がん登録等の推進に関する法律
第1章 総則
第1条 この法律は、がんが国民の疾病による死亡の最大の原因となっている等がんが国民の生命及び健康にとって重大な問題となっている現状に鑑み、がん対策基本法(平成18年法律第98号)の趣旨にのっとり、がん医療の質の向上等(がん医療及びがん検診(以下「がん医療等」という。)の質の向上並びにがんの予防の推進をいう。以下同じ。)、国民に対するがん、がん医療等及びがんの予防についての情報提供の充実その他のがん対策を科学的知見に基づき実施するため、全国がん登録の実施並びにこれに係る情報の利用及び提供、保護等について定めるとともに、院内がん登録等の推進に関する事項を定め、あわせて、がん登録等により得られた情報の活用について定めることにより、がんの罹患、診療、転帰等の状況の把握及び分析その他のがんに係る調査研究を推進し、もってがん対策の一層の充実に資することを目的とする。
第2条 この法律において「がん」とは、悪性新生物その他の政令で定める疾病をいう。
2 この法律において「がん登録」とは、全国がん登録及び院内がん登録をいう。
3 この法律において「全国がん登録」とは、国及び都道府県による利用及び提供の用に供するため、この法律の定めるところにより、国が国内におけるがんの罹患、診療、転帰等に関する情報をデータベース(情報の集合物であって、当該情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。以下同じ。)に記録し、及び保存することをいう。
4 この法律において「院内がん登録」とは、がん医療の提供を行う病院において、そのがん医療の状況を適確に把握するため、当該病院において診療が行われたがんの罹患、診療、転帰等に関する詳細な情報を記録し、及び保存することをいう。
5 この法律において「がんに係る調査研究」とは、がん、がん医療等及びがんの予防に関する統計の作成その他の調査研究(匿名化を行った情報を当該調査研究の成果として自ら利用し、又は提供することを含む。)をいう。
6 この法律において「全国がん登録データベース」とは、第5条第1項の規定により整備されるデータベースをいう。
7 この法律において「全国がん登録情報」とは、全国がん登録データベースに記録された第5条第1項に規定する登録情報(匿名化が行われていないものに限り、次章第2節及び第3節の規定により利用し、又は提供される場合を含む。)をいう。
8 この法律において「都道府県がん情報」とは、全国がん登録情報のうち、これを利用しようとする都道府県の名称が第5条第1項第2号の情報として記録されたがん及び当該都道府県の区域内の第6条第1項に規定する病院等から届出がされたがんに係る情報(匿名化が行われていないものに限り、次章第2節及び第3節の規定により利用し、又は提供される場合を含む。)をいう。
9 この法律において「匿名化」とは、がんに罹患した者に関する情報を当該がんに罹患した者の識別(他の情報との照合による識別を含む。第15条第1項及び第17条第1項において同じ。)ができないように加工することをいう。
10 この法律において「特定匿名化情報」とは、第15条第1項の規定により匿名化が行われた情報並びに第21条第5項及び第6項の規定により全国がん登録データベースに記録された情報をいう。
第3条 全国がん登録については、がん対策全般を科学的知見に基づき実施する上で基礎となるものとして、広範な情報の収集により、がんの罹患、診療、転帰等の状況ができる限り正確に把握されるものでなければならない。
2 院内がん登録については、これが病院におけるがん医療の分析及び評価等を通じてその質の向上に資するものであることに鑑み、全国がん登録を通じて必要な情報が確実に得られるよう十分な配慮がなされるとともに、その普及及び充実が図られなければならない。
3 がん対策の充実のためには、全国がん登録の実施のほか、がんの診療の状況を適確に把握することが必要であることに鑑み、院内がん登録により得られる情報その他のがんの診療に関する詳細な情報(以下「がん診療情報」という。)の収集が図られなければならない。
4 全国がん登録及びがん診療情報の収集により得られた情報については、これらががん患者の診療等を通じて得られる貴重な情報であることに鑑み、民間によるものを含めがんに係る調査研究のために十分に活用されるとともに、その成果ががん患者及びその家族をはじめとする国民に還元されなければならない。
5 がんの罹患、診療、転帰等に関する情報が特に適正な取扱いが求められる情報であることに鑑み、がん登録及びがん診療情報の収集に係るがんに罹患した者に関する情報は、厳格に保護されなければならない。
第4条 国、都道府県、市町村、病院及び診療所の開設者及び管理者並びに前条第4項に規定する情報の提供を受ける研究者は、同条の基本理念の実現を図るため、相互に連携を図りながら協力しなければならない。
第2章 全国がん登録
第1節 全国がん登録データベースの整備
第5条 厚生労働大臣は、次節の定めるところにより収集される情報に基づき、原発性のがんごとに、登録情報(次に掲げる情報及び附属情報をいう。次節において同じ。)並びに第15条第1項の規定により匿名化を行った情報並びに第21条第5項及び第6項の規定により記録することとなる情報を記録し、及び保存するデータベースを整備しなければならない。
一 当該がんに罹患した者の氏名、性別、生年月日及び住所
二 当該がんに罹患した者の当該がんの初回の診断に係る住所(厚生労働省令で定める場合にあっては、厚生労働省令で定める住所)の存する都道府県及び市町村の名称
三 診断により当該がんの発生が確定した日として厚生労働省令で定める日
四 当該がんの種類に関し厚生労働省令で定める事項
五 当該がんの進行度に関し厚生労働省令で定める事項
六 当該がんの発見の経緯に関し厚生労働省令で定める事項
七 当該がんの治療の内容に関し厚生労働省令で定める事項
八 当該がんの診断又は治療を行った病院又は診療所に関し厚生労働省令で定める事項
九 当該がんに罹患した者の生存確認情報(生存しているか死亡したかの別及び生存を確認した直近の日として厚生労働省令で定める日(死亡を確認した場合にあっては、その死亡の日及びその死亡の原因に関し厚生労働省令で定める事項)をいう。以下同じ。)
十 その他厚生労働省令で定める事項
2 前項の「附属情報」とは、次条第1項に規定する病院等から同項の規定による届出(同項の厚生労働省令で定める期間を経過した後に行われる同項に規定する届出対象情報の届出(その届け出る情報についてがんに係る調査研究における有用性が認められないものとして政令で定める届出を除く。)を含む。同条第2項及び第5項並びに第7条第1項を除き、以下この章において単に「届出」という。)がされた次条第1項に規定する届出対象情報をいう。
3 第1項のデータベースの整備に当たっては、同1人の複数の原発性のがんの把握が容易となるようにするものとする。
第2節 情報の収集、記録及び保存等
第6条 病院又は次項の規定により指定された診療所(以下この章において「病院等」という。)の管理者は、原発性のがんについて、当該病院等における初回の診断が行われたとき(転移又は再発の段階で当該病院等における初回の診断が行われた場合を含む。)は、厚生労働省令で定める期間内に、その診療の過程で得られた当該原発性のがんに関する次に掲げる情報(以下「届出対象情報」という。)を当該病院等の所在地の都道府県知事に届け出なければならない。
一 当該がんに罹患した者の氏名、性別、生年月日及び住所
二 当該病院等の名称その他当該病院等に関し厚生労働省令で定める事項
三 当該がんの診断日として厚生労働省令で定める日
四 当該がんの種類に関し厚生労働省令で定める事項
五 当該がんの進行度に関し厚生労働省令で定める事項
六 当該がんの発見の経緯に関し厚生労働省令で定める事項
七 当該病院等が行った当該がんの治療の内容に関し厚生労働省令で定める事項
八 当該がんに罹患した者の死亡を確認した場合にあっては、その死亡の日
九 その他厚生労働省令で定める事項
2 都道府県知事は、厚生労働省令で定めるところにより、その開設者の同意を得て、当該都道府県の区域内の診療所のうち、届出対象情報の届出を行う診療所を指定する。
3 都道府県知事は、前項の規定による指定を行うに当たっては、診療に関する学識経験者の団体の協力を求めることができる。
4 第2項の規定により指定された診療所は、その指定を辞退することができる。
5 都道府県知事は、第2項の規定により指定された診療所の管理者が第1項の規定に違反したとき又は当該診療所が同項の規定による届出を行うことが不適当であると認めるときは、その指定を取り消すことができる。
第7条 都道府県知事は、病院の管理者が前条第1項の規定に違反した場合において、がんの罹患、診療、転帰等の状況を把握するため特に必要があると認めるときは、当該管理者に対し、期限を定めて当該違反に係る届出対象情報の届出をするよう勧告することができる。
2 都道府県知事は、前項の規定による勧告を受けた病院の管理者が、同項の期限内にその勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。
第8条 都道府県知事は、当該都道府県の区域内の病院等から届出がされた届出対象情報について審査及び整理を行い、その結果得られた第5条第1項の規定により全国がん登録データベースに記録されるべき登録情報(以下この章において「都道府県整理情報」という。)を厚生労働大臣に提出しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の規定による審査及び整理を行うに当たっては、全国がん登録データベースを用いて、都道府県がん情報を利用することができる。
第9条 厚生労働大臣は、前条第1項の規定により都道府県知事から提出された都道府県整理情報について審査及び整理を行い、その結果得られた第5条第1項の規定により全国がん登録データベースに記録されるべき登録情報を全国がん登録データベースに記録しなければならない。
2 厚生労働大臣は、前項の規定による審査及び整理を行うに当たっては、全国がん登録データベースを用いて、全国がん登録情報を利用することができる。
第10条 厚生労働大臣は、前条第1項の規定による審査及び整理を行うに当たって、がんに罹患した者の氏名、がんの種類その他の厚生労働省令で定める事項に関する調査を行う必要があると認めるときは、その旨を関係都道府県知事に通知するものとする。
2 前項の規定による通知を受けた都道府県知事は、当該通知に係る事項に関する調査を行い、その結果を厚生労働大臣に報告するものとする。
第11条 市町村長(地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市にあっては、区長又は総合区長とする。次項において同じ。)は、戸籍法(昭和22年法律第224号)による死亡の届書その他の関係書類に基づいて、死亡者情報票(死亡した者に関する氏名、性別、生年月日、死亡の時における住所、死亡の日、死亡の原因、死亡診断書の作成に係る病院又は診療所の名称及び所在地その他の厚生労働省令で定める情報の電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)又はこれらの情報を記載した書類をいう。以下この章において同じ。)を作成し、これを都道府県の設置する保健所の長(地域保健法(昭和22年法律第101号)第5条第1項の政令で定める市又は特別区にあっては、当該市又は特別区の設置する保健所の長)に提出しなければならない。
2 前項の保健所の長は、同項の規定により市町村長から提出された死亡者情報票を審査し、これを都道府県知事に提出しなければならない。
3 都道府県知事は、前項の規定により第1項の保健所の長から提出された死亡者情報票を審査し、これを厚生労働大臣に提出しなければならない。
第12条 厚生労働大臣は、全国がん登録情報(第8条第1項の規定により都道府県知事から提出された都道府県整理情報のうち、まだ全国がん登録データベースに記録されていない情報を含む。以下「全国がん登録情報等」という。)を前条第3項の規定により提出された死亡者情報票に記録され、又は記載された情報と照合し、その結果判明した生存確認情報及び死亡者新規がん情報(死亡者情報票に記録され、又は記載された情報により厚生労働大臣が新たに把握したがんに関し、第5条第1項の規定により全国がん登録データベースに記録されるべき登録情報をいう。第14条において同じ。)を全国がん登録データベースに記録しなければならない。
2 前項の規定による照合は、がんに係る調査研究のためにがんに罹患した者が生存しているか死亡したかの別を調査する必要があると認められる期間として政令で定める期間が経過した全国がん登録情報等については、死亡者情報票のうち、がんの罹患に関する情報が記録され、又は記載されているものとだけ行うものとする。
第13条 厚生労働大臣は、前条の照合を行うに当たって、がんに罹患した者の氏名、がんの種類その他の厚生労働省令で定める事項に関する調査を行う必要があると認めるときは、その旨を関係都道府県知事に通知するものとする。
2 第10条第2項の規定は、前項の規定による通知を受けた都道府県知事について準用する。
第14条 厚生労働大臣は、死亡者新規がん情報が判明したときは、その死亡者情報票に係る死亡診断書の作成に係る病院又は診療所の所在地の都道府県知事その他の厚生労働省令で定める都道府県知事に対し、その旨並びに当該病院又は診療所の名称及び所在地その他の厚生労働省令で定める事項を通知するものとする。
第15条 厚生労働大臣は、全国がん登録データベースにおける全国がん登録情報については、がんに係る調査研究のためにがんに罹患した者の識別ができる状態で保存する必要があると認められる期間として政令で定める期間保存するとともに、当該期間を経過した後においては政令で定める期間内にその匿名化を行わなければならない。
2 厚生労働大臣は、前項の規定による匿名化を行おうとするときは、あらかじめ、審議会等(国家行政組織法(昭和23年法律第120号)第8条に規定する機関をいう。)で政令で定めるものの意見を聴かなければならない。
3 前項に規定する審議会等の委員その他の構成員には、がん、がん医療等又はがんの予防に関する学識経験のある者及び個人情報の保護に関する学識経験のある者が含まれるものとする。
第16条 都道府県知事及び第11条第1項の保健所の長は、この節の規定の施行のため必要があると認めるときは、市町村、病院等の管理者その他の関係者に対し、資料の提出、説明その他の協力を求めることができる。
第3節 情報の利用及び提供
第17条 厚生労働大臣は、国のがん対策の企画立案又は実施に必要ながんに係る調査研究のため、これに必要な限度で、全国がん登録データベースを用いて、全国がん登録情報又は特定匿名化情報を自ら利用し、又は次に掲げる者に提供することができる。ただし、当該利用又は提供によって、その情報により識別をすることができるがんに罹患した者又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは、この限りでない。
一 国の他の行政機関及び独立行政法人(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人をいう。次号において同じ。)
二 国の行政機関若しくは独立行政法人から国のがん対策の企画立案若しくは実施に必要ながんに係る調査研究の委託を受けた者又は国の行政機関若しくは独立行政法人と共同して当該がんに係る調査研究を行う者
三 前号に掲げる者に準ずる者として厚生労働省令で定める者
2 厚生労働大臣は、前項の規定による利用又は提供を行おうとするときは、あらかじめ、第15条第2項に規定する審議会等の意見を聴かなければならない。
第18条 都道府県知事は、当該都道府県のがん対策の企画立案又は実施に必要ながんに係る調査研究のため、これに必要な限度で、全国がん登録データベースを用いて、当該都道府県に係る都道府県がん情報又はこれに係る特定匿名化情報を自ら利用し、又は次に掲げる者に提供することができる。この場合においては、前条第1項ただし書の規定を準用する。
一 当該都道府県が設立した地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第1項に規定する地方独立行政法人をいう。次号及び次条第1項において同じ。)
二 当該都道府県若しくは当該都道府県が設立した地方独立行政法人から当該都道府県のがん対策の企画立案若しくは実施に必要ながんに係る調査研究の委託を受けた者又は当該都道府県若しくは当該都道府県が設立した地方独立行政法人と共同して当該がんに係る調査研究を行う者
三 前号に掲げる者に準ずる者として当該都道府県知事が定める者
2 都道府県知事は、前項第3号の規定により同項第2号に掲げる者に準ずる者を定め、又は同項の規定による利用若しくは提供を行おうとするときは、あらかじめ、審議会その他の合議制の機関の意見を聴かなければならない。
3 前項に規定する審議会その他の合議制の機関の委員その他の構成員には、がん、がん医療等又はがんの予防に関する学識経験のある者及び個人情報の保護に関する学識経験のある者が含まれるものとする。
第19条 都道府県知事は、次に掲げる者から、当該市町村のがん対策の企画立案又は実施に必要ながんに係る調査研究のため、当該都道府県に係る都道府県がん情報のうち第5条第1項第2号の情報として当該市町村の名称が記録されているがんに係る情報又はこれに係る特定匿名化情報の提供の求めを受けたときは、これに必要な限度で、全国がん登録データベースを用いて、その提供を行うものとする。この場合においては、第17条第1項ただし書の規定を準用する。
一 当該都道府県の区域内の市町村の長又は当該市町村が設立した地方独立行政法人
二 当該都道府県の区域内の市町村若しくは当該市町村が設立した地方独立行政法人から当該市町村のがん対策の企画立案若しくは実施に必要ながんに係る調査研究の委託を受けた者又は当該市町村若しくは当該市町村が設立した地方独立行政法人と共同して当該がんに係る調査研究を行う者
三 前号に掲げる者に準ずる者として当該市町村の長が定める者
2 都道府県知事は、前項の規定による提供を行おうとするときは、あらかじめ、前条第2項に規定する審議会その他の合議制の機関の意見を聴かなければならない。
3 市町村長は、第1項第3号の規定により同項第2号に掲げる者に準ずる者を定めようとするときは、あらかじめ、審議会その他の合議制の機関の意見を聴くとともに、都道府県知事に協議しなければならない。
4 前項に規定する審議会その他の合議制の機関の委員その他の構成員には、がん、がん医療等又はがんの予防に関する学識経験のある者及び個人情報の保護に関する学識経験のある者が含まれるものとする。
第20条 都道府県知事は、当該都道府県の区域内の病院等における院内がん登録その他がんに係る調査研究のため、当該病院等の管理者から、当該病院等から届出がされたがんに係る都道府県がん情報(厚生労働省令で定める生存確認情報及び厚生労働省令で定める当該病院等に係る第5条第2項に規定する附属情報に限る。)の提供の請求を受けたときは、全国がん登録データベースを用いて、その提供を行わなければならない。この場合においては、第17条第1項ただし書の規定を準用する。
第21条 厚生労働大臣は、都道府県知事又は第18条第1項各号に掲げる者から、当該都道府県のがん対策の企画立案又は実施に必要ながんに係る調査研究のため、当該都道府県に係る都道府県がん情報以外の全国がん登録情報であって当該都道府県の住民であった者に係るものの提供の求めを受けたときは、これに必要な限度で、全国がん登録データベースを用いて、その提供を行うことができる。この場合においては、第17条第1項ただし書の規定を準用する。
2 厚生労働大臣は、第19条第1項各号に掲げる者から、当該市町村のがん対策の企画立案又は実施に必要ながんに係る調査研究のため、これらの者が同項の規定により提供を受けることができる都道府県がん情報以外の全国がん登録情報であって当該市町村の住民であった者に係るものの提供の求めを受けたときは、これに必要な限度で、全国がん登録データベースを用いて、その提供を行うことができる。この場合においては、第17条第1項ただし書の規定を準用する。
3 厚生労働大臣は、がんに係る調査研究を行う者から二以上の都道府県に係る都道府県がん情報の提供の求めを受けた場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、当該がんに係る調査研究に必要な限度で、全国がん登録データベースを用いて、全国がん登録情報の提供を行うことができる。この場合においては、第17条第1項ただし書の規定を準用する。
一 当該がんに係る調査研究が、がん医療の質の向上等に資するものであること。
二 当該がんに係る調査研究を行う者が、がんに係る調査研究であってがん医療の質の向上等に資するものの実績を相当程度有すること。
三 当該がんに係る調査研究を行う者が、当該提供を受ける全国がん登録情報を取り扱うに当たって、がんに罹患した者の当該がんの罹患又は診療に係る情報に関する秘密(以下「がんの罹患等の秘密」という。)の漏えいの防止その他の当該全国がん登録情報の適切な管理のために必要な措置を講じていること。
四 当該提供の求めを受けた全国がん登録情報に係るがんに罹患した者が生存している場合にあっては、当該がんに係る調査研究を行う者が、当該がんに罹患した者から当該がんに係る調査研究のために当該全国がん登録情報が提供されることについて同意を得ていること。
4 厚生労働大臣は、がんに係る調査研究を行う者から二以上の都道府県に係る都道府県がん情報につき匿名化が行われた情報の提供の求めを受けた場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、当該がんに係る調査研究に必要な限度で、全国がん登録データベースを用いて、全国がん登録情報の匿名化及び当該匿名化を行った情報の提供(当該提供の求めを受けた情報が特定匿名化情報である場合にあっては、その提供)を行うことができる。この場合においては、第17条第1項ただし書の規定を準用する。
一 当該がんに係る調査研究が、がん医療の質の向上等に資するものであること。
二 当該がんに係る調査研究を行う者が、当該提供を受ける全国がん登録情報の匿名化が行われた情報を取り扱うに当たって、当該匿名化が行われた情報について、その漏えい、滅失及び毀損の防止その他の適切な管理のために必要な措置を講じていること。
5 厚生労働大臣は、全国がん登録データベースを用いて、前項の提供の求めを受ける頻度が高いと見込まれる情報について、あらかじめ、全国がん登録情報の匿名化を行い、当該匿名化を行った情報を全国がん登録データベースに記録することができる。
6 厚生労働大臣は、第4項の規定により匿名化を行った情報が、同項の提供の求めを受ける頻度が高いと見込まれる情報であるときは、当該情報を全国がん登録データベースに記録することができる。
7 厚生労働大臣は、第1項から第3項までの規定による提供、第4項の規定による匿名化若しくは提供又は第5項の規定による匿名化を行おうとするときは、あらかじめ、第15条第2項に規定する審議会等の意見を聴かなければならない。
8 都道府県知事は、がんに係る調査研究を行う者から当該都道府県に係る都道府県がん情報の提供の求めを受けた場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、当該がんに係る調査研究に必要な限度で、全国がん登録データベースを用いて、その提供を行うことができる。この場合においては、第17条第1項ただし書の規定を準用する。
一 当該がんに係る調査研究が、がん医療の質の向上等に資するものであること。
二 当該がんに係る調査研究を行う者が、がんに係る調査研究であってがん医療の質の向上等に資するものの実績を相当程度有すること。
三 当該がんに係る調査研究を行う者が、当該提供を受ける都道府県がん情報を取り扱うに当たって、がんの罹患等の秘密の漏えいの防止その他の当該都道府県がん情報の適切な管理のために必要な措置を講じていること。
四 当該提供の求めを受けた都道府県がん情報に係るがんに罹患した者が生存している場合にあっては、当該がんに係る調査研究を行う者が、当該がんに罹患した者から当該がんに係る調査研究のために当該都道府県がん情報が提供されることについて同意を得ていること。
9 都道府県知事は、がんに係る調査研究を行う者から当該都道府県に係る都道府県がん情報につき匿名化が行われた情報の提供の求めを受けた場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、当該がんに係る調査研究に必要な限度で、全国がん登録データベースを用いて、都道府県がん情報の匿名化及び当該匿名化を行った情報の提供(当該提供の求めを受けた情報が都道府県がん情報に係る特定匿名化情報である場合にあっては、その提供)を行うことができる。この場合においては、第17条第1項ただし書の規定を準用する。
一 当該がんに係る調査研究が、がん医療の質の向上等に資するものであること。
二 当該がんに係る調査研究を行う者が、当該提供を受ける都道府県がん情報の匿名化が行われた情報を取り扱うに当たって、当該匿名化が行われた情報について、その漏えい、滅失及び毀損の防止その他の適切な管理のために必要な措置を講じていること。
10 都道府県知事は、第8項の規定による提供又は前項の規定による匿名化若しくは提供を行おうとするときは、あらかじめ、第18条第2項に規定する審議会その他の合議制の機関の意見を聴かなければならない。
第22条 都道府県知事は、当該都道府県のがん対策の企画立案又は実施に必要ながんに係る調査研究に利用するため、次の各号のいずれかに該当する情報と都道府県がん情報の全部又は一部を一体的に記録し、及び保存する必要があると認めるときは、全国がん登録データベースを用いて、一を限り、これらの情報及び第3項の規定により匿名化を行った情報を記録し、及び保存するデータベースを整備することができる。
一 この法律の施行の日前に診断された当該都道府県の住民のがんの罹患、診療、転帰等に関する情報を収集し、及び保存する事業であって、全国がん登録に類するものとして政令で定めるものにより収集されたこれらの情報
二 当該都道府県の区域内の病院等の管理者、市町村その他のがんに係る調査研究における有用性が認められる情報を保有する者として政令で定める者から得られた届出対象情報以外のがんの罹患、診療、転帰等に関する情報
2 都道府県知事は、前項のデータベース(以下この章において「都道府県がんデータベース」という。)を整備しようとするとき又は都道府県がんデータベースに記録し、及び保存する情報の対象範囲を拡大しようとするときは、あらかじめ、第18条第2項に規定する審議会その他の合議制の機関の意見を聴かなければならない。ただし、都道府県がんデータベースに記録し、及び保存しようとする情報が、都道府県におけるがん対策の企画立案又は実施に必要ながんに係る調査研究のために利用されることが想定される情報として政令で定める情報である場合は、この限りでない。
3 都道府県知事は、都道府県がんデータベースにおいて保存する都道府県がん情報について、第15条第1項の規定によりこれに相当する全国がん登録情報の匿名化が行われなければならない期日までに匿名化を行い、又は消去しなければならない。
4 都道府県知事は、前項の規定による匿名化を行おうとするときは、あらかじめ、第18条第2項に規定する審議会その他の合議制の機関の意見を聴かなければならない。
5 都道府県がんデータベースを整備した場合における第18条第1項、第19条第1項、第20条並びに前条第8項及び第9項の規定の適用については、第18条第1項中「全国がん登録データベース」とあるのは「全国がん登録データベース又は第22条第2項に規定する都道府県がんデータベース」と、「特定匿名化情報」とあるのは「特定匿名化情報若しくは同条第3項の規定により匿名化を行った情報」と、第19条第1項中「特定匿名化情報」とあるのは「特定匿名化情報若しくは第22条第3項の規定により匿名化を行った情報」と、「全国がん登録データベース」とあるのは「全国がん登録データベース又は同条第2項に規定する都道府県がんデータベース」と、第20条中「全国がん登録データベース」とあるのは「全国がん登録データベース又は第22条第2項に規定する都道府県がんデータベース」と、前条第8項中「全国がん登録データベース」とあるのは「全国がん登録データベース又は次条第2項に規定する都道府県がんデータベース」と、同条第9項中「全国がん登録データベース」とあるのは「全国がん登録データベース又は次条第2項に規定する都道府県がんデータベース」と、「特定匿名化情報」とあるのは「特定匿名化情報又は同条第3項の規定により匿名化を行った情報」とする。
第4節 権限及び事務の委任
第23条 次に掲げる厚生労働大臣の権限及び事務は、国立研究開発法人国立がん研究センター(以下「国立がん研究センター」という。)に行わせるものとする。
一 第5条第1項、第8条第1項、第9条、第10条、第12条第1項、第13条、第14条並びに第15条第1項及び第2項に規定する権限及び事務
二 第17条の規定による提供に係る権限及び事務(全国がん登録情報の提供の決定及び当該提供を行おうとするときにおける意見の聴取を除く。)、第21条第1項から第4項までに規定する権限及び事務(全国がん登録情報の提供の決定を除く。)並びに同条第5項、第6項及び第7項(同条第1項から第3項までの規定による提供を行おうとするときに係る部分を除く。)に規定する権限及び事務
2 前項の場合においては、第15条第2項中「厚生労働大臣」とあるのは「国立研究開発法人国立がん研究センター」と、「審議会等(国家行政組織法(昭和23年法律第120号)第8条に規定する機関をいう。)で政令で定めるもの」とあるのは「合議制の機関」と、同条第3項中「審議会等」とあるのは「合議制の機関」と、第17条第2項中「厚生労働大臣」とあるのは「国立研究開発法人国立がん研究センター」と、「第15条第2項に規定する審議会等」とあるのは「第23条第2項の規定により読み替えて適用する第15条第2項の合議制の機関」と、第21条第7項中「厚生労働大臣」とあるのは「国立研究開発法人国立がん研究センター」と、「第1項から第3項までの規定による提供、第4項の規定による匿名化若しくは提供又は第5項の規定による匿名化」とあるのは「第4項の規定による匿名化若しくは提供又は第5項の規定による匿名化」と、「第15条第2項に規定する審議会等」とあるのは「第23条第2項の規定により読み替えて適用する第15条第2項の合議制の機関」とする。
第24条 都道府県知事は、次に掲げる当該都道府県知事の権限及び事務を行うのにふさわしい者として政令で定める者に、これらの権限及び事務を行わせることができる。
一 第6条第1項、第8条、第10条第2項、第13条第2項及び第16条に規定する権限及び事務
二 第18条第1項、第19条第1項、第20条並びに第21条第8項及び第9項の規定による提供に係る権限及び事務(当該提供の決定及び第18条第1項第3号の規定により同項第2号に掲げる者に準ずる者を定めるものを除く。)
三 第22条第1項及び第3項に規定する権限及び事務(都道府県がんデータベースの整備に係る決定、都道府県がんデータベースに記録し、及び保存する情報の対象範囲の拡大に係る決定並びに同項の匿名化の方法に係る決定を除く。)
2 前項の規定により第10条第2項又は第13条第2項の事務の委任が行われた場合においては、第10条第1項又は第13条第1項中「関係都道府県知事」とあるのは、「関係都道府県知事から第24条第1項の規定により権限及び事務の委任を受けた者」とする。
第5節 情報の保護等
第25条 厚生労働大臣及び国立がん研究センターは、第1節から第3節までの規定による事務を行うに当たっては、全国がん登録情報等及びその匿名化を行った情報並びに死亡者情報票に記録され、又は記載された情報について、その漏えい、滅失及び毀損の防止その他の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。
2 都道府県知事(都道府県の設置する保健所の長並びに前条第1項の規定により権限及び事務の委任を受けた者を含む。第4項、次条、第28条第6項、第29条第6項及び第39条第1項において同じ。)は、第2節及び第3節の規定による事務を行うに当たっては、都道府県がん情報(当該都道府県の区域内の病院等から届出がされた届出対象情報及び都道府県整理情報のうち、まだ全国がん登録データベースに記録されていない情報を含む。以下「都道府県がん情報等」という。)及びその匿名化を行った情報並びに死亡者情報票に記録され、又は記載された情報について、その漏えい、滅失及び毀損の防止その他の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。
3 市町村長(第11条第1項に規定する指定都市の区長又は総合区長及び同項に規定する市又は特別区の設置する保健所の長を含む。次項、次条、第28条第6項、第29条第6項及び第39条第2項において同じ。)は、第11条第1項及び第2項の規定による事務を行うに当たっては、死亡者情報票に記録され、又は記載される情報について、その漏えい、滅失及び毀損の防止その他の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。
4 第1項の規定は厚生労働大臣又は国立がん研究センターから同項に規定する情報の取扱いに関する事務の委託(二以上の段階にわたる委託を含む。以下この節において同じ。)を受けた者が当該委託に係る業務を行う場合について、第2項の規定は都道府県知事から同項に規定する情報の取扱いに関する事務の委託を受けた者が当該委託に係る業務を行う場合について、前項の規定は市町村長から同項に規定する情報の取扱いに関する事務の委託を受けた者が当該委託に係る業務を行う場合について、それぞれ準用する。
第26条 厚生労働大臣、国立がん研究センター、都道府県知事及び市町村長は、全国がん登録情報等若しくは都道府県がん情報等若しくはこれらの情報の匿名化を行った情報又は死亡者情報票に記録され、若しくは記載された情報について、第2節及び第3節の規定による場合(国立がん研究センター、都道府県知事又は市町村長にあっては、同節の規定によりこれらの情報の提供を受けた場合において、その提供を受けた目的の範囲内でこれらの情報を利用する場合を含む。)を除き、利用し、又は提供してはならない。
第27条 厚生労働省、国立がん研究センター、都道府県(第24条第1項の規定により権限及び事務の委任を受けた者を含む。)及び市町村は、全国がん登録情報等若しくは都道府県がん情報等若しくはこれらの情報の匿名化を行った情報又は死亡者情報票に記録され、若しくは記載された情報について、全国がん登録データベースにおいて保存する場合又は都道府県がんデータベースにおいて保存する場合を除き、第2節及び第3節の規定による利用又は提供(国立がん研究センター、都道府県又は市町村にあっては、同節の規定によりこれらの情報の提供を受けた場合におけるその提供を受けた目的に係るこれらの情報の利用(以下この条において「受領情報の利用」という。)を含む。)に必要な期間(同節の規定による利用(受領情報の利用を含む。)に係る全国がん登録情報又は都道府県がん情報については、政令で定める期間を限度とする。)を超えて保有してはならない。
第28条 第1節から第3節までの規定による全国がん登録情報等の取扱いの事務に従事する厚生労働省の職員若しくは職員であった者又は国立がん研究センターの役員若しくは職員若しくはこれらの職にあった者は、その事務に関して知り得た全国がん登録情報等に関するがんの罹患等の秘密を漏らしてはならない。
2 第15条第2項に規定する審議会等の委員その他の構成員若しくは第23条第2項の規定により読み替えて適用する第15条第2項の合議制の機関の委員その他の構成員又はこれらの者であった者は、第17条第2項若しくは第21条第7項(これらの規定を第23条第2項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)又は第23条第2項の規定により読み替えて適用する第15条第2項の規定により意見を述べる事務に関して知り得た全国がん登録情報に関するがんの罹患等の秘密を漏らしてはならない。
3 第2節及び第3節の規定による都道府県がん情報等の取扱いの事務に従事する都道府県の職員又は職員であった者は、その事務に関して知り得た都道府県がん情報等に関するがんの罹患等の秘密を漏らしてはならない。
4 第18条第2項に規定する審議会その他の合議制の機関の委員その他の構成員又はこれらの者であった者は、同項(同条第1項の規定による利用又は提供を行おうとするときに係る部分に限る。)、第19条第2項、第21条第10項又は第22条第4項の規定により意見を述べる事務に関して知り得た都道府県がん情報に関するがんの罹患等の秘密を漏らしてはならない。
5 第24条第1項の規定により第2節及び第3節の規定による都道府県がん情報等の取扱いの事務の委任があった場合における当該委任に係る事務に従事する者又は従事していた者は、都道府県がん情報等に関するがんの罹患等の秘密その他のその事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
6 厚生労働大臣若しくは国立がん研究センター、都道府県知事又は市町村長から第1節から第3節までの規定による全国がん登録情報等、都道府県がん情報等又は死亡者情報票に記録され、若しくは記載された情報の取扱いに関する事務の委託があった場合における当該委託に係る業務に従事する者又は従事していた者は、全国がん登録情報等又は都道府県がん情報等に関するがんの罹患等の秘密その他のその業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
7 病院等において届出に関する業務に従事する者又は従事していた者は、その業務に関して知り得た届出対象情報に関するがんの罹患等の秘密を漏らしてはならない。
第29条 第1節から第3節までの規定による全国がん登録情報等若しくはその匿名化が行われた情報又は死亡者情報票に記録され、若しくは記載された情報の取扱いの事務に従事する厚生労働省の職員若しくは職員であった者又は国立がん研究センターの役員若しくは職員若しくはこれらの職にあった者は、その事務に関して知り得たこれらの情報をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。
2 第15条第2項に規定する審議会等の委員その他の構成員若しくは第23条第2項の規定により読み替えて適用する第15条第2項の合議制の機関の委員その他の構成員又はこれらの者であった者は、第17条第2項若しくは第21条第7項(これらの規定を第23条第2項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)又は第23条第2項の規定により読み替えて適用する第15条第2項の規定により意見を述べる事務に関して知り得た全国がん登録情報又はその匿名化が行われた情報をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。
3 第2節及び第3節の規定による都道府県がん情報等若しくはその匿名化が行われた情報若しくは死亡者情報票に記録され、若しくは記載された情報の取扱いの事務に従事する都道府県の職員若しくは職員であった者又は第24条第1項の規定により当該事務の委任があった場合における当該委任に係る事務に従事する者若しくは従事していた者は、それぞれその事務に関して知り得たこれらの情報をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。
4 第18条第2項に規定する審議会その他の合議制の機関の委員その他の構成員又はこれらの者であった者は、同項(同条第1項の規定による利用又は提供を行おうとするときに係る部分に限る。)、第19条第2項、第21条第10項又は第22条第4項の規定により意見を述べる事務に関して知り得た都道府県がん情報又はその匿名化が行われた情報をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。
5 第11条第1項及び第2項の規定による死亡者情報票に記録され、又は記載された情報の取扱いの事務に従事する市町村の職員又は職員であった者は、その事務に関して知り得た当該情報をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。
6 第1項の規定は厚生労働大臣又は国立がん研究センターから同項に規定する情報の取扱いに関する事務の委託があった場合における当該委託に係る業務に従事する者又は従事していた者について、第3項の規定は都道府県知事から同項に規定する情報の取扱いに関する事務の委託があった場合における当該委託に係る業務に従事する者又は従事していた者について、前項の規定は市町村長から同項に規定する情報の取扱いに関する事務の委託があった場合における当該委託に係る業務に従事する者又は従事していた者について、それぞれ準用する。
7 病院等において届出に関する業務に従事する者又は従事していた者は、その業務に関して知り得た届出対象情報をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。
第30条 第3節の規定により全国がん登録情報若しくは都道府県がん情報又はこれらの情報の匿名化が行われた情報の提供を受けた者は、当該提供を受けたこれらの情報を取り扱うに当たっては、これらの情報について、その漏えい、滅失及び毀損の防止その他の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。
2 前項の規定は、同項に規定する者から同項に規定する情報の取扱いに関する事務又は業務の委託を受けた者が当該委託に係る業務を行う場合について準用する。
第31条 第3節の規定により全国がん登録情報若しくは都道府県がん情報又はこれらの情報の匿名化が行われた情報の提供を受けた者(国立がん研究センター、都道府県知事(第24条第1項の規定により権限及び事務の委任を受けた者を含む。第42条第1項において同じ。)及び市町村長を除く。次条において同じ。)は、これらの情報について、その提供を受けた目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。
2 前項の規定は、同項に規定する者から同項に規定する情報の取扱いに関する事務又は業務の委託を受けた者が当該委託に係る業務を行う場合について準用する。
第32条 第3節の規定により全国がん登録情報若しくは都道府県がん情報又はこれらの情報の匿名化が行われた情報の提供を受けた者は、これらの情報について、その提供を受けた目的に係る利用に必要な期間(全国がん登録情報又は都道府県がん情報については、政令で定める期間を限度とする。)を超えて保有してはならない。
第33条 第3節の規定により全国がん登録情報若しくは都道府県がん情報の提供を受けた場合におけるこれらの情報の取扱いの事務若しくは業務に従事する者若しくは従事していた者又は当該提供を受けた者からこれらの情報の取扱いに関する事務若しくは業務の委託があった場合における当該委託に係る業務に従事する者若しくは従事していた者は、それぞれその事務又は業務に関して知り得たこれらの情報に関するがんの罹患等の秘密を漏らしてはならない。
第34条 第3節の規定により全国がん登録情報若しくは都道府県がん情報若しくはこれらの情報の匿名化が行われた情報の提供を受けた場合におけるこれらの情報の取扱いの事務若しくは業務に従事する者若しくは従事していた者又は当該提供を受けた者からこれらの情報の取扱いに関する事務若しくは業務の委託があった場合における当該委託に係る業務に従事する者若しくは従事していた者は、それぞれその事務又は業務に関して知り得たこれらの情報をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。
第35条 全国がん登録情報等、都道府県がん情報等及び都道府県がんデータベースに記録された第22条第1項各号に掲げる情報については、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)第4章、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第59号)第4章その他の個人情報の保護に関する法令(条例を含む。)の規定にかかわらず、これらの規定による開示、訂正(追加又は削除を含む。)、利用の停止、消去又は提供の停止を求めることができない。
第36条 厚生労働大臣及び都道府県知事は、この節の規定の施行に必要な限度において、第3節の規定により全国がん登録情報若しくは都道府県がん情報の提供を受けた者(都道府県知事及び市町村長を除く。次条において同じ。)又は当該提供を受けた者からこれらの情報の取扱いに関する事務若しくは業務の委託を受けた者に対し、これらの情報の取扱いに関し報告をさせることができる。
第37条 厚生労働大臣及び都道府県知事は、この節の規定の施行に必要な限度において、第3節の規定により全国がん登録情報又は都道府県がん情報の提供を受けた者に対し、これらの情報の取扱いに関し必要な助言をすることができる。
第38条 厚生労働大臣及び都道府県知事は、前条に規定する者が第30条第1項、第31条第1項又は第32条の規定に違反した場合において個人の権利利益を保護するため必要があると認めるときは、当該者に対し、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべき旨を勧告することができる。
2 厚生労働大臣及び都道府県知事は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において個人の権利利益が不当に害されるおそれがあると認めるときは、当該者に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
3 厚生労働大臣及び都道府県知事は、前二項の規定にかかわらず、第36条に規定する者が第30条、第31条又は第32条の規定に違反した場合において個人の重大な権利利益を害する事実があるため緊急に措置をとる必要があると認めるときは、当該者に対し、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
第6節 雑則
第39条 第2節の規定により都道府県知事が行う事務の処理に要する費用は、都道府県の支弁とする。
2 第11条第1項及び第2項の規定により市町村長が行う事務の処理に要する費用は、市町村の支弁とする。
第40条 国は、政令で定めるところにより、前条の費用の一部を補助するものとする。
2 国は、病院等における届出に必要な体制の整備を図るため、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。
第41条 第21条第3項又は第4項の規定により国立がん研究センターから全国がん登録情報又はその匿名化が行われた情報の提供を受ける者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を国立がん研究センターに納めなければならない。
2 前項の規定により国立がん研究センターに納められた手数料は、国立がん研究センターの収入とする。
3 都道府県は、第21条第8項又は第9項の規定による都道府県がん情報又はその匿名化が行われた情報の提供の事務の一部を第24条第1項の規定により委任する場合であって、地方自治法第227条の規定に基づきこれらの情報の提供に係る手数料を徴収する場合においては、当該委任を受けた者からこれらの情報の提供を受けようとする者に、条例で定めるところにより、当該手数料を当該委任を受けた者へ納めさせ、その収入とすることができる。
第42条 厚生労働大臣は、国立がん研究センター及び都道府県知事に対し、この章の規定の施行の状況について報告を求めることができる。
2 厚生労働大臣は、毎年度、前項の報告その他のこの章の規定の施行の状況に関する事項を取りまとめ、その概要を公表するものとする。
第43条 この章に定めるもののほか、全国がん登録データベースへの記録の方法その他この章の規定の施行に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。
第3章 院内がん登録等の推進
第44条 専門的ながん医療の提供を行う病院その他の地域におけるがん医療の確保について重要な役割を担う病院の開設者及び管理者は、厚生労働大臣が定める指針に即して院内がん登録を実施するよう努めるものとする。
2 国は、前項の院内がん登録の実施に必要な体制の整備を推進するため、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。
3 都道府県は、第1項の院内がん登録の実施に必要な体制の整備を推進するため、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとする。
第45条 国は、がん医療の提供を行う病院及び診療所の協力を得てがん診療情報を収集し、これを分析する体制を整備するために必要な措置を講ずるものとする。
第4章 がん登録等の情報の活用
第46条 国及び都道府県は、全国がん登録及びがん診療情報の収集により得られた情報を利用して得られた知見を、幅広く収集し、当該情報を利用して自ら行ったがんに係る調査研究により得られた知見と併せて、がん対策の充実を図るために活用するものとする。
2 国及び都道府県は、前項に規定する知見に基づき、がん医療の提供を行う病院及び診療所に対し、その提供するがん医療の分析及び評価に資する情報その他のがん医療の質の向上に資する情報を提供するものとする。
3 国及び都道府県は、第1項の情報を利用して作成した統計その他同項に規定する知見について、国民が理解しやすく、かつ、がん患者のがんの治療方法の選択に資する形で公表するよう努めるとともに、これらを活用したがん患者及びその家族その他国民に対する相談支援を推進するために必要な施策を講ずるものとする。
4 市町村は、第19条第1項及び第21条第2項の規定により提供を受けた全国がん登録情報、都道府県がん情報等を活用して、その行うがん検診の質の向上その他のがん対策の充実に努めるものとする。
第47条 がん医療の提供を行う病院及び診療所の管理者は、当該病院及び診療所に係るがん診療情報、第20条の規定により提供を受けた情報、前条第2項の情報等を活用して、がん患者及びその家族に対してがん及びがん医療について適切な情報の提供を行うよう努めるとともに、その提供するがん医療の分析及び評価等を通じたその質の向上に努めるものとする。
第48条 全国がん登録及びがん診療情報の収集により得られた情報の提供を受けた研究者は、その行うがんに係る調査研究を通じて、がん医療の質の向上等に貢献するよう努めるものとする。
第5章 雑則
第49条 国及び都道府県は、がん登録に関する事務又は業務に従事する人材の確保及び資質の向上のため、必要な研修その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
第50条 厚生労働大臣は、次に掲げる場合には、あらかじめ、第15条第2項に規定する審議会等の意見を聴かなければならない。
一 第2条第1項、第15条第1項、第22条第1項第2号及び第2項、第27条並びに第32条の政令の制定又は改廃の立案をしようとする場合
二 第5条第1項第4号から第7号まで、第9号(死亡の原因に関する事項を定める厚生労働省令に係る部分に限る。)及び第10号、第6条第1項第4号から第7号まで及び第9号、第17条第1項第3号並びに第20条(生存確認情報を定める厚生労働省令に係る部分に限る。)の厚生労働省令の制定又は改廃をしようとする場合
第51条 第6条(第3項及び第4項を除く。)、第7条、第8条第1項、第10条第2項(第13条第2項において準用する場合を含む。)及び第11条の規定により都道府県又は市町村が処理することとされている事務は、地方自治法第2条第9項第1号に規定する第1号法定受託事務とする。
第6章 罰則
第52条 第28条第1項から第6項まで又は第33条の規定に違反して全国がん登録情報等又は都道府県がん情報等に関するがんの罹患等の秘密を漏らした者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
第53条 第28条第5項又は第6項の規定に違反して秘密(全国がん登録情報等又は都道府県がん情報等に関するがんの罹患等の秘密を除く。)を漏らした者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第54条 次の各号に掲げる者が、当該各号に定める情報を自己又は第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
一 第29条第1項から第5項までに規定する者 その事務に関して知り得た当該各項に規定する情報
二 第29条第6項に規定する者 その業務に関して知り得た同項において準用する同条第1項、第3項又は第5項に規定する情報
三 第34条に規定する者 その事務又は業務に関して知り得た同条に規定する情報(匿名化が行われていない情報に限る。)
第55条 第28条第7項の規定に違反して届出対象情報に関するがんの罹患等の秘密を漏らした者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第56条 第38条第2項又は第3項の規定による命令に違反した者は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
第57条 第34条に規定する者が、その事務又は業務に関して知り得た同条に規定する情報(匿名化が行われていない情報を除く。)を自己又は第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、50万円以下の罰金に処する。
第58条 第36条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、30万円以下の罰金に処する。
第59条 第52条から第55条まで及び第57条の罪は、日本国外においてこれらの罪を犯した者にも適用する。
第60条 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第56条又は第58条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
2 法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につき法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第3条及び第8条の規定は、公布の日から施行する。
第2条 この法律の施行の日(以下この項及び次条において「施行日」という。)前に開始されたがんに係る調査研究として政令で定めるものが、その規模その他の事情を勘案して、施行日後に、その対象とされている者(施行日前から対象とされている者その他これに準ずる者として政令で定める者に限る。)の第21条第3項第4号又は第8項第4号の同意を得ることが当該がんに係る調査研究の円滑な遂行に支障を及ぼすものと認められる場合として政令で定める場合に該当するものである場合において、当該対象とされている者について、これらの同意に代わる措置として厚生労働大臣が定める指針に従った措置が講じられているときは、当該がんに係る調査研究を行う者が同条第3項又は第8項の規定による提供の求めを行った場合における当該対象とされている者に係る全国がん登録情報又は都道府県がん情報の提供については、同条第3項第4号又は第8項第4号の規定は、適用しない。
2 厚生労働大臣は、前項の政令の制定若しくは改廃の立案をし、又は同項の指針を定め、若しくは変更しようとするときは、あらかじめ、第15条第2項に規定する審議会等の意見を聴かなければならない。
第3条 厚生労働大臣は、次に掲げる場合には、施行日前においても、第15条第2項に規定する審議会等の意見を聴くことができる。
一 第2条第1項、第15条第1項、第22条第1項第2号及び第2項、第27条、第32条並びに前条第1項の政令の制定の立案をしようとするとき。
二 第5条第1項第4号から第7号まで、第9号(死亡の原因に関する事項を定める厚生労働省令に係る部分に限る。)及び第10号、第6条第1項第4号から第7号まで及び第9号、第17条第1項第3号並びに第20条(生存確認情報を定める厚生労働省令に係る部分に限る。)の厚生労働省令の制定をしようとするとき。
三 前条第1項の指針を定めようとするとき。
2 都道府県知事は、第18条第1項第3号の規定により同項第2号に掲げる者に準ずる者を定めようとするときは、施行日前においても、同条第2項に規定する審議会その他の合議制の機関の意見を聴くことができる。
3 市町村長は、第19条第1項第3号の規定により同項第2号に掲げる者に準ずる者を定めようとするときは、施行日前においても、同条第3項に規定する審議会その他の合議制の機関の意見を聴くとともに、都道府県知事に協議することができる。
4 国立がん研究センターは、施行日前においても、第5条第1項の規定による全国がん登録データベースの整備その他のこの法律に基づく全国がん登録の実施に関する事務の実施に必要な準備行為をすることができる。
第4条 政府は、この法律の施行後5年を目途として、この法律の施行の状況等を勘案して必要があると認めるときは、全国がん登録のための情報の収集の方法、全国がん登録情報の利用及び提供の在り方その他がん登録等に関する施策について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
第8条 この附則に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
第1条 この法律は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第1条 この法律は、独立行政法人通則法の一部を改正する法律(平成26年法律第66号。以下「通則法改正法」という。)の施行の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 附則第14条第2項、第18条及び第30条の規定 公布の日
第28条 この法律の施行前にこの法律による改正前のそれぞれの法律(これに基づく命令を含む。)の規定によってした又はすべき処分、手続その他の行為であってこの法律による改正後のそれぞれの法律(これに基づく命令を含む。以下この条において「新法令」という。)に相当の規定があるものは、法律(これに基づく政令を含む。)に別段の定めのあるものを除き、新法令の相当の規定によってした又はすべき処分、手続その他の行為とみなす。
第29条 この法律の施行前にした行為及びこの附則の規定によりなおその効力を有することとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第30条 附則第3条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令(人事院の所掌する事項については、人事院規則)で定める。