都市農地の貸借の円滑化に関する法律
第1章 総則
第1条 この法律は、都市農地の貸借の円滑化のための措置を講ずることにより、都市農地の有効な活用を図り、もって都市農業の健全な発展に寄与するとともに、都市農業の有する機能の発揮を通じて都市住民の生活の向上に資することを目的とする。
第2条 この法律において「農地」とは、耕作(農地法(昭和27年法律第229号)第43条第1項の規定により耕作に該当するものとみなされる農作物の栽培を含む。以下同じ。)の目的に供される土地をいう。
2 この法律において「都市農地」とは、生産緑地法(昭和49年法律第68号)第3条第1項の規定により定められた生産緑地地区の区域内の農地をいう。
3 この法律において「都市農業」とは、都市農地において行われる耕作の事業をいう。
第3条 都市農地の貸借の円滑化のための措置は、都市農地が自ら耕作の事業を行う者又は第10条に規定する特定都市農地貸付けを行う者により有効に活用され、都市農業の安定的な継続が図られることを旨として、講ぜられなければならない。
第2章 都市農地の貸借の円滑化のための措置
第1節 自らの耕作の事業の用に供するための都市農地の貸借の円滑化
第4条 都市農地を自らの耕作の事業の用に供するため当該都市農地の所有者から当該都市農地について賃借権又は使用貸借による権利(以下「賃借権等」という。)の設定を受けようとする者(以下この条において「申請者」という。)は、農林水産省令で定めるところにより、当該賃借権等の設定に係る都市農地における耕作の事業に関する計画(以下「事業計画」という。)を作成し、これを当該都市農地の所在地を管轄する市町村(第14条を除き、以下単に「市町村」という。)の長(同条を除き、以下単に「市町村長」という。)に提出して、その認定を受けることができる。
2 事業計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 申請者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
二 賃借権等の設定を受ける都市農地の所在、地番、地目及び面積
三 前号の都市農地の所有者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
四 設定を受ける賃借権等の種類、始期及び存続期間
五 第2号の都市農地における耕作の事業の内容
六 その他農林水産省令で定める事項
3 市町村長は、第1項の認定の申請があった場合において、その事業計画が次の各号に掲げる要件の全て(当該申請に係る都市農地(以下この項において「申請都市農地」という。)について農業協同組合法(昭和22年法律第132号)第11条の50第1項(第1号に係る部分に限る。)の規定により農業の経営を行うため賃借権等の設定を受ける農業協同組合及び農業協同組合連合会その他政令で定める者(第7条第1項において「農業経営組合等」という。)の申請に係る事業計画にあっては第1号に掲げる要件、申請都市農地について賃借権等の設定を受けた後において行う耕作の事業に必要な農作業に常時従事すると認められる者及び農地法第2条第3項に規定する農地所有適格法人(第7条第1項において「農作業常時従事者等」という。)の申請に係る事業計画にあっては同号から第3号までに掲げる要件の全て)に該当するものであるときは、農業委員会の決定を経て、その認定をするものとする。ただし、農業委員会等に関する法律(昭和26年法律第88号)第3条第1項ただし書又は第5項の規定により農業委員会を置かない市町村(第7条第2項ただし書において単に「農業委員会を置かない市町村」という。)にあっては、農業委員会の決定を経ることを要しない。
一 申請都市農地における耕作の事業の内容が、都市農業の有する機能の発揮に特に資するものとして農林水産省令で定める基準に適合していると認められること。
二 申請都市農地における耕作の事業により、周辺の地域における農地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがないと認められること。
三 申請者が、申請都市農地について賃借権等の設定を受けた後において、その耕作の事業の用に供すべき農地の全てを効率的に利用して耕作の事業を行うと認められること。
四 申請者が事業計画に従って耕作の事業を行っていないと認められる場合に賃貸借又は使用貸借(第7条第3項において「賃貸借等」という。)の解除をする旨の条件が、書面による契約において付されていること。
五 申請者が、申請都市農地について賃借権等の設定を受けた後において、地域の農業における他の農業者との適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営を行うと見込まれること。
六 申請者が法人である場合には、申請都市農地について賃借権等の設定を受けた後において、当該法人の業務執行役員等(農地法第3条第3項第3号に規定する業務執行役員等をいう。第7条第1項第5号において同じ。)のうち1人以上の者が当該法人の行う耕作の事業に常時従事すると認められること。
第5条 事業計画につき前条第1項の認定を受けた者(以下「認定事業者」という。)は、農林水産省令で定めるところにより、毎年、当該認定に係る都市農地(以下「認定都市農地」という。)の利用状況について、市町村長に報告しなければならない。
第6条 認定事業者は、第4条第1項の認定を受けた事業計画を変更しようとするときは、農林水産省令で定めるところにより、市町村長の認定を受けなければならない。ただし、農林水産省令で定める軽微な変更については、この限りでない。
2 認定事業者は、前項ただし書の農林水産省令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、その旨を市町村長に届け出なければならない。
3 第4条第3項の規定は、第1項の認定について準用する。
第7条 市町村長は、次の各号のいずれか(農業経営組合等にあっては第1号、農作業常時従事者等にあっては同号から第3号までのいずれか)に該当すると認める場合には、当該認定事業者に対し、相当の期限を定めて、必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。
一 認定事業者が、第4条第1項の認定を受けた事業計画(前条第1項の認定又は同条第2項の規定による届出があったときは、その変更後のもの。以下「認定事業計画」という。)に従って耕作の事業を行っていないとき。
二 認定事業者が認定都市農地において行う耕作の事業により、周辺の地域における農地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障が生じているとき。
三 認定事業者が、耕作の事業の用に供すべき農地の全てを効率的に利用して耕作の事業を行っていないとき。
四 認定事業者が、地域の農業における他の農業者との適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営を行っていないとき。
五 認定事業者が法人である場合には、当該法人の業務執行役員等のいずれもが当該法人の行う耕作の事業に常時従事していないとき。
2 市町村長は、認定事業者が次の各号のいずれかに該当する場合には、農林水産省令で定めるところにより、農業委員会の決定を経て、第4条第1項の認定を取り消すことができる。ただし、農業委員会を置かない市町村にあっては、農業委員会の決定を経ることを要しない。
一 偽りその他不正の手段により、事業計画につき第4条第1項又は前条第1項の認定を受けたとき。
二 この法律又はこの法律に基づく命令に違反したとき。
三 前項の規定による勧告を受けた場合において、当該勧告に従わなかったとき。
3 市町村は、第4条第3項第4号に規定する条件に基づき賃貸借等が解除された場合又は前項の規定により同条第1項の認定を取り消した場合には、当該解除又は取消しに係る都市農地の所有者に対し、当該都市農地についての賃借権等の設定に関し、あっせんその他の必要な援助を行うものとする。
第8条 認定事業計画に従って認定都市農地について賃借権等が設定される場合には、農地法第3条第1項本文の規定は、適用しない。
2 認定事業計画に従って認定都市農地について設定された賃借権に係る賃貸借については、農地法第17条本文の規定は、適用しない。
3 認定事業計画に従って認定都市農地について設定された賃借権に係る賃貸借の解除が、第4条第3項第4号に規定する条件に基づき行われる場合であって、農林水産省令で定めるところによりあらかじめ市町村長に届け出て行われるときは、農地法第18条第1項本文の規定は、適用しない。
4 第4条第3項第4号に規定する条件については、農地法第18条第8項の規定は、適用しない。
第9条 市町村長は、この節の規定の施行に必要な限度において、認定事業者に対し、当該認定事業者の行う耕作の事業の実施状況について報告を求めることができる。
2 市町村長は、この節の規定の施行に必要な限度において、その職員に、認定都市農地、認定事業者の事務所その他の必要な場所に立ち入り、当該認定事業者の行う耕作の事業の実施状況若しくは帳簿、書類その他の物件について検査させ、又は関係者に質問させることができる。
3 前項の規定により立入検査又は質問をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
4 第2項の規定による立入検査及び質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第2節 特定都市農地貸付けの用に供するための都市農地の貸借の円滑化
第10条 この節において「特定都市農地貸付け」とは、都市農地についての賃借権等の設定(第2号において「都市農地貸付け」という。)で、次に掲げる要件に該当するものをいう。
一 特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律(平成元年法律第58号。以下「特定農地貸付法」という。)第2条第2項第1号から第3号までに掲げる要件
二 地方公共団体及び農業協同組合以外の者が都市農地の所有者から前号に掲げる要件に該当する都市農地貸付けの用に供すべきものとしてされる賃借権等の設定を受けている都市農地(地方公共団体及び農業協同組合以外の者が次に掲げる事項を内容とする協定を都市農地の所有者及び市町村と締結しているものに限る。)に係るものであること。
イ 地方公共団体及び農業協同組合以外の者が都市農地を適切に利用していないと認められる場合に市町村が協定を廃止する旨
ロ 次条において準用する特定農地貸付法(以下「準用特定農地貸付法」という。)第3条第3項の承認を取り消した場合又は協定を廃止した場合に市町村が講ずべき措置
ハ その他都市農地貸付けの実施に当たって合意しておくべきものとして農林水産省令で定める事項
第11条 特定農地貸付法第3条及び第6条の規定は、特定都市農地貸付けについて準用する。この場合において、特定農地貸付法第3条第1項中「(地方公共団体及び農業協同組合以外の者にあっては、貸付規程及び貸付協定)」とあるのは「及び都市農地の貸借の円滑化に関する法律(平成30年法律第68号)第10条第2号に規定する協定」と、特定農地貸付法第6条中「特定承認農地について」とあるのは「都市農地の貸借の円滑化に関する法律第12条第2項に規定する承認都市農地について」と、「(第2条第2項第5号ロに該当する農地にあっては、当該農地について対象農地貸付けを行った地方公共団体又は農地中間管理機構)を当該特定承認農地」とあるのは「を当該承認都市農地」と読み替えるものとする。
第12条 準用特定農地貸付法第3条第3項の承認を受けた者が、当該承認に係る都市農地について、特定都市農地貸付けの用に供するため賃借権等の設定を受ける場合及び特定都市農地貸付けによって賃借権等を設定する場合には、農地法第3条第1項本文の規定は、適用しない。
2 準用特定農地貸付法第3条第3項の承認を受けた者が特定都市農地貸付けの用に供するため賃借権等の設定を受けている都市農地(以下「承認都市農地」という。)の賃貸借については、農地法第16条、第17条本文、第18条第1項本文、第7項及び第8項並びに第21条の規定は、適用しない。
3 承認都市農地の借賃については、農地法第20条の規定は、適用しない。
4 承認都市農地の利用関係の紛争については、農地法第25条から第29条までの規定は、適用しない。
第3章 雑則
第13条 市町村は、認定事業計画に従って行われる耕作の事業又は承認都市農地について行われる第10条に規定する特定都市農地貸付けの実施に必要な助言、指導その他の援助を行うよう努めるものとする。
2 市町村は、都市農地について賃借権等の設定を受けようとする者からあっせんその他の援助を求められた場合には、これに応ずるよう努めるものとする。
第14条 この法律及び準用特定農地貸付法第3条第1項中市町村又は市町村長に関する規定は、特別区のある地にあっては、特別区又は特別区の区長に適用する。
2 第4条第3項ただし書及び第7条第2項ただし書並びに準用特定農地貸付法第3条第1項中市町村又は市町村長に関する規定は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市(農業委員会等に関する法律第41条第2項の規定により区(総合区を含む。以下この項において同じ。)ごとに農業委員会を置かないこととされたものを除く。)にあっては、区又は区長(総合区長を含む。)に適用する。この場合において、これらの市町村又は市町村長に関する規定の適用に関し必要な読替えその他必要な事項は、政令で定める。
第15条 第4条第1項、第5条、第6条第1項及び第2項、第7条、第8条第3項並びに第9条第1項及び第2項並びに準用特定農地貸付法第3条第1項及び第3項の規定により市町村が処理することとされている事務は、地方自治法第2条第9項第1号に規定する第1号法定受託事務とする。
第16条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、農林水産省令で定める。
第4章 罰則
第17条 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
一 偽りその他不正の手段により、事業計画につき第4条第1項又は第6条第1項の認定を受けた者
二 第9条第1項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
三 第9条第2項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者
第18条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同条の罰金刑を科する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第2条 政府は、この法律の施行後5年を目途として、この法律の施行状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次条の規定は、公布の日から施行する。
第2条 この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
第3条 政府は、この法律の施行後5年を目途として、この法律による改正後の農業経営基盤強化促進法、農地法及び農業振興地域の整備に関する法律の規定の施行の状況等を勘案し、必要があると認めるときは、これらの規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 略
二 第1条中農地中間管理事業の推進に関する法律第2条第2項に一号を加える改正規定及び同条第3項の改正規定(同項第2号に係る部分を除く。)、第2条中農業経営基盤強化促進法の目次の改正規定、同法第4条から第7条までの改正規定、同法第2章第3節を削る改正規定、同法第12条第1項及び第13条第2項の改正規定、同条の次に一条を加える改正規定、同法第14条の6第1項第2号、第15条第2項及び第16条の改正規定、同法第18条の改正規定(同条第2項中第7号を削り、第8号を第7号とする部分を除く。)並びに同法第23条第10項及び第33条の改正規定、第3条中農地法第2条第3項第2号の改正規定、同法第3条の改正規定(同条第1項第7号の2に係る部分及び同条中第6項を削り、第7項を第6項とする部分を除く。)、同法第4条第1項第3号及び第5条第1項第2号の改正規定、同法第17条ただし書の改正規定(「第4条第4項第1号」を「第4条第3項第1号」に改める部分に限る。)、同法第35条(見出しを含む。)の改正規定並びに同法第36条第1項第2号、第46条第1項及び第63条第1項第14号の改正規定、第4条中農業振興地域の整備に関する法律第15条の2第1項第5号の改正規定並びに附則第3条から第5条までの規定、附則第11条中地方自治法(昭和22年法律第67号)別表第一農地法(昭和27年法律第229号)の項第14号の改正規定並びに附則第12条、第13条及び第15条から第18条までの規定 公布の日から起算して1年3月を超えない範囲内において政令で定める日