人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律
第1章 総則
第1条 この法律は、宇宙基本法(平成20年法律第43号)の基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、我が国における人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に係る許可に関する制度並びに人工衛星等の落下等により生ずる損害の賠償に関する制度を設けることにより、宇宙の開発及び利用に関する諸条約を的確かつ円滑に実施するとともに、公共の安全を確保し、あわせて、当該損害の被害者の保護を図り、もって国民生活の向上及び経済社会の発展に寄与することを目的とする。
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 宇宙の開発及び利用に関する諸条約 月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約(第22条第2号において「宇宙空間探査等条約」という。)、宇宙飛行士の救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体の返還に関する協定、宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約及び宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約をいう。
二 人工衛星 地球を回る軌道若しくはその外に投入し、又は地球以外の天体上に配置して使用する人工の物体をいう。
三 人工衛星等 人工衛星及びその打上げ用ロケットをいう。
四 打上げ施設 人工衛星の打上げ用ロケットを発射する機能を有する施設をいう。
五 人工衛星等の打上げ 自ら又は他の者が管理し、及び運営する打上げ施設を用いて、人工衛星の打上げ用ロケットに人工衛星を搭載した上で、これを発射して加速し、一定の速度及び高度に達した時点で当該人工衛星を分離することをいう。
六 人工衛星管理設備 人工衛星に搭載された無線設備(電磁波を利用して、符号を送り、又は受けるための電気的設備及びこれと電気通信回線で接続した電子計算機をいう。以下この号及び第6条第2号において同じ。)から送信された当該人工衛星の位置、姿勢及び状態を示す信号を直接若しくは他の無線設備を経由して電磁波を利用して受信する方法により把握し、又は当該人工衛星に向けて信号を直接若しくは他の無線設備を経由して送信し、反射される信号を直接若しくは他の無線設備を経由して受信する方法その他の方法によりその位置を把握するとともに、人工衛星の位置、姿勢及び状態を制御するための信号を当該人工衛星に搭載された無線設備に直接又は他の無線設備を経由して電磁波を利用して送信する機能を有する無線設備をいう。
七 人工衛星の管理 人工衛星管理設備を用いて、人工衛星の位置、姿勢及び状態を把握し、これらを制御することをいう。
八 ロケット落下等損害 人工衛星の打上げ用ロケットが発射された後の全部若しくは一部の人工衛星が正常に分離されていない状態における人工衛星等又は全部の人工衛星が正常に分離された後の人工衛星の打上げ用ロケットの落下、衝突又は爆発により、地表若しくは水面又は飛行中の航空機その他の飛しょう体において人の生命、身体又は財産に生じた損害をいう。ただし、当該人工衛星等の打上げを行う者の従業者その他の当該人工衛星等の打上げを行う者と業務上密接な関係を有する者として内閣府令で定める者がその業務上受けた損害を除く。
九 ロケット落下等損害賠償責任保険契約 人工衛星等の打上げを行う者のロケット落下等損害(テロリズムの行為その他その発生を保険契約における財産上の給付の条件とした場合に適正な保険料を算出することが困難なものとして内閣府令で定める事由を主たる原因とする人工衛星等の落下、衝突又は爆発によるロケット落下等損害(第9条第2項及び第40条第1項において「特定ロケット落下等損害」という。)を除く。)の賠償の責任が発生した場合において、これをその者が賠償することにより生ずる損失を保険者(保険業法(平成7年法律第105号)第2条第4項に規定する損害保険会社又は同条第9項に規定する外国損害保険会社等で、責任保険の引受けを行う者に限る。以下同じ。)が埋めることを約し、保険契約者が保険者に保険料を支払うことを約する契約をいう。
十 ロケット落下等損害賠償補償契約 人工衛星等の打上げを行う者のロケット落下等損害の賠償の責任が発生した場合において、ロケット落下等損害賠償責任保険契約その他のロケット落下等損害を賠償するための措置によっては埋めることができないロケット落下等損害をその者が賠償することにより生ずる損失を政府が補償することを約する契約をいう。
十一 人工衛星落下等損害 人工衛星の打上げ用ロケットから正常に分離された人工衛星の落下又は爆発により、地表若しくは水面又は飛行中の航空機その他の飛しょう体において人の生命、身体又は財産に生じた損害をいう。ただし、当該人工衛星の管理を行う者の従業者その他の当該人工衛星の管理を行う者と業務上密接な関係を有する者として内閣府令で定める者がその業務上受けた損害を除く。
第3条 国は、この法律の施行に当たっては、宇宙基本法第16条に規定する民間事業者による宇宙開発利用の促進に関する施策の一環として、我が国の人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関係する産業の技術力及び国際競争力の強化を図るよう適切な配慮をするものとする。
第2章 人工衛星等の打上げに係る許可等
第1節 人工衛星等の打上げに係る許可
第4条 国内に所在し、又は日本国籍を有する船舶若しくは航空機に搭載された打上げ施設を用いて人工衛星等の打上げを行おうとする者は、その都度、内閣総理大臣の許可を受けなければならない。
2 前項の許可を受けようとする者は、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書に内閣府令で定める書類を添えて、これを内閣総理大臣に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所
二 人工衛星の打上げ用ロケットの設計(第13条第1項の型式認定を受けたものにあってはその型式認定番号、人工衛星の打上げ用ロケットの飛行経路及び打上げ施設の周辺の安全を確保する上で我が国と同等の水準にあると認められる人工衛星の打上げ用ロケットの設計の認定の制度を有している国として内閣府令で定めるものの政府による当該認定(以下「外国認定」という。)を受けたものにあっては外国認定を受けた旨)
三 打上げ施設の場所(船舶又は航空機に搭載された打上げ施設にあっては、当該船舶又は航空機の名称又は登録記号)、構造及び設備(第16条第1項の適合認定を受けた打上げ施設にあっては、その適合認定番号)
四 人工衛星等の打上げを予定する時期、人工衛星の打上げ用ロケットの飛行経路並びに当該飛行経路及び打上げ施設の周辺の安全を確保する方法を含む人工衛星等の打上げの方法を定めた計画(以下「ロケット打上げ計画」という。)
五 人工衛星の打上げ用ロケットに搭載される人工衛星の数並びにそれぞれの人工衛星の利用の目的及び方法
六 その他内閣府令で定める事項
第5条 次の各号のいずれかに該当する者は、前条第1項の許可を受けることができない。
一 この法律若しくはこの法律に基づく命令又はこれらに相当する外国(本邦の域外にある国又は地域をいう。以下同じ。)の法令の規定に違反し、罰金以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過しない者
二 第12条の規定により許可を取り消され、その取消しの日から3年を経過しない者
三 心身の故障により人工衛星等の打上げを適正に行うことができない者として内閣府令で定めるもの
四 法人であって、その業務を行う役員又は内閣府令で定める使用人のうちに前三号のいずれかに該当する者があるもの
五 個人であって、その内閣府令で定める使用人のうちに第1号から第3号までのいずれかに該当する者があるもの
第6条 内閣総理大臣は、第4条第1項の許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
一 人工衛星の打上げ用ロケットの設計が、人工衛星の打上げ用ロケットの飛行経路及び打上げ施設の周辺の安全を確保するための人工衛星の打上げ用ロケットの安全に関する基準として内閣府令で定める基準(以下「ロケット安全基準」という。)に適合していること又は第13条第1項の型式認定若しくは外国認定を受けたものであること。
二 打上げ施設が、次のイ及びロに掲げる無線設備を備えていることその他の人工衛星の打上げ用ロケットの飛行経路及び打上げ施設の周辺の安全を確保するための打上げ施設の安全に関する基準として人工衛星の打上げ用ロケットの型式に応じて内閣府令で定める基準(以下「型式別施設安全基準」という。)に適合していること又は第16条第1項の適合認定を受けたものであること。
イ 人工衛星の打上げ用ロケットに搭載された無線設備から送信された当該人工衛星の打上げ用ロケットの位置、姿勢及び状態を示す信号を直接若しくは他の無線設備を経由して電磁波を利用して受信する方法により把握し、又は当該人工衛星の打上げ用ロケットに向けて信号を直接若しくは他の無線設備を経由して送信し、反射される信号を直接若しくは他の無線設備を経由して受信する方法によりその位置を把握する機能を有する無線設備
ロ 人工衛星の打上げ用ロケットが予定された飛行経路を外れた場合その他の異常な事態が発生した場合における当該人工衛星の打上げ用ロケットの破壊その他その飛行を中断する措置(次号及び第16条第2項第4号において「飛行中断措置」という。)を講ずるために必要な信号を当該人工衛星の打上げ用ロケットに搭載された無線設備に直接又は他の無線設備を経由して電磁波を利用して送信する機能を有する無線設備
三 ロケット打上げ計画において、飛行中断措置その他の人工衛星の打上げ用ロケットの飛行経路及び打上げ施設の周辺の安全を確保する方法が定められているほか、その内容が公共の安全を確保する上で適切なものであり、かつ、申請者が当該ロケット打上げ計画を実行する十分な能力を有すること。
四 人工衛星の打上げ用ロケットに搭載される人工衛星の利用の目的及び方法が、基本理念に則したものであり、かつ、宇宙の開発及び利用に関する諸条約の的確かつ円滑な実施及び公共の安全の確保に支障を及ぼすおそれがないものであること。
第7条 第4条第1項の許可を受けた者(以下「打上げ実施者」という。)は、同条第2項第2号から第5号までに掲げる事項を変更しようとするとき(ロケット安全基準の変更があった場合において当該許可に係る人工衛星の打上げ用ロケットの設計がロケット安全基準に適合しなくなったとき及び型式別施設安全基準に変更があった場合において当該許可に係る打上げ施設が型式別施設安全基準に適合しなくなったときを含む。)は、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣の許可を受けなければならない。ただし、内閣府令で定める軽微な変更については、この限りでない。
2 打上げ実施者は、第4条第2項第1号若しくは第6号に掲げる事項に変更があったとき又は前項ただし書の内閣府令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。
3 前条の規定は、第1項の許可について準用する。
第8条 打上げ実施者は、人工衛星等の打上げを行うに当たっては、当該人工衛星等の打上げに係る人工衛星の打上げ用ロケットを第4条第1項の許可に係る設計に合致するようにしなければならない。
2 打上げ実施者は、人工衛星等の打上げを行うに当たっては、災害その他やむを得ない事由のある場合を除くほか、第4条第1項の許可に係るロケット打上げ計画の定めるところに従わなければならない。
第9条 打上げ実施者は、損害賠償担保措置を講じていなければ、第4条第1項の許可を受けた人工衛星等の打上げを行ってはならない。
2 前項に規定する「損害賠償担保措置」とは、ロケット落下等損害賠償責任保険契約及びロケット落下等損害賠償補償契約(特定ロケット落下等損害に係るものに限る。)の締結若しくは供託であって、その措置により、人工衛星の打上げ用ロケットの設計、打上げ施設の場所その他の事情を勘案し、ロケット落下等損害の被害者の保護を図る観点から適切なものとして内閣府令で定める金額(第40条第1項及び第2項において「賠償措置額」という。)をロケット落下等損害の賠償に充てることができるものとして内閣総理大臣の承認を受けたもの又はこれらに相当する措置であって内閣総理大臣の承認を受けたもの(同条第2項において「相当措置」という。)をいう。
第10条 打上げ実施者が第4条第1項の許可を受けた人工衛星等の打上げに係る事業の譲渡を行う場合において、譲渡人及び譲受人があらかじめ当該譲渡及び譲受けについて内閣府令で定めるところにより内閣総理大臣の認可を受けたときは、譲受人は、打上げ実施者のこの法律の規定による地位を承継する。
2 打上げ実施者である法人が合併により消滅することとなる場合において、あらかじめ当該合併について内閣府令で定めるところにより内閣総理大臣の認可を受けたときは、合併後存続する法人又は合併により設立された法人は、打上げ実施者のこの法律の規定による地位を承継する。
3 打上げ実施者である法人が分割により第4条第1項の許可を受けた人工衛星等の打上げに係る事業を承継させる場合において、あらかじめ当該分割について内閣府令で定めるところにより内閣総理大臣の認可を受けたときは、分割により当該事業を承継した法人は、打上げ実施者のこの法律の規定による地位を承継する。
4 第5条及び第6条(第3号(ロケット打上げ計画を実行する能力に係る部分に限る。)に係る部分に限る。)の規定は、前三項の認可について準用する。
5 打上げ実施者が第4条第1項の許可を受けた人工衛星等の打上げに係る事業の譲渡を行い、又は打上げ実施者である法人が合併により消滅することとなり、若しくは分割により当該事業を承継させる場合において、第1項から第3項までの認可をしない旨の処分があったとき(これらの認可の申請がない場合にあっては、当該事業の譲渡、合併又は分割があったとき)は、同条第1項の許可は、その効力を失う。
第11条 前条第5項の規定によるほか、打上げ実施者が次の各号のいずれかに該当することとなったときは、第4条第1項の許可は、その効力を失う。この場合において、当該各号に定める者は、当該各号に該当することとなった日から30日以内に、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。
一 死亡したとき その相続人
二 法人が破産手続開始の決定により解散したとき その破産管財人
三 法人が合併及び破産手続開始の決定以外の事由により解散したとき その清算人
四 人工衛星等の打上げを終えたとき 打上げ実施者であった個人又は打上げ実施者であった法人を代表する役員
第12条 内閣総理大臣は、打上げ実施者が次の各号のいずれかに該当するときは、第4条第1項の許可を取り消すことができる。
一 偽りその他不正の手段により第4条第1項若しくは第7条第1項の許可又は第10条第1項から第3項までの認可を受けたとき。
二 第5条第1号又は第3号から第5号までのいずれかに該当することとなったとき。
三 その者の行う人工衛星等の打上げに用いる人工衛星の打上げ用ロケットの設計がロケット安全基準に適合しなくなったとき。
四 その者の行う人工衛星等の打上げに用いる打上げ施設が型式別施設安全基準に適合しなくなったとき。
五 第7条第1項の規定により許可を受けなければならない事項を同項の許可を受けないで変更したとき。
六 第8条の規定に違反していると認めるとき。
七 第34条第1項の規定により第4条第1項若しくは第7条第1項の許可又は第10条第1項から第3項までの認可に付された条件に違反したとき。
第2節 人工衛星の打上げ用ロケットの型式認定
第13条 内閣総理大臣は、申請により、人工衛星の打上げ用ロケットの設計について型式認定を行う。
2 前項の型式認定を受けようとする者は、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書に人工衛星の打上げ用ロケットの設計がロケット安全基準に適合していることを証する書類その他内閣府令で定める書類を添えて、これを内閣総理大臣に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所
二 人工衛星の打上げ用ロケットの設計
三 その他内閣府令で定める事項
3 内閣総理大臣は、第1項の申請があったときは、その申請に係る人工衛星の打上げ用ロケットの設計がロケット安全基準に適合していると認めるときは、同項の型式認定をしなければならない。
4 第1項の型式認定は、申請者に型式認定番号が付された型式認定書を交付することによって行う。
第14条 前条第1項の型式認定を受けた者は、同条第2項第2号に掲げる事項を変更しようとするとき(ロケット安全基準の変更があった場合において、当該型式認定を受けた人工衛星の打上げ用ロケットの設計がロケット安全基準に適合しなくなったときを含む。)は、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣の認定を受けなければならない。ただし、内閣府令で定める軽微な変更については、この限りでない。
2 前条第1項の型式認定を受けた者は、同条第2項第1号若しくは第3号に掲げる事項に変更があったとき又は前項ただし書の内閣府令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。
3 前条第3項の規定は、第1項の認定について準用する。
第15条 内閣総理大臣は、第13条第1項の型式認定を受けた者が次の各号のいずれかに該当するときは、その型式認定を取り消すことができる。
一 人工衛星の打上げ用ロケットの設計がロケット安全基準に適合しなくなったとき。
二 第33条第1項の規定による命令に違反したとき。
2 第13条第1項の型式認定を受けた者は、前項の規定により当該型式認定が取り消されたときは、遅滞なく、型式認定書を内閣総理大臣に返納しなければならない。
第3節 打上げ施設の適合認定
第16条 内閣総理大臣は、申請により、国内に所在し、又は日本国籍を有する船舶若しくは航空機に搭載された打上げ施設について、これを用いて行う人工衛星等の打上げに係る人工衛星の打上げ用ロケットの型式(その設計が第13条第1項の型式認定又は外国認定を受けたものに限る。)ごとに、適合認定を行う。
2 前項の適合認定を受けようとする者は、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書に打上げ施設が型式別施設安全基準に適合していることを証する書類その他内閣府令で定める書類を添えて、これを内閣総理大臣に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所
二 打上げ施設の場所(船舶又は航空機に搭載された打上げ施設にあっては、当該船舶又は航空機の名称又は登録記号)、構造及び設備
三 第13条第1項の型式認定に係る型式認定番号又は外国認定を受けた旨
四 飛行中断措置その他の人工衛星の打上げ用ロケットの飛行経路及び打上げ施設の周辺の安全を確保する方法
五 その他内閣府令で定める事項
3 内閣総理大臣は、第1項の申請があったときは、その申請に係る打上げ施設が型式別施設安全基準に適合していると認めるときは、同項の適合認定をしなければならない。
4 第1項の適合認定は、申請者に適合認定番号が付された打上げ施設認定書を交付することによって行う。
第17条 前条第1項の適合認定を受けた者は、同条第2項第2号又は第4号に掲げる事項を変更しようとするとき(型式別施設安全基準の変更があった場合において、当該適合認定を受けた打上げ施設が型式別施設安全基準に適合しなくなったときを含む。)は、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣の認定を受けなければならない。ただし、内閣府令で定める軽微な変更については、この限りでない。
2 前条第1項の適合認定を受けた者は、同条第2項第1号若しくは第5号に掲げる事項に変更があったとき又は前項ただし書の内閣府令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。
3 前条第3項の規定は、第1項の認定について準用する。
第18条 内閣総理大臣は、第16条第1項の適合認定を受けた者が次の各号のいずれかに該当するときは、その適合認定を取り消すことができる。
一 打上げ施設が型式別施設安全基準に適合しなくなったとき。
二 第33条第2項の規定による命令に違反したとき。
2 第16条第1項の適合認定を受けた者は、前項の規定により当該適合認定が取り消されたときは、遅滞なく、打上げ施設認定書を内閣総理大臣に返納しなければならない。
第4節 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構による申請手続の特例
第19条 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下「機構」という。)が、その行った人工衛星の打上げ用ロケットの設計について第13条第1項の型式認定の申請を行うときは、同条第2項の規定にかかわらず、当該申請に係る記載事項又は添付書類の一部を省略する手続その他の内閣府令で定める簡略化された手続によることができる。
2 機構が、その管理し、及び運営する打上げ施設について第16条第1項の適合認定の申請を行うときは、同条第2項の規定にかかわらず、当該申請に係る記載事項又は添付書類の一部を省略する手続その他の内閣府令で定める簡略化された手続によることができる。
第3章 人工衛星の管理に係る許可等
第20条 国内に所在する人工衛星管理設備を用いて人工衛星の管理を行おうとする者は、人工衛星ごとに、内閣総理大臣の許可を受けなければならない。
2 前項の許可を受けようとする者は、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書に内閣府令で定める書類を添えて、これを内閣総理大臣に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所
二 人工衛星管理設備の場所
三 人工衛星を地球を回る軌道に投入して使用する場合には、その軌道
四 人工衛星の利用の目的及び方法
五 人工衛星の構造
六 人工衛星の管理の終了に伴い講ずる措置(以下「終了措置」という。)の内容
七 前号に掲げるもののほか、人工衛星の管理の方法を定めた計画(以下「管理計画」という。)
八 申請者が個人である場合には、申請者が死亡したときにその者に代わって人工衛星の管理を行う者(以下「死亡時代理人」という。)の氏名又は名称及び住所
九 その他内閣府令で定める事項
第21条 次の各号のいずれかに該当する者は、前条第1項の許可を受けることができない。
一 この法律若しくはこの法律に基づく命令又はこれらに相当する外国の法令の規定に違反し、罰金以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過しない者
二 第30条第1項の規定により許可を取り消され、その取消しの日から3年を経過しない者
三 心身の故障により人工衛星の管理を適正に行うことができない者として内閣府令で定めるもの
四 法人であって、その業務を行う役員又は内閣府令で定める使用人のうちに前三号のいずれかに該当する者があるもの
五 個人であって、その内閣府令で定める使用人のうちに第1号から第3号までのいずれかに該当する者があるもの
六 個人であって、その死亡時代理人が前各号のいずれかに該当するもの
第22条 内閣総理大臣は、第20条第1項の許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
一 人工衛星の利用の目的及び方法が、基本理念に則したものであり、かつ、宇宙の開発及び利用に関する諸条約の的確かつ円滑な実施及び公共の安全の確保に支障を及ぼすおそれがないものであること。
二 人工衛星の構造が、その人工衛星を構成する機器及び部品の飛散を防ぐ仕組みが講じられていることその他の宇宙空間探査等条約第9条に規定する月その他の天体を含む宇宙空間の有害な汚染並びにその平和的な探査及び利用における他国の活動に対する潜在的に有害な干渉(次号及び第4号ニにおいて「宇宙空間の有害な汚染等」という。)の防止並びに公共の安全の確保に支障を及ぼすおそれがないものとして内閣府令で定める基準に適合するものであること。
三 管理計画において、他の人工衛星との衝突を避けるための措置その他の宇宙空間の有害な汚染等を防止するために必要なものとして内閣府令で定める措置及び終了措置を講ずることとされており、かつ、申請者(個人にあっては、死亡時代理人を含む。)が当該管理計画を実行する十分な能力を有すること。
四 終了措置の内容が次のイからニまでのいずれかに該当するものであること。
イ 人工衛星の位置、姿勢及び状態を制御することにより、当該人工衛星の高度を下げて空中で燃焼させること(これを構成する機器の一部を燃焼させることなく地表又は水面に落下させて回収することを含む。)であって、当該人工衛星の飛行経路及び当該機器の一部の着地又は着水が予想される地点の周辺の安全を確保して行われるもの
ロ 人工衛星の位置、姿勢及び状態を制御することにより、当該人工衛星の高度を上げて時の経過により高度が下がることのない地球を回る軌道に投入することであって、他の人工衛星の管理に支障を及ぼすおそれがないもの
ハ 人工衛星の位置、姿勢及び状態を制御することにより、当該人工衛星を地球以外の天体を回る軌道に投入し、又は当該天体に落下させることであって、当該天体の環境を著しく悪化させるおそれがないもの
ニ イからハまでに掲げる措置を講ずることができない場合において、誤作動及び爆発の防止その他の宇宙空間の有害な汚染等を防止するために必要なものとして内閣府令で定める措置を講じ、並びに人工衛星の位置、姿勢及び状態を内閣総理大臣に通知した上で、その制御をやめること。
第23条 第20条第1項の許可を受けた者(以下「人工衛星管理者」という。)は、同条第2項第4号から第8号までに掲げる事項を変更しようとするときは、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣の許可を受けなければならない。ただし、内閣府令で定める軽微な変更については、この限りでない。
2 人工衛星管理者は、第20条第2項第1号から第3号まで若しくは第9号に掲げる事項に変更があったとき又は前項ただし書の内閣府令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。
3 前条の規定は、第1項の許可について準用する。
第24条 人工衛星管理者は、人工衛星の管理を行うに当たっては、災害その他やむを得ない事由のある場合を除くほか、第20条第1項の許可に係る管理計画の定めるところに従わなければならない。
第25条 人工衛星管理者は、第20条第1項の許可に係る人工衛星の他の物体との衝突その他の事故の発生により、同項の許可に係る終了措置を講ずることなく人工衛星の管理ができなくなり、かつ、回復する見込みがないときは、内閣府令で定めるところにより、速やかに、その旨、当該事故の状況及び当該事故の発生後の人工衛星の位置の特定に資するものとして内閣府令で定める事項を内閣総理大臣に届け出なければならない。この場合において、同項の許可は、その効力を失う。
第26条 人工衛星管理者が国内に所在する人工衛星管理設備を用いて人工衛星の管理を行おうとする者に第20条第1項の許可を受けた人工衛星の管理に係る事業の譲渡を行う場合において、譲渡人及び譲受人があらかじめ当該譲渡及び譲受けについて内閣府令で定めるところにより内閣総理大臣の認可を受けたときは、譲受人は、人工衛星管理者のこの法律の規定による地位を承継する。
2 人工衛星管理者が、国内に所在する人工衛星管理設備によらずに人工衛星の管理を行おうとする者に第20条第1項の許可を受けた人工衛星の管理に係る事業の譲渡を行うときは、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ、内閣総理大臣にその旨を届け出なければならない。
3 人工衛星管理者である法人が合併により消滅することとなる場合において、あらかじめ当該合併について内閣府令で定めるところにより内閣総理大臣の認可を受けたときは、合併後存続する法人又は合併により設立された法人は、人工衛星管理者のこの法律の規定による地位を承継する。
4 人工衛星管理者である法人が分割により第20条第1項の許可を受けた人工衛星の管理に係る事業を承継させる場合において、あらかじめ当該分割について内閣府令で定めるところにより内閣総理大臣の認可を受けたときは、分割により当該事業を承継した法人は、人工衛星管理者のこの法律の規定による地位を承継する。
5 第21条及び第22条(第3号(管理計画を実行する能力に係る部分に限る。)に係る部分に限る。)の規定は、第1項及び前二項の認可について準用する。
6 人工衛星管理者が第20条第1項の許可を受けた人工衛星の管理に係る事業の譲渡を行い、又は人工衛星管理者である法人が合併により消滅することとなり、若しくは分割により当該事業を承継させる場合において、第1項、第3項又は第4項の認可をしない旨の処分があったとき(これらの認可の申請がない場合にあっては、当該事業の譲渡、合併又は分割があったとき)は、同条第1項の許可は、その効力を失うものとし、その譲受人(第2項に規定する事業の譲渡に係る譲受人を除く。)、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人又は分割により当該事業を承継した法人は、当該処分があった日(これらの認可の申請がない場合にあっては、当該事業の譲渡、合併又は分割の日)から120日以内に、同条第1項の許可に係る終了措置を講じなければならない。この場合において、当該終了措置が完了するまでの間(前条に規定する場合にあっては、同条の規定による届出があるまでの間)は、これらの者を人工衛星管理者とみなして、第24条、前条前段、第31条、第32条及び第33条第3項の規定(これらの規定に係る罰則を含む。)を適用する。
第27条 人工衛星管理者が死亡したときは、相続人は、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。
2 人工衛星管理者が死亡したときは、第20条第1項の許可は、その効力を失うものとし、その死亡時代理人は、当該人工衛星の管理に係る事業の譲渡について前条第1項の認可を受けた場合を除き、その死亡の日から120日以内に、第20条第1項の許可に係る終了措置を講じなければならない。この場合において、当該事業の譲渡が行われ、又は当該終了措置が完了するまでの間(第25条に規定する場合にあっては、同条の規定による届出があるまでの間)は、その死亡時代理人を人工衛星管理者とみなして、第24条、第25条前段、前条第1項及び第5項、第31条、第32条並びに第33条第3項の規定(これらの規定に係る罰則を含む。)を適用する。
第28条 人工衛星管理者は、第20条第1項の許可に係る管理計画の定めるところにより人工衛星の管理を終了しようとするときは、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を内閣総理大臣に届け出るとともに、同項の許可に係る終了措置を講じなければならない。
2 前項の規定により終了措置が講じられたときは、第20条第1項の許可は、その効力を失う。
第29条 人工衛星管理者である法人が合併以外の事由により解散したときは、その清算人又は破産管財人は、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。
2 人工衛星管理者である法人が合併以外の事由により解散したときは、第20条第1項の許可は、その効力を失うものとし、その清算法人(清算中若しくは特別清算中の法人又は破産手続開始後の法人をいう。以下この項において同じ。)は、当該人工衛星の管理に係る事業の譲渡について第26条第1項の認可を受けた場合を除き、その解散の日から120日以内に、第20条第1項の許可に係る終了措置を講じなければならない。この場合において、当該事業の譲渡が行われ、又は当該終了措置が完了するまでの間(第25条に規定する場合にあっては、同条の規定による届出があるまでの間)は、その清算法人を人工衛星管理者とみなして、第24条、第25条前段、第26条第1項及び第5項、第31条、第32条並びに第33条第3項の規定(これらの規定に係る罰則を含む。)を適用する。
第30条 内閣総理大臣は、人工衛星管理者が次の各号のいずれかに該当するときは、第20条第1項の許可を取り消すことができる。
一 偽りその他不正の手段により第20条第1項若しくは第23条第1項の許可又は第26条第1項、第3項若しくは第4項の認可を受けたとき。
二 第21条第1号又は第3号から第6号までのいずれかに該当することとなったとき。
三 第23条第1項の規定により許可を受けなければならない事項を同項の許可を受けないで変更したとき。
四 第33条第3項の規定による命令に違反したとき。
五 第34条第1項の規定により第20条第1項若しくは第23条第1項の許可又は第26条第1項、第3項若しくは第4項の認可に付された条件に違反したとき。
2 人工衛星管理者が前項の規定により第20条第1項の許可を取り消されたときは、当該人工衛星の管理に係る事業の譲渡について第26条第1項の認可を受けた場合を除き、その取消しの日から120日以内に、第20条第1項の許可に係る終了措置を講じなければならない。この場合において、当該事業の譲渡が行われ、又は当該終了措置が完了するまでの間(第25条に規定する場合にあっては、同条の規定による届出があるまでの間)は、その者を人工衛星管理者とみなして、第24条、第25条前段、第26条第1項及び第5項、次条、第32条並びに第33条第3項の規定(これらの規定に係る罰則を含む。)を適用する。
第4章 内閣総理大臣による監督
第31条 内閣総理大臣は、この法律の施行に必要な限度において、打上げ実施者、第13条第1項の型式認定を受けた者、第16条第1項の適合認定を受けた者若しくは人工衛星管理者に対し必要な報告を求め、又はその職員に、これらの者の事務所その他の事業所に立ち入り、これらの者の帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2 前項の規定による立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
3 第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第32条 内閣総理大臣は、基本理念にのっとり、打上げ実施者、第13条第1項の型式認定を受けた者、第16条第1項の適合認定を受けた者又は人工衛星管理者に対し、宇宙の開発及び利用に関する諸条約の的確かつ円滑な実施及び公共の安全の確保を図るため、必要な指導、助言及び勧告をすることができる。
第33条 内閣総理大臣は、第13条第1項の型式認定を受けた人工衛星の打上げ用ロケットの設計がロケット安全基準に適合せず、又はロケット安全基準に適合しなくなるおそれがあると認めるときは、当該型式認定を受けた者に対し、ロケット安全基準に適合させるため、又はロケット安全基準に適合しなくなるおそれをなくするために必要な設計の変更を命ずることができる。
2 内閣総理大臣は、第16条第1項の適合認定を受けた打上げ施設が型式別施設安全基準に適合せず、又は型式別施設安全基準に適合しなくなるおそれがあると認めるときは、当該適合認定を受けた者に対し、型式別施設安全基準に適合させるため、又は型式別施設安全基準に適合しなくなるおそれをなくするために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
3 内閣総理大臣は、人工衛星管理者が第24条の規定に違反していると認めるときは、当該人工衛星管理者に対し、当該違反を是正するため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
第34条 第4条第1項、第7条第1項、第20条第1項若しくは第23条第1項の許可又は第10条第1項から第3項まで若しくは第26条第1項、第3項若しくは第4項の認可には、条件を付し、及びこれを変更することができる。
2 前項の条件は、許可又は認可に係る事項の確実な実施を図るため必要な最小限度のものに限り、かつ、許可又は認可を受ける者に不当な義務を課することとなるものであってはならない。
第5章 ロケット落下等損害の賠償
第1節 ロケット落下等損害賠償責任
第35条 国内に所在し、又は日本国籍を有する船舶若しくは航空機に搭載された打上げ施設を用いて人工衛星等の打上げを行う者は、当該人工衛星等の打上げに伴いロケット落下等損害を与えたときは、その損害を賠償する責任を負う。
第36条 前条の場合において、同条の規定により損害を賠償する責任を負うべき人工衛星等の打上げを行う者以外の者は、その損害を賠償する責任を負わない。
2 ロケット落下等損害については、製造物責任法(平成6年法律第85号)の規定は、適用しない。
3 第1項の規定は、原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号)の適用を排除するものと解してはならない。
第37条 前二条の規定にかかわらず、ロケット落下等損害の発生に関して天災その他の不可抗力が競合したときは、裁判所は、損害賠償の責任及び額を定めるについて、これをしん酌することができる。
第38条 第35条の場合において、他にその損害の発生の原因について責任を負うべき者があるときは、同条の規定により損害を賠償した者は、その者に対して求償権を有する。ただし、当該責任を負うべき者が当該人工衛星等の打上げの用に供された資材その他の物品又は役務の提供をした者(当該人工衛星等の打上げの用に供された打上げ施設を管理し、及び運営する者を除く。)であるときは、当該損害がその者又はその者の従業者の故意により生じたものである場合に限り、その者に対して求償権を有する。
2 前項の規定は、求償権に関し書面による特約をすることを妨げない。
第2節 ロケット落下等損害賠償責任保険契約
第39条 ロケット落下等損害の被害者は、その損害賠償請求権に関し、ロケット落下等損害賠償責任保険契約の保険金について、他の債権者に先立って弁済を受ける権利を有する。
2 被保険者は、ロケット落下等損害の被害者に対する損害賠償額について、自己が支払った限度又は当該被害者の承諾があった限度においてのみ、保険者に対して保険金の支払を請求することができる。
3 ロケット落下等損害賠償責任保険契約の保険金請求権は、これを譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。ただし、ロケット落下等損害の被害者がその損害賠償請求権に関し差し押さえる場合は、この限りでない。
第3節 ロケット落下等損害賠償補償契約
第40条 政府は、打上げ実施者を相手方として、打上げ実施者の特定ロケット落下等損害の賠償の責任が発生した場合において、これを打上げ実施者が賠償することにより生ずる損失を当該特定ロケット落下等損害の賠償に充てられる第9条第2項に規定する損害賠償担保措置(以下単に「損害賠償担保措置」という。)の賠償措置額に相当する金額を超えない範囲内で政府が補償することを約するロケット落下等損害賠償補償契約を締結することができる。
2 前項に定めるもののほか、政府は、打上げ実施者を相手方として、打上げ実施者のロケット落下等損害の賠償の責任が発生した場合において、ロケット落下等損害賠償責任保険契約、同項のロケット落下等損害賠償補償契約その他のロケット落下等損害を賠償するための措置によっては埋めることができないロケット落下等損害を打上げ実施者が賠償することにより生ずる損失を、我が国の人工衛星等の打上げに関係する産業の国際競争力の強化の観点から措置することが適当なものとして内閣府令で定める金額から当該打上げ実施者のロケット落下等損害の賠償に充てられる損害賠償担保措置の賠償措置額に相当する金額(当該ロケット落下等損害について相当措置が講じられている場合にあっては、当該賠償措置額に相当する金額又は当該相当措置により当該ロケット落下等損害の賠償に充てることができる金額のいずれか多い金額)を控除した金額を超えない範囲内で政府が補償することを約するロケット落下等損害賠償補償契約を締結することができる。
3 前条の規定は、ロケット落下等損害賠償補償契約に基づく補償金について準用する。
第41条 ロケット落下等損害賠償補償契約の期間は、その締結の時から当該ロケット落下等損害賠償補償契約に係る人工衛星等の打上げを終える時までとする。
第42条 政府がロケット落下等損害賠償補償契約により補償する金額は、当該ロケット落下等損害賠償補償契約の期間内における人工衛星等の打上げにより与えたロケット落下等損害を打上げ実施者が賠償することにより生ずる損失について当該ロケット落下等損害賠償補償契約に係る契約金額までとする。
第43条 政府は、一会計年度内に締結するロケット落下等損害賠償補償契約に係る契約金額の合計額が会計年度ごとに国会の議決を経た金額を超えない範囲内で、ロケット落下等損害賠償補償契約を締結するものとする。
第44条 補償金の支払を受ける権利は、これを行使することができる時から3年を経過したときは、時効によって消滅する。
第45条 政府は、ロケット落下等損害賠償補償契約により補償した場合において、当該ロケット落下等損害賠償補償契約の相手方である打上げ実施者が第三者に対して求償権を有するときは、次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額を限度として当該求償権を取得する。
一 政府が補償した金額
二 当該求償権の金額
第46条 政府は、ロケット落下等損害賠償補償契約に基づき補償金を支払った場合において、当該ロケット落下等損害賠償補償契約の相手方である打上げ実施者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該打上げ実施者から、政令で定めるところにより、その返還をさせるものとする。
一 第8条の規定に違反して人工衛星等の打上げを行ったこと。
二 人工衛星等の打上げを行った際、第12条第1号又は第5号に該当していたこと。
第47条 この節に規定する政府の業務は、内閣総理大臣が管掌する。
2 内閣総理大臣は、ロケット落下等損害賠償補償契約を締結しようとするときは、あらかじめ、財務大臣に協議しなければならない。
第48条 政府は、政令で定めるところにより、ロケット落下等損害賠償補償契約に基づく業務の一部を保険者に委託することができる。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による委託をしたときは、委託を受けた者の名称その他内閣府令で定める事項を告示しなければならない。
第4節 供託
第49条 損害賠償担保措置としての供託は、打上げ実施者の主たる事務所(国内に事務所がない場合にあっては、第4条第1項の許可に係る打上げ施設の場所(船舶に搭載された打上げ施設にあっては当該船舶の船籍港の所在地、航空機に搭載された打上げ施設にあっては当該航空機の定置場の所在地))の最寄りの法務局又は地方法務局に、金銭又は内閣府令で定める有価証券(社債、株式等の振替に関する法律(平成13年法律第75号)第278条第1項に規定する振替債を含む。次条及び第51条において同じ。)によりするものとする。
第50条 ロケット落下等損害の被害者は、その損害賠償請求権に関し、前条の規定により打上げ実施者が供託した金銭又は有価証券について、他の債権者に先立って弁済を受ける権利を有する。
第51条 打上げ実施者は、次に掲げる場合においては、内閣総理大臣の承認を受けて、第49条の規定により供託した金銭又は有価証券を取り戻すことができる。
一 人工衛星等の打上げを終え、かつ、ロケット落下等損害を与えないことが明らかとなったとき。
二 ロケット落下等損害が発生し、その損害の賠償を終えたとき。
三 供託に代えて他の損害賠償担保措置を講じたとき。
第52条 この節に定めるもののほか、供託に関する事項は、内閣府令・法務省令で定める。
第6章 人工衛星落下等損害の賠償
第53条 国内に所在する人工衛星管理設備を用いて人工衛星の管理を行う者は、当該人工衛星の管理に伴い人工衛星落下等損害を与えたときは、その損害を賠償する責任を負う。
第54条 前条の規定にかかわらず、人工衛星落下等損害の発生に関して天災その他の不可抗力が競合したときは、裁判所は、損害賠償の責任及び額を定めるについて、これをしん酌することができる。
第7章 雑則
第55条 内閣総理大臣は、第4条第2項第2号、第6条第1号若しくは第2号又は第22条第2号若しくは第3号の内閣府令を制定し、又は改廃しようとするときは、あらかじめ、宇宙政策委員会の意見を聴かなければならない。
第56条 内閣総理大臣は、第9条第2項又は第40条第2項の内閣府令を制定し、又は改廃しようとするときは、あらかじめ、財務大臣に協議しなければならない。
第57条 国が行う人工衛星等の打上げについては、第4条第1項の規定は、適用しない。
2 国が行う人工衛星の管理については、第20条第1項の規定は、適用しない。
第58条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
第59条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、内閣府令で定める。
第8章 罰則
第60条 次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第4条第1項の規定に違反して人工衛星等の打上げを行った者
二 偽りその他不正の手段により第4条第1項、第7条第1項、第20条第1項若しくは第23条第1項の許可、第10条第1項から第3項まで若しくは第26条第1項、第3項若しくは第4項の認可、第13条第1項の型式認定、第14条第1項若しくは第17条第1項の認定又は第16条第1項の適合認定を受けた者
三 第7条第1項の規定に違反して第4条第2項第2号から第5号までに掲げる事項を変更した者
四 第20条第1項の規定に違反して人工衛星の管理を行った者
五 第23条第1項の規定に違反して第20条第2項第4号から第8号までに掲げる事項を変更した者
六 第33条第3項の規定による命令に違反した者
第61条 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第8条又は第9条第1項の規定に違反して人工衛星等の打上げを行った者
二 第26条第6項、第27条第2項、第28条第1項、第29条第2項又は第30条第2項の規定に違反して第20条第1項の許可に係る終了措置を講じなかった者
第62条 次の各号のいずれかに該当する者は、100万円以下の罰金に処する。
一 第14条第1項の規定に違反して第13条第2項第2号に掲げる事項を変更した者
二 第17条第1項の規定に違反して第16条第2項第2号又は第4号に掲げる事項を変更した者
三 第31条第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者
四 第33条第1項又は第2項の規定による命令に違反した者
第63条 次の各号のいずれかに該当する者は、50万円以下の罰金に処する。
一 第7条第2項、第14条第2項、第17条第2項、第23条第2項、第25条、第26条第2項又は第28条第1項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第15条第2項の規定に違反して型式認定書を返納しなかった者
三 第18条第2項の規定に違反して打上げ施設認定書を返納しなかった者
第64条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第60条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
第65条 第11条、第27条第1項又は第29条第1項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、10万円以下の過料に処する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 附則第3条及び第10条の規定 公布の日
二 次条の規定 公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日
第2条 第4条第1項又は第20条第1項の許可を受けようとする者は、この法律の施行前においても、第4条第2項又は第20条第2項の規定の例により、その申請を行うことができる。
2 第13条第1項の型式認定又は第16条第1項の適合認定を受けようとする者(機構を除く。)は、この法律の施行前においても、第13条第2項又は第16条第2項の規定の例により、その申請を行うことができる。
3 機構は、その行った人工衛星の打上げ用ロケットの設計について、この法律の施行前においても、第19条第1項の規定の例により、第13条第1項の型式認定の申請を行うことができる。
4 機構は、その管理し、及び運営する打上げ施設について、この法律の施行前においても、第19条第2項の規定の例により、第16条第1項の適合認定の申請を行うことができる。
第3条 内閣総理大臣は、第4条第2項第2号、第6条第1号若しくは第2号又は第22条第2号若しくは第3号の内閣府令を制定しようとするときは、この法律の施行前においても、宇宙政策委員会の意見を聴くことができる。
2 内閣総理大臣は、第9条第2項又は第40条第2項の内閣府令を制定しようとするときは、この法律の施行前においても、財務大臣に協議することができる。
第4条 この法律の施行の際現に行われている人工衛星の管理については、第20条第1項の規定は、適用しない。
第5条 政府は、この法律の施行後5年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
第7条 この法律の施行前にした前条の規定による改正前の国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構法の規定に違反する行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第10条 この附則に定めるもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。
第1条 この法律は、公布の日から起算して3月を経過した日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
第2条 この法律(前条各号に掲げる規定にあっては、当該規定。以下この条及び次条において同じ。)の施行の日前に、この法律による改正前の法律又はこれに基づく命令の規定(欠格条項その他の権利の制限に係る措置を定めるものに限る。)に基づき行われた行政庁の処分その他の行為及び当該規定により生じた失職の効力については、なお従前の例による。
第3条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。