かっこ色付け
移動

ギャンブル等依存症対策基本法

平成30年法律第74号
ツイート
シェア
印刷用画面
検索
条へ移動
全条文表示に戻る

第1章 総則

(目的)

第1条 この法律は、ギャンブル等依存症がギャンブル等依存症である者等及びその家族の日常生活又は社会生活に支障を生じさせるものであり、多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等の重大な社会問題を生じさせていることに鑑み、ギャンブル等依存症対策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、ギャンブル等依存症対策の基本となる事項を定めること等により、ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民の健全な生活の確保を図るとともに、国民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。


(定義)

第2条 この法律において「ギャンブル等依存症」とは、ギャンブル等(法律の定めるところにより行われる公営競技、ぱちんこ屋に係る遊技その他の射幸行為をいう。第7条において同じ。)にのめり込むことにより日常生活又は社会生活に支障が生じている状態をいう。


(基本理念)

第3条 ギャンブル等依存症対策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

 ギャンブル等依存症の発症、進行及び再発の各段階に応じた防止及び回復のための対策を適切に講ずるとともに、ギャンブル等依存症である者等及びその家族が日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるように支援すること。

 ギャンブル等依存症対策を講ずるに当たっては、ギャンブル等依存症が、多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等の問題に密接に関連することに鑑み、ギャンブル等依存症に関連して生ずるこれらの問題の根本的な解決に資するため、これらの問題に関する施策との有機的な連携が図られるよう、必要な配慮がなされるものとすること。


(アルコール、薬物等に対する依存に関する施策との有機的な連携への配慮)

第4条 ギャンブル等依存症対策を講ずるに当たっては、アルコール、薬物等に対する依存に関する施策との有機的な連携が図られるよう、必要な配慮がなされるものとする。


(国の責務)

第5条 国は、第3条の基本理念にのっとり、ギャンブル等依存症対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。


(地方公共団体の責務)

第6条 地方公共団体は、第3条の基本理念にのっとり、ギャンブル等依存症対策に関し、国との連携を図りつつ、その地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。


(関係事業者の責務)

第7条 ギャンブル等の実施に係る事業のうちギャンブル等依存症の発症、進行及び再発に影響を及ぼす事業を行う者(第15条及び第33条第2項において「関係事業者」という。)は、国及び地方公共団体が実施するギャンブル等依存症対策に協力するとともに、その事業活動を行うに当たって、ギャンブル等依存症の予防等(発症、進行及び再発の防止をいう。以下同じ。)に配慮するよう努めなければならない。


(国民の責務)

第8条 国民は、ギャンブル等依存症問題(ギャンブル等依存症及びこれに関連して生ずる多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等の問題をいう。以下同じ。)に関する関心と理解を深め、ギャンブル等依存症の予防等に必要な注意を払うよう努めなければならない。


(ギャンブル等依存症対策に関連する業務に従事する者の責務)

第9条 医療、保健、福祉、教育、法務、矯正その他のギャンブル等依存症対策に関連する業務に従事する者は、国及び地方公共団体が実施するギャンブル等依存症対策に協力し、ギャンブル等依存症の予防等及び回復に寄与するよう努めなければならない。


(ギャンブル等依存症問題啓発週間)

第10条 国民の間に広くギャンブル等依存症問題に関する関心と理解を深めるため、ギャンブル等依存症問題啓発週間を設ける。

 ギャンブル等依存症問題啓発週間は、5月14日から同月20日までとする。

 国及び地方公共団体は、ギャンブル等依存症問題啓発週間の趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努めるものとする。


(法制上の措置等)

第11条 政府は、ギャンブル等依存症対策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

第2章 ギャンブル等依存症対策推進基本計画等

(ギャンブル等依存症対策推進基本計画)

第12条 政府は、ギャンブル等依存症対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、ギャンブル等依存症対策の推進に関する基本的な計画(以下「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」という。)を策定しなければならない。

 ギャンブル等依存症対策推進基本計画に定める施策については、原則として、当該施策の具体的な目標及びその達成の時期を定めるものとする。

 内閣総理大臣は、ギャンブル等依存症対策推進基本計画の案につき閣議の決定を求めなければならない。

 政府は、ギャンブル等依存症対策推進基本計画を策定したときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、インターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

 政府は、適時に、第2項の規定により定める目標の達成状況を調査し、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

 政府は、ギャンブル等依存症に関する状況の変化を勘案し、並びに第23条に規定する調査の結果及びギャンブル等依存症対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも3年ごとに、ギャンブル等依存症対策推進基本計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。

 第3項及び第4項の規定は、ギャンブル等依存症対策推進基本計画の変更について準用する。


(都道府県ギャンブル等依存症対策推進計画)

第13条 都道府県は、ギャンブル等依存症対策推進基本計画を基本とするとともに、当該都道府県の実情に即したギャンブル等依存症対策の推進に関する計画(以下この条において「都道府県ギャンブル等依存症対策推進計画」という。)を策定するよう努めなければならない。

 都道府県ギャンブル等依存症対策推進計画は、医療法(昭和23年法律第205号)第30条の4第1項に規定する医療計画、健康増進法(平成14年法律第103号)第8条第1項に規定する都道府県健康増進計画、アルコール健康障害対策基本法(平成25年法律第109号)第14条第1項に規定する都道府県アルコール健康障害対策推進計画その他の法令の規定による計画であってギャンブル等依存症対策に関連する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。

 都道府県は、当該都道府県におけるギャンブル等依存症に関する状況の変化を勘案し、並びに第23条に規定する調査の結果及び当該都道府県におけるギャンブル等依存症対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも3年ごとに、都道府県ギャンブル等依存症対策推進計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更するよう努めなければならない。

第3章 基本的施策

(教育の振興等)

第14条 国及び地方公共団体は、国民がギャンブル等依存症問題に関する関心と理解を深め、ギャンブル等依存症の予防等に必要な注意を払うことができるよう、家庭、学校、職場、地域その他の様々な場におけるギャンブル等依存症問題に関する教育及び学習の振興並びに広報活動等を通じたギャンブル等依存症問題に関する知識の普及のために必要な施策を講ずるものとする。


(ギャンブル等依存症の予防等に資する事業の実施)

第15条 国及び地方公共団体は、広告及び宣伝、入場の管理その他の関係事業者が行う事業の実施の方法について、関係事業者の自主的な取組を尊重しつつ、ギャンブル等依存症の予防等が図られるものとなるようにするために必要な施策を講ずるものとする。


(医療提供体制の整備)

第16条 国及び地方公共団体は、ギャンブル等依存症である者等がその居住する地域にかかわらず等しくその状態に応じた適切な医療を受けることができるよう、ギャンブル等依存症に係る専門的な医療の提供等を行う医療機関の整備その他の医療提供体制の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする。


(相談支援等)

第17条 国及び地方公共団体は、精神保健福祉センター(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)第6条第1項に規定する精神保健福祉センターをいう。第20条において同じ。)、保健所、消費生活センター(消費者安全法(平成21年法律第50号)第10条の2第1項第1号に規定する消費生活センターをいう。第20条において同じ。)及び日本司法支援センター(総合法律支援法(平成16年法律第74号)第13条に規定する日本司法支援センターをいう。第20条において同じ。)における相談支援の体制の整備その他のギャンブル等依存症である者等及びその家族に対するギャンブル等依存症問題に関する相談支援等を推進するために必要な施策を講ずるものとする。


(社会復帰の支援)

第18条 国及び地方公共団体は、ギャンブル等依存症である者等の円滑な社会復帰に資するよう、就労の支援その他の支援を推進するために必要な施策を講ずるものとする。


(民間団体の活動に対する支援)

第19条 国及び地方公共団体は、ギャンブル等依存症である者等が互いに支え合ってその予防等及び回復を図るための活動その他の民間団体が行うギャンブル等依存症対策に関する自発的な活動を支援するために必要な施策を講ずるものとする。


(連携協力体制の整備)

第20条 国及び地方公共団体は、第14条から前条までの施策の効果的な実施を図るため、第16条の医療機関その他の医療機関、精神保健福祉センター、保健所、消費生活センター、日本司法支援センターその他の関係機関、民間団体等の間における連携協力体制の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする。


(人材の確保等)

第21条 国及び地方公共団体は、医療、保健、福祉、教育、法務、矯正その他のギャンブル等依存症対策に関連する業務に従事する者について、ギャンブル等依存症問題に関し十分な知識を有する人材の確保、養成及び資質の向上のために必要な施策を講ずるものとする。


(調査研究の推進等)

第22条 国及び地方公共団体は、ギャンブル等依存症の予防等、診断及び治療の方法に関する研究その他のギャンブル等依存症問題に関する調査研究の推進並びにその成果の普及のために必要な施策を講ずるものとする。


(実態調査)

第23条 政府は、3年ごとに、ギャンブル等依存症問題の実態を明らかにするため必要な調査を行い、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

第4章 ギャンブル等依存症対策推進本部

(設置)

第24条 ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進するため、内閣に、ギャンブル等依存症対策推進本部(以下「本部」という。)を置く。


(所掌事務)

第25条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。

 ギャンブル等依存症対策推進基本計画の案の作成及び実施の推進に関すること。

 関係行政機関がギャンブル等依存症対策推進基本計画に基づいて実施する施策の総合調整及び実施状況の評価に関すること。

 前二号に掲げるもののほか、ギャンブル等依存症対策で重要なものの企画及び立案並びに総合調整に関すること。

 本部は、次に掲げる場合には、あらかじめ、ギャンブル等依存症対策推進関係者会議の意見を聴かなければならない。

 ギャンブル等依存症対策推進基本計画の案を作成しようとするとき。

 前項第2号の評価について、その結果の取りまとめを行おうとするとき。

 前項(第1号に係る部分に限る。)の規定は、ギャンブル等依存症対策推進基本計画の変更の案の作成について準用する。


(組織)

第26条 本部は、ギャンブル等依存症対策推進本部長、ギャンブル等依存症対策推進副本部長及びギャンブル等依存症対策推進本部員をもって組織する。


(ギャンブル等依存症対策推進本部長)

第27条 本部の長は、ギャンブル等依存症対策推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣官房長官をもって充てる。

 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。


(ギャンブル等依存症対策推進副本部長)

第28条 本部に、ギャンブル等依存症対策推進副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、国務大臣をもって充てる。

 副本部長は、本部長の職務を助ける。


(ギャンブル等依存症対策推進本部員)

第29条 本部に、ギャンブル等依存症対策推進本部員(次項において「本部員」という。)を置く。

 本部員は、次に掲げる者(第1号から第10号までに掲げる者にあっては、副本部長に充てられたものを除く。)をもって充てる。

 国家公安委員会委員長

 内閣府設置法(平成11年法律第89号)第11条の特命担当大臣

 内閣府設置法第11条の2の特命担当大臣

 総務大臣

 法務大臣

 文部科学大臣

 厚生労働大臣

 農林水産大臣

 経済産業大臣

 国土交通大臣

十一 前各号に掲げる者のほか、本部長及び副本部長以外の国務大臣のうちから、本部の所掌事務を遂行するために特に必要があると認める者として内閣総理大臣が指定する者


(資料提供等)

第30条 関係行政機関の長は、本部の定めるところにより、本部に対し、ギャンブル等依存症に関する資料又は情報であって、本部の所掌事務の遂行に資するものを、適時に提供しなければならない。

 前項に定めるもののほか、関係行政機関の長は、本部長の求めに応じて、本部に対し、本部の所掌事務の遂行に必要なギャンブル等依存症に関する資料又は情報の提供及び説明その他必要な協力を行わなければならない。


(資料の提出その他の協力)

第31条 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、地方公共団体、独立行政法人(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人をいう。)及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第1項に規定する地方独立行政法人をいう。)の長並びに特殊法人(法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法(平成11年法律第91号)第4条第1項第9号の規定の適用を受けるものをいう。)の代表者に対して、資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができる。

 本部は、その所掌事務を遂行するために特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。


(ギャンブル等依存症対策推進関係者会議)

第32条 本部に、第25条第2項(同条第3項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理するため、ギャンブル等依存症対策推進関係者会議(次条において「関係者会議」という。)を置く。


第33条 関係者会議は、委員20人以内で組織する。

 関係者会議の委員は、ギャンブル等依存症である者等及びその家族を代表する者、関係事業者並びにギャンブル等依存症問題に関し専門的知識を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。

 関係者会議の委員は、非常勤とする。


(事務)

第34条 本部に関する事務は、内閣官房において処理し、命を受けて内閣官房副長官補が掌理する。


(主任の大臣)

第35条 本部に係る事項については、内閣法(昭和22年法律第5号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。


(政令への委任)

第36条 この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。

附 則
(施行期日)

 この法律は、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(検討)

 本部については、この法律の施行後5年を目途として総合的な検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。

 前項に定める事項のほか、この法律の規定については、この法律の施行後3年を目途として、この法律の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられるものとする。