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所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法

平成30年法律第49号
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第1章 総則

(目的)

第1条 この法律は、社会経済情勢の変化に伴い所有者不明土地が増加していることに鑑み、所有者不明土地の利用の円滑化及び土地の所有者の効果的な探索を図るため、国土交通大臣及び法務大臣による基本方針の策定について定めるとともに、地域福利増進事業の実施のための措置、所有者不明土地の収用又は使用に関する土地収用法(昭和26年法律第219号)の特例、土地の所有者等に関する情報の利用及び提供その他の特別の措置を講じ、もって国土の適正かつ合理的な利用に寄与することを目的とする。


(定義)

第2条 この法律において「所有者不明土地」とは、相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地をいう。

 この法律において「特定所有者不明土地」とは、所有者不明土地のうち、現に建築物(物置その他の政令で定める簡易な構造の建築物で政令で定める規模未満のもの(以下「簡易建築物」という。)を除く。)が存せず、かつ、業務の用その他の特別の用途に供されていない土地をいう。

 この法律において「地域福利増進事業」とは、次に掲げる事業であって、地域住民その他の者の共同の福祉又は利便の増進を図るために行われるものをいう。

 道路法(昭和27年法律第180号)による道路、駐車場法(昭和32年法律第106号)による路外駐車場その他一般交通の用に供する施設の整備に関する事業

 学校教育法(昭和22年法律第26号)による学校又はこれに準ずるその他の教育のための施設の整備に関する事業

 社会教育法(昭和24年法律第207号)による公民館(同法第42条に規定する公民館に類似する施設を含む。)又は図書館法(昭和25年法律第118号)による図書館(同法第29条に規定する図書館と同種の施設を含む。)の整備に関する事業

 社会福祉法(昭和26年法律第45号)による社会福祉事業の用に供する施設の整備に関する事業

 病院、療養所、診療所又は助産所の整備に関する事業

 公園、緑地、広場又は運動場の整備に関する事業

 住宅(被災者の居住の用に供するものに限る。)の整備に関する事業であって、災害(発生した日から起算して3年を経過していないものに限る。次号イにおいて同じ。)に際し災害救助法(昭和22年法律第118号)が適用された同法第2条に規定する市町村の区域内において行われるもの

 購買施設、教養文化施設その他の施設で地域住民その他の者の共同の福祉又は利便の増進に資するものとして政令で定めるものの整備に関する事業であって、次に掲げる区域内において行われるもの

 災害に際し災害救助法が適用された同法第2条に規定する市町村の区域

 その周辺の地域において当該施設と同種の施設が著しく不足している区域

 前各号に掲げる事業のほか、土地収用法第3条各号に掲げるもののうち地域住民その他の者の共同の福祉又は利便の増進に資するものとして政令で定めるものの整備に関する事業

 前各号に掲げる事業のために欠くことができない通路、材料置場その他の施設の整備に関する事業

 この法律において「特定登記未了土地」とは、所有権の登記名義人の死亡後に相続登記等(相続による所有権の移転の登記その他の所有権の登記をいう。以下同じ。)がされていない土地であって、土地収用法第3条各号に掲げるものに関する事業(第27条第1項及び第39条第1項において「収用適格事業」という。)を実施しようとする区域の適切な選定その他の公共の利益となる事業の円滑な遂行を図るため当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を探索する必要があるものをいう。

第2章 基本方針等

(基本方針)

第3条 国土交通大臣及び法務大臣は、所有者不明土地の利用の円滑化及び土地の所有者の効果的な探索(以下「所有者不明土地の利用の円滑化等」という。)に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。

 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 所有者不明土地の利用の円滑化等の意義及び基本的な方向

 所有者不明土地の利用の円滑化等のための施策に関する基本的な事項

 特定所有者不明土地を使用する地域福利増進事業に関する基本的な事項

 特定登記未了土地の相続登記等の促進に関する基本的な事項

 前各号に掲げるもののほか、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する重要事項

 国土交通大臣及び法務大臣は、基本方針を定めようとするときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。

 国土交通大臣及び法務大臣は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。


(国の責務)

第4条 国は、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

 国は、地方公共団体その他の者が行う所有者不明土地の利用の円滑化等に関する取組のために必要となる情報の収集及び提供その他の支援を行うよう努めなければならない。

 国は、広報活動、啓発活動その他の活動を通じて、所有者不明土地の利用の円滑化等に関し、国民の理解を深めるよう努めなければならない。


(地方公共団体の責務)

第5条 地方公共団体は、所有者不明土地の利用の円滑化等に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の実情に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

第3章 所有者不明土地の利用の円滑化のための特別の措置

第1節 地域福利増進事業の実施のための措置

第1款 地域福利増進事業の実施の準備

(特定所有者不明土地への立入り等)

第6条 地域福利増進事業を実施しようとする者は、その準備のため他人の土地(特定所有者不明土地に限る。次条第1項及び第8条第1項において同じ。)又は当該土地にある簡易建築物その他の工作物に立ち入って測量又は調査を行う必要があるときは、その必要の限度において、当該土地又は工作物に、自ら立ち入り、又はその命じた者若しくは委任した者に立ち入らせることができる。ただし、地域福利増進事業を実施しようとする者が国及び地方公共団体以外の者であるときは、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、当該土地の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けた場合に限る。


(障害物の伐採等)

第7条 前条の規定により他人の土地又は工作物に立ち入って測量又は調査を行う者は、その測量又は調査を行うに当たり、やむを得ない必要があって、障害となる植物又は垣、柵その他の工作物(以下「障害物」という。)の伐採又は除去(以下「伐採等」という。)をしようとするときは、国土交通省令で定めるところにより当該障害物の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けて、伐採等をすることができる。この場合において、都道府県知事は、許可を与えようとするときは、あらかじめ、当該障害物の確知所有者(所有者で知れているものをいう。以下同じ。)に対し、意見を述べる機会を与えなければならない。

 前項の規定により障害物の伐採等をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、その旨を、伐採等をしようとする日の15日前までに公告するとともに、伐採等をしようとする日の3日前までに当該障害物の確知所有者に通知しなければならない。

 第1項の規定により障害物の伐採等をしようとする者は、その現状を著しく損傷しないときは、前二項の規定にかかわらず、国土交通省令で定めるところにより当該障害物の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けて、直ちに伐採等をすることができる。この場合においては、伐採等をした後遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、その旨を、公告するとともに、当該障害物の確知所有者に通知しなければならない。


(証明書等の携帯)

第8条 第6条の規定により他人の土地又は工作物に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書(国及び地方公共団体以外の者にあっては、その身分を示す証明書及び同条ただし書の許可を受けたことを証する書面)を携帯しなければならない。

 前条第1項又は第3項の規定により障害物の伐採等をしようとする者は、その身分を示す証明書及び同条第1項又は第3項の許可を受けたことを証する書面を携帯しなければならない。

 前二項の証明書又は書面は、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。


(損失の補償)

第9条 地域福利増進事業を実施しようとする者は、第6条又は第7条第1項若しくは第3項の規定による行為により他人に損失を与えたときは、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。

 前項の規定による損失の補償については、損失を与えた者と損失を受けた者とが協議しなければならない。

 前項の規定による協議が成立しないときは、損失を与えた者又は損失を受けた者は、政令で定めるところにより、収用委員会に土地収用法第94条第2項の規定による裁決を申請することができる。

第2款 裁定による特定所有者不明土地の使用

(裁定申請)

第10条 地域福利増進事業を実施する者(以下「事業者」という。)は、当該事業を実施する区域(以下「事業区域」という。)内にある特定所有者不明土地を使用しようとするときは、当該特定所有者不明土地の所在地を管轄する都道府県知事に対し、次に掲げる権利(以下「土地使用権等」という。)の取得についての裁定を申請することができる。

 当該特定所有者不明土地の使用権(以下「土地使用権」という。)

 当該特定所有者不明土地にある所有者不明物件(相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない物件をいう。第3項第2号において同じ。)の所有権(次項第7号において「物件所有権」という。)又はその使用権(同項第8号において「物件使用権」という。)

 前項の規定による裁定の申請(以下この款において「裁定申請」という。)をしようとする事業者は、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した裁定申請書を都道府県知事に提出しなければならない。

 事業者の氏名又は名称及び住所

 事業の種別(第2条第3項各号に掲げる事業の別をいう。)

 事業区域

 裁定申請をする理由

 土地使用権の目的となる特定所有者不明土地(以下この款(次条第1項第2号を除く。)において単に「特定所有者不明土地」という。)の所在、地番、地目及び地積

 特定所有者不明土地の所有者の全部又は一部を確知することができない事情

 土地使用権等の始期(物件所有権にあっては、その取得の時期。以下同じ。)

 土地等使用権(土地使用権又は物件使用権をいう。以下同じ。)の存続期間

 前項の裁定申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。

 次に掲げる事項を記載した事業計画書

 事業により整備する施設の種類、位置、規模、構造及び利用条件

 事業区域

 事業区域内にある土地で特定所有者不明土地以外のもの及び当該土地にある物件に関する所有権その他の権利の取得に関する計画(次条第1項第5号において「権利取得計画」という。)

 資金計画

 土地等使用権の存続期間の満了後に特定所有者不明土地を原状に回復するための措置の内容

 その他国土交通省令で定める事項

 次に掲げる事項を記載した補償金額見積書

 特定所有者不明土地の面積(特定所有者不明土地を含む一団の土地が分割されることとなる場合にあっては、当該一団の土地の全部の面積を含む。)

 特定所有者不明土地にある所有者不明物件の種類及び数量

 特定所有者不明土地等(特定所有者不明土地又は当該特定所有者不明土地にある所有者不明物件をいう。以下この款において同じ。)の確知所有者の全部の氏名又は名称及び住所

 特定所有者不明土地等の確知権利者(土地又は当該土地にある物件に関し所有権以外の権利を有する者であって、相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなお確知することができないもの以外の者をいう。次条第5項及び第17条第1項において同じ。)の全部の氏名又は名称及び住所並びにその権利の種類及び内容

 土地使用権等を取得することにより特定所有者不明土地所有者等(特定所有者不明土地等に関し所有権その他の権利を有する者をいう。以下この款において同じ。)が受ける損失の補償金の見積額及びその内訳

 事業区域の利用について法令の規定による制限があるときは、当該法令の施行について権限を有する行政機関の長の意見書

 事業の実施に関して行政機関の長の許可、認可その他の処分を必要とする場合においては、これらの処分があったことを証する書類又は当該行政機関の長の意見書

 その他国土交通省令で定める書類

 前項第3号及び第4号の意見書は、事業者が意見を求めた日から3週間を経過してもこれを得ることができなかったときは、添付することを要しない。この場合においては、意見書を得ることができなかった事情を疎明する書類を添付しなければならない。

 事業者は、裁定申請をしようとするときは、当該裁定申請に係る事業の内容について、あらかじめ、協議会の開催その他の国土交通省令で定める方法により、住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。


(公告及び縦覧)

第11条 都道府県知事は、裁定申請があったときは、当該裁定申請に係る事業が次の各号に掲げる要件のいずれにも該当するかどうかを確認しなければならない。

 事業が地域福利増進事業に該当し、かつ、土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであること。

 土地使用権の目的となる土地が特定所有者不明土地に該当するものであること。

 土地等使用権の存続期間が事業の実施のために必要な期間を超えないものであること。

 事業により整備される施設の利用条件がその公平かつ適正な利用を図る観点から適切なものであること。

 権利取得計画及び資金計画が事業を確実に遂行するため適切なものであること。

 土地等使用権の存続期間の満了後に第2号の土地を原状に回復するための措置が適正かつ確実に行われると見込まれるものであること。

 事業者が事業を遂行する十分な意思と能力を有する者であること。

 その他基本方針に照らして適切なものであること。

 都道府県知事は、前項の規定による確認をしようとするときは、あらかじめ、地域住民その他の者の共同の福祉又は利便の増進を図る見地からの関係市町村長の意見を聴かなければならない。

 都道府県知事は、第1項の規定による確認をしようとする場合において、前条第4項の規定により意見書の添付がなかったときその他必要があると認めるときは、裁定申請に係る事業の実施について関係のある行政機関の長の意見を求めなければならない。

 都道府県知事は、第1項の規定による確認の結果、裁定申請に係る事業が同項各号に掲げる要件のいずれにも該当すると認めるときは、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を公告し、前条第2項の裁定申請書及びこれに添付された同条第3項各号に掲げる書類を当該公告の日から6月間公衆の縦覧に供しなければならない。

 裁定申請があった旨

 特定所有者不明土地の所在、地番及び地目

 次のイ又はロに掲げる者は、縦覧期間内に、国土交通省令で定めるところにより、その権原を証する書面を添えて、都道府県知事に当該イ又はロに定める事項を申し出るべき旨

 特定所有者不明土地又は当該特定所有者不明土地にある物件に関し所有権その他の権利を有する者であって、前条第2項の裁定申請書、同条第3項第1号の事業計画書又は同項第2号の補償金額見積書に記載された事項(裁定申請書にあっては、同条第2項第1号及び第6号に掲げる事項を除く。)について異議のあるもの 当該異議の内容及びその理由

 特定所有者不明土地の所有者であって、前条第3項第2号の補償金額見積書に特定所有者不明土地の確知所有者として記載されていないもの(イに掲げる者を除く。) 当該特定所有者不明土地の所有者である旨

 その他国土交通省令で定める事項

 都道府県知事は、前項の規定による公告をしようとするときは、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、裁定申請があった旨を、前条第3項第2号の補償金額見積書に記載された特定所有者不明土地等の確知所有者及び確知権利者に通知しなければならない。


(裁定申請の却下)

第12条 都道府県知事は、前条第1項の規定による確認の結果、裁定申請に係る事業が同項各号に掲げる要件のいずれかに該当しないと認めるときは、当該裁定申請を却下しなければならない。

 都道府県知事は、前条第4項の規定による公告をした場合において、同項の縦覧期間内に同項第3号イの規定による申出があったとき又は同号ロに掲げる者の全てから同号ロの規定による申出があったときは、当該公告に係る裁定申請を却下しなければならない。

 都道府県知事は、前二項の規定により裁定申請を却下したときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、その理由を示して、その旨を当該裁定申請をした事業者に通知しなければならない。


(裁定)

第13条 都道府県知事は、前条第1項又は第2項の規定により裁定申請を却下する場合を除き、裁定申請をした事業者が土地使用権等を取得することが当該裁定申請に係る事業を実施するため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、土地使用権等の取得についての裁定をしなければならない。

 前項の裁定(以下この条から第18条までにおいて単に「裁定」という。)においては、次に掲げる事項を定めなければならない。

 特定所有者不明土地の所在、地番、地目及び面積

 土地使用権等の始期

 土地等使用権の存続期間

 土地使用権等を取得することにより特定所有者不明土地所有者等が受ける損失の補償金の額

 裁定は、前項第1号に掲げる事項については裁定申請の範囲を超えてはならず、同項第3号の存続期間については裁定申請の範囲内かつ10年を限度としなければならず、同項第4号の補償金の額については裁定申請に係る補償金の見積額を下限としなければならない。

 都道府県知事は、裁定をしようとするときは、第2項第4号に掲げる事項について、あらかじめ、収用委員会の意見を聴かなければならない。

 収用委員会は、前項の規定により意見を述べるため必要があると認めるときは、その委員又はその事務を整理する職員に、裁定申請に係る特定所有者不明土地又は当該特定所有者不明土地にある簡易建築物その他の工作物に立ち入り、その状況を調査させることができる。

 前項の規定により立入調査をする委員又は職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。

 第5項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。


(裁定の通知等)

第14条 都道府県知事は、裁定をしたときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、その旨及び前条第2項各号に掲げる事項を、裁定申請をした事業者及び当該事業に係る特定所有者不明土地所有者等で知れているものに文書で通知するとともに、公告しなければならない。


(裁定の効果)

第15条 裁定について前条の規定による公告があったときは、当該裁定の定めるところにより、裁定申請をした事業者は、土地使用権等を取得し、特定所有者不明土地等に関するその他の権利は、当該事業者による当該特定所有者不明土地等の使用のため必要な限度においてその行使を制限される。


(損失の補償)

第16条 裁定申請をした事業者は、次項から第6項までに定めるところにより、土地使用権等を取得することにより特定所有者不明土地所有者等が受ける損失を補償しなければならない。

 損失の補償は、金銭をもってするものとする。

 土地使用権等の取得の対価の額に相当する補償金の額は、近傍類似の土地又は近傍同種の物件の借賃その他の当該補償金の額の算定の基礎となる事項を考慮して定める相当の額とする。

 特定所有者不明土地の一部を使用することにより残地の価格が減じ、その他残地に関して損失が生ずるときは、当該損失を補償しなければならない。

 特定所有者不明土地の一部を使用することにより残地に通路、溝、垣その他の工作物の新築、改築、増築若しくは修繕又は盛土若しくは切土をする必要が生ずるときは、これに要する費用を補償しなければならない。

 前三項の規定による補償のほか、土地使用権等を取得することにより特定所有者不明土地所有者等が通常受ける損失は、補償しなければならない。


(補償金の供託)

第17条 裁定申請をした事業者は、裁定において定められた土地使用権等の始期までに、当該裁定において定められた補償金を特定所有者不明土地所有者等で確知することができないもの(補償金の供託の対象となる特定所有者不明土地等の共有持分の割合が明らかでない場合にあっては、当該特定所有者不明土地等の確知所有者及び確知権利者を含む。)のために供託しなければならない。

 前項の規定による補償金の供託は、当該特定所有者不明土地の所在地の供託所にするものとする。


(裁定の失効)

第18条 裁定申請をした事業者が裁定において定められた土地使用権等の始期までに当該裁定において定められた補償金の供託をしないときは、当該裁定は、その時以後その効力を失う。


(土地等使用権の存続期間の延長)

第19条 第15条の規定により土地使用権等を取得した事業者(以下「使用権者」という。)は、第13条第1項の裁定において定められた土地等使用権の存続期間(第4項において準用する第15条の規定により土地等使用権の存続期間が延長された場合にあっては、当該延長後の存続期間。第3項及び第24条において同じ。)を延長して使用権設定土地(第15条の規定により取得された土地使用権の目的となっている土地をいう。以下同じ。)の全部又は一部を使用しようとするときは、当該存続期間の満了の日の9月前から6月前までの間に、当該使用権設定土地の所在地を管轄する都道府県知事に対し、土地等使用権の存続期間の延長についての裁定を申請することができる。

 第10条(第1項及び第5項を除く。)から第12条までの規定は、前項の規定による裁定の申請について準用する。この場合において、次の表の上欄に掲げる規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

第10条第2項

次に掲げる事項

第1号から第6号まで及び第8号に掲げる事項

第10条第2項第5号

土地使用権の目的となる特定所有者不明土地(以下この款(次条第1項第2号を除く。)において単に「特定所有者不明土地」という。)

第19条第1項に規定する使用権設定土地(その一部を使用しようとする場合にあっては、当該使用に係る土地の部分に限る。以下単に「使用権設定土地」という。)

第10条第2項第6号並びに第3項第1号ハ及びホ並びに第2号イ及びロ並びに第11条第4項第2号及び第3号

特定所有者不明土地

使用権設定土地

第10条第2項第8号

存続期間

存続期間を延長する期間及び当該延長後の存続期間

第10条第3項第1号ホ及び第11条第1項第6号

存続期間

延長後の存続期間

第10条第3項第2号ハからホまで及び第11条第5項

特定所有者不明土地等

使用権設定土地等

第10条第3項第2号ハ

特定所有者不明土地又は当該特定所有者不明土地

使用権設定土地又は当該使用権設定土地

第10条第3項第2号ホ

土地使用権等を取得する

土地等使用権の存続期間を延長する

特定所有者不明土地所有者等

使用権設定土地所有者等

第11条第1項第2号

特定所有者不明土地

所有者不明土地

第11条第1項第3号

存続期間

存続期間を延長する期間

第11条第4項

6月間

3月間

 都道府県知事は、前項において準用する第12条第1項又は第2項の規定により第1項の規定による裁定の申請を却下する場合を除き、同項の規定による裁定の申請をした使用権者が有する土地等使用権の存続期間を延長することが当該申請に係る事業を実施するため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、土地等使用権の存続期間の延長についての裁定をしなければならない。

 第13条(第1項を除く。)から前条までの規定は、前項の裁定について準用する。この場合において、次の表の上欄に掲げる規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

第13条第2項

次に掲げる事項

第1号、第3号及び第4号に掲げる事項

第13条第2項第1号

特定所有者不明土地

第19条第1項に規定する使用権設定土地(その一部を使用しようとする場合にあっては、当該使用に係る土地の部分に限る。以下単に「使用権設定土地」という。)

第13条第2項第3号

存続期間

存続期間を延長する期間及び当該延長後の存続期間

第13条第2項第4号並びに第16条第1項及び第6項

土地使用権等を取得する

土地等使用権の存続期間を延長する

第13条第2項第4号

特定所有者不明土地所有者等

使用権設定土地所有者等(使用権設定土地等(使用権設定土地又は当該使用権設定土地にある第10条第1項第2号に規定する所有者不明物件をいう。以下同じ。)に関し所有権その他の権利を有する者をいう。以下同じ。)

第13条第3項

存続期間

土地等使用権の存続期間を延長する期間

第13条第5項、第16条第4項及び第5項並びに第17条第2項

特定所有者不明土地

使用権設定土地

第14条、第16条第1項及び第6項並びに第17条第1項

特定所有者不明土地所有者等

使用権設定土地所有者等

第15条

は、土地使用権等を取得し

が有する土地等使用権の存続期間は、延長され

第15条及び第17条第1項

特定所有者不明土地等

使用権設定土地等

第16条第3項

土地使用権等の取得

土地等使用権の存続期間の延長

第17条第1項及び前条

において定められた土地使用権等の始期

による延長前の土地等使用権の存続期間の満了の日


(標識の設置)

第20条 使用権者は、国土交通省令で定めるところにより、使用権設定土地の区域内に、当該使用権設定土地が地域福利増進事業の用に供されている旨を表示した標識を設けなければならない。ただし、当該区域内に設けることが困難であるときは、事業区域内の見やすい場所にこれを設けることができる。

 何人も、前項の規定により設けられた標識を使用権者の承諾を得ないで移転し、若しくは除却し、又は汚損し、若しくは損壊してはならない。


(裁定に基づく地位の承継)

第21条 相続人、合併又は分割により設立される法人その他の使用権者の一般承継人(分割による承継の場合にあっては、当該使用権者が実施する事業の全部を承継する法人に限る。)は、当該使用権者が有していた第13条第1項の裁定(第19条第3項の裁定を含む。以下この款において単に「裁定」という。)に基づく地位を承継する。


(権利の譲渡)

第22条 使用権者は、土地使用権等の全部又は一部を譲り渡そうとするときは、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の承認を受けなければならない。この場合において、当該使用権者は、土地使用権等の全部を譲り渡そうとするときはその実施する事業の全部を、土地使用権等の一部を譲り渡そうとするときはその実施する事業のうち当該土地使用権等の一部に対応する部分を併せて譲り渡さなければならない。

 都道府県知事は、前項の承認をしたときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告しなければならない。

 第1項の承認に係る土地使用権等の全部又は一部を譲り受けた者は、使用権者が有していた裁定に基づく地位を承継する。


(裁定の取消し)

第23条 都道府県知事は、使用権者が次の各号のいずれかに該当するときは、裁定(前条第1項の承認を含む。以下この条において同じ。)を取り消すことができる。

 この法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反したとき。

 実施する事業が第11条第1項各号(第2号を除き、第19条第2項において準用する場合を含む。)に掲げる要件のいずれかに該当しないこととなったとき。

 正当な理由なく裁定申請(第19条第1項の規定による裁定の申請を含む。)に係る事業計画に従って事業を実施していないと認められるとき。

 都道府県知事は、前項の規定により裁定を取り消したときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告しなければならない。

 裁定は、前項の規定による公告があった日以後その効力を失う。


(原状回復の義務)

第24条 使用権者は、土地等使用権の存続期間が満了したとき又は前条第1項の規定により裁定が取り消されたときは、使用権設定土地を原状に回復し、これを返還しなければならない。ただし、当該使用権設定土地を原状に回復しないことについてその確知所有者の全ての同意が得られたときは、この限りでない。


(原状回復命令等)

第25条 都道府県知事は、前条の規定に違反した者に対し、相当の期限を定めて、使用権設定土地を原状に回復することを命ずることができる。

 都道府県知事は、前項の規定により使用権設定土地の原状回復を命じようとする場合において、過失がなくて当該原状回復を命ずべき者を確知することができず、かつ、その違反を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、その者の負担において、当該原状回復を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、当該原状回復を行うべき旨及びその期限までに当該原状回復を行わないときは、都道府県知事又はその命じた者若しくは委任した者が当該原状回復を行うべき旨を、あらかじめ、公告しなければならない。

 前項の規定により使用権設定土地の原状回復を行おうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。


(報告及び立入検査)

第26条 都道府県知事は、この款の規定の施行に必要な限度において、使用権者(裁定申請をしている事業者でまだ土地使用権等を取得していないもの及び使用権者であった者を含む。以下この項において同じ。)に対し、その事業に関し報告をさせ、又はその職員に、使用権者の事務所、使用権設定土地その他の場所に立ち入り、その事業の状況若しくは事業に係る施設、帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

 第13条第6項及び第7項の規定は、前項の規定による立入検査について準用する。

第2節 特定所有者不明土地の収用又は使用に関する土地収用法の特例

第1款 収用適格事業のための特定所有者不明土地の収用又は使用に関する特例

(裁定申請)

第27条 起業者(土地収用法第8条第1項に規定する起業者をいう。以下同じ。)は、同法第20条の事業の認定を受けた収用適格事業について、その起業地(同法第17条第1項第2号に規定する起業地をいう。)内にある特定所有者不明土地を収用し、又は使用しようとするときは、同法第26条第1項の規定による告示があった日(同法第31条の規定により収用又は使用の手続が保留されていた特定所有者不明土地にあっては、同法第34条の3の規定による告示があった日)から1年以内に、当該特定所有者不明土地の所在地を管轄する都道府県知事に対し、特定所有者不明土地の収用又は使用についての裁定を申請することができる。

 前項の規定による裁定の申請(以下この款において「裁定申請」という。)をしようとする起業者は、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した裁定申請書を都道府県知事に提出しなければならない。

 起業者の氏名又は名称及び住所

 事業の種類

 収用し、又は使用しようとする特定所有者不明土地(以下この款(次条第1項各号列記以外の部分及び第29条第1項を除く。)において単に「特定所有者不明土地」という。)の所在、地番、地目及び地積

 特定所有者不明土地の所有者の全部又は一部を確知することができない事情

 特定所有者不明土地に関する所有権その他の権利を取得し、又は消滅させる時期

 特定所有者不明土地等(特定所有者不明土地又は当該特定所有者不明土地にある物件をいう。次項第2号ハ及び第31条第3項において同じ。)の引渡し又は当該物件の移転の期限(第32条第2項第3号において「特定所有者不明土地等の引渡し等の期限」という。)

 特定所有者不明土地を使用しようとする場合においては、その方法及び期間

 前項の裁定申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。

 土地収用法第40条第1項第1号の事業計画書に記載すべき事項に相当するものとして国土交通省令で定める事項を記載した事業計画書

 次に掲げる事項を記載した補償金額見積書

 特定所有者不明土地の面積(特定所有者不明土地を含む一団の土地が分割されることとなる場合にあっては、当該一団の土地の全部の面積を含む。)

 特定所有者不明土地にある物件の種類及び数量

 特定所有者不明土地等の確知所有者の全部の氏名又は名称及び住所

 特定所有者不明土地の確知関係人(土地収用法第8条第3項に規定する関係人(ホにおいて単に「関係人」という。)であって、相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなお確知することができないもの以外の者をいう。次条第2項において同じ。)の全部の氏名又は名称及び住所並びにその権利の種類及び内容

 特定所有者不明土地を収用し、又は使用することにより特定所有者不明土地所有者等(特定所有者不明土地の所有者又は関係人をいう。以下同じ。)が受ける損失の補償金の見積額及びその内訳

 その他国土交通省令で定める書類


(公告及び縦覧)

第28条 都道府県知事は、裁定申請があった場合においては、起業者が収用し、又は使用しようとする土地が特定所有者不明土地に該当しないと認めるときその他当該裁定申請が相当でないと認めるときを除き、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を公告し、前条第2項の裁定申請書及びこれに添付された同条第3項各号に掲げる書類を当該公告の日から2週間公衆の縦覧に供しなければならない。

 裁定申請があった旨

 特定所有者不明土地の所在、地番及び地目

 次のイ又はロに掲げる者は、縦覧期間内に、国土交通省令で定めるところにより、その権原を証する書面を添えて、都道府県知事に当該イ又はロに定める事項を申し出るべき旨

 特定所有者不明土地所有者等又は特定所有者不明土地の準関係人(土地収用法第43条第2項に規定する準関係人をいう。)であって、前条第2項の裁定申請書又は同条第3項第2号の補償金額見積書に記載された事項(裁定申請書にあっては、同条第2項第1号、第2号及び第4号に掲げる事項を除く。)について異議のあるもの 当該異議の内容及びその理由

 特定所有者不明土地の所有者であって、前条第3項第2号の補償金額見積書に特定所有者不明土地の確知所有者として記載されていないもの(イに掲げる者を除く。) 当該特定所有者不明土地の所有者である旨

 その他国土交通省令で定める事項

 都道府県知事は、前項の規定による公告をしようとするときは、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、裁定申請があった旨を、前条第3項第2号の補償金額見積書に記載された特定所有者不明土地の確知所有者及び確知関係人に通知しなければならない。


(裁定申請の却下)

第29条 都道府県知事は、裁定申請があった場合において、起業者が収用し、又は使用しようとする土地が特定所有者不明土地に該当しないと認めるときその他当該裁定申請が相当でないと認めるときは、当該裁定申請を却下しなければならない。

 都道府県知事は、前条第1項の規定による公告をした場合において、同項の縦覧期間内に同項第3号イの規定による申出があったとき又は同号ロに掲げる者の全てから同号ロの規定による申出があったときは、当該公告に係る裁定申請を却下しなければならない。

 都道府県知事は、前二項の規定により裁定申請を却下したときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、その理由を示して、その旨を当該裁定申請をした起業者に通知しなければならない。


(裁定手続の開始の決定等)

第30条 都道府県知事は、裁定申請があった場合においては、前条第1項又は第2項の規定により当該裁定申請を却下するときを除き、第28条第1項の縦覧期間の経過後遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、特定所有者不明土地の収用又は使用についての裁定手続の開始を決定してその旨を公告し、かつ、当該特定所有者不明土地の所在地を管轄する登記所に、当該特定所有者不明土地及び当該特定所有者不明土地に関する権利について、特定所有者不明土地の収用又は使用についての裁定手続の開始の登記を嘱託しなければならない。

 土地収用法第45条の3の規定は、前項の裁定手続の開始の登記について準用する。

 第1項の規定による裁定手続の開始の決定については、行政手続法(平成5年法律第88号)第3章の規定は、適用しない。


(土地収用法との調整)

第31条 裁定申請に係る特定所有者不明土地については土地収用法第39条第1項の規定による裁決の申請をすることができず、同項の規定による裁決の申請に係る特定所有者不明土地については裁定申請をすることができない。

 裁定申請に係る特定所有者不明土地については、土地収用法第29条第1項の規定は、適用しない。

 裁定申請に係る特定所有者不明土地等については、土地収用法第36条第1項の規定にかかわらず、同項の土地調書及び物件調書を作成することを要しない。

 裁定申請に係る特定所有者不明土地について、第28条第1項の規定による公告があるまでの間に土地収用法第39条第2項の規定による請求があったときは、当該裁定申請は、なかったものとみなす。

 裁定申請について第28条第1項の規定による公告があったときは、当該裁定申請に係る特定所有者不明土地については、土地収用法第39条第2項の規定による請求をすることができない。

 第29条第2項の規定により裁定申請が却下された場合における当該裁定申請に係る特定所有者不明土地についての土地収用法第29条第1項及び第39条第1項の規定の適用については、これらの規定中「1年以内」とあるのは、「特定期間(当該事業に係る特定所有者不明土地(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30年法律第49号)第2条第2項に規定する特定所有者不明土地をいう。)について同法第27条第1項の規定による裁定の申請があつた日から同法第29条第2項の規定による処分に係る同条第3項の規定による通知があつた日までの期間をいう。)を除いて1年以内」とする。


(裁定)

第32条 都道府県知事は、第29条第1項又は第2項の規定により裁定申請を却下するとき及び裁定申請が次の各号のいずれかに該当するときを除き、裁定申請をした起業者が当該裁定申請に係る事業を実施するため必要な限度において、特定所有者不明土地の収用又は使用についての裁定をしなければならない。

 裁定申請に係る事業が土地収用法第26条第1項の規定により告示された事業と異なるとき。

 裁定申請に係る事業計画が土地収用法第18条第2項の規定により事業認定申請書に添付された事業計画書に記載された計画と著しく異なるとき。

 前項の裁定(以下この款において単に「裁定」という。)においては、次に掲げる事項を定めなければならない。

 特定所有者不明土地の所在、地番、地目及び面積

 特定所有者不明土地に関する所有権その他の権利を取得し、又は消滅させる時期

 特定所有者不明土地等の引渡し等の期限

 特定所有者不明土地を使用する場合においては、その方法及び期間

 特定所有者不明土地を収用し、又は使用することにより特定所有者不明土地所有者等が受ける損失の補償金の額

 第35条第2項の規定による請求書又は要求書の提出があった場合においては、その採否の決定その他当該請求又は要求に係る損失の補償の方法に関し必要な事項

 裁定は、前項第1号及び第4号に掲げる事項については裁定申請の範囲を超えてはならず、同項第5号の補償金の額については裁定申請に係る補償金の見積額を下限としなければならない。

 都道府県知事は、裁定をしようとするときは、第2項第5号に掲げる事項について、あらかじめ、収用委員会の意見を聴かなければならない。

 収用委員会は、前項の規定により意見を述べるため必要があると認めるときは、その委員又はその事務を整理する職員に、裁定申請に係る特定所有者不明土地又は当該特定所有者不明土地にある簡易建築物その他の工作物に立ち入り、その状況を調査させることができる。

 第13条第6項及び第7項の規定は、前項の規定による立入調査について準用する。


(裁定の通知等)

第33条 都道府県知事は、裁定をしたときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、その旨及び前条第2項各号に掲げる事項を、裁定申請をした起業者及び当該事業に係る特定所有者不明土地所有者等で知れているものに文書で通知するとともに、公告しなければならない。


(裁定の効果)

第34条 裁定について前条の規定による公告があったときは、当該裁定に係る特定所有者不明土地について土地収用法第48条第1項の権利取得裁決及び同法第49条第1項の明渡裁決があったものとみなして、同法第7章の規定を適用する。


(損失の補償に関する土地収用法の準用)

第35条 土地収用法第6章第1節(第76条、第77条後段、第78条、第81条から第83条まで、第86条、第87条及び第90条の2から第90条の4までを除く。)の規定は、裁定に係る特定所有者不明土地を収用し、又は使用することにより特定所有者不明土地所有者等が受ける損失の補償について準用する。この場合において、同法第70条ただし書中「第82条から第86条まで」とあるのは「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30年法律第49号。以下「所有者不明土地法」という。)第35条第1項において準用する第84条又は第85条」と、「収用委員会の裁決」とあるのは「都道府県知事の裁定」と、同法第71条中「権利取得裁決」とあり、並びに同法第73条、第84条第2項及び第85条第2項中「明渡裁決」とあるのは「所有者不明土地法第32条第1項の裁定」と、同法第80条中「前二条」とあるのは「所有者不明土地法第35条第1項において準用する前条」と、同法第84条第1項中「起業者、土地所有者又は関係人」とあるのは「起業者」と、同項及び同条第2項、同条第3項において準用する同法第83条第3項から第6項まで並びに同法第85条中「収用委員会」とあるのは「都道府県知事」と、同法第84条第2項、同条第3項において準用する同法第83条第3項及び同法第85条第2項中「裁決を」とあるのは「裁定を」と、同条第1項中「起業者又は物件の所有者」とあるのは「起業者」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

 前項において準用する土地収用法第79条の規定による請求又は同項において準用する同法第84条第1項若しくは第85条第1項の規定による要求をしようとする起業者は、裁定申請をする際に、併せて当該請求又は要求の内容その他国土交通省令で定める事項を記載した請求書又は要求書を都道府県知事に提出しなければならない。


(立入調査)

第36条 都道府県知事は、この款の規定の施行に必要な限度において、その職員に、裁定申請に係る特定所有者不明土地又は当該特定所有者不明土地にある簡易建築物その他の工作物に立ち入り、その状況を調査させることができる。

 第13条第6項及び第7項の規定は、前項の規定による立入調査について準用する。

第2款 都市計画事業のための特定所有者不明土地の収用又は使用に関する特例

第37条 施行者(都市計画法(昭和43年法律第100号)第4条第16項に規定する施行者をいう。第3項において同じ。)は、同法第59条第1項から第4項までの認可又は承認を受けた都市計画事業(同法第4条第15項に規定する都市計画事業をいう。第39条第1項及び第46条第2号において同じ。)について、その事業地(同法第60条第2項第1号に規定する事業地をいう。)内にある特定所有者不明土地を収用し、又は使用しようとするときは、当該特定所有者不明土地の所在地を管轄する都道府県知事に対し、特定所有者不明土地の収用又は使用についての裁定を申請することができる。

 第27条第2項及び第3項、第28条から第30条まで並びに第31条第1項及び第3項から第5項までの規定は、前項の規定による裁定の申請について準用する。この場合において、第27条第2項中「起業者は」とあるのは「施行者(都市計画法第4条第16項に規定する施行者をいう。以下同じ。)は」と、同項第1号、第28条第1項並びに第29条第1項及び第3項中「起業者」とあるのは「施行者」と、第27条第3項第1号及び第2号ニ、第28条第1項第3号イ、第30条第2項並びに第31条第1項及び第3項から第5項までの規定中「土地収用法」とあるのは「都市計画法第69条の規定により適用される土地収用法」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

 都道府県知事は、前項において準用する第29条第1項又は第2項の規定により第1項の規定による裁定の申請(以下この項において「裁定申請」という。)を却下するとき及び裁定申請が次の各号のいずれかに該当するときを除き、裁定申請をした施行者が当該裁定申請に係る事業を実施するため必要な限度において、特定所有者不明土地の収用又は使用についての裁定をしなければならない。

 裁定申請に係る事業が都市計画法第62条第1項の規定により告示された事業と異なるとき。

 裁定申請に係る事業計画が都市計画法第60条第1項第3号(同法第63条第2項において準用する場合を含む。)の事業計画と著しく異なるとき。

 第32条(第1項を除く。)から前条までの規定は、前項の裁定について準用する。この場合において、第33条中「起業者」とあるのは「施行者(都市計画法第4条第16項に規定する施行者をいう。以下同じ。)」と、第34条及び第35条中「土地収用法」とあり、及び「同法」とあるのは「都市計画法第69条の規定により適用される土地収用法」と、同条第1項中「起業者」」とあるのは「施行者」」と、同条第2項中「起業者」とあるのは「施行者」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

第3節 不在者の財産及び相続財産の管理に関する民法の特例

第38条 国の行政機関の長又は地方公共団体の長(次条第5項において「国の行政機関の長等」という。)は、所有者不明土地につき、その適切な管理のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所に対し、民法(明治29年法律第89号)第25条第1項の規定による命令又は同法第952条第1項の規定による相続財産の管理人の選任の請求をすることができる。

第4章 土地の所有者の効果的な探索のための特別の措置

第1節 土地所有者等関連情報の利用及び提供

第39条 都道府県知事及び市町村長は、地域福利増進事業、収用適格事業又は都市計画事業(以下「地域福利増進事業等」という。)の実施の準備のため当該地域福利増進事業等を実施しようとする区域内の土地の土地所有者等(土地又は当該土地にある物件に関し所有権その他の権利を有する者をいう。以下同じ。)を知る必要があるときは、当該土地所有者等の探索に必要な限度で、その保有する土地所有者等関連情報(土地所有者等と思料される者に関する情報のうちその者の氏名又は名称、住所その他国土交通省令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)を、その保有に当たって特定された利用の目的以外の目的のために内部で利用することができる。

 都道府県知事及び市町村長は、地域福利増進事業等を実施しようとする者からその準備のため当該地域福利増進事業等を実施しようとする区域内の土地の土地所有者等を知る必要があるとして土地所有者等関連情報の提供の求めがあったときは、当該土地所有者等の探索に必要な限度で、当該地域福利増進事業等を実施しようとする者に対し、土地所有者等関連情報を提供するものとする。

 前項の場合において、都道府県知事及び市町村長は、国及び地方公共団体以外の者に対し土地所有者等関連情報を提供しようとするときは、あらかじめ、当該土地所有者等関連情報を提供することについて本人(当該土地所有者等関連情報によって識別される特定の個人をいう。)の同意を得なければならない。ただし、当該都道府県又は市町村の条例に特別の定めがあるときは、この限りでない。

 前項の同意は、その所在が判明している者に対して求めれば足りる。

 国の行政機関の長等は、地域福利増進事業等の実施の準備のため当該地域福利増進事業等を実施しようとする区域内の土地の土地所有者等を知る必要があるときは、当該土地所有者等の探索に必要な限度で、当該土地に工作物を設置している者その他の者に対し、土地所有者等関連情報の提供を求めることができる。

第2節 特定登記未了土地の相続登記等に関する不動産登記法の特例

第40条 登記官は、起業者その他の公共の利益となる事業を実施しようとする者からの求めに応じ、当該事業を実施しようとする区域内の土地につきその所有権の登記名義人に係る死亡の事実の有無を調査した場合において、当該土地が特定登記未了土地に該当し、かつ、当該土地につきその所有権の登記名義人の死亡後10年以上30年以内において政令で定める期間を超えて相続登記等がされていないと認めるときは、当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を探索した上、職権で、所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記等がされていない土地である旨その他当該探索の結果を確認するために必要な事項として法務省令で定めるものをその所有権の登記に付記することができる。

 登記官は、前項の規定による探索により当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を知ったときは、その者に対し、当該土地についての相続登記等の申請を勧告することができる。この場合において、登記官は、相当でないと認めるときを除き、相続登記等を申請するために必要な情報を併せて通知するものとする。

 登記官は、前二項の規定の施行に必要な限度で、関係地方公共団体の長その他の者に対し、第1項の土地の所有権の登記名義人に係る死亡の事実その他当該土地の所有権の登記名義人となり得る者に関する情報の提供を求めることができる。

 前三項に定めるもののほか、第1項の規定による所有権の登記にする付記についての登記簿及び登記記録の記録方法その他の登記の事務並びに第2項の規定による勧告及び通知に関し必要な事項は、法務省令で定める。

第5章 雑則

(職員の派遣の要請)

第41条 地方公共団体の長は、地域福利増進事業等の実施の準備のためその職員に土地所有者等の探索に関する専門的な知識を習得させる必要があるときは、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣に対し、国土交通省の職員の派遣を要請することができる。


(職員の派遣の配慮)

第42条 国土交通大臣は、前条の規定による要請があったときは、その所掌事務又は業務の遂行に著しい支障のない限り、適任と認める職員を派遣するよう努めるものとする。


(地方公共団体の援助)

第43条 地方公共団体は、地域福利増進事業を実施しようとする者その他の所有者不明土地を使用しようとする者の求めに応じ、所有者不明土地の使用の方法に関する提案、所有者不明土地の境界を明らかにするための措置に関する助言、土地の権利関係又は評価について特別の知識経験を有する者のあっせんその他の援助を行うよう努めるものとする。


(手数料)

第44条 都道府県は、第27条第1項又は第37条第1項の規定による裁定の申請に係る手数料の徴収については、当該裁定の申請をする者から、実費の範囲内において、当該事務の性質を考慮して損失の補償金の見積額に応じ政令で定める額を徴収することを標準として条例を定めなければならない。


(権限の委任)

第45条 この法律に規定する国土交通大臣の権限は、国土交通省令で定めるところにより、その一部を地方整備局長又は北海道開発局長に委任することができる。


(事務の区分)

第46条 この法律の規定により都道府県が処理することとされている事務のうち次に掲げるものは、地方自治法(昭和22年法律第67号)第2条第9項第1号に規定する第1号法定受託事務とする。

 第28条、第29条、第30条第1項、第32条第1項、第33条、第35条第1項において準用する土地収用法第84条第2項、第85条第2項及び第89条第1項、第35条第1項において準用する同法第84条第3項において準用する同法第83条第3項から第6項まで並びに第36条第1項に規定する事務(同法第17条第1項各号に掲げる事業又は同法第27条第2項若しくは第4項の規定により国土交通大臣の事業の認定を受けた事業に関するものに限る。)

 第37条第2項において準用する第28条、第29条及び第30条第1項、第37条第3項、同条第4項において準用する第33条、同項において準用する第35条第1項において準用する土地収用法第84条第2項、第85条第2項及び第89条第1項、第37条第4項において準用する第35条第1項において準用する同法第84条第3項において準用する同法第83条第3項から第6項まで並びに第37条第4項において準用する第36条第1項に規定する事務(都市計画法第59条第1項から第3項までの規定により国土交通大臣の認可又は承認を受けた都市計画事業に関するものに限る。)


(省令への委任)

第47条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、国土交通省令又は法務省令で定める。


(経過措置)

第48条 この法律に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

第6章 罰則

第49条 第25条第1項の規定による命令に違反した者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。


第50条 次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。

 第13条第5項(第19条第4項において準用する場合を含む。)又は第32条第5項若しくは第36条第1項(第37条第4項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定による調査を拒み、妨げ、又は忌避した者

 第20条第1項又は第2項の規定に違反した者

 第26条第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者

 前項(第2号(第20条第2項に係る部分に限る。)に係る部分に限る。)の規定は、刑法(明治40年法律第45号)その他の罰則の適用を妨げない。


第51条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

附 則
(施行期日)

 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第3章第1節及び第2節、第44条、第46条並びに第6章並びに附則第3項の規定は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(検討)

 政府は、この法律の施行後3年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。