に規定する方法により行う。この場合においては、同条第2項から第5項までの規定を準用する。
2 前項の執行裁判所は、第33条第2項各号(第1号の2、第1号の3及び第4号を除く。)に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該債務名義についての執行文付与の訴えの管轄裁判所とする。
第174条 子の引渡しの強制執行は、次の各号に掲げる方法のいずれかにより行う。
一 執行裁判所が決定により執行官に子の引渡しを実施させる方法
二 第172条第1項に規定する方法
2 前項第1号に掲げる方法による強制執行の申立ては、次の各号のいずれかに該当するときでなければすることができない。
一 第172条第1項の規定による決定が確定した日から2週間を経過したとき(当該決定において定められた債務を履行すべき一定の期間の経過がこれより後である場合にあつては、その期間を経過したとき)。
二 前項第2号に掲げる方法による強制執行を実施しても、債務者が子の監護を解く見込みがあるとは認められないとき。
三 子の急迫の危険を防止するため直ちに強制執行をする必要があるとき。
3 執行裁判所は、第1項第1号の規定による決定をする場合には、債務者を審尋しなければならない。ただし、子に急迫した危険があるときその他の審尋をすることにより強制執行の目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。
4 執行裁判所は、第1項第1号の規定による決定において、執行官に対し、債務者による子の監護を解くために必要な行為をすべきことを命じなければならない。
5 第171条第2項の規定は第1項第1号の執行裁判所について、同条第4項の規定は同号の規定による決定をする場合について、それぞれ準用する。
6 第2項の強制執行の申立て又は前項において準用する第171条第4項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
第175条 執行官は、債務者による子の監護を解くために必要な行為として、債務者に対し説得を行うほか、債務者の住居その他債務者の占有する場所において、次に掲げる行為をすることができる。
一 その場所に立ち入り、子を捜索すること。この場合において、必要があるときは、閉鎖した戸を開くため必要な処分をすること。
二 債権者若しくはその代理人と子を面会させ、又は債権者若しくはその代理人と債務者を面会させること。
三 その場所に債権者又はその代理人を立ち入らせること。
2 執行官は、子の心身に及ぼす影響、当該場所及びその周囲の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは、前項に規定する場所以外の場所においても、債務者による子の監護を解くために必要な行為として、当該場所の占有者の同意を得て又は次項の規定による許可を受けて、前項各号に掲げる行為をすることができる。
3 執行裁判所は、子の住居が第1項に規定する場所以外の場所である場合において、債務者と当該場所の占有者との関係、当該占有者の私生活又は業務に与える影響その他の事情を考慮して相当と認めるときは、債権者の申立てにより、当該占有者の同意に代わる許可をすることができる。
4 執行官は、前項の規定による許可を受けて第1項各号に掲げる行為をするときは、職務の執行に当たり、当該許可を受けたことを証する文書を提示しなければならない。
5 第1項又は第2項の規定による債務者による子の監護を解くために必要な行為は、債権者が第1項又は第2項に規定する場所に出頭した場合に限り、することができる。
6 執行裁判所は、債権者が第1項又は第2項に規定する場所に出頭することができない場合であつても、その代理人が債権者に代わつて当該場所に出頭することが、当該代理人と子との関係、当該代理人の知識及び経験その他の事情に照らして子の利益の保護のために相当と認めるときは、前項の規定にかかわらず、債権者の申立てにより、当該代理人が当該場所に出頭した場合においても、第1項又は第2項の規定による債務者による子の監護を解くために必要な行為をすることができる旨の決定をすることができる。
7 執行裁判所は、いつでも前項の決定を取り消すことができる。
8 執行官は、第6条第1項の規定にかかわらず、子に対して威力を用いることはできない。子以外の者に対して威力を用いることが子の心身に有害な影響を及ぼすおそれがある場合においては、当該子以外の者についても、同様とする。
9 執行官は、第1項又は第2項の規定による債務者による子の監護を解くために必要な行為をするに際し、債権者又はその代理人に対し、必要な指示をすることができる。
第176条 執行裁判所及び執行官は、第174条第1項第1号に掲げる方法による子の引渡しの強制執行の手続において子の引渡しを実現するに当たつては、子の年齢及び発達の程度その他の事情を踏まえ、できる限り、当該強制執行が子の心身に有害な影響を及ぼさないように配慮しなければならない。
第177条 意思表示をすべきことを債務者に命ずる判決その他の裁判が確定し、又は和解、認諾、調停若しくは労働審判に係る債務名義が成立したときは、債務者は、その確定又は成立の時に意思表示をしたものとみなす。ただし、債務者の意思表示が、債権者の証明すべき事実の到来に係るときは第27条第1項の規定により執行文が付与された時に、反対給付との引換え又は債務の履行その他の債務者の証明すべき事実のないことに係るときは次項又は第3項の規定により執行文が付与された時に意思表示をしたものとみなす。
2 債務者の意思表示が反対給付との引換えに係る場合においては、執行文は、債権者が反対給付又はその提供のあつたことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。
3 債務者の意思表示が債務者の証明すべき事実のないことに係る場合において、執行文の付与の申立てがあつたときは、裁判所書記官は、債務者に対し一定の期間を定めてその事実を証明する文書を提出すべき旨を催告し、債務者がその期間内にその文書を提出しないときに限り、執行文を付与することができる。
第178条及び第179条 削除
第3章 担保権の実行としての競売等
第180条 不動産(登記することができない土地の定着物を除き、第43条第2項の規定により不動産とみなされるものを含む。以下この章において同じ。)を目的とする担保権(以下この章において「不動産担保権」という。)の実行は、次に掲げる方法であつて債権者が選択したものにより行う。
一 担保不動産競売(競売による不動産担保権の実行をいう。以下この章において同じ。)の方法
二 担保不動産収益執行(不動産から生ずる収益を被担保債権の弁済に充てる方法による不動産担保権の実行をいう。以下この章において同じ。)の方法
第181条 不動産担保権の実行は、次に掲げる文書が提出されたときに限り、開始する。
一 担保権の存在を証する確定判決若しくは家事事件手続法第75条の審判又はこれらと同一の効力を有するものの謄本
二 担保権の存在を証する公証人が作成した公正証書の謄本
三 担保権の登記(仮登記を除く。)に関する登記事項証明書
四 一般の先取特権にあつては、その存在を証する文書
2 抵当証券の所持人が不動産担保権の実行の申立てをするには、抵当証券を提出しなければならない。
3 担保権について承継があつた後不動産担保権の実行の申立てをする場合には、相続その他の一般承継にあつてはその承継を証する文書を、その他の承継にあつてはその承継を証する裁判の謄本その他の公文書を提出しなければならない。
4 不動産担保権の実行の開始決定がされたときは、裁判所書記官は、開始決定の送達に際し、不動産担保権の実行の申立てにおいて提出された前三項に規定する文書の目録及び第1項第4号に掲げる文書の写しを相手方に送付しなければならない。
第182条 不動産担保権の実行の開始決定に対する執行抗告又は執行異議の申立てにおいては、債務者又は不動産の所有者(不動産とみなされるものにあつては、その権利者。以下同じ。)は、担保権の不存在又は消滅を理由とすることができる。
第183条 不動産担保権の実行の手続は、次に掲げる文書の提出があつたときは、停止しなければならない。
一 担保権のないことを証する確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む。次号において同じ。)の謄本
二 第181条第1項第1号に掲げる裁判若しくはこれと同一の効力を有するものを取り消し、若しくはその効力がないことを宣言し、又は同項第3号に掲げる登記を抹消すべき旨を命ずる確定判決の謄本
三 担保権の実行をしない旨、その実行の申立てを取り下げる旨又は債権者が担保権によつて担保される債権の弁済を受け、若しくはその債権の弁済の猶予をした旨を記載した裁判上の和解の調書その他の公文書の謄本
四 担保権の登記の抹消に関する登記事項証明書
五 不動産担保権の実行の手続の停止及び執行処分の取消しを命ずる旨を記載した裁判の謄本
六 不動産担保権の実行の手続の一時の停止を命ずる旨を記載した裁判の謄本
七 担保権の実行を一時禁止する裁判の謄本
2 前項第1号から第5号までに掲げる文書が提出されたときは、執行裁判所は、既にした執行処分をも取り消さなければならない。
3 第12条の規定は、前項の規定による決定については適用しない。
第184条 担保不動産競売における代金の納付による買受人の不動産の取得は、担保権の不存在又は消滅により妨げられない。
第185条 削除
第186条 削除
第187条 執行裁判所は、担保不動産競売の開始決定前であつても、債務者又は不動産の所有者若しくは占有者が価格減少行為(第55条第1項に規定する価格減少行為をいう。以下この項において同じ。)をする場合において、特に必要があるときは、当該不動産につき担保不動産競売の申立てをしようとする者の申立てにより、買受人が代金を納付するまでの間、同条第1項各号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずることができる。ただし、当該価格減少行為による価格の減少又はそのおそれの程度が軽微であるときは、この限りでない。
2 前項の場合において、第55条第1項第2号又は第3号に掲げる保全処分は、次に掲げる場合のいずれかに該当するときでなければ、命ずることができない。
一 前項の債務者又は同項の不動産の所有者が当該不動産を占有する場合
二 前項の不動産の占有者の占有の権原が同項の規定による申立てをした者に対抗することができない場合
3 第1項の規定による申立てをするには、担保不動産競売の申立てをする場合において第181条第1項から第3項までの規定により提出すべき文書を提示しなければならない。
4 執行裁判所は、申立人が第1項の保全処分を命ずる決定の告知を受けた日から3月以内に同項の担保不動産競売の申立てをしたことを証する文書を提出しないときは、被申立人又は同項の不動産の所有者の申立てにより、その決定を取り消さなければならない。
5 第55条第3項から第5項までの規定は第1項の規定による決定について、同条第6項の規定は第1項又はこの項において準用する同条第5項の申立てについての裁判について、同条第7項の規定はこの項において準用する同条第5項の規定による決定について、同条第8項及び第9項並びに第55条の2の規定は第1項の規定による決定(第55条第1項第1号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずるものを除く。)について、第55条第10項の規定は第1項の申立て又は同項の規定による決定(同条第1項第1号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずるものを除く。)の執行に要した費用について、第83条の2の規定は第1項の規定による決定(第55条第1項第3号に掲げる保全処分及び公示保全処分を命ずるものに限る。)の執行がされた場合について準用する。この場合において、第55条第3項中「債務者以外の占有者」とあるのは、「債務者及び不動産の所有者以外の占有者」と読み替えるものとする。
第188条 第44条の規定は不動産担保権の実行について、前章第2節第1款第2目(第81条を除く。)の規定は担保不動産競売について、同款第3目の規定は担保不動産収益執行について準用する。
第189条 前章第2節第2款及び第181条から第184条までの規定は、船舶を目的とする担保権の実行としての競売について準用する。この場合において、第115条第3項中「執行力のある債務名義の正本」とあるのは「第189条において準用する第181条第1項から第3項までに規定する文書」と、第181条第1項第4号中「一般の先取特権」とあるのは「先取特権」と読み替えるものとする。
第190条 動産を目的とする担保権の実行としての競売(以下「動産競売」という。)は、次に掲げる場合に限り、開始する。
一 債権者が執行官に対し当該動産を提出した場合
二 債権者が執行官に対し当該動産の占有者が差押えを承諾することを証する文書を提出した場合
三 債権者が執行官に対し次項の許可の決定書の謄本を提出し、かつ、第192条において準用する第123条第2項の規定による捜索に先立つて又はこれと同時に当該許可の決定が債務者に送達された場合
2 執行裁判所は、担保権の存在を証する文書を提出した債権者の申立てがあつたときは、当該担保権についての動産競売の開始を許可することができる。ただし、当該動産が第123条第2項に規定する場所又は容器にない場合は、この限りでない。
3 前項の許可の決定は、債務者に送達しなければならない。
4 第2項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
第191条 動産競売に係る差押えに対する執行異議の申立てにおいては、債務者又は動産の所有者は、担保権の不存在若しくは消滅又は担保権によつて担保される債権の一部の消滅を理由とすることができる。
第192条 前章第2節第3款(第123条第2項、第128条、第131条及び第132条を除く。)及び第183条の規定は動産競売について、第128条、第131条及び第132条の規定は一般の先取特権の実行としての動産競売について、第123条第2項の規定は第190条第1項第3号に掲げる場合における動産競売について準用する。
第193条 第143条に規定する債権及び第167条第1項に規定する財産権(以下この項において「その他の財産権」という。)を目的とする担保権の実行は、担保権の存在を証する文書(権利の移転について登記等を要するその他の財産権を目的とする担保権で一般の先取特権以外のものについては、第181条第1項第1号から第3号まで、第2項又は第3項に規定する文書)が提出されたときに限り、開始する。担保権を有する者が目的物の売却、賃貸、滅失若しくは損傷又は目的物に対する物権の設定若しくは土地収用法(昭和26年法律第219号)による収用その他の行政処分により債務者が受けるべき金銭その他の物に対して民法その他の法律の規定によつてするその権利の行使についても、同様とする。
2 前章第2節第4款第1目(第146条第2項、第152条及び第153条を除く。)及び第182条から第184条までの規定は前項に規定する担保権の実行及び行使について、第146条第2項、第152条及び第153条の規定は前項に規定する一般の先取特権の実行及び行使について準用する。
第194条 第38条、第41条及び第42条の規定は、担保権の実行としての競売、担保不動産収益執行並びに前条第1項に規定する担保権の実行及び行使について準用する。
第195条 留置権による競売及び民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による。
第4章 債務者の財産状況の調査
第1節 財産開示手続
第196条 この節の規定による債務者の財産の開示に関する手続(以下「財産開示手続」という。)については、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。
第197条 執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当するときは、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより、債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。
一 強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より6月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。
二 知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。
2 執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当するときは、債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者の申立てにより、当該債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。
一 強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より6月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該先取特権の被担保債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。
二 知れている財産に対する担保権の実行を実施しても、申立人が前号の被担保債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。
3 前二項の規定にかかわらず、債務者(債務者に法定代理人がある場合にあつては当該法定代理人、債務者が法人である場合にあつてはその代表者。第1号において同じ。)が前二項の申立ての日前3年以内に財産開示期日(財産を開示すべき期日をいう。以下同じ。)においてその財産について陳述をしたものであるときは、財産開示手続を実施する旨の決定をすることができない。ただし、次の各号に掲げる事由のいずれかがある場合は、この限りでない。
一 債務者が当該財産開示期日において一部の財産を開示しなかつたとき。
二 債務者が当該財産開示期日の後に新たに財産を取得したとき。
三 当該財産開示期日の後に債務者と使用者との雇用関係が終了したとき。
4 第1項又は第2項の決定がされたときは、当該決定(同項の決定にあつては、当該決定及び同項の文書の写し)を債務者に送達しなければならない。
5 第1項又は第2項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
6 第1項又は第2項の決定は、確定しなければその効力を生じない。
第198条 執行裁判所は、前条第1項又は第2項の決定が確定したときは、財産開示期日を指定しなければならない。
2 財産開示期日には、次に掲げる者を呼び出さなければならない。
一 申立人
二 債務者(債務者に法定代理人がある場合にあつては当該法定代理人、債務者が法人である場合にあつてはその代表者)
第199条 開示義務者(前条第2項第2号に掲げる者をいう。以下同じ。)は、財産開示期日に出頭し、債務者の財産(第131条第1号又は第2号に掲げる動産を除く。)について陳述しなければならない。
2 前項の陳述においては、陳述の対象となる財産について、第2章第2節の規定による強制執行又は前章の規定による担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項その他申立人に開示する必要があるものとして最高裁判所規則で定める事項を明示しなければならない。
3 執行裁判所は、財産開示期日において、開示義務者に対し質問を発することができる。
4 申立人は、財産開示期日に出頭し、債務者の財産の状況を明らかにするため、執行裁判所の許可を得て開示義務者に対し質問を発することができる。
5 執行裁判所は、申立人が出頭しないときであつても、財産開示期日における手続を実施することができる。
6 財産開示期日における手続は、公開しない。
7 民事訴訟法第195条及び第206条の規定は前各項の規定による手続について、同法第201条第1項及び第2項の規定は開示義務者について準用する。
第200条 財産開示期日において債務者の財産の一部を開示した開示義務者は、申立人の同意がある場合又は当該開示によつて第197条第1項の金銭債権若しくは同条第2項各号の被担保債権の完全な弁済に支障がなくなつたことが明らかである場合において、執行裁判所の許可を受けたときは、前条第1項の規定にかかわらず、その余の財産について陳述することを要しない。
2 前項の許可の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
第201条 財産開示事件の記録中財産開示期日に関する部分についての第17条の規定による請求は、次に掲げる者に限り、することができる。
一 申立人
二 債務者に対する金銭債権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者
三 債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者
四 債務者又は開示義務者
第202条 申立人は、財産開示手続において得られた債務者の財産又は債務に関する情報を、当該債務者に対する債権をその本旨に従つて行使する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。
2 前条第2号又は第3号に掲げる者であつて、財産開示事件の記録中の財産開示期日に関する部分の情報を得たものは、当該情報を当該財産開示事件の債務者に対する債権をその本旨に従つて行使する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。
第203条 第39条及び第40条の規定は執行力のある債務名義の正本に基づく財産開示手続について、第42条(第2項を除く。)の規定は財産開示手続について、第182条及び第183条の規定は一般の先取特権に基づく財産開示手続について準用する。
第2節 第三者からの情報取得手続
第204条 この節の規定による債務者の財産に係る情報の取得に関する手続(以下「第三者からの情報取得手続」という。)については、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が、この普通裁判籍がないときはこの節の規定により情報の提供を命じられるべき者の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。
第205条 執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当するときは、それぞれ当該各号に定める者の申立てにより、法務省令で定める登記所に対し、債務者が所有権の登記名義人である土地又は建物その他これらに準ずるものとして法務省令で定めるものに対する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるものについて情報の提供をすべき旨を命じなければならない。ただし、第1号に掲げる場合において、同号に規定する執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。
一 第197条第1項各号のいずれかに該当する場合 |
執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者 |
二 第197条第2項各号のいずれかに該当する場合 |
債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者 |
2 前項の申立ては、財産開示期日における手続が実施された場合(当該財産開示期日に係る財産開示手続において第200条第1項の許可がされたときを除く。)において、当該財産開示期日から3年以内に限り、することができる。
3 第1項の申立てを認容する決定がされたときは、当該決定(同項第2号に掲げる場合にあつては、当該決定及び同号に規定する文書の写し)を債務者に送達しなければならない。
4 第1項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
5 第1項の申立てを認容する決定は、確定しなければその効力を生じない。
第206条 執行裁判所は、第197条第1項各号のいずれかに該当するときは、第151条の2第1項各号に掲げる義務に係る請求権又は人の生命若しくは身体の侵害による損害賠償請求権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者の申立てにより、次の各号に掲げる者であつて最高裁判所規則で定めるところにより当該債権者が選択したものに対し、それぞれ当該各号に定める事項について情報の提供をすべき旨を命じなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。
一 市町村(特別区を含む。以下この号において同じ。) |
債務者が支払を受ける地方税法(昭和25年法律第226号)第317条の2第1項ただし書に規定する給与に係る債権に対する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるもの(当該市町村が債務者の市町村民税(特別区民税を含む。)に係る事務に関して知り得たものに限る。) |
二 日本年金機構、国家公務員共済組合、国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合、全国市町村職員共済組合連合会又は日本私立学校振興・共済事業団 |
債務者(厚生年金保険の被保険者であるものに限る。以下この号において同じ。)が支払を受ける厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第3条第1項第3号に規定する報酬又は同項第4号に規定する賞与に係る債権に対する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるもの(情報の提供を命じられた者が債務者の厚生年金保険に係る事務に関して知り得たものに限る。) |
2 前条第2項から第5項までの規定は、前項の申立て及び当該申立てについての裁判について準用する。
第207条 執行裁判所は、第197条第1項各号のいずれかに該当するときは、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより、次の各号に掲げる者であつて最高裁判所規則で定めるところにより当該債権者が選択したものに対し、それぞれ当該各号に定める事項について情報の提供をすべき旨を命じなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。
一 銀行等(銀行、信用金庫、信用金庫連合会、労働金庫、労働金庫連合会、信用協同組合、信用協同組合連合会、農業協同組合、農業協同組合連合会、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、農林中央金庫、株式会社商工組合中央金庫又は独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構をいう。以下この号において同じ。) |
債務者の当該銀行等に対する預貯金債権(民法第466条の5第1項に規定する預貯金債権をいう。)に対する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるもの |
二 振替機関等(社債、株式等の振替に関する法律第2条第5項に規定する振替機関等をいう。以下この号において同じ。) |
債務者の有する振替社債等(同法第279条に規定する振替社債等であつて、当該振替機関等の備える振替口座簿における債務者の口座に記載され、又は記録されたものに限る。)に関する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるもの |
2 執行裁判所は、第197条第2項各号のいずれかに該当するときは、債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者の申立てにより、前項各号に掲げる者であつて最高裁判所規則で定めるところにより当該債権者が選択したものに対し、それぞれ当該各号に定める事項について情報の提供をすべき旨を命じなければならない。
3 前二項の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
第208条 第205条第1項、第206条第1項又は前条第1項若しくは第2項の申立てを認容する決定により命じられた情報の提供は、執行裁判所に対し、書面でしなければならない。
2 前項の情報の提供がされたときは、執行裁判所は、最高裁判所規則で定めるところにより、申立人に同項の書面の写しを送付し、かつ、債務者に対し、同項に規定する決定に基づいてその財産に関する情報の提供がされた旨を通知しなければならない。
第209条 第205条又は第207条の規定による第三者からの情報取得手続に係る事件の記録中前条第1項の情報の提供に関する部分についての第17条の規定による請求は、次に掲げる者に限り、することができる。
一 申立人
二 債務者に対する金銭債権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者
三 債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者
四 債務者
五 当該情報の提供をした者
2 第206条の規定による第三者からの情報取得手続に係る事件の記録中前条第1項の情報の提供に関する部分についての第17条の規定による請求は、次に掲げる者に限り、することができる。
一 申立人
二 債務者に対する第151条の2第1項各号に掲げる義務に係る請求権又は人の生命若しくは身体の侵害による損害賠償請求権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者
三 債務者
四 当該情報の提供をした者
第210条 申立人は、第三者からの情報取得手続において得られた債務者の財産に関する情報を、当該債務者に対する債権をその本旨に従つて行使する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。
2 前条第1項第2号若しくは第3号又は第2項第2号に掲げる者であつて、第三者からの情報取得手続に係る事件の記録中の第208条第1項の情報の提供に関する部分の情報を得たものは、当該情報を当該事件の債務者に対する債権をその本旨に従つて行使する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。
第211条 第39条及び第40条の規定は執行力のある債務名義の正本に基づく第三者からの情報取得手続について、第42条(第2項を除く。)の規定は第三者からの情報取得手続について、第182条及び第183条の規定は一般の先取特権に基づく第三者からの情報取得手続について、それぞれ準用する。
第5章 罰則
第212条 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
一 第55条第1項(第1号に係る部分に限る。)、第68条の2第1項若しくは第77条第1項(第1号に係る部分に限る。)(これらの規定を第121条(第189条(第195条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)及び第188条(第195条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)又は第187条第1項(第195条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)の規定による命令に基づき執行官が公示するために施した公示書その他の標識(刑法第96条に規定する封印及び差押えの表示を除く。)を損壊した者
二 第168条の2第3項又は第4項の規定により執行官が公示するために施した公示書その他の標識を損壊した者
第213条 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
一 売却基準価額の決定に関し、執行裁判所の呼出しを受けた審尋の期日において、正当な理由なく、出頭せず、若しくは陳述を拒み、又は虚偽の陳述をした者
二 第57条第2項(第121条(第189条(第195条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)及び第188条(第195条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定による執行官の質問又は文書の提出の要求に対し、正当な理由なく、陳述をせず、若しくは文書の提示を拒み、又は虚偽の陳述をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提示した者
三 第65条の2(第188条(第195条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定により陳述すべき事項について虚偽の陳述をした者
四 第168条第2項の規定による執行官の質問又は文書の提出の要求に対し、正当な理由なく、陳述をせず、若しくは文書の提示を拒み、又は虚偽の陳述をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提示した債務者又は同項に規定する不動産等を占有する第三者
五 執行裁判所の呼出しを受けた財産開示期日において、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓を拒んだ開示義務者
六 第199条第7項において準用する民事訴訟法第201条第1項の規定により財産開示期日において宣誓した開示義務者であつて、正当な理由なく第199条第1項から第4項までの規定により陳述すべき事項について陳述をせず、又は虚偽の陳述をしたもの
2 不動産(登記することができない土地の定着物を除く。以下この項において同じ。)の占有者であつて、その占有の権原を差押債権者、仮差押債権者又は第59条第1項(第188条(第195条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定により消滅する権利を有する者に対抗することができないものが、正当な理由なく、第64条の2第5項(第188条(第195条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定による不動産の立入りを拒み、又は妨げたときは、30万円以下の罰金に処する。
第214条 第202条の規定に違反して、同条の情報を同条に規定する目的以外の目的のために利用し、又は提供した者は、30万円以下の過料に処する。
2 第210条の規定に違反して、同条の情報を同条に規定する目的以外の目的のために利用し、又は提供した者も、前項と同様とする。
第215条 前条に規定する過料の事件は、執行裁判所の管轄とする。
第1条 この法律は、昭和55年10月1日から施行する。
第2条 競売法(明治31年法律第15号)は、廃止する。
第4条 この法律の施行前に申し立てられた民事執行の事件については、なお従前の例による。
2 この法律の施行前にした前条の規定による改正前の民事訴訟法又は附則第2条の規定による廃止前の競売法の規定による執行処分その他の行為は、この法律の適用については、この法律の相当規定によつてした執行処分その他の行為とみなす。
3 前二項に規定するもののほか、この法律の施行の際、現に裁判所に係属し、又は執行官が取り扱つている事件の処理に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第1条 この法律は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第4条 この法律の施行前にした仮差押え又は仮処分の命令の申請に係る仮差押え又は仮処分の事件については、なお従前の例による。
第1条 この法律は、公布の日から起算して20日を経過した日から施行する。
1 この法律は、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
2 この法律の施行前に申し立てられた民事執行の事件については、なお従前の例による。
5 政府は、この法律の施行後5年を目途として、この法律による改正後の民事執行法第55条、第77条、第83条及び第187条の2の規定の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、これらの規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
この法律は、新民訴法の施行の日から施行する。
1 この法律は、公布の日から起算して2月を経過した日から施行する。
1 この法律は、公布の日から起算して3月を経過した日から施行する。
第1条 この法律は、平成15年1月6日から施行する。
第85条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
第1条 この法律は、民間事業者による信書の送達に関する法律(平成14年法律第99号)の施行の日から施行する。
第2条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第3条 前条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第8条 施行日前にされた第3条の規定による改正前の民事執行法(以下「旧民事執行法」という。)第55条第1項若しくは第2項、第68条の2第1項若しくは第77条第1項(これらの規定を旧民事執行法第188条において準用する場合を含む。)又は旧民事執行法第187条の2第1項若しくは第2項の申立てに係る事件については、第3条の規定による改正後の民事執行法の規定にかかわらず、なお従前の例による。
第9条 施行日前に旧民事執行法第78条第4項後段の異議の陳述又は申出があった場合における買受人が同項後段の金銭を納付すべき期限及び配当異議の申出をした債権者又は債務者が旧民事執行法第90条第6項の規定による証明等をすべき期限については、なお従前の例による。
第10条 施行日前に申し立てられた強制管理の事件について、施行日前にした旧民事執行法の規定による執行処分その他の行為は、第3条の規定による改正後の民事執行法の規定の適用については、同法の相当規定によってした執行処分その他の行為とみなす。
第11条 施行日前に申し立てられた旧民事執行法第122条第1項に規定する動産執行又は一般の先取特権の実行としての旧民事執行法第190条に規定する動産競売の申立てに係る事件における差し押さえてはならない動産については、第3条の規定による改正後の民事執行法第131条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
第12条 施行日前に第3条の規定による改正後の民事執行法第151条の2第1項各号に掲げる義務についての金銭債権を請求する場合における差し押さえてはならない債権については、第3条の規定による改正後の民事執行法第152条第3項の規定にかかわらず、なお従前の例による。
第13条 施行日前に破産宣告があった場合における破産法(大正11年法律第71号)第6条第3項の差し押さえることのできない財産として破産財団に属さない財産については、第3条の規定による改正後の民事執行法の規定にかかわらず、なお従前の例による。
第14条 施行日前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第1条 この法律は、公布の日から起算して9月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して5年を超えない範囲内において政令で定める日(以下「施行日」という。)から施行する。
第135条 この法律(附則第1条ただし書に規定する規定については、当該規定。以下この条において同じ。)の施行前にした行為並びにこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合及びなおその効力を有することとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第136条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
第1条 この法律は、新不動産登記法の施行の日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第3条 この法律による改正後の民事訴訟法、非訟事件手続法及び民事執行法の規定(罰則を除く。)は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、この法律による改正前のこれらの法律の規定により生じた効力を妨げない。
第8条 この法律の施行前に申し立てられた民事執行の事件について、その施行前にした第3条の規定による改正前の民事執行法(以下「旧民事執行法」という。)の規定による執行裁判所の執行処分その他の行為であって同条の規定による改正後の民事執行法(以下「新民事執行法」という。)の規定によれば裁判所書記官がすべきこととされるものに関する新民事執行法の規定の適用については、新民事執行法の相当規定によってした裁判所書記官の処分その他の行為とみなす。
2 前項の執行裁判所の執行処分その他の行為に対する不服申立てについては、当該執行処分その他の行為につき同項の規定を適用せず、なお従前の例による。
3 この法律の施行前に旧民事執行法第68条の3第2項(これを準用し、又はその例による場合を含む。)の規定による執行裁判所が売却を実施させるべき旨の申出があった場合において、この法律の施行の日までに執行裁判所が当該申出に係る売却を実施させる旨の命令を発しなかったときは、当該申出は、新民事執行法第68条の3第2項(これを準用し、又はその例による場合を含む。)の規定による裁判所書記官が売却を実施させるべき旨の申出とみなす。
第9条 この法律の施行前に旧民事執行法第63条第1項(これを準用し、又はその例による場合を含む。)の規定による通知がされた民事執行の事件については、同条第2項ただし書(これを準用し、又はその例による場合を含む。)の場合を除き、なお従前の例による。
2 この法律の施行前に執行裁判所が売却を実施させる旨の命令を発した場合における当該命令に係る売却の手続及び売却の許可又は不許可の決定に係る手続については、新民事執行法第60条(これを準用し、又はその例による場合を含む。)の規定にかかわらず、なお従前の例による。
3 前二項の規定によりなお従前の例によることとされる場合を除き、この法律の施行前に旧民事執行法第60条(これを準用し、又はその例による場合を含む。)の規定により執行裁判所が定めた最低売却価額は、新民事執行法第60条(これを準用し、又はその例による場合を含む。)の規定により執行裁判所が定めた売却基準価額とみなす。
第10条 新民事執行法第2章第2節第4款第2目の規定は、この法律の施行前に成立した新民事執行法第167条の2第1項各号に掲げる少額訴訟に係る債務名義による金銭債権に対する強制執行については、適用しない。
2 この法律の施行の日が不動産登記法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成16年法律第124号)の施行の日前である場合には、同法の施行の日の前日までの間における新民事執行法第167条の14の規定の適用については、同条中「第164条第5項及び第6項」とあるのは「第164条第4項及び第5項」と、「第164条第5項中」とあるのは「第164条第4項中」とする。
第39条 この法律の施行前にした行為及びこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第40条 附則第3条から第10条まで、第29条及び前二条に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日(以下「施行日」という。)から施行する。
第121条 この法律の施行前のそれぞれの法律(これに基づく命令を含む。以下この条において同じ。)の規定によってした処分、手続その他の行為であって、改正後のそれぞれの法律の規定に相当の規定があるものは、この附則に別段の定めがあるものを除き、改正後のそれぞれの法律の相当の規定によってしたものとみなす。
第122条 この法律の施行前にした行為並びにこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合及びこの附則の規定によりなおその効力を有することとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第123条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定める。
第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第4条及び第5条の規定は、公布の日から施行する。
この法律は、会社法の施行の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第242条の規定 この法律の公布の日
第1条 この法律は、郵政民営化法の施行の日から施行する。ただし、第62条中租税特別措置法第84条の5の見出しの改正規定及び同条に一項を加える改正規定、第124条中証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備等に関する法律附則第1条第2号の改正規定及び同法附則第85条を同法附則第86条とし、同法附則第82条から第84条までを一条ずつ繰り下げ、同法附則第81条の次に一条を加える改正規定並びに附則第30条、第31条、第34条、第60条第12項、第66条第1項、第67条及び第93条第2項の規定は、郵政民営化法附則第1条第1号に掲げる規定の施行の日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
この法律は、新非訟事件手続法の施行の日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して20日を経過した日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
この法律は、民法改正法の施行の日から施行する。ただし、第103条の2、第103条の3、第267条の2、第267条の3及び第362条の規定は、公布の日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第4条 この法律の施行前に申し立てられた民事執行の事件については、第3条の規定による改正後の民事執行法(次項において「新民事執行法」という。)第22条(第6号に係る部分に限る。)の規定にかかわらず、なお従前の例による。
2 この法律の施行の際現に係属している外国裁判所の家事事件における裁判についての執行判決を求める訴えに係る訴訟については、新民事執行法第24条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第50条及び第52条の規定は、公布の日から施行する。
第45条 施行日前に申し立てられた民事執行の事件については、前条の規定による改正後の民事執行法第121条及び第189条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
第51条 施行日前にした行為及びこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合における施行日以後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第52条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 附則第20条の規定 公布の日
第2条 第1条の規定による改正後の民事執行法(以下「新民事執行法」という。)第65条の2及び第68条の4(これらを準用し、又はその例による場合を含む。)の規定は、施行日前に裁判所書記官が売却を実施させる旨の処分をした場合における当該処分に係る売却の手続については、適用しない。
2 施行日前に裁判所書記官が売却を実施させる旨の処分をした場合における売却不許可事由については、新民事執行法第71条(これを準用し、又はその例による場合を含む。)の規定にかかわらず、なお従前の例による。
第3条 施行日前に申し立てられた民事執行の事件に係る金銭債権を差し押さえた債権者がその債権を取り立てることができるようになるための期間については、新民事執行法第155条第2項(これを準用し、又はその例による場合を含む。)の規定にかかわらず、なお従前の例による。
2 施行日前に第1条の規定による改正前の民事執行法第155条第1項(これを準用し、又はその例による場合を含む。)の規定により差押債権者が金銭債権を取り立てることができることとなった場合における新民事執行法第155条第5項から第8項まで(これらを準用し、又はその例による場合を含む。以下この項において同じ。)の規定の適用については、同条第5項中「第1項の規定により金銭債権を取り立てることができることとなつた日(」とあるのは「民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律(令和元年法律第2号。以下「民事執行法等一部改正法」という。)の施行の日(同日以降に」と、同条第6項中「第1項の規定により金銭債権を取り立てることができることとなつた日」とあるのは「民事執行法等一部改正法の施行の日」とする。
3 施行日前に申し立てられた民事執行の事件に係る新民事執行法第159条第1項又は第161条第1項(これらを準用し、又はその例による場合を含む。)の規定による決定の効力については、新民事執行法第159条第6項及び第161条第5項(これらを準用し、又はその例による場合を含む。)の規定にかかわらず、なお従前の例による。
4 施行日前に申し立てられた民事執行の事件に係る配当又は弁済金の交付を実施すべき時期については、新民事執行法第166条第3項(これを準用し、又はその例による場合を含む。)の規定にかかわらず、なお従前の例による。
第4条 新民事執行法第174条から第176条までの規定は、施行日前に申し立てられた子の引渡しを目的とする請求権についての強制執行の事件については、適用しない。
第5条 新民事執行法第205条の規定は、この法律の公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日までの間は、適用しない。
第6条 施行日が附則第1条第2号に定める日前となる場合には、同日の前日までの間における新民事執行法第207条第1項の規定の適用については、同項第1号中「民法第466条の5第1項に規定する預貯金債権」とあるのは、「預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権」とする。
第7条 施行日前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第20条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。