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公益通報者保護法

平成16年法律第122号
最終改正:平成29年6月23日法律第70号
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(目的)

第1条 この法律は、公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効等並びに公益通報に関し事業者及び行政機関がとるべき措置を定めることにより、公益通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法令の規定の遵守を図り、もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することを目的とする。


(定義)

第2条 この法律において「公益通報」とは、労働者(労働基準法(昭和22年法律第49号)第9条に規定する労働者をいう。以下同じ。)が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく、その労務提供先(次のいずれかに掲げる事業者(法人その他の団体及び事業を行う個人をいう。以下同じ。)をいう。以下同じ。)又は当該労務提供先の事業に従事する場合におけるその役員、従業員、代理人その他の者について通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしている旨を、当該労務提供先若しくは当該労務提供先があらかじめ定めた者(以下「労務提供先等」という。)、当該通報対象事実について処分(命令、取消しその他公権力の行使に当たる行為をいう。以下同じ。)若しくは勧告等(勧告その他処分に当たらない行為をいう。以下同じ。)をする権限を有する行政機関又はその者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生若しくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者(当該通報対象事実により被害を受け又は受けるおそれがある者を含み、当該労務提供先の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある者を除く。次条第3号において同じ。)に通報することをいう。

 当該労働者を自ら使用する事業者(次号に掲げる事業者を除く。)

 当該労働者が派遣労働者(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号。第4条において「労働者派遣法」という。)第2条第2号に規定する派遣労働者をいう。以下同じ。)である場合において、当該派遣労働者に係る労働者派遣(同条第1号に規定する労働者派遣をいう。第5条第2項において同じ。)の役務の提供を受ける事業者

 前二号に掲げる事業者が他の事業者との請負契約その他の契約に基づいて事業を行う場合において、当該労働者が当該事業に従事するときにおける当該他の事業者

 この法律において「公益通報者」とは、公益通報をした労働者をいう。

 この法律において「通報対象事実」とは、次のいずれかの事実をいう。

 個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律として別表に掲げるもの(これらの法律に基づく命令を含む。次号において同じ。)に規定する罪の犯罪行為の事実

 別表に掲げる法律の規定に基づく処分に違反することが前号に掲げる事実となる場合における当該処分の理由とされている事実(当該処分の理由とされている事実が同表に掲げる法律の規定に基づく他の処分に違反し、又は勧告等に従わない事実である場合における当該他の処分又は勧告等の理由とされている事実を含む。)

 この法律において「行政機関」とは、次に掲げる機関をいう。

 内閣府、宮内庁、内閣府設置法(平成11年法律第89号)第49条第1項若しくは第2項に規定する機関、国家行政組織法(昭和23年法律第120号)第3条第2項に規定する機関、法律の規定に基づき内閣の所轄の下に置かれる機関若しくはこれらに置かれる機関又はこれらの機関の職員であって法律上独立に権限を行使することを認められた職員

 地方公共団体の機関(議会を除く。)


(解雇の無効)

第3条 公益通報者が次の各号に掲げる場合においてそれぞれ当該各号に定める公益通報をしたことを理由として前条第1項第1号に掲げる事業者が行った解雇は、無効とする。

 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合 当該労務提供先等に対する公益通報

 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合 当該通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関に対する公益通報

 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、かつ、次のいずれかに該当する場合 その者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者に対する公益通報

 前二号に定める公益通報をすれば解雇その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合

 第1号に定める公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合

 労務提供先から前二号に定める公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合

 書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。第9条において同じ。)により第1号に定める公益通報をした日から20日を経過しても、当該通報対象事実について、当該労務提供先等から調査を行う旨の通知がない場合又は当該労務提供先等が正当な理由がなくて調査を行わない場合

 個人の生命又は身体に危害が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合


(労働者派遣契約の解除の無効)

第4条 第2条第1項第2号に掲げる事業者の指揮命令の下に労働する派遣労働者である公益通報者が前条各号に定める公益通報をしたことを理由として同項第2号に掲げる事業者が行った労働者派遣契約(労働者派遣法第26条第1項に規定する労働者派遣契約をいう。)の解除は、無効とする。


(不利益取扱いの禁止)

第5条 第3条に規定するもののほか、第2条第1項第1号に掲げる事業者は、その使用し、又は使用していた公益通報者が第3条各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、降格、減給その他不利益な取扱いをしてはならない。

 前条に規定するもののほか、第2条第1項第2号に掲げる事業者は、その指揮命令の下に労働する派遣労働者である公益通報者が第3条各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、当該公益通報者に係る労働者派遣をする事業者に派遣労働者の交代を求めることその他不利益な取扱いをしてはならない。


(解釈規定)

第6条 前三条の規定は、通報対象事実に係る通報をしたことを理由として労働者又は派遣労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることを禁止する他の法令(法律及び法律に基づく命令をいう。第10条第1項において同じ。)の規定の適用を妨げるものではない。

 第3条の規定は、労働契約法(平成19年法律第128号)第16条の規定の適用を妨げるものではない。

 前条第1項の規定は、労働契約法第14条及び第15条の規定の適用を妨げるものではない。


(一般職の国家公務員等に対する取扱い)

第7条 第3条各号に定める公益通報をしたことを理由とする一般職の国家公務員、裁判所職員臨時措置法(昭和26年法律第299号)の適用を受ける裁判所職員、国会職員法(昭和22年法律第85号)の適用を受ける国会職員、自衛隊法(昭和29年法律第165号)第2条第5項に規定する隊員及び一般職の地方公務員(以下この条において「一般職の国家公務員等」という。)に対する免職その他不利益な取扱いの禁止については、第3条から第5条までの規定にかかわらず、国家公務員法(昭和22年法律第120号。裁判所職員臨時措置法において準用する場合を含む。)、国会職員法、自衛隊法及び地方公務員法(昭和25年法律第261号)の定めるところによる。この場合において、一般職の国家公務員等の任命権者その他の第2条第1項第1号に掲げる事業者は、第3条各号に定める公益通報をしたことを理由として一般職の国家公務員等に対して免職その他不利益な取扱いがされることのないよう、これらの法律の規定を適用しなければならない。


(他人の正当な利益等の尊重)

第8条 第3条各号に定める公益通報をする労働者は、他人の正当な利益又は公共の利益を害することのないよう努めなければならない。


(是正措置等の通知)

第9条 書面により公益通報者から第3条第1号に定める公益通報をされた事業者は、当該公益通報に係る通報対象事実の中止その他是正のために必要と認める措置をとったときはその旨を、当該公益通報に係る通報対象事実がないときはその旨を、当該公益通報者に対し、遅滞なく、通知するよう努めなければならない。


(行政機関がとるべき措置)

第10条 公益通報者から第3条第2号に定める公益通報をされた行政機関は、必要な調査を行い、当該公益通報に係る通報対象事実があると認めるときは、法令に基づく措置その他適当な措置をとらなければならない。

 前項の公益通報が第2条第3項第1号に掲げる犯罪行為の事実を内容とする場合における当該犯罪の捜査及び公訴については、前項の規定にかかわらず、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)の定めるところによる。


(教示)

第11条 前条第1項の公益通報が誤って当該公益通報に係る通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有しない行政機関に対してされたときは、当該行政機関は、当該公益通報者に対し、当該公益通報に係る通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関を教示しなければならない。

附 則
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行し、この法律の施行後にされた公益通報について適用する。


(検討)

第2条 政府は、この法律の施行後5年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

附 則(平成18年6月14日法律第66号)

この法律は、平成18年証券取引法改正法の施行の日から施行する。

附 則(平成19年12月5日法律第128号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

附 則(平成24年4月6日法律第27号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

附 則(平成25年6月28日法律第70号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

附 則(平成29年6月23日法律第70号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。


(罰則に関する経過措置)

第7条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

別表(第2条関係)

 刑法(明治40年法律第45号)

 食品衛生法(昭和22年法律第233号)

 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)

 日本農林規格等に関する法律(昭和25年法律第175号)

 大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)

 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)

 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)

 前各号に掲げるもののほか、個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律として政令で定めるもの