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水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法

平成21年法律第81号
最終改正:平成29年6月2日法律第45号
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水俣湾及び水俣川並びに阿賀野川に排出されたメチル水銀により発生した水俣病は、八代海の沿岸地域及び阿賀野川の下流地域において、甚大な健康被害と環境汚染をもたらすとともに、長年にわたり地域社会に深刻な影響を及ぼし続けた。水俣病が、今日においても未曾有の公害とされ、我が国における公害問題の原点とされるゆえんである。

水俣病の被害に関しては、公害健康被害の補償等に関する法律の認定を受けた方々に対し補償が行われてきたが、水俣病の被害者が多大な苦痛を強いられるとともに、水俣病の被害についての無理解が生まれ、平穏な地域社会に不幸な亀裂がもたらされた。

平成16年のいわゆる関西訴訟最高裁判所判決において、国及び熊本県が長期間にわたって適切な対応をなすことができず、水俣病の被害の拡大を防止できなかったことについて責任を認められたところであり、政府としてその責任を認め、おわびをしなければならない。

これまで水俣病問題については、平成7年の政治解決等により紛争の解決が図られてきたところであるが、平成16年のいわゆる関西訴訟最高裁判所判決を機に、新たに水俣病問題をめぐって多くの方々が救済を求めており、その解決には、長期間を要することが見込まれている。

こうした事態をこのまま看過することはできず、公害健康被害の補償等に関する法律に基づく判断条件を満たさないものの救済を必要とする方々を水俣病被害者として受け止め、その救済を図ることとする。これにより、地域における紛争を終結させ、水俣病問題の最終解決を図り、環境を守り、安心して暮らしていける社会を実現すべく、この法律を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この法律は、水俣病被害者を救済し、及び水俣病問題の最終解決をすることとし、救済措置の方針及び水俣病問題の解決に向けて行うべき取組を明らかにするとともに、これらに必要な補償の確保等のための事業者の経営形態の見直しに係る措置等を定めることを目的とする。


(定義)

第2条 この法律において「関係事業者」とは、水俣病が生ずる原因となったメチル水銀を排出した事業者をいう。

 この法律において「関係県」とは、公害健康被害の補償等に関する法律(昭和48年法律第111号。以下「補償法」という。)第2条第2項の規定により定められた第二種地域のうち水俣病に係る地域(当該地域に係る第二種地域の指定が解除された場合を含む。以下「指定地域」という。)の属する県をいう。

 この法律において「継続補償受給者」とは、旧公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法(昭和44年法律第90号)第3条第1項の認定を受けた者、補償法第4条第2項の認定を受けた者その他の関係事業者が排出したメチル水銀により健康被害を生じていると認められた者であって関係事業者との間で当該健康被害に係る継続的な補償のための給付(以下「補償給付」という。)を受けることをその内容に含む協定その他の契約を締結しているものをいう。

 この法律において「個別補償協定」とは、関係事業者が継続補償受給者との間で締結している協定その他の契約(当該継続補償受給者及びその親族に対する補償給付に関する条項に限る。)をいう。

 この法律において「公的支援」とは、関係事業者に対し、水俣病に係る健康被害を受けた者に対する補償金及び公害防止事業費事業者負担法(昭和45年法律第133号)に基づく負担金の原資等として、地方公共団体又は環境省令で定める団体が行う融資をいう。


(救済及び解決の原則)

第3条 この法律による救済及び水俣病問題の解決は、継続補償受給者等に対する補償が確実に行われること、救済を受けるべき人々があたう限りすべて救済されること及び関係事業者が救済に係る費用の負担について責任を果たすとともに地域経済に貢献することを確保することを旨として行われなければならない。


(国等の責務)

第4条 国、関係地方公共団体、関係事業者及び地域住民は、前条の趣旨にのっとり、それぞれの立場で、救済を受けるべき人々があたう限りすべて救済され、水俣病問題の解決が図られるように努めなければならない。

第2章 救済措置の方針等

(救済措置の方針)

第5条 政府は、関係県の意見を聴いて、過去に通常起こり得る程度を超えるメチル水銀のばく露を受けた可能性があり、かつ、四肢末梢優位の感覚障害を有する者及び全身性の感覚障害を有する者その他の四肢末梢優位の感覚障害を有する者に準ずる者を早期に救済するため、一時金、療養費及び療養手当の支給(以下「救済措置」という。)に関する方針を定め、公表するものとする。

 前項の方針には、次に掲げる事項を定めるものとする。

 既に水俣病に係る補償又は救済を受けた者及び補償法第4条第2項の認定の申請、訴訟の提起その他の救済措置以外の手段により水俣病に係る損害のてん補等を受けることを希望している者を救済措置の対象としない旨

 四肢末梢優位の感覚障害を有する者に準ずる者かどうかについて、口の周囲の触覚若しくは痛覚の感覚障害、舌の二点識別覚の障害又は求心性視野狭窄の所見を考慮するための取扱いに関する事項

 費用の負担その他の必要な措置に関する事項

 第1項の方針のうち一時金の支給に関する部分については、関係事業者の同意を得るものとする。

 政府は、関係事業者に対し、第1項の方針に基づき一時金を支給することを要請するものとする。

 関係事業者は、前項の要請があった場合には、一時金を支給するものとする。

 関係事業者は、前項の支給に関する事務を第17条第2項の指定支給法人に委託することができる。

 関係県は、第1項の方針に基づき療養費及び療養手当を支給するものとする。

 政府は、関係県が前項の支給を行うときは、予算の範囲内で、当該関係県に対し必要な支援を行うものとする。


(水俣病被害者手帳)

第6条 政府は、前条第1項の方針において、同項及び同条第2項に定めるもののほか、関係県が水俣病にも見られる神経症状に係る医療を確保するためこの法律の施行の際に現にその医療に係る措置を要するとされている者に対して交付する水俣病被害者手帳に関する事項を定めるものとする。

 関係県は、前条第1項の方針に基づき水俣病被害者手帳の交付をした者に対して、療養費を支給するものとする。

 政府は、関係県が前項の支給を行うときは、予算の範囲内で、当該関係県に対し必要な支援を行うものとする。

第3章 水俣病問題の解決に向けた取組

第7条 政府、関係県(補償法第4条第3項の政令で定める市を含む。第3項において同じ。)及び関係事業者は、相互に連携を図りながら、水俣病問題の解決に向けて次に掲げる事項に早期に取り組まなければならない。

 救済措置を実施すること。

 水俣病に係る補償法第4条第2項の認定等の申請に対する処分を促進すること。

 水俣病に係る紛争を解決すること。

 補償法に基づく水俣病に係る新規認定等を終了すること。

 政府、関係県及び関係事業者は、早期にあたう限りの救済を果たす見地から、相互に連携して、救済措置の開始後3年以内を目途に救済措置の対象者を確定し、速やかに支給を行うよう努めなければならない。

 政府及び関係県は、救済措置及び水俣病問題の解決に向けた取組の周知に努めるものとする。

第4章 公的支援を受けている関係事業者の経営形態の見直し

(指定)

第8条 環境大臣は、関係事業者から申請があった場合において、次の各号のいずれにも該当すると認めるときは、当該関係事業者を、この章の規定等の適用を受ける者として指定することができる。

 当該関係事業者が公的支援を受けていること。

 当該関係事業者がその財産をもって債務を完済することができないこと。

 当該関係事業者が第5条第5項の1時金の確実な支給を行うために必要があると認められること。

 水俣病に係る補償を将来にわたり確保するために必要があると認められること。


(事業再編計画)

第9条 前条の規定による指定を受けた者(以下「特定事業者」という。)は、次に掲げる事項を記載した事業の再編に関する計画(以下「事業再編計画」という。)を作成し、環境大臣の認可を申請しなければならない。

 株式会社を設立すること及び当該株式会社が設立に際して発行する株式の総数を特定事業者が引き受けること。

 特定事業者が、個別補償協定に係る債務、水俣病に係る損害賠償債務及び公的支援に係る借入金債務その他環境大臣が指定する債務に係るものを除き、その事業を前号の株式会社(以下「事業会社」という。)に譲渡すること(以下「事業譲渡」という。)

 特定事業者が、事業譲渡の対価として事業会社が新たに発行する株式を引き受けること。

 事業再編計画の実施及び事業譲渡の時期に関する事項

 前各号に掲げる事項以外の事項であって、特定事業者の事業の再編に必要な事項

 事業会社の事業計画

 事業譲渡の時における特定事業者が総数を保有する事業会社の株式の評価額

 第2号に規定する個別補償協定に係る債務、水俣病に係る損害賠償債務及び公的支援に係る借入金債務その他環境大臣が指定する債務の支払に関する特定事業者の資金計画

 環境大臣は、前項の認可の申請があった場合において、当該申請に係る特定事業者が第5条第1項の方針に基づく一時金の支給に同意しており、かつ、当該申請に係る事業再編計画が次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、前項の認可をするものとする。

 個別補償協定の将来にわたる履行及び公的支援に係る借入金債務の返済に、救済措置の開始の時点及び救済措置の対象者の確定の時点において支障が生じないと認められること。

 事業会社の事業計画が特定事業者の事業所が所在する地域における事業の継続等により当該地域の経済の振興及び雇用の確保に資するものであること。

 特定事業者が事業再編計画に基づいて行う事業会社の設立及び事業会社への事業譲渡その他の行為によって特定事業者の債権者に対する債務の履行に要する原資が減少しないものであること。

 その内容が債権者の一般の利益に反するものではないこと。

 環境大臣は、第1項の認可をしたときは、遅滞なく、その旨を官報に公告するものとする。


(事業譲渡等に関する特例)

第10条 株式会社である特定事業者(以下「特定会社」という。)がその財産をもって債務を完済することができないときは、当該特定会社は、会社法(平成17年法律第86号)第447条第1項並びに第467条第1項第1号及び第2号の規定にかかわらず、裁判所の許可を得て、次に掲げる事項であって、前条第1項の認可を受けた事業再編計画(以下「認可事業再編計画」という。)に記載されたものを行うことができる。

 事業譲渡

 資本金の額の減少

 前項の許可(以下「代替許可」という。)があったときは、当該代替許可に係る事項について株主総会の決議があったものとみなす。

 代替許可に係る事件は、当該特定会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。

 裁判所は、代替許可の決定をしたときは、その決定書を特定会社に送達するとともに、その決定の要旨を公告しなければならない。

 前項の規定によってする公告は、官報に掲載してする。

 代替許可の決定は、第4項の規定による特定会社に対する送達がされた時から、効力を生ずる。

 代替許可の決定に対しては、株主は第4項の公告のあった日から2週間の不変期間内に、即時抗告をすることができる。

 非訟事件手続法(平成23年法律第51号)第5条、第6条、第7条第2項、第40条、第41条、第56条第2項並びに第66条第1項及び第2項の規定は、代替許可に係る事件については、適用しない。


(代替許可に係る登記の特例)

第11条 前条第1項第2号に掲げる事項に係る代替許可があった場合においては、当該事項に係る登記の申請書には、当該代替許可の決定書の謄本又は抄本を添付しなければならない。


(事業会社の株式の譲渡)

第12条 特定事業者は、事業会社の株式の全部又は一部を譲渡しようとするときは、あらかじめ、環境大臣の承認を得なければならない。この場合において、特定会社については、会社法第467条第1項第2号の2の規定は、適用しない。

 環境大臣は、前項の承認をしようとするときは、あらかじめ、総務大臣及び財務大臣に協議するとともに、第17条第2項の指定支給法人にその旨を通知しなければならない。

 環境大臣は、第19条第1項の補償賦課金の確保及び公的支援に係る借入金債務の返済の確保その他債権者の保護に関する政府の方針に従って、次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、第1項の株式の譲渡に係る承認をすることができる。

 第19条第1項の補償賦課金を株式の譲渡により確保できること。

 公的支援に係る借入金債務の返済に支障が生じないと見込まれること。

 第1項の株式の譲渡の後に債権者の一般の利益が害されることがないこと。

 環境大臣は、第1項の承認をしたときは、遅滞なく、その旨を官報に公告するものとする。


(事業会社の株式の譲渡の暫時凍結)

第13条 事業会社の株式の譲渡は、救済の終了及び市況の好転まで、暫時凍結する。


(詐害行為取消権及び否認権の適用除外)

第14条 特定事業者が認可事業再編計画に基づいて行う事業会社の設立及び事業会社への事業譲渡その他の行為については、民法(明治29年法律第89号)第3編第1章第2節第3款第1目、破産法(平成16年法律第75号)第160条及び第161条、民事再生法(平成11年法律第225号)第127条及び第127条の2並びに会社更生法(平成14年法律第154号)第86条及び第86条の2の規定は適用しない。


(報告及び検査)

第15条 環境大臣は、この法律を施行するために必要な限度において、特定事業者に対し、その業務若しくは財産の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、特定事業者の事務所その他その業務を行う場所に立ち入り、業務若しくは財産の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

 第1項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。


(特定事業者に係る命令)

第16条 環境大臣は、特定事業者の業務又は財産の状況に関し改善が必要であると認めるときは、特定事業者に対し、その改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

 環境大臣は、特定事業者の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役、代表者又はこれらに準ずる者をいう。以下この項において同じ。)がこの法律又はこの法律に基づく環境大臣の処分に違反したときは、当該特定事業者に対し、当該役員の解任を命ずることができる。

第5章 指定支給法人

(指定)

第17条 環境大臣は、一般財団法人であって、次条第1項に規定する業務(以下「支給業務」という。)を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、支給業務を行う者として指定することができる。

 環境大臣は、前項の規定による指定をしたときは、当該指定を受けた者(以下「指定支給法人」という。)の名称及び住所並びに事務所の所在地を官報で公示しなければならない。

 指定支給法人は、その名称及び住所並びに事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を環境大臣に届け出なければならない。

 環境大臣は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る事項を官報で公示しなければならない。


(業務)

第18条 指定支給法人は、次に掲げる業務を行うものとする。

 第5条第6項の規定により関係事業者から委託を受け、同条第5項の1時金を支給すること。

 継続補償受給者(第12条第1項の株式の譲渡の開始の時までに継続補償受給者となった者(その親族を含む。)に限る。以下同じ。)に対し個別補償協定に定められた補償給付の支給に相当する支給を行うこと。

 前二号に掲げる業務に附帯する業務を行うこと。

 指定支給法人は、次条第4項の規定により特定事業者から補償賦課金の納付があった時から、前項第2号に掲げる業務(以下「個別補償支給業務」という。)を開始するものとする。


(個別補償支給業務に要する経費の確保)

第19条 第12条第1項の規定により特定事業者が事業会社の株式を譲渡した場合には、指定支給法人は、将来にわたる個別補償支給業務の実施に必要な経費に充てるため、特定事業者から補償賦課金を遅滞なく徴収しなければならない。

 指定支給法人は、第12条第2項の通知を受けた場合には、前項の補償賦課金の額及び徴収方法について、環境大臣の認可を受けなければならない。

 指定支給法人は、前項の認可を受けたときは、特定事業者に対し、その認可を受けた事項を記載した書面を添付して、補償賦課金の額、納付期限及び納付方法を通知しなければならない。

 特定事業者は、第12条第1項の事業会社の株式の譲渡によって得られた収入(以下「事業会社株式に係る譲渡収入」という。)から、前項の通知に従い、指定支給法人に対し、遅滞なく補償賦課金を納付しなければならない。

 指定支給法人が継続補償受給者に前条第1項第2号の支給を行った場合には、特定事業者は、その価額の限度で、当該継続補償受給者に対し、補償給付を支給する義務を免れる。

 指定支給法人は、第4項の規定により特定事業者から納付された補償賦課金を個別補償支給業務に充てるため、次条の補償基金に積み立てなければならない。


(補償基金)

第20条 指定支給法人は、個別補償支給業務に関する基金(以下「補償基金」という。)を設け、前条第4項の規定により特定事業者が補償賦課金として納付した金額をもってこれに充てるものとする。


(事業計画等)

第21条 指定支給法人は、毎事業年度、環境省令で定めるところにより、支給業務に関し事業計画書及び収支予算書を作成し、環境大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

 指定支給法人は、環境省令で定めるところにより、毎事業年度終了後、支給業務に関し事業報告書及び収支決算書を作成し、環境大臣に提出しなければならない。


(区分経理)

第22条 指定支給法人は、補償基金に係る経理については、その他の経理と区分し、特別の勘定を設けて整理しなければならない。


(秘密保持義務)

第23条 指定支給法人の役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、支給業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。


(帳簿)

第24条 指定支給法人は、環境省令で定めるところにより、帳簿を備え、支給業務に関し環境省令で定める事項を記載し、これを保存しなければならない。


(解任命令)

第25条 環境大臣は、指定支給法人の役員が、この法律若しくはこの法律に基づく命令若しくは処分に違反したとき、又は支給業務に関し著しく不適当な行為をしたときは、指定支給法人に対して、その役員を解任すべきことを命ずることができる。


(監督命令)

第26条 環境大臣は、この法律を施行するために必要な限度において、指定支給法人に対し、支給業務に関し監督上必要な命令をすることができる。


(報告及び検査)

第27条 環境大臣は、この法律を施行するために必要な限度において、指定支給法人に対し、支給業務若しくは財産の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、指定支給法人の事務所に立ち入り、支給業務若しくは財産の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

 第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。


(業務の休廃止)

第28条 指定支給法人は、環境大臣の許可を受けなければ、支給業務の全部又は一部を休止し、又は廃止してはならない。

 環境大臣が前項の規定により支給業務の全部の廃止を許可したときは、当該指定支給法人に係る指定は、その効力を失う。

 環境大臣は、第1項の許可をしたときは、その旨を公示しなければならない。


(指定の取消し等)

第29条 環境大臣は、指定支給法人が次の各号のいずれかに該当するときは、第17条第1項の指定を取り消すことができる。

 支給業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき。

 この法律又はこの法律に基づく命令若しくは処分に違反したとき。

 不正の手段により第17条第1項の指定を受けたとき。

 環境大臣は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。

 第1項の規定により指定を取り消した場合において、環境大臣がその取消し後に新たに指定支給法人を指定したときは、取消しに係る指定支給法人の支給業務に係る財産は、新たに指定を受けた指定支給法人に帰属する。

 前項に定めるもののほか、第1項の規定により指定を取り消した場合における支給業務に係る財産の管理その他所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、合理的に必要と判断される範囲内において、政令で定める。

第6章 雑則

(法人税に係る課税の特例)

第30条 特定事業者が認可事業再編計画に基づいて事業会社への事業譲渡を行ったときは、当該事業譲渡の日の属する事業年度又は連結事業年度前の各事業年度において生じた欠損金額及び各連結事業年度において生じた個別欠損金額(当該連結事業年度に連結欠損金額が生じた場合には、当該連結欠損金額のうち当該特定事業者に帰せられる金額を加算した金額)で政令で定める金額のうち、当該事業譲渡の時における当該事業会社の株式の価額として政令で定める金額から当該事業譲渡に係る純資産価額(当該事業譲渡に係る資産の帳簿価額から当該事業譲渡に係る負債の帳簿価額を控除した金額をいう。)を控除した金額に達するまでの金額は、当該事業譲渡の日の属する事業年度又は連結事業年度の所得の金額又は連結所得の金額の計算上、損金の額に算入する。この場合において、法人税法(昭和40年法律第34号)第61条の13の規定は、適用しない。

 前項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 事業年度 法人税法第13条及び第14条に規定する事業年度をいう。

 連結事業年度 法人税法第15条の2に規定する連結事業年度をいう。

 欠損金額 法人税法第2条第19号に規定する欠損金額をいう。

 連結欠損金額 法人税法第2条第19号の2に規定する連結欠損金額をいう。

 個別欠損金額 法人税法第81条の18第1項に規定する個別欠損金額をいう。

 連結所得 法人税法第2条第18号の4に規定する連結所得をいう。

 特定事業者が第19条第4項の規定により指定支給法人に補償賦課金を納付した場合における当該補償賦課金に係る租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第66条の11及び第68条の95の規定の適用については、同法第66条の11第1項中「長期間にわたつて使用され、又は運用される基金又は信託財産に係る負担金又は掛金で次に掲げるもの」とあるのは「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法(平成21年法律第81号)第20条に規定する補償基金に係る同法第19条第4項の補償賦課金」と、同法第68条の95第1項中「長期間にわたつて使用され、又は運用される基金又は信託財産に係る負担金又は掛金で第66条の11第1項各号に掲げるもの」とあるのは「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法第20条に規定する補償基金に係る同法第19条第4項の補償賦課金」とする。

 第2項に定めるもののほか、第1項の規定の適用がある場合における法人税法その他法人税に関する法令の規定に関する技術的読替えその他同項又は前項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。


(登録免許税に係る課税の特例)

第31条 特定事業者が、認可事業再編計画に基づき事業会社を設立する場合には、当該事業会社の設立の登記に係る登録免許税の税率は、財務省令・環境省令で定めるところにより登記を受けるものに限り、登録免許税法(昭和42年法律第35号)第9条の規定にかかわらず、千分の一とする。

 前項の事業会社が、認可事業再編計画に基づき事業譲渡の対価として新たに株式を発行する場合には、当該株式の発行による当該事業会社の資本金の額の増加の登記に係る登録免許税の税率は、財務省令・環境省令で定めるところにより登記を受けるものに限り、登録免許税法第9条の規定にかかわらず、千分の一とする。

 第1項の事業会社が、認可事業再編計画に基づいて行われる事業譲渡により特定事業者から不動産の所有権を取得した場合には、当該不動産の所有権の移転の登記に係る登録免許税の税率は、財務省令・環境省令で定めるところにより当該取得後1年以内に登記を受けるものに限り、登録免許税法第9条の規定にかかわらず、千分の一・五とする。


(不動産取得税に係る課税の特例)

第32条 事業会社が認可事業再編計画に基づいて行われる事業譲渡により特定事業者から不動産を取得した場合における当該不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができない。


(救済措置の実施等に必要な支援)

第33条 特定事業者が第5条第5項の1時金の支給を円滑に行うことができるよう、政府及び関係県は、予算の範囲内において、特定事業者に対する支援について、所要の措置を講ずるものとする。

 環境大臣は、関係金融機関等に対して、特定事業者に対する支援の継続を要請するものとする。


(公的支援に係る借入金債務の返済等の方針)

第34条 特定事業者は、事業会社株式に係る譲渡収入から第19条第4項の規定により指定支給法人に納付した金額を控除した残額(当該残額の運用によって得られた収益を含む。)については、まず水俣病に係る損害賠償債務及び公的支援に係る借入金債務に充当し、次に環境大臣が指定する債務及び認可事業再編計画の遂行に必要な費用に充当することができる。


(地域の振興等)

第35条 政府及び関係地方公共団体は、必要に応じ、特定事業者の事業所が所在する地域において事業会社が事業を継続すること等により地域の振興及び雇用の確保が図られるよう努めるものとする。


(健康増進事業の実施等)

第36条 政府及び関係者は、指定地域及びその周辺の地域において、地域住民の健康の増進及び健康上の不安の解消を図るための事業、地域社会の絆の修復を図るための事業等に取り組むよう努めるものとする。

 政府及び関係者は、関係事業者が排出したメチル水銀による環境汚染を将来にわたって防止するため、水質の汚濁の状況の監視の実施その他必要な措置を講ずるものとする。


(調査研究)

第37条 政府は、指定地域及びその周辺の地域に居住していた者(水俣病が多発していた時期に胎児であった者を含む。以下「指定地域等居住者」という。)の健康に係る調査研究その他メチル水銀が人の健康に与える影響及びこれによる症状の高度な治療に関する調査研究を積極的かつ速やかに行い、その結果を公表するものとする。

 前項の公表に当たっては、指定地域等居住者又はその家族の秘密又は私生活若しくは業務の平穏が害されることがないよう適切な配慮がされなければならない。

 政府は、第1項の調査研究の実施のため、メチル水銀が人の健康に与える影響を把握するための調査、効果的な疫学調査、水俣病問題に関する社会学的調査等の手法の開発を図るものとする。

 関係地方公共団体は、第1項の調査研究に協力するものとする。

第7章 罰則

第38条 第15条第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者は、1年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。


第39条 第23条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。


第40条 次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。

 第24条の規定に違反して、帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかった者

 第27条第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者

 第28条第1項の規定による許可を受けないで支給業務の全部を廃止した者


第41条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第38条又は前条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。


第42条 第16条第1項の規定による命令に違反した者は、100万円以下の過料に処する。

附 則
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から施行する。

附 則(平成22年3月31日法律第6号)
(施行期日)

第1条 この法律は、平成22年4月1日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

一・二 略

 次に掲げる規定 平成22年10月1日

 略

 第2条の規定(法人税法の目次の改正規定(「第164条」を「第163条」に改める部分に限る。)、同法第2条第12号の7の5を同条第12号の7の7とし、同条第12号の7の4の次に二号を加える改正規定、同条第12号の8の改正規定(「発行済株式又は出資(自己が有する自己の株式又は出資を除く。以下この条において「発行済株式等」という。)」を「発行済株式等」に改める部分に限る。)、同法第4条の3第1項の改正規定(「6月」を「3月」に改める部分に限る。)、同条第6項の改正規定、同条第8項の改正規定、同法第23条の改正規定(同条第1項中「金額(」の下に「第1号に掲げる金額にあつては、」を加え、「第1号に掲げるもの」を「もの及び適格現物分配に係るもの」に改める部分、同条第3項中「前二項」を「前項」に改め、同項を同条第2項とし、同項の次に一項を加える部分及び同条第8項中「適格事後設立」を「適格現物分配」に、「第1項から第3項まで」を「第1項及び第2項」に改める部分を除く。)、同法第35条の改正規定、同法第61条の4第1項の改正規定(「規定する有価証券の空売り」の下に「(次項において「有価証券の空売り」という。)」を、「次項」の下に「及び第3項」を加える部分及び「除く」の下に「。次項において同じ」を、「相当する金額」の下に「(次項において「みなし決済損益額」という。)」を加える部分を除く。)、同法第66条の改正規定、同法第67条第1項の改正規定、同条第3項の改正規定(同項第1号に係る部分、同項第5号を同項第6号とする部分及び同項第4号を同項第5号とし、同項第3号の次に一号を加える部分を除く。)、同法第81条の4第1項の改正規定(「第3項」を「第4項」に改める部分を除く。)、同条第5項の改正規定(「連結法人株式等」を「完全子法人株式等」に改める部分に限る。)、同条第4項の改正規定(同項を同条第5項とする部分を除く。)、同条第3項の改正規定(同項を同条第4項とする部分を除く。)、同法第81条の9第1項ただし書の改正規定、同条第2項各号の改正規定、同条第3項の改正規定、同条第6項の改正規定(同項を同条第7項とする部分を除く。)、同条第5項の改正規定(同項を同条第6項とする部分を除く。)、同法第81条の9の2第1項の改正規定、同条第2項の改正規定(「である連結親法人が」を「である連結親法人又は連結子法人と他の法人との間で」に改める部分及び同項第1号に係る部分に限る。)、同条第5項を同条第6項とし、同条第4項を削る改正規定、同条第3項の改正規定、同項を同条第4項とし、同項の次に一項を加える改正規定、同条第2項の次に一項を加える改正規定、同法第81条の12の改正規定、同法第81条の13第2項第4号の改正規定、同法第138条第9号の改正規定、同法第143条の改正規定、同法第159条第1項の改正規定(「第164条第1項」を「第163条第1項」に、「5年」を「10年」に、「500万円」を「1000万円」に改める部分に限る。)、同条第2項の改正規定、同法第160条の改正規定(「20万円」を「50万円」に改める部分に限る。)、同法第161条の改正規定、同法第162条の改正規定(「20万円」を「50万円」に改める部分に限る。)、同法第163条を削る改正規定、同法第164条第1項の改正規定及び同条を同法第163条とする改正規定(附則第10条及び第12条において「組織再編成等以外の改正規定」という。)を除く。)並びに附則第10条第2項、第13条から第16条まで、第18条から第23条まで、第24条第2項、第25条、第26条第10項及び第13項、第27条、第133条、第134条、第142条(銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律(平成13年法律第131号)第58条第1項の改正規定に限る。)並びに第145条の規定


(罰則に関する経過措置)

第146条 この法律(附則第1条各号に掲げる規定にあっては、当該規定。以下この条において同じ。)の施行前にした行為及びこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。


(その他の経過措置の政令への委任)

第147条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。

附 則(平成23年5月25日法律第53号)

この法律は、新非訟事件手続法の施行の日から施行する。

附 則(平成26年6月27日法律第91号)

この法律は、会社法の一部を改正する法律の施行の日から施行する。

附 則(平成29年6月2日法律第45号)

この法律は、民法改正法の施行の日から施行する。ただし、第103条の2、第103条の3、第267条の2、第267条の3及び第362条の規定は、公布の日から施行する。