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国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律

平成19年法律第37号
最終改正:平成29年6月21日法律第67号
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第1章 総則

(目的)

第1条 この法律は、国際刑事裁判所に関するローマ規程(以下「規程」という。)が定める集団殺害犯罪その他の国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪について、国際刑事裁判所の捜査、裁判及び刑の執行等についての必要な協力に関する手続を定めるとともに、国際刑事裁判所の運営を害する行為についての罰則を定めること等により、規程の的確な実施を確保することを目的とする。


(定義)

第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 国際刑事裁判所 規程第1条に規定する国際刑事裁判所をいう。

 管轄刑事事件 規程第5条1及び第70条1の規定により国際刑事裁判所が管轄権を有する犯罪について国際刑事裁判所がその管轄権を行使する事件をいう。

 重大犯罪 規程第5条1の規定により国際刑事裁判所が管轄権を有する国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪として規程に定める犯罪をいう。

 証拠の提供 規程第93条1の規定による国際刑事裁判所の請求により、国際刑事裁判所の捜査又は裁判に係る手続(以下「国際刑事裁判所の手続」という。)に必要な証拠を国際刑事裁判所に提供することをいう。

 裁判上の証拠調べ 規程第93条1の規定による国際刑事裁判所の請求により、規程第39条2に規定する上訴裁判部又は第一審裁判部が行う証拠調べについての援助として日本国の裁判所が行う証拠調べをいう。

 書類の送達 規程第93条1の規定による国際刑事裁判所の請求により、規程第39条2に規定する上訴裁判部、第一審裁判部又は予審裁判部が行う書類の送達についての援助として日本国の裁判所が行う書類の送達をいう。

 受刑者証人等移送 規程第93条1及び7の規定による国際刑事裁判所の請求により、証人その他の国際刑事裁判所の手続における関係人(国際刑事裁判所の捜査又は裁判の対象とされる者を除く。)として出頭させることを可能とするため、国内受刑者(日本国において懲役刑若しくは禁錮刑又は国際受刑者移送法(平成14年法律第66号)第2条第2号に定める共助刑の執行として拘禁されている者をいう。以下同じ。)を移送することをいう。

 引渡犯罪人の引渡し 規程第89条1又は第111条の規定による国際刑事裁判所の引渡しの請求により、その引渡しの対象とされた者(以下「引渡犯罪人」という。)の引渡しをすることをいう。

 仮拘禁 規程第92条1の規定による国際刑事裁判所の仮逮捕の請求により、その仮逮捕の対象とされた者(以下「仮拘禁犯罪人」という。)を仮に拘禁することをいう。

 執行協力 規程第75条5若しくは第109条1の規定により罰金刑(国際刑事裁判所が規程第70条3又は第77条2(a)の規定により命ずる罰金をいう。以下同じ。)、没収刑(国際刑事裁判所が規程第77条2(b)の規定により命ずる没収をいう。以下同じ。)若しくは被害回復命令(国際刑事裁判所が規程第75条2の規定により発する命令をいう。以下同じ。)の確定裁判の執行をすること又は規程第75条4若しくは第93条1の規定により没収刑若しくは被害回復命令のための保全をすることをいう。

十一 協力 証拠の提供、裁判上の証拠調べ、書類の送達、受刑者証人等移送、引渡犯罪人の引渡し、仮拘禁及び執行協力をいう。

十二 請求犯罪 協力(引渡犯罪人の引渡し及び仮拘禁を除く。)の請求において犯されたとされている犯罪をいう。

十三 引渡犯罪 引渡犯罪人の引渡し又は仮拘禁に係る協力の請求において当該引渡犯罪人又は仮拘禁犯罪人が犯したとされている犯罪をいう。

第2章 国際刑事裁判所に対する協力

第1節 通則

(協力の請求の受理等)

第3条 国際刑事裁判所に対する協力に関する次に掲げる事務は、外務大臣が行う。

 国際刑事裁判所からの協力の請求の受理

 国際刑事裁判所との協議及び国際刑事裁判所に対して行うべき通報

 国際刑事裁判所に対する証拠の送付及び罰金刑、没収刑又は被害回復命令の確定裁判の執行に係る財産の引渡し並びに書類の送達についての結果の通知


(外務大臣の措置)

第4条 外務大臣は、国際刑事裁判所から協力の請求を受理したときは、請求の方式が規程に適合しないと認める場合を除き、国際刑事裁判所が発する協力請求書又は外務大臣の作成した協力の請求があったことを証明する書面に関係書類を添付し、意見を付して、これを法務大臣に送付するものとする。


(国際刑事裁判所との協議)

第5条 外務大臣は、国際刑事裁判所に対する協力に関し、必要に応じ、国際刑事裁判所と協議するものとする。

 法務大臣は、国際刑事裁判所に対する協力に関し、国際刑事裁判所との協議が必要であると認めるときは、外務大臣に対し、前項の規定による協議をすることを求めるものとする。

第2節 証拠の提供等

第1款 証拠の提供

(法務大臣の措置)

第6条 法務大臣は、外務大臣から第4条の規定により証拠の提供に係る協力の請求に関する書面の送付を受けた場合において、次の各号のいずれにも該当しないときは、次項又は第3項に規定する措置をとるものとする。

 当該協力の請求が国際捜査共助等に関する法律(昭和55年法律第69号)第1条第1号に規定する共助(以下この号及び第39条第1項第2号において「捜査共助」という。)の要請と競合し、かつ、規程の定めるところによりその要請を優先させることができる場合において、当該捜査共助をすることが相当であると認めるとき。

 当該協力の請求に応ずることにより、規程第98条1に規定する国際法に基づく義務に反することとなるとき。

 当該協力の請求に応ずることにより、日本国の安全が害されるおそれがあるとき。

 請求犯罪が規程第70条1に規定する犯罪である場合において、当該請求犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合にその行為が日本国の法令によれば罪に当たるものでないとき。

 当該協力の請求に応ずることにより、請求犯罪以外の罪に係る事件で日本国の検察官、検察事務官若しくは司法警察職員によって捜査され又は日本国の裁判所に係属しているものについて、その捜査又は裁判を妨げるおそれがあり、直ちに当該請求に応ずることが相当でないと認めるとき。

 その他直ちに当該協力の請求に応じないことに正当な理由があるとき。

 前項の規定により法務大臣がとる措置は、次項に規定する場合を除き、次の各号のいずれかとする。

 相当と認める地方検察庁の検事正に対し、関係書類を送付して、証拠の提供に係る協力に必要な証拠の収集を命ずること。

 国家公安委員会に証拠の提供に係る協力の請求に関する書面を送付すること。

 海上保安庁長官その他の刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第190条に規定する司法警察職員として職務を行うべき者の置かれている国の機関の長に証拠の提供に係る協力の請求に関する書面を送付すること。

 第1項に規定する協力の請求が裁判所、検察官又は司法警察員の保管する訴訟に関する書類の提供に係るものであるときは、法務大臣は、その書類の保管者に協力の請求に関する書面を送付するものとする。

 法務大臣は、前二項に規定する措置その他の証拠の提供に係る協力に関する措置をとるため必要があると認めるときは、関係人の所在その他必要な事項について調査を行うことができる。


(国家公安委員会の措置)

第7条 国家公安委員会は、前条第2項第2号の書面の送付を受けたときは、相当と認める都道府県警察に対し、関係書類を送付して、証拠の提供に係る協力に必要な証拠の収集を指示するものとする。


(協力の実施)

第8条 国際捜査共助等に関する法律第7条、第8条、第10条、第12条及び第13条の規定は、第6条第1項の請求による証拠の提供に係る協力について準用する。この場合において、同法第7条第1項中「第5条第1項第1号」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律(平成19年法律第37号)第6条第2項第1号」と、同条第2項中「前条」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第7条」と、同条第3項中「第5条第1項第3号」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第6条第2項第3号」と、同法第13条中「この法律に特別の定めがある」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第8条において準用する第8条、第10条及び前条に規定する」と読み替えるものとする。


(虚偽の証明書の提出に対する罰則)

第9条 前条において準用する国際捜査共助等に関する法律第8条第3項の規定による証明書の提出を求められた者が、虚偽の証明書を提出したときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

 前項の規定は、刑法(明治40年法律第45号)又は第4章の罪に触れるときは、これを適用しない。


(処分を終えた場合等の措置)

第10条 検事正は、証拠の提供に係る協力に必要な証拠の収集を終えたときは、速やかに、意見を付して、法務大臣に対し、収集した証拠を送付しなければならない。第6条第2項第3号の国の機関の長が協力に必要な証拠の収集を終えたときも、同様とする。

 都道府県公安委員会は、都道府県警察の警視総監又は道府県警察本部長が協力に必要な証拠の収集を終えたときは、速やかに、意見を付して、国家公安委員会に対し、収集した証拠を送付しなければならない。

 国家公安委員会は、前項の証拠の送付を受けたときは、速やかに、意見を付して、法務大臣に対し、これを送付するものとする。

 第6条第3項の規定により証拠の提供に係る協力の請求に関する書面の送付を受けた訴訟に関する書類の保管者は、速やかに、意見を付して、法務大臣に対し、当該書類又はその謄本を送付しなければならない。ただし、直ちにこれを送付することに支障があると認めるときは、速やかに、法務大臣に対し、その旨を通知しなければならない。


(証拠の提供の条件)

第11条 法務大臣は、前条第1項、第3項又は第4項の規定により送付を受けた証拠を国際刑事裁判所に提供する場合において、必要があると認めるときは、当該証拠の使用又は返還に関する条件を定めるものとする。


(協力をしない場合の通知)

第12条 法務大臣は、第6条第2項第2号若しくは第3号又は第3項の規定による措置をとった後において、同条第1項第1号から第4号までのいずれかに該当すると認めて、証拠の提供に係る協力をしないこととするときは、遅滞なく、その旨を証拠の提供に係る協力の請求に関する書面の送付を受けた者に通知するものとする。


(外務大臣等との協議)

第13条 法務大臣は、次の各号のいずれかに該当する場合には、あらかじめ、外務大臣と協議するものとする。

 第6条第1項第1号から第3号までのいずれかに該当することを理由として、証拠の提供に係る協力をしないこととするとき。

 第6条第1項第5号又は第6号のいずれかに該当することを理由として、証拠の提供に係る協力をすることを留保するとき。

 第11条の条件を定めるとき。

 国際捜査共助等に関する法律第16条第2項の規定は、証拠の提供に係る協力の請求に関し法務大臣が第6条第2項各号の措置をとることとする場合について準用する。

第2款 裁判上の証拠調べ及び書類の送達

(法務大臣の措置)

第14条 法務大臣は、外務大臣から第4条の規定により裁判上の証拠調べ又は書類の送達に係る協力の請求に関する書面の送付を受けた場合において、第6条第1項各号のいずれにも該当しないときは、相当と認める地方裁判所に対し、当該協力の請求に関する書面を送付するものとする。


(裁判所の措置等)

第15条 外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法(明治38年法律第63号)第1条第2項、第1条ノ2第1項(第1号、第5号及び第6号を除く。)、第2条及び第3条の規定は、裁判上の証拠調べ又は書類の送達に係る協力について準用する。

 前条の地方裁判所は、裁判上の証拠調べ又は書類の送達を終えたときは、速やかに、法務大臣に対し、当該裁判上の証拠調べにより得られた証拠を送付し、又は書類の送達の結果を通知しなければならない。


(準用)

第16条 第12条及び第13条第1項(第3号を除く。)の規定は、法務大臣が第14条の規定による裁判上の証拠調べ又は書類の送達に係る協力に係る措置をとった場合について準用する。この場合において、第12条中「同条第1項第1号」とあるのは、「第6条第1項第1号」と読み替えるものとする。

第3款 受刑者証人等移送

(受刑者証人等移送の決定等)

第17条 法務大臣は、外務大臣から第4条の規定により受刑者証人等移送に係る協力の請求に関する書面の送付を受けた場合において、第6条第1項第4号及び次の各号のいずれにも該当せず、かつ、当該請求に応ずることが相当であると認めるときは、30日を超えない範囲内で国内受刑者を移送する期間を定めて、当該受刑者証人等移送の決定をするものとする。

 国内受刑者の書面による同意がないとき。

 国内受刑者が20歳に満たないとき。

 国内受刑者の犯した罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき。

 法務大臣は、前項の決定をする場合において、必要があると認めるときは、受刑者証人等移送に関する条件を定めるものとする。

 法務大臣は、第1項の請求に応ずることが相当でないと認めて受刑者証人等移送をしないこととするとき及び前項の条件を定めるときは、あらかじめ、外務大臣と協議するものとする。

 国際捜査共助等に関する法律第19条第3項の規定は、第1項の決定をした場合について準用する。


(国内受刑者の引渡しに関する措置等)

第18条 法務大臣は、前条第4項において準用する国際捜査共助等に関する法律第19条第3項の規定による命令をしたときは、外務大臣に受領許可証を送付しなければならない。

 外務大臣は、前項の規定による受領許可証の送付を受けたときは、直ちに、これを国際刑事裁判所に送付しなければならない。

 第1項に規定する命令を受けた刑事施設の長又はその指名する刑事施設の職員は、速やかに、国内受刑者を国際刑事裁判所の指定する場所に護送し、国際刑事裁判所の指定する者であって受領許可証を有するものに対し、当該国内受刑者を引き渡さなければならない。

 国際捜査共助等に関する法律第21条及び第22条の規定は、前項の規定による国際刑事裁判所の指定する者に対する引渡しに係る国内受刑者について準用する。この場合において、同法第21条中「受刑者証人移送」とあるのは、「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第2条第7号に規定する受刑者証人等移送」と読み替えるものとする。

第3節 引渡犯罪人の引渡し等

第1款 引渡犯罪人の引渡し

(引渡犯罪人の引渡しの要件)

第19条 引渡犯罪人の引渡しは、引渡犯罪が重大犯罪である場合には、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これを行うことができる。

 引渡犯罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき。ただし、当該事件について、国際刑事裁判所において、規程第17条1の規定により事件を受理する旨の決定をし、又は公判手続を開始しているときは、この限りでない。

 引渡犯罪に係る事件について日本国の裁判所において確定判決を経たとき。ただし、当該事件について、国際刑事裁判所において、規程第17条1の規定により事件を受理する旨の決定をし、又は有罪の判決の言渡しをしているときは、この限りでない。

 引渡犯罪について国際刑事裁判所において有罪の判決の言渡しがある場合を除き、引渡犯罪人が引渡犯罪を行っていないことが明らかに認められるとき。

 引渡犯罪人の引渡しは、引渡犯罪が規程第70条1に規定する犯罪である場合には、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これを行うことができる。

 引渡犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、当該行為が日本国の法令により死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮に処すべき罪に当たるものでないとき。

 引渡犯罪に係る行為が日本国内において行われ、又は引渡犯罪に係る裁判が日本国の裁判所において行われたとした場合において、日本国の法令により引渡犯罪人に刑罰を科し、又はこれを執行することができないと認められるとき。

 引渡犯罪について国際刑事裁判所において有罪の判決の言渡しがある場合を除き、引渡犯罪人がその引渡犯罪に係る行為を行ったことを疑うに足りる相当な理由がないとき。

 引渡犯罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について日本国の裁判所において確定判決を経たとき。

 引渡犯罪人の犯した引渡犯罪以外の罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について引渡犯罪人が日本国の裁判所において刑に処せられ、その執行を終わらず、若しくは執行を受けないこととなっていないとき。

 引渡犯罪人が日本国民であるとき。


(法務大臣の措置)

第20条 法務大臣は、外務大臣から第4条の規定により引渡犯罪人の引渡しに係る協力の請求に関する書面の送付を受けたときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、東京高等検察庁検事長に対し、関係書類を送付して、引渡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当するかどうかについて東京高等裁判所に審査の請求をすべき旨を命ずるものとする。

 明らかに前条第1項各号又は第2項各号のいずれかに該当すると認めるとき。

 当該協力の請求が逃亡犯罪人引渡法(昭和28年法律第68号)第3条に規定する逃亡犯罪人の引渡しの請求又は同法第23条第1項に規定する犯罪人を仮に拘禁することの請求と競合し、かつ、規程の定めるところによりこれらの請求を優先させることができる場合において、当該逃亡犯罪人の引渡し又は犯罪人を仮に拘禁することが相当であると認めるとき。

 当該協力の請求に応ずることにより、規程第98条に規定する国際法に基づく義務又は国際約束に基づく義務に反することとなるとき。

 当該協力の請求に応ずることにより、引渡犯罪以外の罪に係る事件で日本国の検察官、検察事務官若しくは司法警察職員によって捜査されているもの又は引渡犯罪以外の罪に係る事件(引渡犯罪人以外の者が犯したものに限る。)で日本国の裁判所に係属しているものについて、その捜査又は裁判を妨げるおそれがあり、直ちに当該請求に応ずることが相当でないと認めるとき。

 その他直ちに当該協力の請求に応じないことに正当な理由があるとき。

 法務大臣は、前項の規定による命令その他引渡犯罪人の引渡しに関する措置をとるため必要があると認めるときは、引渡犯罪人の所在その他必要な事項について調査を行うことができる。


(引渡犯罪人の拘禁)

第21条 東京高等検察庁検事長は、前条第1項の規定による命令を受けたときは、引渡犯罪人が仮拘禁許可状により拘禁され、又は仮拘禁許可状による拘禁を停止されている場合を除き、東京高等検察庁の検察官をして、東京高等裁判所の裁判官があらかじめ発する拘禁許可状により、引渡犯罪人を拘禁させなければならない。

 逃亡犯罪人引渡法第5条第2項及び第3項、第6条並びに第7条の規定は、前項の拘禁許可状による引渡犯罪人の拘禁について準用する。この場合において、同法第5条第3項中「請求国の名称、有効期間」とあるのは、「有効期間」と読み替えるものとする。


(審査の請求)

第22条 東京高等検察庁の検察官は、第20条第1項の規定による命令があったときは、引渡犯罪人の現在地が分からない場合を除き、速やかに、東京高等裁判所に対し、引渡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当するかどうかについて審査の請求をしなければならない。

 逃亡犯罪人引渡法第8条第1項後段、第2項及び第3項の規定は、引渡犯罪人の引渡しに係る前項の審査の請求について準用する。


(東京高等裁判所の審査)

第23条 東京高等裁判所は、審査の結果に基づいて、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める決定をしなければならない。

 前条第1項の審査の請求が不適法であるとき 却下する決定

 引渡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当するとき その旨の決定

 引渡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当しないとき その旨の決定

 逃亡犯罪人引渡法第9条の規定は前条第1項の審査の請求に係る東京高等裁判所の審査について、同法第10条第2項及び第3項の規定は前項の決定について、同法第11条の規定は第20条第1項の規定による命令の取消しについて、同法第12条の規定は引渡犯罪人の釈放について、同法第13条の規定は当該審査に係る裁判書の謄本について、それぞれ準用する。この場合において、同法第9条第3項ただし書中「次条第1項第1号又は第2号」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律(平成19年法律第37号)第23条第1項第1号又は第3号」と、同法第11条第1項中「第3条の」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第4条の」と、「請求国」とあるのは「国際刑事裁判所」と、「受け、又は第3条第2号に該当するに至つた」とあるのは「受けた」と、同条第2項中「第4条第1項の」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第20条第1項の」と、「第4条第1項各号」とあるのは「同条第1項各号」と、「第8条第3項」とあるのは「同法第22条第2項において準用する第8条第3項」と、同法第12条中「第10条第1項第1号若しくは第2号」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第23条第1項第1号若しくは第3号」と読み替えるものとする。


(審査手続の停止)

第24条 東京高等裁判所は、前条第2項において準用する逃亡犯罪人引渡法第9条の審査において、引渡犯罪人から、引渡犯罪に係る事件が外国の裁判所に係属すること又は当該事件について外国の裁判所において確定判決を経たことを理由として、当該引渡犯罪人の引渡しが認められない旨の申立てがされた場合には、国際刑事裁判所において当該事件につき規程第17条1の規定により事件を受理するかどうかが決定されるまでの間、決定をもって、審査の手続を停止することができる。

 東京高等検察庁検事長は、前項の申立てがあったときは、速やかに、法務大臣に対し、その旨の報告をしなければならない。

 法務大臣は、前項の報告を受けたときは、外務大臣に対し、第1項の申立てがあった旨の通知をするものとする。

 外務大臣は、前項の通知を受けたときは、国際刑事裁判所に対し、第1項の申立てがあった旨の通報をするとともに、引渡犯罪につき規程第17条1の規定による事件を受理するかどうかの決定に関し、国際刑事裁判所と協議するものとする。

 東京高等検察庁の検察官は、第1項の規定により審査の手続が停止された場合において、必要と認めるときは、引渡犯罪人の拘禁の停止をすることができる。この場合において、必要と認めるときは、当該引渡犯罪人を親族その他の者に委託し、又は当該引渡犯罪人の住居を制限するものとする。

 東京高等検察庁の検察官は、前項の規定による拘禁の停止がされている場合において、国際刑事裁判所において引渡犯罪につき規程第17条1の規定により事件を受理する旨の決定があったときは、その拘禁の停止を取り消さなければならない。

 逃亡犯罪人引渡法第22条第3項から第6項までの規定は、前項の規定により引渡犯罪人の拘禁の停止を取り消した場合について準用する。

 第1項の規定により審査の手続が停止された場合における前条第2項において準用する逃亡犯罪人引渡法第9条第1項の規定の適用については、同項中「2箇月」とあるのは、「2箇月(国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第24条第1項の規定により審査の手続が停止された期間を除く。)」とする。


(引渡犯罪人の引渡しに関する法務大臣の命令等)

第25条 法務大臣は、第23条第1項第2号の決定があった場合において、第20条第1項第2号から第5号までのいずれにも該当しないと認めるときは、東京高等検察庁検事長に対し引渡犯罪人の引渡しを命ずるとともに、引渡犯罪人にその旨を通知しなければならない。この場合において、当該引渡犯罪人が拘禁許可状により拘禁されているときは、その引渡しの命令は、当該決定があった日から10日以内にしなければならない。

 法務大臣は、前項に規定する決定があった場合において、第20条第1項第2号又は第3号のいずれかに該当すると認めるときは、直ちに東京高等検察庁検事長及び引渡犯罪人にその旨を通知するとともに、東京高等検察庁検事長に対し拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人の釈放を命じなければならない。

 東京高等検察庁の検察官は、前項の規定による命令があったときは、直ちに、拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人を釈放しなければならない。

 法務大臣は、第1項に規定する決定があった場合において、第20条第1項第4号又は第5号のいずれかに該当すると認めるときは、東京高等検察庁検事長に対し、その旨を通知するとともに、拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人の拘禁の停止をするよう命じなければならない。

 東京高等検察庁の検察官は、前項の規定による拘禁の停止の命令があったときは、直ちに、拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人の拘禁の停止をしなければならない。この場合においては、前条第5項後段の規定を準用する。

 法務大臣は、第4項の規定による拘禁の停止の命令をした後において、第20条第1項第4号及び第5号のいずれにも該当しないこととなったときは、第1項の規定による引渡しの命令をしなければならない。

 東京高等検察庁の検察官は、前項の引渡しの命令があったときは、第5項の規定による拘禁の停止を取り消さなければならない。

 逃亡犯罪人引渡法第22条第3項から第6項までの規定は、前項の規定により引渡犯罪人の拘禁の停止を取り消した場合について準用する。


(引渡犯罪人の引渡しの命令の延期)

第26条 法務大臣は、前条第1項に規定する場合(引渡犯罪が重大犯罪である場合に限る。)において、次の各号のいずれかに該当し、かつ、直ちに引渡犯罪人の引渡しをすることが相当でないと認めるときは、同項の規定にかかわらず、その引渡しの命令を延期することができる。

 引渡犯罪人の犯した引渡犯罪以外の罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき。

 前号に規定する事件について、引渡犯罪人が日本国の裁判所において刑に処せられ、その執行を終わらず、又は執行を受けないこととなっていないとき。

 法務大臣は、前項の規定により引渡犯罪人の引渡しの命令を延期するときは、東京高等検察庁検事長に対し、その旨を通知するとともに、拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人の拘禁の停止をするよう命じなければならない。

 東京高等検察庁の検察官は、前項の規定による命令があったときは、直ちに、拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人の拘禁の停止をしなければならない。この場合においては、第24条第5項後段の規定を準用する。

 法務大臣は、第2項の規定による拘禁の停止の命令をした後において、第1項各号のいずれにも該当しないこととなったとき、又は当該引渡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認める事由がなくなったときは、東京高等検察庁検事長に対し、前条第1項の規定による引渡しの命令をしなければならない。

 東京高等検察庁の検察官は、前項の引渡しの命令があったときは、第3項の規定による拘禁の停止を取り消さなければならない。

 逃亡犯罪人引渡法第22条第3項から第6項までの規定は、前項の規定により引渡犯罪人の拘禁の停止を取り消した場合について準用する。


(拘禁が困難な場合における拘禁の停止及びその取消し)

第27条 東京高等検察庁の検察官は、拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人の申立てにより又は職権で、拘禁によって著しく引渡犯罪人の健康を害するおそれがあるときその他拘禁を継続することが困難であると認めるときは、当該引渡犯罪人の拘禁の停止をすることができる。

 東京高等検察庁検事長は、前項の申立てがあったとき又は東京高等検察庁の検察官が職権で拘禁の停止をしようとするときは、法務大臣に対し、その旨の報告をしなければならない。

 法務大臣は、前項の報告を受けたときは、外務大臣に対し、その旨の通知をするものとする。

 外務大臣は、前項の通知を受けたときは、国際刑事裁判所に対し、引渡犯罪人の拘禁の停止に関する意見を求めるものとする。

 東京高等検察庁の検察官は、第1項の規定により拘禁の停止をするかどうかの判断に当たっては、前項の意見を尊重するものとする。ただし、急速を要し、当該意見を聴くいとまがないときは、これを待たないで当該拘禁の停止をすることができる。

 第24条第5項後段の規定は、第1項の規定により拘禁の停止をする場合について準用する。

 東京高等検察庁の検察官は、必要と認めるときは、いつでも、第1項の規定による拘禁の停止を取り消すことができる。

 逃亡犯罪人引渡法第22条第3項から第6項までの規定は、前項の規定により引渡犯罪人の拘禁の停止を取り消した場合について準用する。


(拘禁の停止中の失効)

第28条 次の各号のいずれかに該当するときは、第24条第5項、第25条第5項、第26条第3項又は前条第1項の規定により停止されている拘禁は、その効力を失う。

 引渡犯罪人に対し、第23条第1項第1号又は第3号の決定の裁判書の謄本が送達されたとき。

 引渡犯罪人に対し、第23条第2項において準用する逃亡犯罪人引渡法第11条第2項の規定による通知があったとき。

 引渡犯罪人に対し、第25条第2項の規定により法務大臣から第20条第1項第2号又は第3号のいずれかに該当する旨の通知があったとき。


(引渡犯罪人の引渡しの期限)

第29条 第25条第1項の規定による命令に基づく引渡犯罪人の引渡しは、当該命令の日(拘禁の停止がされているときは、当該拘禁の停止の取消しにより引渡犯罪人が拘禁された日)から30日以内にしなければならない。

 第25条第1項の規定による命令があった後に第27条第1項の規定により拘禁の停止がされた場合における前項の規定の適用については、当該拘禁の停止がされていた期間は、同項の期間に算入しないものとする。


(外務大臣との協議)

第30条 法務大臣は、次の各号のいずれかに該当する場合には、あらかじめ、外務大臣と協議するものとする。

 第20条第1項第1号(第19条第1項に係る部分に限る。)に該当することを理由として、第20条第1項の規定による命令を留保するとき。

 第20条第1項第2号又は第3号のいずれかに該当することを理由として、引渡犯罪人の引渡しに係る協力をしないこととするとき。

 第20条第1項第4号又は第5号のいずれかに該当することを理由として、同項の規定による命令を留保し、又は第25条第4項の規定による措置をとるとき。

 第26条第1項の規定により引渡犯罪人の引渡しの命令を延期するとき。


(引渡犯罪人の引渡しに関する措置)

第31条 逃亡犯罪人引渡法第16条第1項から第3項まで、第17条第1項、第18条及び第19条の規定は、第25条第1項の規定による引渡しの命令に係る引渡犯罪人の引渡しについて準用する。この場合において、同法第18条中「前条第5項又は第22条第6項の規定による報告」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第25条第8項、第26条第6項又は第27条第8項において準用する第22条第6項の規定による報告(同法第27条第8項において準用する場合にあっては、同法第25条第1項の規定による引渡しの命令があった後に拘禁の停止の取消しがされた場合における報告に限る。)」と、同法第19条中「請求国」とあるのは「国際刑事裁判所」と読み替えるものとする。

 前項において準用する逃亡犯罪人引渡法第16条第1項の引渡状及び同条第3項の受領許可状には、引渡犯罪人の氏名、引渡犯罪名、引渡しの場所、引渡しの期限及び発付の年月日並びに国際刑事裁判所の言い渡した拘禁刑の執行中に逃亡した引渡犯罪人の引渡しにあっては国際刑事裁判所が引渡先として指定する外国の名称を記載し、法務大臣が記名押印しなければならない。


第32条 前条第1項において準用する逃亡犯罪人引渡法第17条第1項の規定による指揮を受けた刑事施設の長又はその指名する刑事施設の職員は、引渡犯罪人を、引渡状に記載された引渡しの場所に護送し、国際刑事裁判所の指定する者であって受領許可状を有するものに引き渡さなければならない。


第33条 前条の規定により引渡犯罪人の引渡しを日本国内において受けた者は、速やかに、当該引渡犯罪人を国際刑事裁判所又は第31条第2項に規定する引渡先として指定された外国に護送するものとする。

第2款 仮拘禁

(仮拘禁の命令)

第34条 法務大臣は、外務大臣から第4条の規定により仮拘禁に係る協力の請求に関する書面の送付を受けたときは、第20条第1項各号(第1号については、第19条第1項第3号に係る部分を除く。)のいずれかに該当すると認める場合を除き、東京高等検察庁検事長に対し、仮拘禁をすべき旨を命じなければならない。


(仮拘禁に関する措置)

第35条 東京高等検察庁検事長は、前条の規定による命令を受けたときは、東京高等検察庁の検察官をして、東京高等裁判所の裁判官があらかじめ発する仮拘禁許可状により、仮拘禁犯罪人を拘禁させなければならない。

 逃亡犯罪人引渡法第5条第2項及び第3項、第6条並びに第7条の規定は前項の仮拘禁許可状による仮拘禁犯罪人の拘禁について、同法第26条の規定は仮拘禁許可状により拘禁されている仮拘禁犯罪人の釈放について、同法第27条の規定は仮拘禁許可状が発せられている仮拘禁犯罪人について第20条第1項の規定による命令があった場合について、同法第28条の規定は前条に規定する書面の送付があった後に国際刑事裁判所から仮拘禁犯罪人の引渡しの請求をしない旨の通知があった場合について、同法第29条の規定は仮拘禁許可状により拘禁されている仮拘禁犯罪人について、それぞれ準用する。この場合において、同法第5条第3項中「請求国の名称、有効期間」とあるのは「有効期間」と、同法第26条第1項中「第3条の規定による引渡しの請求に関する」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第20条第1項に規定する」と、「第4条第1項各号」とあるのは「同項各号」と、同法第27条第3項中「第8条第1項」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第22条第2項において準用する第8条第1項後段」と、同法第29条中「拘束された日から2箇月(引渡条約に2箇月より短い期間の定めがあるときは、その期間)」とあるのは「拘束された日の翌日から60日」と読み替えるものとする。

 東京高等検察庁の検察官は、仮拘禁許可状により拘禁されている仮拘禁犯罪人の申立てにより又は職権で、拘禁によって著しく仮拘禁犯罪人の健康を害するおそれがあるときその他拘禁の継続が困難であると認めるときは、当該仮拘禁犯罪人の拘禁の停止をすることができる。

 第27条第2項から第7項まで及び逃亡犯罪人引渡法第22条第3項から第5項までの規定は、前項の規定による仮拘禁犯罪人の拘禁の停止及び当該拘禁の停止を取り消した場合について準用する。

 第3項の規定により仮拘禁許可状による拘禁の停止があった場合において、仮拘禁犯罪人に対し第2項において準用する逃亡犯罪人引渡法第27条第1項の規定による告知がされたときは、当該仮拘禁許可状による拘禁の停止は、第27条第1項の規定による拘禁の停止とみなす。

 第3項の規定により仮拘禁許可状による拘禁の停止があった場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、停止されている仮拘禁許可状による拘禁は、その効力を失う。

 仮拘禁犯罪人に対し、第2項において準用する逃亡犯罪人引渡法第26条第1項又は第28条第2項の規定による通知があったとき。

 仮拘禁犯罪人が仮拘禁許可状により拘束された日の翌日から60日以内に、当該仮拘禁犯罪人に対し、第2項において準用する逃亡犯罪人引渡法第27条第1項の規定による告知がないとき。

第3款 雑則

(行政手続法等の適用除外)

第36条 前二款の規定に基づいて行う処分については、行政手続法(平成5年法律第88号)第3章の規定は、適用しない。

 前二款の規定に基づいて行う処分(行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)第3条第2項に規定する処分をいう。)又は裁決(同条第3項に規定する裁決をいう。)に係る抗告訴訟(同条第1項に規定する抗告訴訟をいう。)については、同法第12条第4項及び第5項(これらの規定を同法第38条第1項において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。


(準用)

第37条 逃亡犯罪人引渡法第32条の規定は、前二款に定める東京高等裁判所若しくはその裁判官又は東京高等検察庁の検察官の職務の執行について準用する。

第4節 執行協力

(執行協力の要件)

第38条 執行協力は、請求犯罪が重大犯罪である場合には、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これを行うことができる。

 没収刑のための保全に係る執行協力については、請求犯罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき。ただし、当該事件について、国際刑事裁判所において、規程第17条1の規定により事件を受理する旨の決定をし、又は公判手続を開始しているときは、この限りでない。

 没収刑のための保全に係る執行協力については、請求犯罪に係る事件について日本国の裁判所において確定判決を経たとき。ただし、当該事件について、国際刑事裁判所において、規程第17条1の規定により事件を受理する旨の決定をし、又は有罪の判決の言渡しをしているときは、この限りでない。

 没収刑のための保全に係る執行協力については、請求犯罪につき日本国において刑罰を科すとした場合において、日本国の法令によれば当該執行協力の請求に係る財産が没収保全をすることができる財産に当たるものでないとき(当該請求に係る財産が、請求犯罪に係る行為によりその被害を受けた者から得た財産である場合には、その者又はその一般承継人に帰属することを理由として没収保全をすることができる財産に当たるものでないときを除く。)

 被害回復命令のための保全であってその内容及び性質を考慮して日本国の法令によれば没収の保全に相当するものに係る執行協力については、請求犯罪につき日本国において刑罰を科すとした場合において、日本国の法令によれば当該執行協力の請求に係る財産が没収保全をすることができる財産に当たるものでないとき(当該請求に係る財産が、重大犯罪に係る行為によりその被害を受けた者から得た財産であって、被害回復命令によりその者又はその一般承継人に返還すべきものである場合には、それらの者に帰属することを理由として没収保全をすることができる財産に当たるものでないときを除く。)

 被害回復命令のための保全であってその内容及び性質を考慮して日本国の法令によれば追徴の保全に相当するものに係る執行協力については、請求犯罪につき日本国において刑罰を科すとした場合において、日本国の法令によれば当該執行協力の請求に係る財産が追徴保全をすることができる財産に当たるものでないとき。

 執行協力は、請求犯罪が規程第70条1に規定する犯罪である場合には、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これを行うことができる。

 請求犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、日本国の法令によればこれについて刑罰を科すことができないと認められるとき。

 請求犯罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について日本国の裁判所において確定判決を経たとき。

 没収刑のための保全に係る執行協力については、請求犯罪につき日本国において刑罰を科すとした場合において、日本国の法令によれば当該執行協力の請求に係る財産が没収保全をすることができる財産に当たるものでないとき(当該請求に係る財産が、請求犯罪に係る行為によりその被害を受けた者から得た財産である場合には、その者又はその一般承継人に帰属することを理由として没収保全をすることができる財産に当たるものでないときを除く。)


(法務大臣の措置)

第39条 法務大臣は、外務大臣から第4条の規定により執行協力の請求に関する書面の送付を受けたときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、相当と認める地方検察庁の検事正に対し、関係書類を送付して、執行協力に必要な措置をとるよう命ずるものとする。

 前条第1項各号又は第2項各号のいずれかに該当すると認めるとき。

 執行協力の請求が組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成11年法律第136号。以下「組織的犯罪処罰法」という。)第59条第1項の規定による共助、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成3年法律第94号)第21条の規定による共助又は捜査共助の要請と競合し、かつ、規程の定めるところによりその要請を優先させることができる場合において、当該要請に係る措置をとることが相当であると認めるとき。

 執行協力の請求に応ずることにより、規程第98条1に規定する国際法に基づく義務に反することとなるとき。

 執行協力の請求に応ずることにより、請求犯罪以外の罪に係る事件で日本国の検察官、検察事務官若しくは司法警察職員によって捜査され又は日本国の裁判所に係属しているものについて、その捜査又は裁判を妨げるおそれがあり、直ちに当該請求に応ずることが相当でないと認めるとき。

 その他直ちに執行協力の請求に応じないことに正当な理由があるとき。

 法務大臣は、次の各号のいずれかに該当する場合には、あらかじめ、外務大臣と協議するものとする。

 前項第2号又は第3号のいずれかに該当することを理由として、執行協力に係る協力をしないこととするとき。

 前項第1号(前条第1項第1号及び第2号に係る部分に限る。)、第4号又は第5号のいずれかに該当することを理由として、前項の規定による命令を留保するとき。

 第6条第4項の規定は、第1項の規定による命令その他執行協力に関する措置をとる場合について準用する。


(検事正の措置及び審査の請求)

第40条 前条第1項の規定による命令を受けた検事正は、その庁の検察官に執行協力に必要な措置をとらせ、執行協力の実施に係る財産を保管しなければならない。

 前項の検察官は、執行協力の請求が罰金刑、没収刑又は被害回復命令の確定裁判の執行に係るものであるときは、裁判所に対し、執行協力をすることができる場合に該当するかどうかについて審査の請求をしなければならない。この場合において、当該請求が被害回復命令の確定裁判の執行に係るものであるときは、当該被害回復命令の内容及び性質を考慮し、これが日本国の法令によれば没収又は追徴の確定裁判のいずれに相当するかについて、意見を付さなければならない。


(裁判所の審査等)

第41条 裁判所は、審査の結果に基づいて、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める決定をしなければならない。

 前条第2項の審査の請求が不適法であるとき 却下する決定

 執行協力の請求に係る確定裁判の全部又は一部について執行協力をすることができる場合に該当するとき その旨の決定

 執行協力の請求に係る確定裁判の全部について執行協力をすることができる場合に該当しないとき その旨の決定

 裁判所は、被害回復命令の確定裁判に係る執行協力の請求について、前項第2号に定める決定をするときは、当該被害回復命令の内容及び性質に応じ、当該確定裁判が日本国の法令によれば没収又は追徴の確定裁判のいずれに相当するかを示さなければならない。

 裁判所は、没収刑の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について、第1項第2号に定める決定をするときは、滅失、毀損その他の事由により当該確定裁判を執行することができない場合にこれに代えて当該確定裁判を受けた者から追徴すべき日本円の金額を同時に示さなければならない。被害回復命令の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について、同号に定める決定をする場合において、前項の規定により当該確定裁判が没収の確定裁判に相当する旨を示すべきときも、同様とする。

 裁判所は、没収刑の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について、第1項第2号に定める決定をする場合において、請求犯罪につき日本国において刑罰を科すとした場合において日本国の法令によれば当該請求に係る財産が没収の裁判をすることができる財産に当たるものでないと認めるとき(当該請求に係る財産が、請求犯罪に係る行為によりその被害を受けた者から得た財産である場合には、その者又はその一般承継人に帰属することを理由として没収の裁判をすることができる財産に当たるものでないと認めるときを除く。)は、その旨及び当該確定裁判の執行に代えて当該確定裁判を受けた者から追徴すべき日本円の金額を同時に示さなければならない。

 裁判所は、被害回復命令の確定裁判に係る執行協力の請求について、第1項第2号に定める決定をする場合(第2項の規定により当該確定裁判が没収の確定裁判に相当する旨を示すべきときに限る。)において、請求犯罪につき日本国において刑罰を科すとした場合において日本国の法令によれば当該請求に係る財産が没収の裁判をすることができる財産に当たるものでないと認めるとき(当該請求に係る財産が、重大犯罪に係る行為によりその被害を受けた者から得た財産であって、被害回復命令によりその者又はその一般承継人に返還すべきものである場合には、それらの者に帰属することを理由として没収の裁判をすることができる財産に当たるものでないと認めるときを除く。)は、その旨及び当該確定裁判の執行に代えて当該確定裁判を受けた者から追徴すべき日本円の金額を同時に示さなければならない。

 裁判所は、没収刑の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について、第1項第2号に定める決定をする場合において、当該確定裁判に係る目的とされている財産を有し又はその財産の上に地上権、抵当権その他の権利を有すると思料するに足りる相当な理由のある者が、自己の責めに帰することのできない理由により、当該確定裁判に係る手続において自己の権利を主張することができなかったと認めるときは、その旨及び当該確定裁判の執行に代えて当該確定裁判を受けた者から追徴すべき日本円の金額を同時に示さなければならない。被害回復命令の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について、同号に定める決定をする場合(第2項の規定により当該確定裁判が没収の確定裁判に相当する旨を示すべきときに限る。)においても、同様とする。

 前条第2項の規定による審査に関しては、没収刑の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について、当該請求に係る財産を有し若しくはその財産の上に地上権、抵当権その他の権利を有すると思料するに足りる相当な理由のある者又はこれらの財産若しくは権利について没収刑のための保全がされる前に強制競売の開始決定、強制執行による差押え若しくは仮差押えの執行がされている場合における差押債権者若しくは仮差押債権者が、当該審査請求事件の手続への参加を許されていないときは、第1項第2号に定める決定をすることができない。被害回復命令の確定裁判であってその内容及び性質を考慮して日本国の法令によれば没収の確定裁判に相当すると認めるものに係る同号に定める決定についても、同様とする。

 組織的犯罪処罰法第59条第3項及び第62条第3項の規定は没収刑の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について第1項第2号に定める決定をする場合(被害回復命令の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について、同号に定める決定をする場合において、第2項の規定により当該確定裁判が没収の確定裁判に相当する旨を示すべきときを含む。)について、同条第5項及び第7項から第9項までの規定は執行協力の請求に係る前条第2項の規定による審査について、組織的犯罪処罰法第63条の規定は前条第2項の審査の請求に係る決定に対する抗告について、それぞれ準用する。


(執行協力の実施に関する決定の効力等)

第42条 次の各号に掲げる確定裁判の執行に係る執行協力の請求について、前条第1項第2号に定める決定が確定したときは、当該確定裁判は、執行協力の実施に関しては、それぞれ、当該各号に定める日本国の裁判所が言い渡した確定裁判とみなす。

 罰金刑の確定裁判 罰金の確定裁判

 没収刑及び前条第2項の規定により没収の確定裁判に相当する旨が示された被害回復命令の確定裁判(次号に掲げるものを除く。) 没収の確定裁判

 没収刑又は前条第2項の規定により没収の確定裁判に相当する旨が示された被害回復命令であって、同条第4項から第6項までの規定により追徴すべき日本円の金額が示されたものの確定裁判 追徴の確定裁判

 前条第2項の規定により追徴の確定裁判に相当する旨が示された被害回復命令の確定裁判 追徴の確定裁判

 前項第2号に掲げる確定裁判についての執行協力を実施する場合において、その没収刑又は被害回復命令の目的とされている財産について、滅失、毀損その他の事由により当該確定裁判を執行することができないときは、同項の規定にかかわらず、当該確定裁判は、これを受けた者から前条第3項の規定により示された金額を追徴する旨の日本国の裁判所が言い渡した確定裁判とみなす。

 検察官は、第1項第2号に掲げる確定裁判についての執行協力の実施に係る財産で、国際刑事裁判所への送付に適さないものについては、これを売却することができる。この場合において、その代価は、当該確定裁判についての執行協力の実施に係る財産とみなす。

 検事正は、罰金刑、没収刑又は被害回復命令の確定裁判の執行に係る執行協力の実施を終えたときは、速やかに、その執行協力の実施に係る財産を法務大臣に引き渡さなければならない。

 組織的犯罪処罰法第65条の規定は、第1項に規定する執行協力の請求に係る前条第1項第2号に定める決定の取消しについて準用する。この場合において、組織的犯罪処罰法第65条第2項中「没収」とあるのは「罰金、没収」と、同条第3項中「第63条」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律(平成19年法律第37号)第41条第8項において準用する第63条」と読み替えるものとする。


(没収保全の請求)

第43条 検察官は、執行協力の請求が、没収刑のための保全に係るものであるとき、又は被害回復命令のための保全に係るものであってその内容及び性質を考慮して日本国の法令によれば没収の保全に相当するものであると認めるときは、裁判官に、没収保全命令を発して当該請求に係る財産についてその処分を禁止することを請求しなければならない。この場合において、検察官は、必要と認めるときは、附帯保全命令を発して当該財産の上に存在する地上権、抵当権その他の権利の処分を禁止することを請求することができる。

 第40条第2項の審査の請求があった後は、前項の没収刑又は被害回復命令のための保全に関する処分は、その審査の請求を受けた裁判所が行う。


(没収保全命令)

第44条 裁判所又は裁判官は、前条第1項前段の規定による請求を受けた場合において、第38条第1項各号及び第2項各号のいずれにも該当しないと認めるときは、没収保全命令を発して、当該請求に係る財産について、この節の定めるところにより、その処分を禁止するものとする。

 裁判所又は裁判官は、地上権、抵当権その他の権利がその上に存在する財産について没収保全命令を発した場合又は発しようとする場合において、当該権利が没収刑の執行によって消滅すると思料するに足りる相当な理由がある場合であってその執行のため必要があると認めるとき、又は当該権利が仮装のものであると思料するに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官の請求により、附帯保全命令を別に発して、当該権利の処分を禁止することができる。

 組織的犯罪処罰法第22条第3項、第4項及び第6項並びに第23条第6項の規定は、第1項の没収保全命令又は前項の附帯保全命令について準用する。この場合において、組織的犯罪処罰法第22条第3項中「被告人」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第2条第10号に規定する没収刑又は被害回復命令の裁判を受けるべき者」と、「公訴事実」とあるのは「同条第12号に規定する請求犯罪」と、同条第4項中「第1項若しくは第2項」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第44条第1項若しくは第2項」と、組織的犯罪処罰法第23条第6項中「第1項又は第4項」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第43条第1項」と読み替えるものとする。

 第1項の没収保全命令又は第2項の附帯保全命令については、国際刑事裁判所において規程第61条1に規定する審理が行われる前であっても、これをすることができる。

 組織的犯罪処罰法第23条第7項及び第68条の規定は、前項の場合における没収保全命令について準用する。この場合において、組織的犯罪処罰法第23条第7項中「公訴の提起があった」とあるのは「国際刑事裁判所に関するローマ規程第61条1に規定する審理が開始された」と、「被告人」とあるのは「当該審理の対象とされる者」と、組織的犯罪処罰法第68条第1項中「没収又は追徴のための保全の共助の要請が公訴の提起されていない」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第2条第10号に規定する没収刑又は被害回復命令のための保全に係る同号に規定する執行協力の請求が国際刑事裁判所に関するローマ規程第61条1に規定する審理が開始されていない」と、「要請国」とあるのは「国際刑事裁判所」と、「公訴が提起された」とあるのは「当該審理が開始された」と、同条第2項中「要請国」とあるのは「国際刑事裁判所」と、「公訴を提起できない」とあるのは「国際刑事裁判所に関するローマ規程第61条1に規定する審理を行うことができない」と読み替えるものとする。

 前項において準用する組織的犯罪処罰法第68条第2項の規定による更新の裁判は、検察官に告知された時にその効力を生ずる。


(追徴保全の請求)

第45条 検察官は、執行協力の請求が、被害回復命令のための保全に係るものであってその内容及び性質を考慮して日本国の法令によれば追徴の保全に相当するものであると認めるときは、裁判官に、追徴保全命令を発して被害回復命令の裁判を受けるべき者に対しその財産の処分を禁止することを請求しなければならない。

 第43条第2項の規定は、前項の被害回復命令のための保全に関する処分について準用する。


(追徴保全命令)

第46条 裁判所又は裁判官は、前条第1項の規定による請求を受けた場合において、第38条第1項各号及び第2項各号のいずれにも該当しないと認めるときは、追徴保全命令を発して、被害回復命令の裁判を受けるべき者に対し、その財産の処分を禁止するものとする。

 組織的犯罪処罰法第22条第4項、第23条第6項及び第42条第2項から第4項までの規定は、前項の追徴保全命令について準用する。この場合において、組織的犯罪処罰法第22条第4項中「第1項若しくは第2項」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第46条第1項」と、組織的犯罪処罰法第23条第6項中「第1項又は第4項」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第45条第1項」と、組織的犯罪処罰法第42条第3項及び第4項中「被告人」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第2条第10号に規定する被害回復命令の裁判を受けるべき者」と、同項中「公訴事実」とあるのは「同条第12号に規定する請求犯罪」と読み替えるものとする。


(準用)

第47条 この節に特別の定めがあるもののほか、裁判所若しくは裁判官のする審査、処分若しくは令状の発付、検察官若しくは検察事務官のする処分又は裁判所の審査への利害関係人の参加については組織的犯罪処罰法第3章、第4章(第22条、第23条、第32条、第33条、第42条、第43条、第47条及び第48条を除く。)及び第69条から第72条まで、刑事訴訟法(第1編第2章及び第5章から第13章まで、第2編第1章、第3編第1章及び第4章並びに第7編に限る。)、刑事訴訟費用に関する法令並びに刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法(昭和38年法律第138号)の規定を、執行協力の請求を受理した場合における措置については逃亡犯罪人引渡法第8条第2項並びに第11条第1項及び第2項の規定を、それぞれその性質に反しない限り、準用する。


(政令への委任)

第48条 この節に定めるもののほか、没収保全命令による処分の禁止と滞納処分との手続の調整について必要な事項で、滞納処分に関するものは、政令で定める。

第5節 雑則

(通過護送の承認)

第49条 外務大臣は、国際刑事裁判所から通過護送(外国の官憲又は国際刑事裁判所の指定する者(次条において「外国官憲等」という。)が規程第89条1の規定による引渡しの対象となる者(次条において「引渡対象者」という。)を日本国内を通過して護送することをいう。次条において同じ。)の承認の請求があったときは、請求の方式が規程に適合しないと認める場合を除き、これを承認するものとする。


(護送中の着陸があった場合の措置)

第50条 警察官又は入国警備官は、外国官憲等が護送(前条の規定による承認を受けた通過護送を除く。)中の引渡対象者が搭乗する航空機が天候その他やむを得ない理由により日本国内に着陸した場合において、当該引渡対象者を発見したときは、外国官憲等に引き渡すため、これを拘束することができる。

 入国警備官は、前項の規定により引渡対象者を拘束したときは、これを直ちに警察官に引き渡すものとする。この場合において、警察官は、当該引渡対象者を引き続き拘束することができる。

 前二項の規定による引渡対象者の拘束は、着陸の時から96時間を超えて行うことができない。

 第1項の規定により引渡対象者を拘束した警察官又は第2項の規定により引渡対象者の引渡しを受けた警察官は、外務大臣に対し、その旨を通知するものとする。

 外務大臣は、前項の通知を受けたときは、国際刑事裁判所に対し、引渡対象者を拘束した旨を通報するものとする。

 外務大臣は、国際刑事裁判所から前条の通過護送の承認の請求を受理したときは、第4項の警察官に対し、その旨を通知するものとする。

 第3項に規定する期間内に前条の通過護送の承認の請求が受理された場合には、警察官は、同項の規定にかかわらず、引渡対象者の護送を行う外国官憲等に引渡対象者を引き渡すまでの間、当該引渡対象者を引き続き拘束することができる。ただし、外務大臣から当該通過護送の承認をしない旨の通知を受けた場合には、その拘束を続けることができない。

 警察官は、第3項又は前項の規定により引渡対象者の拘束を続けることができなくなったときは、これを入国警備官に引き渡すものとする。

 前各項に定めるもののほか、警察官による引渡対象者の拘束に関する手続について必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。


(最高裁判所規則)

第51条 この章に定めるもののほか、証拠の提供に関する令状の発付、証人尋問及び不服申立てに関する手続、引渡犯罪人の引渡し及び仮拘禁に関する裁判所の審査及び令状の発付に関する手続並びに執行協力に関する手続について必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

第3章 国際刑事警察機構に対する措置

第52条 国家公安委員会は、国際刑事裁判所から国際刑事警察機構を通じて管轄刑事事件の捜査に関する措置の請求を受けたときは、第6条第1項第4号に該当する場合を除き、次の各号のいずれかの措置をとることができる。

 相当と認める都道府県警察に必要な調査を指示すること。

 第6条第2項第3号の国の機関の長に当該措置の請求に関する書面を送付すること。

 国際捜査共助等に関する法律第18条第3項から第8項までの規定は、前項に規定する請求に係る措置について準用する。この場合において、同条第4項中「同項第2号」とあり、及び同条第7項中「第1項第2号」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第52条第1項第2号」と、同条第6項中「第1項第1号」とあるのは「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第52条第1項第1号」と読み替えるものとする。

第4章 国際刑事裁判所の運営を害する罪

(証拠隠滅等)

第53条 他人の管轄刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

 犯人の親族が犯人の利益のために前項の罪を犯したときは、その刑を免除することができる。


(証人等威迫)

第54条 自己若しくは他人の管轄刑事事件の捜査若しくは裁判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、その事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。


(証人等買収)

第55条 自己又は他人の管轄刑事事件に関し、証言をしないこと、若しくは虚偽の証言をすること、又は証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造すること、若しくは偽造若しくは変造の証拠を使用することの報酬として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。


(組織的な犯罪に係る証拠隠滅等)

第56条 規程が定める罪に当たる行為が、団体(共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。以下この項において同じ。)により反復して行われるものをいう。次項において同じ。)の活動として、当該行為を実行するための組織により行われた場合において、その罪に係る管轄刑事事件について前三条(第53条第2項を除く。次項において同じ。)のいずれかに該当する行為をした者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

 規程が定める罪が、団体に不正権益(団体の威力に基づく一定の地域又は分野における支配力であって、当該団体の構成員による犯罪その他の不正な行為により当該団体又はその構成員が継続的に利益を得ることを容易にすべきものをいう。以下この項において同じ。)を得させ、又は団体の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で犯された場合において、その罪に係る管轄刑事事件について前三条のいずれかに該当する行為をした者も、前項と同様とする。


(偽証等)

第57条 規程第69条1に定めるところに従って宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、3月以上10年以下の懲役に処する。

 前項の罪を犯した者が、その証言をした管轄刑事事件について、その裁判が確定する前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。

 国際刑事裁判所における手続に従って宣誓した鑑定人、通訳人又は翻訳人が虚偽の鑑定、通訳又は翻訳をしたときは、前二項の例による。


(収賄、受託収賄及び事前収賄)

第58条 国際刑事裁判所の裁判官、検察官その他の職員(以下「国際刑事裁判所職員」という。)が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、7年以下の懲役に処する。

 国際刑事裁判所職員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、国際刑事裁判所職員となった場合において、5年以下の懲役に処する。


(第三者供賄)

第59条 国際刑事裁判所職員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。


(加重収賄及び事後収賄)

第60条 国際刑事裁判所職員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、1年以上の有期懲役に処する。

 国際刑事裁判所職員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。

 国際刑事裁判所職員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。


(あっせん収賄)

第61条 国際刑事裁判所職員が請託を受け、他の国際刑事裁判所職員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。


(没収及び追徴)

第62条 犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。


(贈賄)

第63条 第58条から第61条までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、3年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処する。


(職務執行妨害及び職務強要)

第64条 国際刑事裁判所職員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

 国際刑事裁判所職員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。


(国民の国外犯)

第65条 この章の罪は、刑法第3条の例に従う。

附 則
(施行期日)

第1条 この法律は、規程が日本国について効力を生ずる日から施行する。


(経過措置)

第2条 この法律の施行前に犯された請求犯罪又は引渡犯罪に係る協力の請求については、第2章の規定は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、適用しない。

 国際刑事裁判所が規程第13条(b)の規定により管轄権を行使するとき。

 当該請求犯罪又は引渡犯罪が、規程の締約国である外国について規程が効力を生じた後に、当該外国内若しくはその国籍を有する船舶若しくは航空機内で犯され、又は当該外国の国籍を有する者により犯されたものであるとき。

 当該請求犯罪又は引渡犯罪が、規程第12条3の規定により当該請求犯罪若しくは引渡犯罪について国際刑事裁判所の管轄権の行使を受諾した国の国内若しくはその国籍を有する船舶若しくは航空機内で犯され、又は当該国の国籍を有する者により犯されたものであるとき。

 前項の規定は、国際刑事警察機構を通じた管轄刑事事件の捜査に関する措置の請求に係る第3章の規定の適用について準用する。

附 則(平成23年6月24日法律第74号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して20日を経過した日から施行する。

附 則(平成28年6月3日法律第54号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

 略

 第1条(刑事訴訟法第90条、第151条及び第161条の改正規定に限る。)、第3条、第5条及び第8条の規定並びに附則第3条及び第5条の規定 公布の日から起算して20日を経過した日

附 則(平成29年6月21日法律第67号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して20日を経過した日から施行する。