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非訟事件手続法

平成23年法律第51号
最終改正:平成29年6月2日法律第45号
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第1編 総則

(趣旨)

第1条 この法律は、非訟事件の手続についての通則を定めるとともに、民事非訟事件、公示催告事件及び過料事件の手続を定めるものとする。


(最高裁判所規則)

第2条 この法律に定めるもののほか、非訟事件の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

第2編 非訟事件の手続の通則

第1章 総則

(第2編の適用範囲)

第3条 非訟事件の手続については、次編から第5編まで及び他の法令に定めるもののほか、この編の定めるところによる。


(裁判所及び当事者の責務)

第4条 裁判所は、非訟事件の手続が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に非訟事件の手続を追行しなければならない。

第2章 非訟事件に共通する手続

第1節 管轄

(管轄が住所地により定まる場合の管轄裁判所)

第5条 非訟事件は、管轄が人の住所地により定まる場合において、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときはその居所地を管轄する裁判所の管轄に属し、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときはその最後の住所地を管轄する裁判所の管轄に属する。

 非訟事件は、管轄が法人その他の社団又は財団(外国の社団又は財団を除く。)の住所地により定まる場合において、日本国内に住所がないとき、又は住所が知れないときは、代表者その他の主たる業務担当者の住所地を管轄する裁判所の管轄に属する。

 非訟事件は、管轄が外国の社団又は財団の住所地により定まる場合においては、日本における主たる事務所又は営業所の所在地を管轄する裁判所の管轄に属し、日本国内に事務所又は営業所がないときは日本における代表者その他の主たる業務担当者の住所地を管轄する裁判所の管轄に属する。


(優先管轄等)

第6条 この法律の他の規定又は他の法令の規定により二以上の裁判所が管轄権を有するときは、非訟事件は、先に申立てを受け、又は職権で手続を開始した裁判所が管轄する。ただし、その裁判所は、非訟事件の手続が遅滞することを避けるため必要があると認めるときその他相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、非訟事件の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。


(管轄裁判所の指定)

第7条 管轄裁判所が法律上又は事実上裁判権を行うことができないときは、その裁判所の直近上級の裁判所は、申立てにより又は職権で、管轄裁判所を定める。

 裁判所の管轄区域が明確でないため管轄裁判所が定まらないときは、関係のある裁判所に共通する直近上級の裁判所は、申立てにより又は職権で、管轄裁判所を定める。

 前二項の規定により管轄裁判所を定める裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

 第1項又は第2項の申立てを却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。


(管轄裁判所の特例)

第8条 この法律の他の規定又は他の法令の規定により非訟事件の管轄が定まらないときは、その非訟事件は、裁判を求める事項に係る財産の所在地又は最高裁判所規則で定める地を管轄する裁判所の管轄に属する。


(管轄の標準時)

第9条 裁判所の管轄は、非訟事件の申立てがあった時又は裁判所が職権で非訟事件の手続を開始した時を標準として定める。


(移送等に関する民事訴訟法の準用等)

第10条 民事訴訟法(平成8年法律第109号)第16条(第2項ただし書を除く。)、第18条、第21条及び第22条の規定は、非訟事件の移送等について準用する。

 非訟事件の移送の裁判に対する即時抗告は、執行停止の効力を有する。

第2節 裁判所職員の除斥及び忌避

(裁判官の除斥)

第11条 裁判官は、次に掲げる場合には、その職務の執行から除斥される。ただし、第6号に掲げる場合にあっては、他の裁判所の嘱託により受託裁判官としてその職務を行うことを妨げない。

 裁判官又はその配偶者若しくは配偶者であった者が、事件の当事者若しくはその他の裁判を受ける者となるべき者(終局決定(申立てを却下する終局決定を除く。)がされた場合において、その裁判を受ける者となる者をいう。以下同じ。)であるとき、又は事件についてこれらの者と共同権利者、共同義務者若しくは償還義務者の関係にあるとき。

 裁判官が当事者又はその他の裁判を受ける者となるべき者の四親等内の血族、三親等内の姻族若しくは同居の親族であるとき、又はあったとき。

 裁判官が当事者又はその他の裁判を受ける者となるべき者の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき。

 裁判官が事件について証人若しくは鑑定人となったとき、又は審問を受けることとなったとき。

 裁判官が事件について当事者若しくはその他の裁判を受ける者となるべき者の代理人若しくは補佐人であるとき、又はあったとき。

 裁判官が事件について仲裁判断に関与し、又は不服を申し立てられた前審の裁判に関与したとき。

 前項に規定する除斥の原因があるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、除斥の裁判をする。


(裁判官の忌避)

第12条 裁判官について裁判の公正を妨げる事情があるときは、当事者は、その裁判官を忌避することができる。

 当事者は、裁判官の面前において事件について陳述をしたときは、その裁判官を忌避することができない。ただし、忌避の原因があることを知らなかったとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。


(除斥又は忌避の裁判及び手続の停止)

第13条 合議体の構成員である裁判官及び地方裁判所の1人の裁判官の除斥又は忌避についてはその裁判官の所属する裁判所が、簡易裁判所の裁判官の除斥又は忌避についてはその裁判所の所在地を管轄する地方裁判所が、裁判をする。

 地方裁判所における前項の裁判は、合議体でする。

 裁判官は、その除斥又は忌避についての裁判に関与することができない。

 除斥又は忌避の申立てがあったときは、その申立てについての裁判が確定するまで非訟事件の手続を停止しなければならない。ただし、急速を要する行為については、この限りでない。

 次に掲げる事由があるとして忌避の申立てを却下する裁判をするときは、第3項の規定は、適用しない。

 非訟事件の手続を遅滞させる目的のみでされたことが明らかなとき。

 前条第2項の規定に違反するとき。

 最高裁判所規則で定める手続に違反するとき。

 前項の裁判は、第1項及び第2項の規定にかかわらず、忌避された受命裁判官等(受命裁判官、受託裁判官又は非訟事件を取り扱う地方裁判所の1人の裁判官若しくは簡易裁判所の裁判官をいう。次条第3項ただし書において同じ。)がすることができる。

 第5項の裁判をした場合には、第4項本文の規定にかかわらず、非訟事件の手続は停止しない。

 除斥又は忌避を理由があるとする裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

 除斥又は忌避の申立てを却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。


(裁判所書記官の除斥及び忌避)

第14条 裁判所書記官の除斥及び忌避については、第11条、第12条並びに前条第3項、第5項、第8項及び第9項の規定を準用する。

 裁判所書記官について除斥又は忌避の申立てがあったときは、その裁判所書記官は、その申立てについての裁判が確定するまでその申立てがあった非訟事件に関与することができない。ただし、前項において準用する前条第5項各号に掲げる事由があるとして忌避の申立てを却下する裁判があったときは、この限りでない。

 裁判所書記官の除斥又は忌避についての裁判は、裁判所書記官の所属する裁判所がする。ただし、前項ただし書の裁判は、受命裁判官等(受命裁判官又は受託裁判官にあっては、当該裁判官の手続に立ち会う裁判所書記官が忌避の申立てを受けたときに限る。)がすることができる。


(専門委員の除斥及び忌避)

第15条 非訟事件の手続における専門委員の除斥及び忌避については、第11条、第12条、第13条第8項及び第9項並びに前条第2項及び第3項の規定を準用する。この場合において、同条第2項ただし書中「前項において準用する前条第5項各号」とあるのは、「第13条第5項各号」と読み替えるものとする。

第3節 当事者能力及び手続行為能力

(当事者能力及び手続行為能力の原則等)

第16条 当事者能力、非訟事件の手続における手続上の行為(以下「手続行為」という。)をすることができる能力(以下この項及び第74条第1項において「手続行為能力」という。)、手続行為能力を欠く者の法定代理及び手続行為をするのに必要な授権については、民事訴訟法第28条、第29条、第31条、第33条並びに第34条第1項及び第2項の規定を準用する。

 被保佐人、被補助人(手続行為をすることにつきその補助人の同意を得ることを要するものに限る。次項において同じ。)又は後見人その他の法定代理人が他の者がした非訟事件の申立て又は抗告について手続行為をするには、保佐人若しくは保佐監督人、補助人若しくは補助監督人又は後見監督人の同意その他の授権を要しない。職権により手続が開始された場合についても、同様とする。

 被保佐人、被補助人又は後見人その他の法定代理人が次に掲げる手続行為をするには、特別の授権がなければならない。

 非訟事件の申立ての取下げ又は和解

 終局決定に対する抗告若しくは異議又は第77条第2項の申立ての取下げ


(特別代理人)

第17条 裁判長は、未成年者又は成年被後見人について、法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合において、非訟事件の手続が遅滞することにより損害が生ずるおそれがあるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、特別代理人を選任することができる。

 特別代理人の選任の裁判は、疎明に基づいてする。

 裁判所は、いつでも特別代理人を改任することができる。

 特別代理人が手続行為をするには、後見人と同一の授権がなければならない。

 第1項の申立てを却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。


(法定代理権の消滅の通知)

第18条 法定代理権の消滅は、本人又は代理人から裁判所に通知しなければ、その効力を生じない。


(法人の代表者等への準用)

第19条 法人の代表者及び法人でない社団又は財団で当事者能力を有するものの代表者又は管理人については、この法律中法定代理及び法定代理人に関する規定を準用する。

第4節 参加

(当事者参加)

第20条 当事者となる資格を有する者は、当事者として非訟事件の手続に参加することができる。

 前項の規定による参加(次項において「当事者参加」という。)の申出は、参加の趣旨及び理由を記載した書面でしなければならない。

 当事者参加の申出を却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。


(利害関係参加)

第21条 裁判を受ける者となるべき者は、非訟事件の手続に参加することができる。

 裁判を受ける者となるべき者以外の者であって、裁判の結果により直接の影響を受けるもの又は当事者となる資格を有するものは、裁判所の許可を得て、非訟事件の手続に参加することができる。

 前条第2項の規定は、第1項の規定による参加の申出及び前項の規定による参加の許可の申立てについて準用する。

 第1項の規定による参加の申出を却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

 第1項又は第2項の規定により非訟事件の手続に参加した者(以下「利害関係参加人」という。)は、当事者がすることができる手続行為(非訟事件の申立ての取下げ及び変更並びに裁判に対する不服申立て及び裁判所書記官の処分に対する異議の取下げを除く。)をすることができる。ただし、裁判に対する不服申立て及び裁判所書記官の処分に対する異議の申立てについては、利害関係参加人が不服申立て又は異議の申立てに関するこの法律の他の規定又は他の法令の規定によりすることができる場合に限る。

第5節 手続代理人及び補佐人

(手続代理人の資格)

第22条 法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ手続代理人となることができない。ただし、第一審裁判所においては、その許可を得て、弁護士でない者を手続代理人とすることができる。

 前項ただし書の許可は、いつでも取り消すことができる。


(手続代理人の代理権の範囲)

第23条 手続代理人は、委任を受けた事件について、参加、強制執行及び保全処分に関する行為をし、かつ、弁済を受領することができる。

 手続代理人は、次に掲げる事項については、特別の委任を受けなければならない。

 非訟事件の申立ての取下げ又は和解

 終局決定に対する抗告若しくは異議又は第77条第2項の申立て

 前号の抗告、異議又は申立ての取下げ

 代理人の選任

 手続代理人の代理権は、制限することができない。ただし、弁護士でない手続代理人については、この限りでない。

 前三項の規定は、法令により裁判上の行為をすることができる代理人の権限を妨げない。


(法定代理の規定及び民事訴訟法の準用)

第24条 第18条並びに民事訴訟法第34条(第3項を除く。)及び第56条から第58条まで(同条第3項を除く。)の規定は、手続代理人及びその代理権について準用する。


(補佐人)

第25条 非訟事件の手続における補佐人については、民事訴訟法第60条の規定を準用する。

第6節 手続費用

第1款 手続費用の負担
(手続費用の負担)

第26条 非訟事件の手続の費用(以下「手続費用」という。)は、特別の定めがある場合を除き、各自の負担とする。

 裁判所は、事情により、この法律の他の規定(次項を除く。)又は他の法令の規定によれば当事者、利害関係参加人その他の関係人がそれぞれ負担すべき手続費用の全部又は一部を、その負担すべき者以外の者であって次に掲げるものに負担させることができる。

 当事者又は利害関係参加人

 前号に掲げる者以外の裁判を受ける者となるべき者

 前号に掲げる者に準ずる者であって、その裁判により直接に利益を受けるもの

 前二項又は他の法令の規定によれば法務大臣又は検察官が負担すべき手続費用は、国庫の負担とする。


(手続費用の立替え)

第27条 事実の調査、証拠調べ、呼出し、告知その他の非訟事件の手続に必要な行為に要する費用は、国庫において立て替えることができる。


(手続費用に関する民事訴訟法の準用等)

第28条 民事訴訟法第67条から第74条までの規定(裁判所書記官の処分に対する異議の申立てについての決定に対する即時抗告に関する部分を除く。)は、手続費用の負担について準用する。この場合において、同法第73条第1項中「補助参加の申出の取下げ又は補助参加についての異議の取下げ」とあるのは「非訟事件手続法(平成23年法律第51号)第20条第1項若しくは第21条第1項の規定による参加の申出の取下げ又は同条第2項の規定による参加の許可の申立ての取下げ」と、同条第2項中「第61条から第66条まで及び」とあるのは「非訟事件手続法第28条第1項において準用する」と読み替えるものとする。

 前項において準用する民事訴訟法第69条第3項の規定による即時抗告並びに同法第71条第4項(前項において準用する同法第72条後段において準用する場合を含む。)、第73条第2項及び第74条第2項の異議の申立てについての裁判に対する即時抗告は、執行停止の効力を有する。

第2款 手続上の救助

第29条 非訟事件の手続の準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない者又はその支払により生活に著しい支障を生ずる者に対しては、裁判所は、申立てにより、手続上の救助の裁判をすることができる。ただし、救助を求める者が不当な目的で非訟事件の申立てその他の手続行為をしていることが明らかなときは、この限りでない。

 民事訴訟法第82条第2項及び第83条から第86条まで(同法第83条第1項第3号を除く。)の規定は、手続上の救助について準用する。この場合において、同法第84条中「第82条第1項本文」とあるのは、「非訟事件手続法第29条第1項本文」と読み替えるものとする。

第7節 非訟事件の審理等

(手続の非公開)

第30条 非訟事件の手続は、公開しない。ただし、裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。


(調書の作成等)

第31条 裁判所書記官は、非訟事件の手続の期日について、調書を作成しなければならない。ただし、証拠調べの期日以外の期日については、裁判長においてその必要がないと認めるときは、その経過の要領を記録上明らかにすることをもって、これに代えることができる。


(記録の閲覧等)

第32条 当事者又は利害関係を疎明した第三者は、裁判所の許可を得て、裁判所書記官に対し、非訟事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は非訟事件に関する事項の証明書の交付(第112条において「記録の閲覧等」という。)を請求することができる。

 前項の規定は、非訟事件の記録中の録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、当事者又は利害関係を疎明した第三者は、裁判所の許可を得て、裁判所書記官に対し、これらの物の複製を請求することができる。

 裁判所は、当事者から前二項の規定による許可の申立てがあった場合においては、当事者又は第三者に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときを除き、これを許可しなければならない。

 裁判所は、利害関係を疎明した第三者から第1項又は第2項の規定による許可の申立てがあった場合において、相当と認めるときは、これを許可することができる。

 裁判書の正本、謄本若しくは抄本又は非訟事件に関する事項の証明書については、当事者は、第1項の規定にかかわらず、裁判所の許可を得ないで、裁判所書記官に対し、その交付を請求することができる。裁判を受ける者が当該裁判があった後に請求する場合も、同様とする。

 非訟事件の記録の閲覧、謄写及び複製の請求は、非訟事件の記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。

 第3項の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

 前項の規定による即時抗告が非訟事件の手続を不当に遅滞させることを目的としてされたものであると認められるときは、原裁判所は、その即時抗告を却下しなければならない。

 前項の規定による裁判に対しては、即時抗告をすることができる。


(専門委員)

第33条 裁判所は、的確かつ円滑な審理の実現のため、又は和解を試みるに当たり、必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、専門的な知見に基づく意見を聴くために専門委員を非訟事件の手続に関与させることができる。この場合において、専門委員の意見は、裁判長が書面により又は当事者が立ち会うことができる非訟事件の手続の期日において口頭で述べさせなければならない。

 裁判所は、当事者の意見を聴いて、前項の規定による専門委員を関与させる裁判を取り消すことができる。

 裁判所は、必要があると認めるときは、専門委員を非訟事件の手続の期日に立ち会わせることができる。この場合において、裁判長は、専門委員が当事者、証人、鑑定人その他非訟事件の手続の期日に出頭した者に対し直接に問いを発することを許すことができる。

 裁判所は、専門委員が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が専門委員との間で音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、専門委員に第1項の意見を述べさせることができる。この場合において、裁判長は、専門委員が当事者、証人、鑑定人その他非訟事件の手続の期日に出頭した者に対し直接に問いを発することを許すことができる。

 民事訴訟法第92条の5の規定は、第1項の規定により非訟事件の手続に関与させる専門委員の指定及び任免等について準用する。この場合において、同条第2項中「第92条の2」とあるのは、「非訟事件手続法第33条第1項」と読み替えるものとする。

 受命裁判官又は受託裁判官が第1項の手続を行う場合には、同項から第4項までの規定及び前項において準用する民事訴訟法第92条の5第2項の規定による裁判所及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。ただし、証拠調べの期日における手続を行う場合には、専門委員を手続に関与させる裁判、その裁判の取消し及び専門委員の指定は、非訟事件が係属している裁判所がする。


(期日及び期間)

第34条 非訟事件の手続の期日は、職権で、裁判長が指定する。

 非訟事件の手続の期日は、やむを得ない場合に限り、日曜日その他の一般の休日に指定することができる。

 非訟事件の手続の期日の変更は、顕著な事由がある場合に限り、することができる。

 民事訴訟法第94条から第97条までの規定は、非訟事件の手続の期日及び期間について準用する。


(手続の併合等)

第35条 裁判所は、非訟事件の手続を併合し、又は分離することができる。

 裁判所は、前項の規定による裁判を取り消すことができる。

 裁判所は、当事者を異にする非訟事件について手続の併合を命じた場合において、その前に尋問をした証人について、尋問の機会がなかった当事者が尋問の申出をしたときは、その尋問をしなければならない。


(法令により手続を続行すべき者による受継)

第36条 当事者が死亡、資格の喪失その他の事由によって非訟事件の手続を続行することができない場合には、法令により手続を続行する資格のある者は、その手続を受け継がなければならない。

 法令により手続を続行する資格のある者が前項の規定による受継の申立てをした場合において、その申立てを却下する裁判がされたときは、当該裁判に対し、即時抗告をすることができる。

 第1項の場合には、裁判所は、他の当事者の申立てにより又は職権で、法令により手続を続行する資格のある者に非訟事件の手続を受け継がせることができる。


(他の申立権者による受継)

第37条 非訟事件の申立人が死亡、資格の喪失その他の事由によってその手続を続行することができない場合において、法令により手続を続行する資格のある者がないときは、当該非訟事件の申立てをすることができる者は、その手続を受け継ぐことができる。

 前項の規定による受継の申立ては、同項の事由が生じた日から1月以内にしなければならない。


(送達及び手続の中止)

第38条 送達及び非訟事件の手続の中止については、民事訴訟法第1編第5章第4節及び第130条から第132条まで(同条第1項を除く。)の規定を準用する。この場合において、同法第113条中「その訴訟の目的である請求又は防御の方法」とあるのは、「裁判を求める事項」と読み替えるものとする。


(裁判所書記官の処分に対する異議)

第39条 裁判所書記官の処分に対する異議の申立てについては、その裁判所書記官の所属する裁判所が裁判をする。

 前項の裁判に対しては、即時抗告をすることができる。


(検察官の関与)

第40条 検察官は、非訟事件について意見を述べ、その手続の期日に立ち会うことができる。

 裁判所は、検察官に対し、非訟事件が係属したこと及びその手続の期日を通知するものとする。

第8節 検察官に対する通知

第41条 裁判所その他の官庁、検察官又は吏員は、その職務上検察官の申立てにより非訟事件の裁判をすべき場合が生じたことを知ったときは、管轄裁判所に対応する検察庁の検察官にその旨を通知しなければならない。

第9節 電子情報処理組織による申立て等

第42条 非訟事件の手続における申立てその他の申述(次項において「申立て等」という。)については、民事訴訟法第132条の10第1項から第5項までの規定(支払督促に関する部分を除く。)を準用する。

 前項において準用する民事訴訟法第132条の10第1項本文の規定によりされた申立て等に係るこの法律その他の法令の規定による非訟事件の記録の閲覧若しくは謄写又はその正本、謄本若しくは抄本の交付は、同条第5項の書面をもってするものとする。当該申立て等に係る書類の送達又は送付も、同様とする。

第3章 第一審裁判所における非訟事件の手続

第1節 非訟事件の申立て

(申立ての方式等)

第43条 非訟事件の申立ては、申立書(以下この条及び第57条第1項において「非訟事件の申立書」という。)を裁判所に提出してしなければならない。

 非訟事件の申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

 当事者及び法定代理人

 申立ての趣旨及び原因

 申立人は、二以上の事項について裁判を求める場合において、これらの事項についての非訟事件の手続が同種であり、これらの事項が同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、一の申立てにより求めることができる。

 非訟事件の申立書が第2項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。民事訴訟費用等に関する法律(昭和46年法律第40号)の規定に従い非訟事件の申立ての手数料を納付しない場合も、同様とする。

 前項の場合において、申立人が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、非訟事件の申立書を却下しなければならない。

 前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。


(申立ての変更)

第44条 申立人は、申立ての基礎に変更がない限り、申立ての趣旨又は原因を変更することができる。

 申立ての趣旨又は原因の変更は、非訟事件の手続の期日においてする場合を除き、書面でしなければならない。

 裁判所は、申立ての趣旨又は原因の変更が不適法であるときは、その変更を許さない旨の裁判をしなければならない。

 申立ての趣旨又は原因の変更により非訟事件の手続が著しく遅滞することとなるときは、裁判所は、その変更を許さない旨の裁判をすることができる。

第2節 非訟事件の手続の期日

(裁判長の手続指揮権)

第45条 非訟事件の手続の期日においては、裁判長が手続を指揮する。

 裁判長は、発言を許し、又はその命令に従わない者の発言を禁止することができる。

 当事者が非訟事件の手続の期日における裁判長の指揮に関する命令に対し異議を述べたときは、裁判所は、その異議について裁判をする。


(受命裁判官による手続)

第46条 裁判所は、受命裁判官に非訟事件の手続の期日における手続を行わせることができる。ただし、事実の調査及び証拠調べについては、第51条第3項の規定又は第53条第1項において準用する民事訴訟法第2編第4章第1節から第6節までの規定により受命裁判官が事実の調査又は証拠調べをすることができる場合に限る。

 前項の場合においては、裁判所及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。


(音声の送受信による通話の方法による手続)

第47条 裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、非訟事件の手続の期日における手続(証拠調べを除く。)を行うことができる。

 非訟事件の手続の期日に出頭しないで前項の手続に関与した者は、その期日に出頭したものとみなす。


(通訳人の立会い等その他の措置)

第48条 非訟事件の手続の期日における通訳人の立会い等については民事訴訟法第154条の規定を、非訟事件の手続関係を明瞭にするために必要な陳述をすることができない当事者、利害関係参加人、代理人及び補佐人に対する措置については同法第155条の規定を準用する。

第3節 事実の調査及び証拠調べ

(事実の調査及び証拠調べ等)

第49条 裁判所は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより又は職権で、必要と認める証拠調べをしなければならない。

 当事者は、適切かつ迅速な審理及び裁判の実現のため、事実の調査及び証拠調べに協力するものとする。


(疎明)

第50条 疎明は、即時に取り調べることができる資料によってしなければならない。


(事実の調査の嘱託等)

第51条 裁判所は、他の地方裁判所又は簡易裁判所に事実の調査を嘱託することができる。

 前項の規定による嘱託により職務を行う受託裁判官は、他の地方裁判所又は簡易裁判所において事実の調査をすることを相当と認めるときは、更に事実の調査の嘱託をすることができる。

 裁判所は、相当と認めるときは、受命裁判官に事実の調査をさせることができる。

 前三項の規定により受託裁判官又は受命裁判官が事実の調査をする場合には、裁判所及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。


(事実の調査の通知)

第52条 裁判所は、事実の調査をした場合において、その結果が当事者による非訟事件の手続の追行に重要な変更を生じ得るものと認めるときは、これを当事者及び利害関係参加人に通知しなければならない。


(証拠調べ)

第53条 非訟事件の手続における証拠調べについては、民事訴訟法第2編第4章第1節から第6節までの規定(同法第179条、第182条、第187条から第189条まで、第207条第2項、第208条、第224条(同法第229条第2項及び第232条第1項において準用する場合を含む。)及び第229条第4項の規定を除く。)を準用する。

 前項において準用する民事訴訟法の規定による即時抗告は、執行停止の効力を有する。

 当事者が次の各号のいずれかに該当するときは、裁判所は、20万円以下の過料に処する。

 第1項において準用する民事訴訟法第223条第1項(同法第231条において準用する場合を含む。)の規定による提出の命令に従わないとき、又は正当な理由なく第1項において準用する同法第232条第1項において準用する同法第223条第1項の規定による提示の命令に従わないとき。

 書証を妨げる目的で第1項において準用する民事訴訟法第220条(同法第231条において準用する場合を含む。)の規定により提出の義務がある文書(同法第231条に規定する文書に準ずる物件を含む。)を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき、又は検証を妨げる目的で検証の目的を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき。

 当事者が次の各号のいずれかに該当するときは、裁判所は、10万円以下の過料に処する。

 正当な理由なく第1項において準用する民事訴訟法第229条第2項(同法第231条において準用する場合を含む。)において準用する同法第223条第1項の規定による提出の命令に従わないとき。

 対照の用に供することを妨げる目的で対照の用に供すべき筆跡又は印影を備える文書その他の物件を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき。

 第1項において準用する民事訴訟法第229条第3項(同法第231条において準用する場合を含む。)の規定による決定に正当な理由なく従わないとき、又は当該決定に係る対照の用に供すべき文字を書体を変えて筆記したとき。

 裁判所は、当事者本人を尋問する場合には、その当事者に対し、非訟事件の手続の期日に出頭することを命ずることができる。

 民事訴訟法第192条から第194条までの規定は前項の規定により出頭を命じられた当事者が正当な理由なく出頭しない場合について、同法第209条第1項及び第2項の規定は出頭した当事者が正当な理由なく宣誓又は陳述を拒んだ場合について準用する。

 この条に規定するもののほか、証拠調べにおける過料についての裁判に関しては、第5編の規定(第119条の規定並びに第120条及び第122条の規定中検察官に関する部分を除く。)を準用する。

第4節 裁判

(裁判の方式)

第54条 裁判所は、非訟事件の手続においては、決定で、裁判をする。


(終局決定)

第55条 裁判所は、非訟事件が裁判をするのに熟したときは、終局決定をする。

 裁判所は、非訟事件の一部が裁判をするのに熟したときは、その一部について終局決定をすることができる。手続の併合を命じた数個の非訟事件中その一が裁判をするのに熟したときも、同様とする。


(終局決定の告知及び効力の発生等)

第56条 終局決定は、当事者及び利害関係参加人並びにこれらの者以外の裁判を受ける者に対し、相当と認める方法で告知しなければならない。

 終局決定(申立てを却下する決定を除く。)は、裁判を受ける者(裁判を受ける者が数人あるときは、そのうちの1人)に告知することによってその効力を生ずる。

 申立てを却下する終局決定は、申立人に告知することによってその効力を生ずる。

 終局決定は、即時抗告の期間の満了前には確定しないものとする。

 終局決定の確定は、前項の期間内にした即時抗告の提起により、遮断される。


(終局決定の方式及び裁判書)

第57条 終局決定は、裁判書を作成してしなければならない。ただし、即時抗告をすることができない決定については、非訟事件の申立書又は調書に主文を記載することをもって、裁判書の作成に代えることができる。

 終局決定の裁判書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

 主文

 理由の要旨

 当事者及び法定代理人

 裁判所


(更正決定)

第58条 終局決定に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。

 更正決定は、裁判書を作成してしなければならない。

 更正決定に対しては、更正後の終局決定が原決定であるとした場合に即時抗告をすることができる者に限り、即時抗告をすることができる。

 第1項の申立てを不適法として却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

 終局決定に対し適法な即時抗告があったときは、前二項の即時抗告は、することができない。


(終局決定の取消し又は変更)

第59条 裁判所は、終局決定をした後、その決定を不当と認めるときは、次に掲げる決定を除き、職権で、これを取り消し、又は変更することができる。

 申立てによってのみ裁判をすべき場合において申立てを却下した決定

 即時抗告をすることができる決定

 終局決定が確定した日から5年を経過したときは、裁判所は、前項の規定による取消し又は変更をすることができない。ただし、事情の変更によりその決定を不当と認めるに至ったときは、この限りでない。

 裁判所は、第1項の規定により終局決定の取消し又は変更をする場合には、その決定における当事者及びその他の裁判を受ける者の陳述を聴かなければならない。

 第1項の規定による取消し又は変更の終局決定に対しては、取消し後又は変更後の決定が原決定であるとした場合に即時抗告をすることができる者に限り、即時抗告をすることができる。


(終局決定に関する民事訴訟法の準用)

第60条 民事訴訟法第247条、第256条第1項及び第258条(第2項後段を除く。)の規定は、終局決定について準用する。この場合において、同法第256条第1項中「言渡し後」とあるのは、「終局決定が告知を受ける者に最初に告知された日から」と読み替えるものとする。


(中間決定)

第61条 裁判所は、終局決定の前提となる法律関係の争いその他中間の争いについて、裁判をするのに熟したときは、中間決定をすることができる。

 中間決定は、裁判書を作成してしなければならない。


(終局決定以外の裁判)

第62条 終局決定以外の非訟事件に関する裁判については、特別の定めがある場合を除き、第55条から第60条まで(第57条第1項及び第59条第3項を除く。)の規定を準用する。

 非訟事件の手続の指揮に関する裁判は、いつでも取り消すことができる。

 終局決定以外の非訟事件に関する裁判は、判事補が単独ですることができる。

第5節 裁判によらない非訟事件の終了

(非訟事件の申立ての取下げ)

第63条 非訟事件の申立人は、終局決定が確定するまで、申立ての全部又は一部を取り下げることができる。この場合において、終局決定がされた後は、裁判所の許可を得なければならない。

 民事訴訟法第261条第3項及び第262条第1項の規定は、前項の規定による申立ての取下げについて準用する。この場合において、同法第261条第3項ただし書中「口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)」とあるのは、「非訟事件の手続の期日」と読み替えるものとする。


(非訟事件の申立ての取下げの擬制)

第64条 非訟事件の申立人が、連続して二回、呼出しを受けた非訟事件の手続の期日に出頭せず、又は呼出しを受けた非訟事件の手続の期日において陳述をしないで退席をしたときは、裁判所は、申立ての取下げがあったものとみなすことができる。


(和解)

第65条 非訟事件における和解については、民事訴訟法第89条、第264条及び第265条の規定を準用する。この場合において、同法第264条及び第265条第3項中「口頭弁論等」とあるのは、「非訟事件の手続」と読み替えるものとする。

 和解を調書に記載したときは、その記載は、確定した終局決定と同一の効力を有する。

第4章 不服申立て

第1節 終局決定に対する不服申立て

第1款 即時抗告
(即時抗告をすることができる裁判)

第66条 終局決定により権利又は法律上保護される利益を害された者は、その決定に対し、即時抗告をすることができる。

 申立てを却下した終局決定に対しては、申立人に限り、即時抗告をすることができる。

 手続費用の負担の裁判に対しては、独立して即時抗告をすることができない。


(即時抗告期間)

第67条 終局決定に対する即時抗告は、2週間の不変期間内にしなければならない。ただし、その期間前に提起した即時抗告の効力を妨げない。

 即時抗告の期間は、即時抗告をする者が裁判の告知を受ける者である場合にあっては、裁判の告知を受けた日から進行する。

 前項の期間は、即時抗告をする者が裁判の告知を受ける者でない場合にあっては、申立人(職権で開始した事件においては、裁判を受ける者)が裁判の告知を受けた日(二以上あるときは、当該日のうち最も遅い日)から進行する。


(即時抗告の提起の方式等)

第68条 即時抗告は、抗告状を原裁判所に提出してしなければならない。

 抗告状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

 当事者及び法定代理人

 原決定の表示及びその決定に対して即時抗告をする旨

 即時抗告が不適法でその不備を補正することができないことが明らかであるときは、原裁判所は、これを却下しなければならない。

 前項の規定による終局決定に対しては、即時抗告をすることができる。

 前項の即時抗告は、1週間の不変期間内にしなければならない。ただし、その期間前に提起した即時抗告の効力を妨げない。

 第43条第4項から第6項までの規定は、抗告状が第2項の規定に違反する場合及び民事訴訟費用等に関する法律の規定に従い即時抗告の提起の手数料を納付しない場合について準用する。


(抗告状の写しの送付等)

第69条 終局決定に対する即時抗告があったときは、抗告裁判所は、原審における当事者及び利害関係参加人(抗告人を除く。)に対し、抗告状の写しを送付しなければならない。ただし、その即時抗告が不適法であるとき、又は即時抗告に理由がないことが明らかなときは、この限りでない。

 裁判長は、前項の規定により抗告状の写しを送付するための費用の予納を相当の期間を定めて抗告人に命じた場合において、その予納がないときは、命令で、抗告状を却下しなければならない。

 前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。


(陳述の聴取)

第70条 抗告裁判所は、原審における当事者及びその他の裁判を受ける者(抗告人を除く。)の陳述を聴かなければ、原裁判所の終局決定を取り消すことができない。


(原裁判所による更正)

第71条 原裁判所は、終局決定に対する即時抗告を理由があると認めるときは、その決定を更正しなければならない。


(原裁判の執行停止)

第72条 終局決定に対する即時抗告は、特別の定めがある場合を除き、執行停止の効力を有しない。ただし、抗告裁判所又は原裁判所は、申立てにより、担保を立てさせて、又は立てさせないで、即時抗告について裁判があるまで、原裁判の執行の停止その他必要な処分を命ずることができる。

 前項ただし書の規定により担保を立てる場合において、供託をするには、担保を立てるべきことを命じた裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。

 民事訴訟法第76条、第77条、第79条及び第80条の規定は、前項の担保について準用する。


(第一審の手続の規定及び民事訴訟法の準用)

第73条 終局決定に対する即時抗告及びその抗告審に関する手続については、特別の定めがある場合を除き、前章の規定(第57条第1項ただし書及び第64条の規定を除く。)を準用する。この場合において、第59条第1項第2号中「即時抗告」とあるのは、「第一審裁判所の終局決定であるとした場合に即時抗告」と読み替えるものとする。

 民事訴訟法第283条、第284条、第292条、第298条第1項、第299条第1項、第302条、第303条及び第305条から第309条までの規定は、終局決定に対する即時抗告及びその抗告審に関する手続について準用する。この場合において、同法第292条第2項中「第261条第3項、第262条第1項及び第263条」とあるのは「非訟事件手続法第63条第2項及び第64条」と、同法第303条第5項中「第189条」とあるのは「非訟事件手続法第121条」と読み替えるものとする。


(再抗告)

第74条 抗告裁判所の終局決定(その決定が第一審裁判所の決定であるとした場合に即時抗告をすることができるものに限る。)に対しては、次に掲げる事由を理由とするときに限り、更に即時抗告をすることができる。ただし、第5号に掲げる事由については、手続行為能力、法定代理権又は手続行為をするのに必要な権限を有するに至った本人、法定代理人又は手続代理人による追認があったときは、この限りでない。

 終局決定に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があること。

 法律に従って裁判所を構成しなかったこと。

 法律により終局決定に関与することができない裁判官が終局決定に関与したこと。

 専属管轄に関する規定に違反したこと。

 法定代理権、手続代理人の代理権又は代理人が手続行為をするのに必要な授権を欠いたこと。

 終局決定にこの法律又は他の法令で記載すべきものと定められた理由若しくはその要旨を付せず、又は理由若しくはその要旨に食い違いがあること。

 終局決定に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があること。

 前項の即時抗告(以下この条及び第77条第1項において「再抗告」という。)が係属する抗告裁判所は、抗告状又は抗告理由書に記載された再抗告の理由についてのみ調査をする。

 民事訴訟法第314条第2項、第315条、第316条(第1項第1号を除く。)、第321条第1項、第322条、第324条、第325条第1項前段、第3項後段及び第4項並びに第326条の規定は、再抗告及びその抗告審に関する手続について準用する。この場合において、同法第314条第2項中「前条において準用する第288条及び第289条第2項」とあるのは「非訟事件手続法第68条第6項」と、同法第316条第2項中「対しては」とあるのは「対しては、1週間の不変期間内に」と、同法第322条中「前二条」とあるのは「非訟事件手続法第74条第2項の規定及び同条第3項において準用する第321条第1項」と、同法第325条第1項前段中「第312条第1項又は第2項」とあるのは「非訟事件手続法第74条第1項」と、同条第3項後段中「この場合」とあるのは「差戻し又は移送を受けた裁判所が裁判をする場合」と、同条第4項中「前項」とあるのは「差戻し又は移送を受けた裁判所」と読み替えるものとする。

第2款 特別抗告
(特別抗告をすることができる裁判等)

第75条 地方裁判所及び簡易裁判所の終局決定で不服を申し立てることができないもの並びに高等裁判所の終局決定に対しては、その決定に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、最高裁判所に特に抗告をすることができる。

 前項の抗告(以下この項及び次条において「特別抗告」という。)が係属する抗告裁判所は、抗告状又は抗告理由書に記載された特別抗告の理由についてのみ調査をする。


(即時抗告の規定及び民事訴訟法の準用)

第76条 前款の規定(第66条、第67条第1項、第69条第3項、第71条及び第74条の規定を除く。)は、特別抗告及びその抗告審に関する手続について準用する。

 民事訴訟法第314条第2項、第315条、第316条(第1項第1号を除く。)、第321条第1項、第322条、第325条第1項前段、第2項、第3項後段及び第4項、第326条並びに第336条第2項の規定は、特別抗告及びその抗告審に関する手続について準用する。この場合において、同法第314条第2項中「前条において準用する第288条及び第289条第2項」とあるのは「非訟事件手続法第76条第1項において準用する同法第68条第6項」と、同法第316条第2項中「対しては」とあるのは「対しては、1週間の不変期間内に」と、同法第322条中「前二条」とあるのは「非訟事件手続法第75条第2項の規定及び同法第76条第2項において準用する第321条第1項」と、同法第325条第1項前段及び第2項中「第312条第1項又は第2項」とあるのは「非訟事件手続法第75条第1項」と、同条第3項後段中「この場合」とあるのは「差戻し又は移送を受けた裁判所が裁判をする場合」と、同条第4項中「前項」とあるのは「差戻し又は移送を受けた裁判所」と読み替えるものとする。

第3款 許可抗告
(許可抗告をすることができる裁判等)

第77条 高等裁判所の終局決定(再抗告及び次項の申立てについての決定を除く。)に対しては、第75条第1項の規定による場合のほか、その高等裁判所が次項の規定により許可したときに限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。ただし、その決定が地方裁判所の決定であるとした場合に即時抗告をすることができるものであるときに限る。

 前項の高等裁判所は、同項の終局決定について、最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは抗告裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある場合その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合には、申立てにより、抗告を許可しなければならない。

 前項の申立てにおいては、第75条第1項に規定する事由を理由とすることはできない。

 第2項の規定による許可があった場合には、第1項の抗告(以下この条及び次条第1項において「許可抗告」という。)があったものとみなす。

 許可抗告が係属する抗告裁判所は、第2項の規定による許可の申立書又は同項の申立てに係る理由書に記載された許可抗告の理由についてのみ調査をする。

 許可抗告が係属する抗告裁判所は、終局決定に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときは、原決定を破棄することができる。


(即時抗告の規定及び民事訴訟法の準用)

第78条 第1款の規定(第66条、第67条第1項、第68条第4項及び第5項、第69条第3項、第71条並びに第74条の規定を除く。)は、許可抗告及びその抗告審に関する手続について準用する。この場合において、これらの規定中「抗告状」とあるのは「第77条第2項の規定による許可の申立書」と、第67条第2項及び第3項、第68条第1項、第2項第2号及び第3項、第69条第1項並びに第72条第1項本文中「即時抗告」とあり、及び第68条第6項中「即時抗告の提起」とあるのは「第77条第2項の申立て」と、第72条第1項ただし書並びに第73条第1項前段及び第2項中「即時抗告」とあるのは「許可抗告」と読み替えるものとする。

 民事訴訟法第315条及び第336条第2項の規定は前条第2項の申立てについて、同法第318条第3項の規定は前条第2項の規定による許可をする場合について、同法第318条第4項後段、第321条第1項、第322条、第325条第1項前段、第2項、第3項後段及び第4項並びに第326条の規定は前条第2項の規定による許可があった場合について準用する。この場合において、同法第318条第4項後段中「第320条」とあるのは「非訟事件手続法第77条第5項」と、同法第322条中「前二条」とあるのは「非訟事件手続法第77条第5項の規定及び同法第78条第2項において準用する第321条第1項」と、同法第325条第1項前段及び第2項中「第312条第1項又は第2項」とあるのは「非訟事件手続法第77条第2項」と、同条第3項後段中「この場合」とあるのは「差戻し又は移送を受けた裁判所が裁判をする場合」と、同条第4項中「前項」とあるのは「差戻し又は移送を受けた裁判所」と読み替えるものとする。

第2節 終局決定以外の裁判に対する不服申立て

(不服申立ての対象)

第79条 終局決定以外の裁判に対しては、特別の定めがある場合に限り、即時抗告をすることができる。


(受命裁判官又は受託裁判官の裁判に対する異議)

第80条 受命裁判官又は受託裁判官の裁判に対して不服がある当事者は、非訟事件が係属している裁判所に異議の申立てをすることができる。ただし、その裁判が非訟事件が係属している裁判所の裁判であるとした場合に即時抗告をすることができるものであるときに限る。

 前項の異議の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

 最高裁判所又は高等裁判所に非訟事件が係属している場合における第1項の規定の適用については、同項ただし書中「非訟事件が係属している裁判所」とあるのは、「地方裁判所」とする。


(即時抗告期間)

第81条 終局決定以外の裁判に対する即時抗告は、1週間の不変期間内にしなければならない。ただし、その期間前に提起した即時抗告の効力を妨げない。


(終局決定に対する不服申立ての規定の準用)

第82条 前節の規定(第66条第1項及び第2項、第67条第1項並びに第69条及び第70条(これらの規定を第76条第1項及び第78条第1項において準用する場合を含む。)の規定を除く。)は、裁判所、裁判官又は裁判長がした終局決定以外の裁判に対する不服申立てについて準用する。

第5章 再審

(再審)

第83条 確定した終局決定その他の裁判(事件を完結するものに限る。第5項において同じ。)に対しては、再審の申立てをすることができる。

 再審の手続には、その性質に反しない限り、各審級における非訟事件の手続に関する規定を準用する。

 民事訴訟法第4編の規定(同法第341条及び第349条の規定を除く。)は、第1項の再審の申立て及びこれに関する手続について準用する。この場合において、同法第348条第1項中「不服申立ての限度で、本案の審理及び裁判をする」とあるのは、「本案の審理及び裁判をする」と読み替えるものとする。

 前項において準用する民事訴訟法第346条第1項の再審開始の決定に対する即時抗告は、執行停止の効力を有する。

 第3項において準用する民事訴訟法第348条第2項の規定により終局決定その他の裁判に対する再審の申立てを棄却する決定に対しては、当該終局決定その他の裁判に対し即時抗告をすることができる者に限り、即時抗告をすることができる。


(執行停止の裁判)

第84条 裁判所は、前条第1項の再審の申立てがあった場合において、不服の理由として主張した事情が法律上理由があるとみえ、事実上の点につき疎明があり、かつ、執行により償うことができない損害が生ずるおそれがあることにつき疎明があったときは、申立てにより、担保を立てさせて、若しくは立てさせないで強制執行の一時の停止を命じ、又は担保を立てさせて既にした執行処分の取消しを命ずることができる。

 前項の規定による申立てについての裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

 第72条第2項及び第3項の規定は、第1項の規定により担保を立てる場合における供託及び担保について準用する。

第3編 民事非訟事件

第1章 削除

第85条 削除


第86条 削除


第87条 削除


第88条 削除


第89条 削除


第90条 削除


第91条 削除

第2章 保存、供託等に関する事件

(共有物分割の証書の保存者の指定)

第92条 民法(明治29年法律第89号)第262条第3項の規定による証書の保存者の指定の事件は、共有物の分割がされた地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

 裁判所は、前項の指定の裁判をするには、分割者(申立人を除く。)の陳述を聴かなければならない。

 裁判所が前項の裁判をする場合における手続費用は、分割者の全員が等しい割合で負担する。


(動産質権の実行の許可)

第93条 民法第354条の規定による質物をもって直ちに弁済に充てることの許可の申立てに係る事件は、債務の履行地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

 裁判所は、前項の許可の裁判をするには、債務者の陳述を聴かなければならない。

 裁判所が前項の裁判をする場合における手続費用は、債務者の負担とする。


(供託所の指定及び供託物の保管者の選任等)

第94条 民法第495条第2項の供託所の指定及び供託物の保管者の選任の事件は、債務の履行地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

 裁判所は、前項の指定及び選任の裁判をするには、債権者の陳述を聴かなければならない。

 裁判所は、前項の規定により選任した保管者を改任することができる。この場合においては、債権者及び弁済者の陳述を聴かなければならない。

 裁判所が第2項の裁判又は前項の規定による改任の裁判をする場合における手続費用は、債権者の負担とする。

 民法第658条第1項及び第2項、第659条から第661条まで並びに第664条の規定は、第2項の規定により選任し、又は第3項の規定により改任された保管者について準用する。


(競売代価の供託の許可)

第95条 民法第497条の裁判所の許可の事件については、前条第1項、第2項及び第4項の規定を準用する。


(買戻権の消滅に係る鑑定人の選任)

第96条 民法第582条の規定による鑑定人の選任の事件は、不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

 裁判所が前項の鑑定人の選任の裁判をする場合における手続費用は、買主の負担とする。


(検察官の不関与)

第97条 第40条の規定は、この章の規定による非訟事件の手続には、適用しない。


(不服申立ての制限)

第98条 この章の規定による指定、許可、選任又は改任の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

第4編 公示催告事件

第1章 通則

(公示催告の申立て)

第99条 裁判上の公示催告で権利の届出を催告するためのもの(以下この編において「公示催告」という。)の申立ては、法令にその届出をしないときは当該権利につき失権の効力を生ずる旨の定めがある場合に限り、することができる。


(管轄裁判所)

第100条 公示催告手続(公示催告によって当該公示催告に係る権利につき失権の効力を生じさせるための一連の手続をいう。以下この章において同じ。)に係る事件(第112条において「公示催告事件」という。)は、公示催告に係る権利を有する者の普通裁判籍の所在地又は当該公示催告に係る権利の目的物の所在地を管轄する簡易裁判所の管轄に属する。ただし、当該権利が登記又は登録に係るものであるときは、登記又は登録をすべき地を管轄する簡易裁判所もこれを管轄する。


(公示催告手続開始の決定等)

第101条 裁判所は、公示催告の申立てが適法であり、かつ、理由があると認めるときは、公示催告手続開始の決定をするとともに、次に掲げる事項を内容とする公示催告をする旨の決定(第113条第2項において「公示催告決定」という。)をしなければならない。

 申立人の表示

 権利の届出の終期の指定

 前号に規定する権利の届出の終期までに当該権利を届け出るべき旨の催告

 前号に掲げる催告に応じて権利の届出をしないことにより生ずべき失権の効力の表示


(公示催告についての公告)

第102条 公示催告についての公告は、前条に規定する公示催告の内容を、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、官報に掲載する方法によってする。

 裁判所は、相当と認めるときは、申立人に対し、前項に規定する方法に加えて、前条に規定する公示催告の内容を、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載して公告すべき旨を命ずることができる。


(公示催告の期間)

第103条 前条第1項の規定により公示催告を官報に掲載した日から権利の届出の終期までの期間は、他の法律に別段の定めがある場合を除き、2月を下ってはならない。


(公示催告手続終了の決定)

第104条 公示催告手続開始の決定後第106条第1項から第4項までの規定による除権決定がされるまでの間において、公示催告の申立てが不適法であること又は理由のないことが明らかになったときは、裁判所は、公示催告手続終了の決定をしなければならない。

 前項の決定に対しては、申立人に限り、即時抗告をすることができる。


(審理終結日)

第105条 裁判所は、権利の届出の終期の経過後においても、必要があると認めるときは、公示催告の申立てについての審理をすることができる。この場合において、裁判所は、審理を終結する日(以下この章において「審理終結日」という。)を定めなければならない。

 権利の届出の終期までに申立人が申立ての理由として主張した権利を争う旨の申述(以下この編において「権利を争う旨の申述」という。)があったときは、裁判所は、申立人及びその権利を争う旨の申述をした者の双方が立ち会うことができる審問期日を指定するとともに、審理終結日を定めなければならない。

 前二項の規定により審理終結日が定められたときは、権利の届出の終期の経過後においても、権利の届出又は権利を争う旨の申述は、その審理終結日まですることができる。

 権利を争う旨の申述をするには、自らが権利者であることその他の申立人が申立ての理由として主張した権利を争う理由を明らかにしなければならない。


(除権決定等)

第106条 権利の届出の終期(前条第1項又は第2項の規定により審理終結日が定められた場合にあっては、審理終結日。以下この条において同じ。)までに適法な権利の届出又は権利を争う旨の申述がないときは、裁判所は、第104条第1項の場合を除き、当該公示催告の申立てに係る権利につき失権の効力を生ずる旨の裁判(以下この編において「除権決定」という。)をしなければならない。

 裁判所は、権利の届出の終期までに適法な権利の届出があった場合であって、適法な権利を争う旨の申述がないときは、第104条第1項の場合を除き、当該公示催告の申立てに係る権利のうち適法な権利の届出があったものについては失権の効力を生じない旨の定め(以下この章において「制限決定」という。)をして、除権決定をしなければならない。

 裁判所は、権利の届出の終期までに適法な権利を争う旨の申述があった場合であって、適法な権利の届出がないときは、第104条第1項の場合を除き、申立人とその適法な権利を争う旨の申述をした者との間の当該権利についての訴訟の判決が確定するまで公示催告手続を中止し、又は除権決定は、その適法な権利を争う旨の申述をした者に対してはその効力を有せず、かつ、申立人が当該訴訟において敗訴したときはその効力を失う旨の定め(以下この章において「留保決定」という。)をして、除権決定をしなければならない。ただし、その権利を争う旨の申述に理由がないことが明らかであると認めるときは、留保決定をしないで、除権決定をしなければならない。

 裁判所は、権利の届出の終期までに適法な権利の届出及び権利を争う旨の申述があったときは、第104条第1項の場合を除き、制限決定及び留保決定をして、除権決定をしなければならない。

 除権決定に対しては、第108条の規定による場合のほか、不服を申し立てることができない。

 制限決定又は留保決定に対しては、即時抗告をすることができる。

 前項の即時抗告は、裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内にしなければならない。ただし、その期間前に提起した即時抗告の効力を妨げない。


(除権決定等の公告)

第107条 除権決定、制限決定及び留保決定は、官報に掲載して公告しなければならない。


(除権決定の取消しの申立て)

第108条 次に掲げる事由がある場合には、除権決定の取消しの申立てをすることができる。

 法令において公示催告の申立てをすることができる場合に該当しないこと。

 第102条第1項の規定による公示催告についての公告をせず、又は法律に定める方法によって公告をしなかったこと。

 第103条に規定する公示催告の期間を遵守しなかったこと。

 除斥又は忌避の裁判により除権決定に関与することができない裁判官が除権決定に関与したこと。

 適法な権利の届出又は権利を争う旨の申述があったにもかかわらず、第106条第2項から第4項までの規定に違反して除権決定がされたこと。

 第83条第3項において準用する民事訴訟法第338条第1項第4号から第8号までの規定により再審の申立てをすることができる場合であること。


(管轄裁判所)

第109条 前条の規定による除権決定の取消しの申立てに係る事件は、当該除権決定をした裁判所の管轄に属する。


(申立期間)

第110条 第108条の規定による除権決定の取消しの申立ては、申立人が除権決定があったことを知った日(同条第4号又は第6号に掲げる事由を不服の理由とする場合において、その日に申立人がその事由があることを知らなかったときにあっては、その事由があることを知った日)から30日の不変期間内にしなければならない。

 除権決定が告知された日から5年を経過したときは、第108条の規定による除権決定の取消しの申立てをすることができない。


(申立てについての裁判等)

第111条 第108条の規定による除権決定の取消しの申立てがあったときは、裁判所は、申立人及び相手方の双方が立ち会うことができる審問期日を指定するとともに、審理終結日を定めなければならない。

 裁判所は、前項に規定する場合において、第108条各号に掲げる事由があるときは、除権決定を取り消す決定をしなければならない。

 前項の規定による除権決定を取り消す決定が確定したときは、官報に掲載してその主文を公告しなければならない。


(事件の記録の閲覧等)

第112条 第32条第1項から第4項までの規定にかかわらず、申立人及び権利の届出をした者又は権利を争う旨の申述をした者その他の利害関係人は、裁判所書記官に対し、公示催告事件又は除権決定の取消しの申立てに係る事件の記録の閲覧等又は記録の複製を請求することができる。


(適用除外)

第113条 第40条の規定は、公示催告手続には、適用しない。

 第59条の規定は、公示催告手続開始の決定、公示催告決定及び除権決定には、適用しない。

第2章 有価証券無効宣言公示催告事件

(申立権者)

第114条 盗取され、紛失し、又は滅失した有価証券のうち、法令の規定により無効とすることができるものであって、次の各号に掲げるものを無効とする旨の宣言をするためにする公示催告の申立ては、それぞれ当該各号に定める者がすることができる。

 無記名式の有価証券又は裏書によって譲り渡すことができる有価証券であって白地式裏書(被裏書人を指定しないで、又は裏書人の署名若しくは記名押印のみをもってした裏書をいう。)がされたもの その最終の所持人

 前号に規定する有価証券以外の有価証券 その有価証券により権利を主張することができる者


(管轄裁判所)

第115条 前条に規定する公示催告(以下この章において「有価証券無効宣言公示催告」という。)の申立てに係る事件は、その有価証券に義務履行地(手形又は小切手にあっては、その支払地。以下この項において同じ。)が表示されているときはその義務履行地を管轄する簡易裁判所の管轄に属し、その有価証券に義務履行地が表示されていないときはその有価証券により義務を負担する者が普通裁判籍を有する地を管轄する簡易裁判所の管轄に属し、その者が普通裁判籍を有しないときはその者がその有価証券により義務を負担した時に普通裁判籍を有した地を管轄する簡易裁判所の管轄に属する。

 前項の規定にかかわらず、同項の有価証券が登記された権利について発行されたものであるときは、同項の申立ては、その権利の目的物の所在地を管轄する簡易裁判所の管轄に属する。


(申立ての方式及び疎明)

第116条 有価証券無効宣言公示催告の申立ては、その申立てに係る有価証券の謄本を提出し、又は当該有価証券を特定するために必要な事項を明らかにして、これをしなければならない。

 有価証券無効宣言公示催告の申立てに係る有価証券の盗難、紛失又は滅失の事実その他第114条の規定により申立てをすることができる理由は、これを疎明しなければならない。


(公示催告の内容等)

第117条 有価証券無効宣言公示催告においては、第101条の規定にかかわらず、次に掲げる事項を公示催告の内容とする。

 申立人の表示

 権利を争う旨の申述の終期の指定

 前号に規定する権利を争う旨の申述の終期までに権利を争う旨の申述をし、かつ、有価証券を提出すべき旨の有価証券の所持人に対する催告

 前号に掲げる催告に応じて権利を争う旨の申述をしないことにより有価証券を無効とする旨を宣言する旨の表示

 有価証券無効宣言公示催告についての前章の規定の適用については、第103条、第105条第1項から第3項まで並びに第106条第1項及び第3項中「権利の届出の終期」とあるのは「権利を争う旨の申述の終期」と、第104条第1項中「第106条第1項から第4項まで」とあるのは「第106条第1項又は第3項」と、第105条第3項、第106条第1項及び第108条第5号中「権利の届出又は権利を争う旨の申述」とあるのは「権利を争う旨の申述」と、第106条第3項中「適法な権利を争う旨の申述があった場合であって、適法な権利の届出がないとき」とあるのは「適法な権利を争う旨の申述があったとき」と、同条第6項中「制限決定又は留保決定」とあるのは「留保決定」と、第107条中「、制限決定及び留保決定」とあるのは「及び留保決定」と、第108条第5号中「第106条第2項から第4項まで」とあるのは「第106条第3項」とする。


(除権決定による有価証券の無効の宣言等)

第118条 裁判所は、有価証券無効宣言公示催告の申立てについての除権決定において、その申立てに係る有価証券を無効とする旨を宣言しなければならない。

 前項の除権決定がされたときは、有価証券無効宣言公示催告の申立人は、その申立てに係る有価証券により義務を負担する者に対し、当該有価証券による権利を主張することができる。

第5編 過料事件

(管轄裁判所)

第119条 過料事件(過料についての裁判の手続に係る非訟事件をいう。)は、他の法令に特別の定めがある場合を除き、当事者(過料の裁判がされた場合において、その裁判を受ける者となる者をいう。以下この編において同じ。)の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。


(過料についての裁判等)

第120条 過料についての裁判には、理由を付さなければならない。

 裁判所は、過料についての裁判をするに当たっては、あらかじめ、検察官の意見を聴くとともに、当事者の陳述を聴かなければならない。

 過料についての裁判に対しては、当事者及び検察官に限り、即時抗告をすることができる。この場合において、当該即時抗告が過料の裁判に対するものであるときは、執行停止の効力を有する。

 過料についての裁判の手続(その抗告審における手続を含む。次項において同じ。)に要する手続費用は、過料の裁判をした場合にあっては当該裁判を受けた者の負担とし、その他の場合にあっては国庫の負担とする。

 過料の裁判に対して当事者から第3項の即時抗告があった場合において、抗告裁判所が当該即時抗告を理由があると認めて原裁判を取り消して更に過料についての裁判をしたときは、前項の規定にかかわらず、過料についての裁判の手続に要する手続費用は、国庫の負担とする。


(過料の裁判の執行)

第121条 過料の裁判は、検察官の命令で執行する。この命令は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。

 過料の裁判の執行は、民事執行法(昭和54年法律第4号)その他強制執行の手続に関する法令の規定に従ってする。ただし、執行をする前に裁判の送達をすることを要しない。

 刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第507条の規定は、過料の裁判の執行について準用する。

 過料の裁判の執行があった後に当該裁判(以下この項において「原裁判」という。)に対して前条第3項の即時抗告があった場合において、抗告裁判所が当該即時抗告を理由があると認めて原裁判を取り消して更に過料の裁判をしたときは、その金額の限度において当該過料の裁判の執行があったものとみなす。この場合において、原裁判の執行によって得た金額が当該過料の金額を超えるときは、その超過額は、これを還付しなければならない。


(略式手続)

第122条 裁判所は、第120条第2項の規定にかかわらず、相当と認めるときは、当事者の陳述を聴かないで過料についての裁判をすることができる。

 前項の裁判に対しては、当事者及び検察官は、当該裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内に、当該裁判をした裁判所に異議の申立てをすることができる。この場合において、当該異議の申立てが過料の裁判に対するものであるときは、執行停止の効力を有する。

 前項の異議の申立ては、次項の裁判があるまで、取り下げることができる。この場合において、当該異議の申立ては、遡ってその効力を失う。

 適法な異議の申立てがあったときは、裁判所は、当事者の陳述を聴いて、更に過料についての裁判をしなければならない。

 前項の規定によってすべき裁判が第1項の裁判と符合するときは、裁判所は、同項の裁判を認可しなければならない。ただし、同項の裁判の手続が法律に違反したものであるときは、この限りでない。

 前項の規定により第1項の裁判を認可する場合を除き、第4項の規定によってすべき裁判においては、第1項の裁判を取り消さなければならない。

 第120条第5項の規定は、第1項の規定による過料の裁判に対して当事者から第2項の異議の申立てがあった場合において、前項の規定により当該裁判を取り消して第4項の規定により更に過料についての裁判をしたときについて準用する。

 前条第4項の規定は、第1項の規定による過料の裁判の執行があった後に当該裁判に対して第2項の異議の申立てがあった場合において、第6項の規定により当該裁判を取り消して第4項の規定により更に過料の裁判をしたときについて準用する。

附 則
(施行期日)

 この法律は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(経過措置)

 この法律の規定は、この法律の施行後に申し立てられた非訟事件及び職権で手続が開始された非訟事件の手続について適用する。

附 則(平成29年6月2日法律第45号)

この法律は、民法改正法の施行の日から施行する。ただし、第103条の2、第103条の3、第267条の2、第267条の3及び第362条の規定は、公布の日から施行する。