破産法
第1章 総則
第1条 この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。
第2条 この法律において「破産手続」とは、次章以下(第12章を除く。)に定めるところにより、債務者の財産又は相続財産若しくは信託財産を清算する手続をいう。
2 この法律において「破産事件」とは、破産手続に係る事件をいう。
3 この法律において「破産裁判所」とは、破産事件が係属している地方裁判所をいう。
4 この法律において「破産者」とは、債務者であって、第30条第1項の規定により破産手続開始の決定がされているものをいう。
5 この法律において「破産債権」とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(第97条各号に掲げる債権を含む。)であって、財団債権に該当しないものをいう。
6 この法律において「破産債権者」とは、破産債権を有する債権者をいう。
7 この法律において「財団債権」とは、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権をいう。
8 この法律において「財団債権者」とは、財団債権を有する債権者をいう。
9 この法律において「別除権」とは、破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき特別の先取特権、質権又は抵当権を有する者がこれらの権利の目的である財産について第65条第1項の規定により行使することができる権利をいう。
10 この法律において「別除権者」とは、別除権を有する者をいう。
11 この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(信託財産の破産にあっては、受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務(信託法(平成18年法律第108号)第2条第9項に規定する信託財産責任負担債務をいう。以下同じ。)のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)をいう。
12 この法律において「破産管財人」とは、破産手続において破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者をいう。
13 この法律において「保全管理人」とは、第91条第1項の規定により債務者の財産に関し管理を命じられた者をいう。
14 この法律において「破産財団」とは、破産者の財産又は相続財産若しくは信託財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するものをいう。
第3条 外国人又は外国法人は、破産手続、第12章第1節の規定による免責手続(以下「免責手続」という。)及び同章第2節の規定による復権の手続(以下この章において「破産手続等」と総称する。)に関し、日本人又は日本法人と同一の地位を有する。
第4条 この法律の規定による破産手続開始の申立ては、債務者が個人である場合には日本国内に営業所、住所、居所又は財産を有するときに限り、法人その他の社団又は財団である場合には日本国内に営業所、事務所又は財産を有するときに限り、することができる。
2 民事訴訟法(平成8年法律第109号)の規定により裁判上の請求をすることができる債権は、日本国内にあるものとみなす。
第5条 破産事件は、債務者が、営業者であるときはその主たる営業所の所在地、営業者で外国に主たる営業所を有するものであるときは日本におけるその主たる営業所の所在地、営業者でないとき又は営業者であっても営業所を有しないときはその普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
2 前項の規定による管轄裁判所がないときは、破産事件は、債務者の財産の所在地(債権については、裁判上の請求をすることができる地)を管轄する地方裁判所が管轄する。
3 前二項の規定にかかわらず、法人が株式会社の総株主の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き、会社法(平成17年法律第86号)第879条第3項の規定により議決権を有するものとみなされる株式についての議決権を含む。次項、第83条第2項第2号及び第3項並びに第161条第2項第2号イ及びロにおいて同じ。)の過半数を有する場合には、当該法人(以下この条及び第161条第2項第2号ロにおいて「親法人」という。)について破産事件、再生事件又は更生事件(以下この条において「破産事件等」という。)が係属しているときにおける当該株式会社(以下この条及び第161条第2項第2号ロにおいて「子株式会社」という。)についての破産手続開始の申立ては、親法人の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができ、子株式会社について破産事件等が係属しているときにおける親法人についての破産手続開始の申立ては、子株式会社の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができる。
4 子株式会社又は親法人及び子株式会社が他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合には、当該他の株式会社を当該親法人の子株式会社とみなして、前項の規定を適用する。
5 第1項及び第2項の規定にかかわらず、株式会社が最終事業年度について会社法第444条の規定により当該株式会社及び他の法人に係る連結計算書類(同条第1項に規定する連結計算書類をいう。)を作成し、かつ、当該株式会社の定時株主総会においてその内容が報告された場合には、当該株式会社について破産事件等が係属しているときにおける当該他の法人についての破産手続開始の申立ては、当該株式会社の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができ、当該他の法人について破産事件等が係属しているときにおける当該株式会社についての破産手続開始の申立ては、当該他の法人の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができる。
6 第1項及び第2項の規定にかかわらず、法人について破産事件等が係属している場合における当該法人の代表者についての破産手続開始の申立ては、当該法人の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができ、法人の代表者について破産事件又は再生事件が係属している場合における当該法人についての破産手続開始の申立ては、当該法人の代表者の破産事件又は再生事件が係属している地方裁判所にもすることができる。
7 第1項及び第2項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる者のうちいずれか1人について破産事件が係属しているときは、それぞれ当該各号に掲げる他の者についての破産手続開始の申立ては、当該破産事件が係属している地方裁判所にもすることができる。
一 相互に連帯債務者の関係にある個人
二 相互に主たる債務者と保証人の関係にある個人
三 夫婦
8 第1項及び第2項の規定にかかわらず、破産手続開始の決定がされたとすれば破産債権となるべき債権を有する債権者の数が500人以上であるときは、これらの規定による管轄裁判所の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所にも、破産手続開始の申立てをすることができる。
9 第1項及び第2項の規定にかかわらず、前項に規定する債権者の数が1000人以上であるときは、東京地方裁判所又は大阪地方裁判所にも、破産手続開始の申立てをすることができる。
10 前各項の規定により二以上の地方裁判所が管轄権を有するときは、破産事件は、先に破産手続開始の申立てがあった地方裁判所が管轄する。
第6条 この法律に規定する裁判所の管轄は、専属とする。
第7条 裁判所は、著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、職権で、破産事件(破産事件の債務者又は破産者による免責許可の申立てがある場合にあっては、破産事件及び当該免責許可の申立てに係る事件)を次に掲げる地方裁判所のいずれかに移送することができる。
一 債務者の主たる営業所又は事務所以外の営業所又は事務所の所在地を管轄する地方裁判所
二 債務者の住所又は居所の所在地を管轄する地方裁判所
三 第5条第2項に規定する地方裁判所
四 次のイからハまでのいずれかに掲げる地方裁判所
イ 第5条第3項から第7項までに規定する地方裁判所
ロ 破産手続開始の決定がされたとすれば破産債権となるべき債権を有する債権者(破産手続開始の決定後にあっては、破産債権者。ハにおいて同じ。)の数が500人以上であるときは、第5条第8項に規定する地方裁判所
ハ ロに規定する債権者の数が1000人以上であるときは、第5条第9項に規定する地方裁判所
五 第5条第3項から第9項までの規定によりこれらの規定に規定する地方裁判所に破産事件が係属しているときは、同条第1項又は第2項に規定する地方裁判所
第8条 破産手続等に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
2 裁判所は、職権で、破産手続等に係る事件に関して必要な調査をすることができる。
第9条 破産手続等に関する裁判につき利害関係を有する者は、この法律に特別の定めがある場合に限り、当該裁判に対し即時抗告をすることができる。その期間は、裁判の公告があった場合には、その公告が効力を生じた日から起算して2週間とする。
第10条 この法律の規定による公告は、官報に掲載してする。
2 公告は、掲載があった日の翌日に、その効力を生ずる。
3 この法律の規定により送達をしなければならない場合には、公告をもって、これに代えることができる。ただし、この法律の規定により公告及び送達をしなければならない場合は、この限りでない。
4 この法律の規定により裁判の公告がされたときは、一切の関係人に対して当該裁判の告知があったものとみなす。
5 前二項の規定は、この法律に特別の定めがある場合には、適用しない。
第11条 利害関係人は、裁判所書記官に対し、この法律(この法律において準用する他の法律を含む。)の規定に基づき、裁判所に提出され、又は裁判所が作成した文書その他の物件(以下この条及び次条第1項において「文書等」という。)の閲覧を請求することができる。
2 利害関係人は、裁判所書記官に対し、文書等の謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
3 前項の規定は、文書等のうち録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、これらの物について利害関係人の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならない。
4 前三項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる者は、当該各号に定める命令、保全処分又は裁判のいずれかがあるまでの間は、前三項の規定による請求をすることができない。ただし、当該者が破産手続開始の申立人である場合は、この限りでない。
一 債務者以外の利害関係人 第24条第1項の規定による中止の命令、第25条第2項に規定する包括的禁止命令、第28条第1項の規定による保全処分、第91条第2項に規定する保全管理命令、第171条第1項の規定による保全処分又は破産手続開始の申立てについての裁判
二 債務者 破産手続開始の申立てに関する口頭弁論若しくは債務者を呼び出す審尋の期日の指定の裁判又は前号に定める命令、保全処分若しくは裁判
第12条 次に掲げる文書等について、利害関係人がその閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下この条において「閲覧等」という。)を行うことにより、破産財団(破産手続開始前にあっては、債務者の財産)の管理又は換価に著しい支障を生ずるおそれがある部分(以下この条において「支障部分」という。)があることにつき疎明があった場合には、裁判所は、当該文書等を提出した破産管財人又は保全管理人の申立てにより、支障部分の閲覧等の請求をすることができる者を、当該申立てをした者(その者が保全管理人である場合にあっては、保全管理人又は破産管財人。次項において同じ。)に限ることができる。
一 第36条、第40条第1項ただし書若しくは同条第2項において準用する同条第1項ただし書(これらの規定を第96条第1項において準用する場合を含む。)、第78条第2項(第93条第3項において準用する場合を含む。)、第84条(第96条第1項において準用する場合を含む。)又は第93条第1項ただし書の許可を得るために裁判所に提出された文書等
二 第157条第2項の規定による報告に係る文書等
2 前項の申立てがあったときは、その申立てについての裁判が確定するまで、利害関係人(同項の申立てをした者を除く。次項において同じ。)は、支障部分の閲覧等の請求をすることができない。
3 支障部分の閲覧等の請求をしようとする利害関係人は、破産裁判所に対し、第1項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至ったことを理由として、同項の規定による決定の取消しの申立てをすることができる。
4 第1項の申立てを却下する決定及び前項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5 第1項の規定による決定を取り消す決定は、確定しなければその効力を生じない。
第13条 破産手続等に関しては、特別の定めがある場合を除き、民事訴訟法の規定を準用する。
第14条 この法律に定めるもののほか、破産手続等に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第2章 破産手続の開始
第1節 破産手続開始の申立て
第15条 債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第30条第1項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。
2 債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する。
第16条 債務者が法人である場合に関する前条第1項の規定の適用については、同項中「支払不能」とあるのは、「支払不能又は債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。)」とする。
2 前項の規定は、存立中の合名会社及び合資会社には、適用しない。
第17条 債務者についての外国で開始された手続で破産手続に相当するものがある場合には、当該債務者に破産手続開始の原因となる事実があるものと推定する。
第18条 債権者又は債務者は、破産手続開始の申立てをすることができる。
2 債権者が破産手続開始の申立てをするときは、その有する債権の存在及び破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない。
第19条 次の各号に掲げる法人については、それぞれ当該各号に定める者は、破産手続開始の申立てをすることができる。
一 一般社団法人又は一般財団法人 理事
二 株式会社又は相互会社(保険業法(平成7年法律第105号)第2条第5項に規定する相互会社をいう。第150条第6項第3号において同じ。) 取締役
三 合名会社、合資会社又は合同会社 業務を執行する社員
2 前項各号に掲げる法人については、清算人も、破産手続開始の申立てをすることができる。
3 前二項の規定により第1項各号に掲げる法人について破産手続開始の申立てをする場合には、理事、取締役、業務を執行する社員又は清算人の全員が破産手続開始の申立てをするときを除き、破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない。
4 前三項の規定は、第1項各号に掲げる法人以外の法人について準用する。
5 法人については、その解散後であっても、残余財産の引渡し又は分配が終了するまでの間は、破産手続開始の申立てをすることができる。
第20条 破産手続開始の申立ては、最高裁判所規則で定める事項を記載した書面でしなければならない。
2 債権者以外の者が破産手続開始の申立てをするときは、最高裁判所規則で定める事項を記載した債権者一覧表を裁判所に提出しなければならない。ただし、当該申立てと同時に債権者一覧表を提出することができないときは、当該申立ての後遅滞なくこれを提出すれば足りる。
第21条 前条第1項の書面(以下この条において「破産手続開始の申立書」という。)に同項に規定する事項が記載されていない場合には、裁判所書記官は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命ずる処分をしなければならない。民事訴訟費用等に関する法律(昭和46年法律第40号)の規定に従い破産手続開始の申立ての手数料を納付しない場合も、同様とする。
2 前項の処分は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生ずる。
3 第1項の処分に対しては、その告知を受けた日から1週間の不変期間内に、異議の申立てをすることができる。
4 前項の異議の申立ては、執行停止の効力を有する。
5 裁判所は、第3項の異議の申立てがあった場合において、破産手続開始の申立書に第1項の処分において補正を命じた不備以外の不備があると認めるときは、相当の期間を定め、その期間内に当該不備を補正すべきことを命じなければならない。
6 第1項又は前項の場合において、破産手続開始の申立人が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、破産手続開始の申立書を却下しなければならない。
7 前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。
第22条 破産手続開始の申立てをするときは、申立人は、破産手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない。
2 費用の予納に関する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第23条 裁判所は、申立人の資力、破産財団となるべき財産の状況その他の事情を考慮して、申立人及び利害関係人の利益の保護のため特に必要と認めるときは、破産手続の費用を仮に国庫から支弁することができる。職権で破産手続開始の決定をした場合も、同様とする。
2 前条第1項の規定は、前項前段の規定により破産手続の費用を仮に国庫から支弁する場合には、適用しない。
第24条 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続又は処分の中止を命ずることができる。ただし、第1号に掲げる手続又は第6号に掲げる処分についてはその手続の申立人である債権者又はその処分を行う者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限り、第5号に掲げる責任制限手続については責任制限手続開始の決定がされていない場合に限る。
一 債務者の財産に対して既にされている強制執行、仮差押え、仮処分又は一般の先取特権の実行若しくは留置権(商法(明治32年法律第48号)又は会社法の規定によるものを除く。)による競売(以下この節において「強制執行等」という。)の手続で、債務者につき破産手続開始の決定がされたとすれば破産債権若しくは財団債権となるべきもの(以下この項及び次条第8項において「破産債権等」という。)に基づくもの又は破産債権等を被担保債権とするもの
二 債務者の財産に対して既にされている企業担保権の実行手続で、破産債権等に基づくもの
三 債務者の財産関係の訴訟手続
四 債務者の財産関係の事件で行政庁に係属しているものの手続
五 債務者の責任制限手続(船舶の所有者等の責任の制限に関する法律(昭和50年法律第94号)第3章又は船舶油濁等損害賠償保障法(昭和50年法律第95号)第5章、同法第43条第5項において準用する同法第31条及び第32条並びに同法第43条第6項において準用する船舶の所有者等の責任の制限に関する法律第3章(第9条、第10条、第16条及び第54条を除く。)若しくは船舶油濁等損害賠償保障法第51条第5項において準用する同法第31条及び第32条並びに同法第51条第6項において準用する船舶の所有者等の責任の制限に関する法律第3章(第9条、第10条、第16条、第4節及び第54条を除く。)の規定による責任制限手続をいう。第263条及び第264条第1項において同じ。)
六 債務者の財産に対して既にされている共助対象外国租税(租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(昭和44年法律第46号。第103条第5項及び第253条第4項において「租税条約等実施特例法」という。)第11条第1項に規定する共助対象外国租税をいう。以下同じ。)の請求権に基づき国税滞納処分の例によってする処分(以下「外国租税滞納処分」という。)で、破産債権等に基づくもの
2 裁判所は、前項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。
3 裁判所は、第91条第2項に規定する保全管理命令が発せられた場合において、債務者の財産の管理及び処分をするために特に必要があると認めるときは、保全管理人の申立てにより、担保を立てさせて、第1項の規定により中止した強制執行等の手続又は外国租税滞納処分の取消しを命ずることができる。
4 第1項の規定による中止の命令、第2項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。
5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
6 第4項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
第25条 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、前条第1項第1号又は第6号の規定による中止の命令によっては破産手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、全ての債権者に対し、債務者の財産に対する強制執行等及び国税滞納処分(国税滞納処分の例による処分を含み、交付要求を除く。以下同じ。)の禁止を命ずることができる。ただし、事前に又は同時に、債務者の主要な財産に関し第28条第1項の規定による保全処分をした場合又は第91条第2項に規定する保全管理命令をした場合に限る。
2 前項の規定による禁止の命令(以下「包括的禁止命令」という。)を発する場合において、裁判所は、相当と認めるときは、一定の範囲に属する強制執行等又は国税滞納処分を包括的禁止命令の対象から除外することができる。
3 包括的禁止命令が発せられた場合には、債務者の財産に対して既にされている強制執行等の手続及び外国租税滞納処分(当該包括的禁止命令により禁止されることとなるものに限る。)は、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、中止する。
4 裁判所は、包括的禁止命令を変更し、又は取り消すことができる。
5 裁判所は、第91条第2項に規定する保全管理命令が発せられた場合において、債務者の財産の管理及び処分をするために特に必要があると認めるときは、保全管理人の申立てにより、担保を立てさせて、第3項の規定により中止した強制執行等の手続又は外国租税滞納処分の取消しを命ずることができる。
6 包括的禁止命令、第4項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。
7 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
8 包括的禁止命令が発せられたときは、破産債権等(当該包括的禁止命令により強制執行等又は国税滞納処分が禁止されているものに限る。)については、当該包括的禁止命令が効力を失った日の翌日から2月を経過する日までの間は、時効は、完成しない。
第26条 包括的禁止命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定があった場合には、その旨を公告し、その裁判書を債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人。次項において同じ。)及び申立人に送達し、かつ、その決定の主文を知れている債権者及び債務者(保全管理人が選任されている場合に限る。)に通知しなければならない。
2 包括的禁止命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定は、債務者に対する裁判書の送達がされた時から、効力を生ずる。
3 前条第6項の即時抗告についての裁判(包括的禁止命令を変更し、又は取り消す旨の決定を除く。)があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
第27条 裁判所は、包括的禁止命令を発した場合において、強制執行等の申立人である債権者に不当な損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、当該債権者の申立てにより、当該債権者に限り当該包括的禁止命令を解除する旨の決定をすることができる。この場合において、当該債権者は、債務者の財産に対する強制執行等をすることができ、当該包括的禁止命令が発せられる前に当該債権者がした強制執行等の手続で第25条第3項の規定により中止されていたものは、続行する。
2 前項の規定は、裁判所が国税滞納処分を行う者に不当な損害を及ぼすおそれがあると認める場合について準用する。
3 第1項(前項において準用する場合を含む。次項及び第6項において同じ。)の規定による解除の決定を受けた者に対する第25条第8項の規定の適用については、同項中「当該包括的禁止命令が効力を失った日」とあるのは、「第27条第1項(同条第2項において準用する場合を含む。)の規定による解除の決定があった日」とする。
4 第1項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
6 第1項の申立てについての裁判及び第4項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
第28条 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合には、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、債務者の財産に関し、その財産の処分禁止の仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。
2 裁判所は、前項の規定による保全処分を変更し、又は取り消すことができる。
3 第1項の規定による保全処分及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
4 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
5 第3項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
6 裁判所が第1項の規定により債務者が債権者に対して弁済その他の債務を消滅させる行為をすることを禁止する旨の保全処分を命じた場合には、債権者は、破産手続の関係においては、当該保全処分に反してされた弁済その他の債務を消滅させる行為の効力を主張することができない。ただし、債権者が、その行為の当時、当該保全処分がされたことを知っていたときに限る。
第29条 破産手続開始の申立てをした者は、破産手続開始の決定前に限り、当該申立てを取り下げることができる。この場合において、第24条第1項の規定による中止の命令、包括的禁止命令、前条第1項の規定による保全処分、第91条第2項に規定する保全管理命令又は第171条第1項の規定による保全処分がされた後は、裁判所の許可を得なければならない。
第2節 破産手続開始の決定
第30条 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、破産手続開始の原因となる事実があると認めるときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、破産手続開始の決定をする。
一 破産手続の費用の予納がないとき(第23条第1項前段の規定によりその費用を仮に国庫から支弁する場合を除く。)。
二 不当な目的で破産手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。
2 前項の決定は、その決定の時から、効力を生ずる。
第31条 裁判所は、破産手続開始の決定と同時に、1人又は数人の破産管財人を選任し、かつ、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 破産債権の届出をすべき期間
二 破産者の財産状況を報告するために招集する債権者集会(第4項、第136条第2項及び第3項並びに第158条において「財産状況報告集会」という。)の期日
三 破産債権の調査をするための期間(第116条第2項の場合にあっては、破産債権の調査をするための期日)
2 前項第1号及び第3号の規定にかかわらず、裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足するおそれがあると認めるときは、同項第1号の期間並びに同項第3号の期間及び期日を定めないことができる。
3 前項の場合において、裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足するおそれがなくなったと認めるときは、速やかに、第1項第1号の期間及び同項第3号の期間又は期日を定めなければならない。
4 第1項第2号の規定にかかわらず、裁判所は、知れている破産債権者の数その他の事情を考慮して財産状況報告集会を招集することを相当でないと認めるときは、同号の期日を定めないことができる。
5 第1項の場合において、知れている破産債権者の数が1000人以上であり、かつ、相当と認めるときは、裁判所は、次条第4項本文及び第5項本文において準用する同条第3項第1号、第33条第3項本文並びに第139条第3項本文の規定による破産債権者(同項本文の場合にあっては、同項本文に規定する議決権者。次条第2項において同じ。)に対する通知をせず、かつ、第111条、第112条又は第114条の規定により破産債権の届出をした破産債権者(以下「届出をした破産債権者」という。)を債権者集会の期日に呼び出さない旨の決定をすることができる。
第32条 裁判所は、破産手続開始の決定をしたときは、直ちに、次に掲げる事項を公告しなければならない。
一 破産手続開始の決定の主文
二 破産管財人の氏名又は名称
三 前条第1項の規定により定めた期間又は期日
四 破産財団に属する財産の所持者及び破産者に対して債務を負担する者(第3項第2号において「財産所持者等」という。)は、破産者にその財産を交付し、又は弁済をしてはならない旨
五 第204条第1項第2号の規定による簡易配当をすることが相当と認められる場合にあっては、簡易配当をすることにつき異議のある破産債権者は裁判所に対し前条第1項第3号の期間の満了時又は同号の期日の終了時までに異議を述べるべき旨
2 前条第5項の決定があったときは、裁判所は、前項各号に掲げる事項のほか、第4項本文及び第5項本文において準用する次項第1号、次条第3項本文並びに第139条第3項本文の規定による破産債権者に対する通知をせず、かつ、届出をした破産債権者を債権者集会の期日に呼び出さない旨をも公告しなければならない。
3 次に掲げる者には、前二項の規定により公告すべき事項を通知しなければならない。
一 破産管財人、破産者及び知れている破産債権者
二 知れている財産所持者等
三 第91条第2項に規定する保全管理命令があった場合における保全管理人
四 労働組合等(破産者の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、破産者の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合がないときは破産者の使用人その他の従業者の過半数を代表する者をいう。第78条第4項及び第136条第3項において同じ。)
4 第1項第3号及び前項第1号の規定は、前条第3項の規定により同条第1項第1号の期間及び同項第3号の期間又は期日を定めた場合について準用する。ただし、同条第5項の決定があったときは、知れている破産債権者に対しては、当該通知をすることを要しない。
5 第1項第2号並びに第3項第1号及び第2号の規定は第1項第2号に掲げる事項に変更を生じた場合について、第1項第3号及び第3項第1号の規定は第1項第3号に掲げる事項に変更を生じた場合(前条第1項第1号の期間又は同項第2号の期日に変更を生じた場合に限る。)について準用する。ただし、同条第5項の決定があったときは、知れている破産債権者に対しては、当該通知をすることを要しない。
第33条 破産手続開始の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
2 第24条から第28条までの規定は、破産手続開始の申立てを棄却する決定に対して前項の即時抗告があった場合について準用する。
3 破産手続開始の決定をした裁判所は、第1項の即時抗告があった場合において、当該決定を取り消す決定が確定したときは、直ちにその主文を公告し、かつ、前条第3項各号(第3号を除く。)に掲げる者にその主文を通知しなければならない。ただし、第31条第5項の決定があったときは、知れている破産債権者に対しては、当該通知をすることを要しない。
第3節 破産手続開始の効果
第1款 通則
第34条 破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
2 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
3 第1項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。
一 民事執行法(昭和54年法律第4号)第131条第3号に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭
二 差し押さえることができない財産(民事執行法第131条第3号に規定する金銭を除く。)。ただし、同法第132条第1項(同法第192条において準用する場合を含む。)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。
4 裁判所は、破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後1月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。
5 裁判所は、前項の決定をするに当たっては、破産管財人の意見を聴かなければならない。
6 第4項の申立てを却下する決定に対しては、破産者は、即時抗告をすることができる。
7 第4項の決定又は前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を破産者及び破産管財人に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
第35条 他の法律の規定により破産手続開始の決定によって解散した法人又は解散した法人で破産手続開始の決定を受けたものは、破産手続による清算の目的の範囲内において、破産手続が終了するまで存続するものとみなす。
第36条 破産手続開始の決定がされた後であっても、破産管財人は、裁判所の許可を得て、破産者の事業を継続することができる。
第37条 破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない。
2 前項の申立てを却下する決定に対しては、破産者は、即時抗告をすることができる。
第38条 裁判所は、必要と認めるときは、破産者の引致を命ずることができる。
2 破産手続開始の申立てがあったときは、裁判所は、破産手続開始の決定をする前でも、債務者の引致を命ずることができる。
3 前二項の規定による引致は、引致状を発してしなければならない。
4 第1項又は第2項の規定による引致を命ずる決定に対しては、破産者又は債務者は、即時抗告をすることができる。
5 刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)中勾引に関する規定は、第1項及び第2項の規定による引致について準用する。
第39条 前二条の規定は、破産者の法定代理人及び支配人並びに破産者の理事、取締役、執行役及びこれらに準ずる者について準用する。
第40条 次に掲げる者は、破産管財人若しくは第144条第2項に規定する債権者委員会の請求又は債権者集会の決議に基づく請求があったときは、破産に関し必要な説明をしなければならない。ただし、第5号に掲げる者については、裁判所の許可がある場合に限る。
一 破産者
二 破産者の代理人
三 破産者が法人である場合のその理事、取締役、執行役、監事、監査役及び清算人
四 前号に掲げる者に準ずる者
五 破産者の従業者(第2号に掲げる者を除く。)
2 前項の規定は、同項各号(第1号を除く。)に掲げる者であった者について準用する。
第41条 破産者は、破産手続開始の決定後遅滞なく、その所有する不動産、現金、有価証券、預貯金その他裁判所が指定する財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければならない。
第42条 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行、企業担保権の実行又は外国租税滞納処分で、破産債権若しくは財団債権に基づくもの又は破産債権若しくは財団債権を被担保債権とするものは、することができない。
2 前項に規定する場合には、同項に規定する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行及び企業担保権の実行の手続並びに外国租税滞納処分で、破産財団に属する財産に対して既にされているものは、破産財団に対してはその効力を失う。ただし、同項に規定する強制執行又は一般の先取特権の実行(以下この条において「強制執行又は先取特権の実行」という。)の手続については、破産管財人において破産財団のためにその手続を続行することを妨げない。
3 前項ただし書の規定により続行された強制執行又は先取特権の実行の手続については、民事執行法第63条及び第129条(これらの規定を同法その他強制執行の手続に関する法令において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。
4 第2項ただし書の規定により続行された強制執行又は先取特権の実行の手続に関する破産者に対する費用請求権は、財団債権とする。
5 第2項ただし書の規定により続行された強制執行又は先取特権の実行に対する第三者異議の訴えについては、破産管財人を被告とする。
6 破産手続開始の決定があったときは、破産債権又は財団債権に基づく財産開示手続(民事執行法第196条に規定する財産開示手続をいう。以下この項並びに第249条第1項及び第2項において同じ。)又は第三者からの情報取得手続(同法第204条に規定する第三者からの情報取得手続をいう。以下この項並びに第249条第1項及び第2項において同じ。)の申立てはすることができず、破産債権又は財団債権に基づく財産開示手続及び第三者からの情報取得手続はその効力を失う。
第43条 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する国税滞納処分(外国租税滞納処分を除く。次項において同じ。)は、することができない。
2 破産財団に属する財産に対して国税滞納処分が既にされている場合には、破産手続開始の決定は、その国税滞納処分の続行を妨げない。
3 破産手続開始の決定があったときは、破産手続が終了するまでの間は、罰金、科料及び追徴の時効は、進行しない。免責許可の申立てがあった後当該申立てについての裁判が確定するまでの間(破産手続開始の決定前に免責許可の申立てがあった場合にあっては、破産手続開始の決定後当該申立てについての裁判が確定するまでの間)も、同様とする。
第44条 破産手続開始の決定があったときは、破産者を当事者とする破産財団に関する訴訟手続は、中断する。
2 破産管財人は、前項の規定により中断した訴訟手続のうち破産債権に関しないものを受け継ぐことができる。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。
3 前項の場合においては、相手方の破産者に対する訴訟費用請求権は、財団債権とする。
4 破産手続が終了したときは、破産管財人を当事者とする破産財団に関する訴訟手続は、中断する。
5 破産者は、前項の規定により中断した訴訟手続を受け継がなければならない。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。
6 第1項の規定により中断した訴訟手続について第2項の規定による受継があるまでに破産手続が終了したときは、破産者は、当然訴訟手続を受継する。
第45条 民法(明治29年法律第89号)第423条第1項、第423条の7又は第424条第1項の規定により破産債権者又は財団債権者の提起した訴訟が破産手続開始当時係属するときは、その訴訟手続は、中断する。
2 破産管財人は、前項の規定により中断した訴訟手続を受け継ぐことができる。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。
3 前項の場合においては、相手方の破産債権者又は財団債権者に対する訴訟費用請求権は、財団債権とする。
4 第1項の規定により中断した訴訟手続について第2項の規定による受継があった後に破産手続が終了したときは、当該訴訟手続は、中断する。
5 前項の場合には、破産債権者又は財団債権者において当該訴訟手続を受け継がなければならない。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。
6 第1項の規定により中断した訴訟手続について第2項の規定による受継があるまでに破産手続が終了したときは、破産債権者又は財団債権者は、当然訴訟手続を受継する。
第46条 第44条の規定は、破産財団に関する事件で行政庁に係属するものについて準用する。
第2款 破産手続開始の効果
第47条 破産者が破産手続開始後に破産財団に属する財産に関してした法律行為は、破産手続の関係においては、その効力を主張することができない。
2 破産者が破産手続開始の日にした法律行為は、破産手続開始後にしたものと推定する。
第48条 破産手続開始後に破産財団に属する財産に関して破産者の法律行為によらないで権利を取得しても、その権利の取得は、破産手続の関係においては、その効力を主張することができない。
2 前条第2項の規定は、破産手続開始の日における前項の権利の取得について準用する。
第49条 不動産又は船舶に関し破産手続開始前に生じた登記原因に基づき破産手続開始後にされた登記又は不動産登記法(平成16年法律第123号)第105条第1号の規定による仮登記は、破産手続の関係においては、その効力を主張することができない。ただし、登記権利者が破産手続開始の事実を知らないでした登記又は仮登記については、この限りでない。
2 前項の規定は、権利の設定、移転若しくは変更に関する登録若しくは仮登録又は企業担保権の設定、移転若しくは変更に関する登記について準用する。
第50条 破産手続開始後に、その事実を知らないで破産者にした弁済は、破産手続の関係においても、その効力を主張することができる。
2 破産手続開始後に、その事実を知って破産者にした弁済は、破産財団が受けた利益の限度においてのみ、破産手続の関係において、その効力を主張することができる。
第51条 前二条の規定の適用については、第32条第1項の規定による公告の前においてはその事実を知らなかったものと推定し、当該公告の後においてはその事実を知っていたものと推定する。
第52条 数人が共同して財産権を有する場合において、共有者の中に破産手続開始の決定を受けた者があるときは、その共有に係る財産の分割の請求は、共有者の間で分割をしない旨の定めがあるときでも、することができる。
2 前項の場合には、他の共有者は、相当の償金を支払って破産者の持分を取得することができる。
第53条 双務契約について破産者及びその相手方が破産手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、破産管財人は、契約の解除をし、又は破産者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。
2 前項の場合には、相手方は、破産管財人に対し、相当の期間を定め、その期間内に契約の解除をするか、又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、破産管財人がその期間内に確答をしないときは、契約の解除をしたものとみなす。
3 前項の規定は、相手方又は破産管財人が民法第631条前段の規定により解約の申入れをすることができる場合又は同法第642条第1項前段の規定により契約の解除をすることができる場合について準用する。
第54条 前条第1項又は第2項の規定により契約の解除があった場合には、相手方は、損害の賠償について破産債権者としてその権利を行使することができる。
2 前項に規定する場合において、相手方は、破産者の受けた反対給付が破産財団中に現存するときは、その返還を請求することができ、現存しないときは、その価額について財団債権者としてその権利を行使することができる。
第55条 破産者に対して継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は、破産手続開始の申立て前の給付に係る破産債権について弁済がないことを理由としては、破産手続開始後は、その義務の履行を拒むことができない。
2 前項の双務契約の相手方が破産手続開始の申立て後破産手続開始前にした給付に係る請求権(一定期間ごとに債権額を算定すべき継続的給付については、申立ての日の属する期間内の給付に係る請求権を含む。)は、財団債権とする。
3 前二項の規定は、労働契約には、適用しない。
第56条 第53条第1項及び第2項の規定は、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を設定する契約について破産者の相手方が当該権利につき登記、登録その他の第三者に対抗することができる要件を備えている場合には、適用しない。
2 前項に規定する場合には、相手方の有する請求権は、財団債権とする。
第57条 委任者について破産手続が開始された場合において、受任者は、民法第655条の規定による破産手続開始の通知を受けず、かつ、破産手続開始の事実を知らないで委任事務を処理したときは、これによって生じた債権について、破産債権者としてその権利を行使することができる。
第58条 取引所の相場その他の市場の相場がある商品の取引に係る契約であって、その取引の性質上特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができないものについて、その時期が破産手続開始後に到来すべきときは、当該契約は、解除されたものとみなす。
2 前項の場合において、損害賠償の額は、履行地又はその地の相場の標準となるべき地における同種の取引であって同一の時期に履行すべきものの相場と当該契約における商品の価格との差額によって定める。
3 第54条第1項の規定は、前項の規定による損害の賠償について準用する。
4 第1項又は第2項に定める事項について当該取引所又は市場における別段の定めがあるときは、その定めに従う。
5 第1項の取引を継続して行うためにその当事者間で締結された基本契約において、その基本契約に基づいて行われるすべての同項の取引に係る契約につき生ずる第2項に規定する損害賠償の債権又は債務を差引計算して決済する旨の定めをしたときは、請求することができる損害賠償の額の算定については、その定めに従う。
第59条 交互計算は、当事者の一方について破産手続が開始されたときは、終了する。この場合においては、各当事者は、計算を閉鎖して、残額の支払を請求することができる。
2 前項の規定による請求権は、破産者が有するときは破産財団に属し、相手方が有するときは破産債権とする。
第60条 為替手形の振出人又は裏書人について破産手続が開始された場合において、支払人又は予備支払人がその事実を知らないで引受け又は支払をしたときは、その支払人又は予備支払人は、これによって生じた債権につき、破産債権者としてその権利を行使することができる。
2 前項の規定は、小切手及び金銭その他の物又は有価証券の給付を目的とする有価証券について準用する。
3 第51条の規定は、前二項の規定の適用について準用する。
第61条 民法第758条第2項及び第3項並びに第759条の規定は配偶者の財産を管理する者につき破産手続が開始された場合について、同法第835条の規定は親権を行う者につき破産手続が開始された場合について準用する。
第3款 取戻権
第62条 破産手続の開始は、破産者に属しない財産を破産財団から取り戻す権利(第64条及び第78条第2項第13号において「取戻権」という。)に影響を及ぼさない。
第63条 売主が売買の目的である物品を買主に発送した場合において、買主がまだ代金の全額を弁済せず、かつ、到達地でその物品を受け取らない間に買主について破産手続開始の決定があったときは、売主は、その物品を取り戻すことができる。ただし、破産管財人が代金の全額を支払ってその物品の引渡しを請求することを妨げない。
2 前項の規定は、第53条第1項及び第2項の規定の適用を妨げない。
3 第1項の規定は、物品の買入れの委託を受けた問屋がその物品を委託者に発送した場合について準用する。この場合において、同項中「代金」とあるのは、「報酬及び費用」と読み替えるものとする。
第64条 破産者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)が破産手続開始前に取戻権の目的である財産を譲り渡した場合には、当該財産について取戻権を有する者は、反対給付の請求権の移転を請求することができる。破産管財人が取戻権の目的である財産を譲り渡した場合も、同様とする。
2 前項の場合において、破産管財人が反対給付を受けたときは、同項の取戻権を有する者は、破産管財人が反対給付として受けた財産の給付を請求することができる。
第4款 別除権
第65条 別除権は、破産手続によらないで、行使することができる。
2 担保権(特別の先取特権、質権又は抵当権をいう。以下この項において同じ。)の目的である財産が破産管財人による任意売却その他の事由により破産財団に属しないこととなった場合において当該担保権がなお存続するときにおける当該担保権を有する者も、その目的である財産について別除権を有する。
第66条 破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき存する商法又は会社法の規定による留置権は、破産財団に対しては特別の先取特権とみなす。
2 前項の特別の先取特権は、民法その他の法律の規定による他の特別の先取特権に後れる。
3 第1項に規定するものを除き、破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき存する留置権は、破産財団に対してはその効力を失う。
第5款 相殺権
第67条 破産債権者は、破産手続開始の時において破産者に対して債務を負担するときは、破産手続によらないで、相殺をすることができる。
2 破産債権者の有する債権が破産手続開始の時において期限付若しくは解除条件付であるとき、又は第103条第2項第1号に掲げるものであるときでも、破産債権者が前項の規定により相殺をすることを妨げない。破産債権者の負担する債務が期限付若しくは条件付であるとき、又は将来の請求権に関するものであるときも、同様とする。
第68条 破産債権者が前条の規定により相殺をする場合の破産債権の額は、第103条第2項各号に掲げる債権の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める額とする。
2 前項の規定にかかわらず、破産債権者の有する債権が無利息債権又は定期金債権であるときは、その破産債権者は、その債権の債権額から第99条第1項第2号から第4号までに掲げる部分の額を控除した額の限度においてのみ、相殺をすることができる。
第69条 解除条件付債権を有する者が相殺をするときは、その相殺によって消滅する債務の額について、破産財団のために、担保を供し、又は寄託をしなければならない。
第70条 停止条件付債権又は将来の請求権を有する者は、破産者に対する債務を弁済する場合には、後に相殺をするため、その債権額の限度において弁済額の寄託を請求することができる。敷金の返還請求権を有する者が破産者に対する賃料債務を弁済する場合も、同様とする。
第71条 破産債権者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。
一 破産手続開始後に破産財団に対して債務を負担したとき。
二 支払不能になった後に契約によって負担する債務を専ら破産債権をもってする相殺に供する目的で破産者の財産の処分を内容とする契約を破産者との間で締結し、又は破産者に対して債務を負担する者の債務を引き受けることを内容とする契約を締結することにより破産者に対して債務を負担した場合であって、当該契約の締結の当時、支払不能であったことを知っていたとき。
三 支払の停止があった後に破産者に対して債務を負担した場合であって、その負担の当時、支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった時において支払不能でなかったときは、この限りでない。
四 破産手続開始の申立てがあった後に破産者に対して債務を負担した場合であって、その負担の当時、破産手続開始の申立てがあったことを知っていたとき。
2 前項第2号から第4号までの規定は、これらの規定に規定する債務の負担が次の各号に掲げる原因のいずれかに基づく場合には、適用しない。
一 法定の原因
二 支払不能であったこと又は支払の停止若しくは破産手続開始の申立てがあったことを破産債権者が知った時より前に生じた原因
三 破産手続開始の申立てがあった時より1年以上前に生じた原因
第72条 破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。
一 破産手続開始後に他人の破産債権を取得したとき。
二 支払不能になった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払不能であったことを知っていたとき。
三 支払の停止があった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった時において支払不能でなかったときは、この限りでない。
四 破産手続開始の申立てがあった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、破産手続開始の申立てがあったことを知っていたとき。
2 前項第2号から第4号までの規定は、これらの規定に規定する破産債権の取得が次の各号に掲げる原因のいずれかに基づく場合には、適用しない。
一 法定の原因
二 支払不能であったこと又は支払の停止若しくは破産手続開始の申立てがあったことを破産者に対して債務を負担する者が知った時より前に生じた原因
三 破産手続開始の申立てがあった時より1年以上前に生じた原因
四 破産者に対して債務を負担する者と破産者との間の契約
第73条 破産管財人は、第31条第1項第3号の期間が経過した後又は同号の期日が終了した後は、第67条の規定により相殺をすることができる破産債権者に対し、1月以上の期間を定め、その期間内に当該破産債権をもって相殺をするかどうかを確答すべき旨を催告することができる。ただし、破産債権者の負担する債務が弁済期にあるときに限る。
2 前項の規定による催告があった場合において、破産債権者が同項の規定により定めた期間内に確答をしないときは、当該破産債権者は、破産手続の関係においては、当該破産債権についての相殺の効力を主張することができない。
第3章 破産手続の機関
第1節 破産管財人
第1款 破産管財人の選任及び監督
第74条 破産管財人は、裁判所が選任する。
2 法人は、破産管財人となることができる。
第75条 破産管財人は、裁判所が監督する。
2 裁判所は、破産管財人が破産財団に属する財産の管理及び処分を適切に行っていないとき、その他重要な事由があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産管財人を解任することができる。この場合においては、その破産管財人を審尋しなければならない。
第76条 破産管財人が数人あるときは、共同してその職務を行う。ただし、裁判所の許可を得て、それぞれ単独にその職務を行い、又は職務を分掌することができる。
2 破産管財人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その1人に対してすれば足りる。
第77条 破産管財人は、必要があるときは、その職務を行わせるため、自己の責任で1人又は数人の破産管財人代理を選任することができる。
2 前項の破産管財人代理の選任については、裁判所の許可を得なければならない。
第2款 破産管財人の権限等
第78条 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属する。
2 破産管財人が次に掲げる行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。
一 不動産に関する物権、登記すべき日本船舶又は外国船舶の任意売却
二 鉱業権、漁業権、公共施設等運営権、樹木採取権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、回路配置利用権、育成者権、著作権又は著作隣接権の任意売却
三 営業又は事業の譲渡
四 商品の一括売却
五 借財
六 第238条第2項の規定による相続の放棄の承認、第243条において準用する同項の規定による包括遺贈の放棄の承認又は第244条第1項の規定による特定遺贈の放棄
七 動産の任意売却
八 債権又は有価証券の譲渡
九 第53条第1項の規定による履行の請求
十 訴えの提起
十一 和解又は仲裁合意(仲裁法(平成15年法律第138号)第2条第1項に規定する仲裁合意をいう。)
十二 権利の放棄
十三 財団債権、取戻権又は別除権の承認
十四 別除権の目的である財産の受戻し
十五 その他裁判所の指定する行為
3 前項の規定にかかわらず、同項第7号から第14号までに掲げる行為については、次に掲げる場合には、同項の許可を要しない。
一 最高裁判所規則で定める額以下の価額を有するものに関するとき。
二 前号に掲げるもののほか、裁判所が前項の許可を要しないものとしたものに関するとき。
4 裁判所は、第2項第3号の規定により営業又は事業の譲渡につき同項の許可をする場合には、労働組合等の意見を聴かなければならない。
5 第2項の許可を得ないでした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
6 破産管財人は、第2項各号に掲げる行為をしようとするときは、遅滞を生ずるおそれのある場合又は第3項各号に掲げる場合を除き、破産者の意見を聴かなければならない。
第79条 破産管財人は、就職の後直ちに破産財団に属する財産の管理に着手しなければならない。
第80条 破産財団に関する訴えについては、破産管財人を原告又は被告とする。
第81条 裁判所は、破産管財人の職務の遂行のため必要があると認めるときは、信書の送達の事業を行う者に対し、破産者にあてた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成14年法律第99号)第2条第3項に規定する信書便物(次条及び第118条第5項において「郵便物等」という。)を破産管財人に配達すべき旨を嘱託することができる。
2 裁判所は、破産者の申立てにより又は職権で、破産管財人の意見を聴いて、前項に規定する嘱託を取り消し、又は変更することができる。
3 破産手続が終了したときは、裁判所は、第1項に規定する嘱託を取り消さなければならない。
4 第1項又は第2項の規定による決定及び同項の申立てを却下する裁判に対しては、破産者又は破産管財人は、即時抗告をすることができる。
5 第1項の規定による決定に対する前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
第82条 破産管財人は、破産者にあてた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができる。
2 破産者は、破産管財人に対し、破産管財人が受け取った前項の郵便物等の閲覧又は当該郵便物等で破産財団に関しないものの交付を求めることができる。
第83条 破産管財人は、第40条第1項各号に掲げる者及び同条第2項に規定する者に対して同条の規定による説明を求め、又は破産財団に関する帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
2 破産管財人は、その職務を行うため必要があるときは、破産者の子会社等(次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める法人をいう。次項において同じ。)に対して、その業務及び財産の状況につき説明を求め、又はその帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
一 破産者が株式会社である場合 破産者の子会社(会社法第2条第3号に規定する子会社をいう。)
二 破産者が株式会社以外のものである場合 破産者が株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合における当該株式会社
3 破産者(株式会社以外のものに限る。以下この項において同じ。)の子会社等又は破産者及びその子会社等が他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合には、前項の規定の適用については、当該他の株式会社を当該破産者の子会社等とみなす。
第84条 破産管財人は、職務の執行に際し抵抗を受けるときは、その抵抗を排除するために、裁判所の許可を得て、警察上の援助を求めることができる。
第85条 破産管財人は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行わなければならない。
2 破産管財人が前項の注意を怠ったときは、その破産管財人は、利害関係人に対し、連帯して損害を賠償する義務を負う。
第86条 破産管財人は、破産債権である給料の請求権又は退職手当の請求権を有する者に対し、破産手続に参加するのに必要な情報を提供するよう努めなければならない。
第87条 破産管財人は、費用の前払及び裁判所が定める報酬を受けることができる。
2 前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
3 前二項の規定は、破産管財人代理について準用する。
第88条 破産管財人の任務が終了した場合には、破産管財人は、遅滞なく、計算の報告書を裁判所に提出しなければならない。
2 前項の場合において、破産管財人が欠けたときは、同項の計算の報告書は、同項の規定にかかわらず、後任の破産管財人が提出しなければならない。
3 第1項又は前項の場合には、第1項の破産管財人又は前項の後任の破産管財人は、破産管財人の任務終了による債権者集会への計算の報告を目的として第135条第1項本文の申立てをしなければならない。
4 破産者、破産債権者又は後任の破産管財人(第2項の後任の破産管財人を除く。)は、前項の申立てにより招集される債権者集会の期日において、第1項又は第2項の計算について異議を述べることができる。
5 前項の債権者集会の期日と第1項又は第2項の規定による計算の報告書の提出日との間には、3日以上の期間を置かなければならない。
6 第4項の債権者集会の期日において同項の異議がなかった場合には、第1項又は第2項の計算は、承認されたものとみなす。
第89条 前条第1項又は第2項の場合には、同条第1項の破産管財人又は同条第2項の後任の破産管財人は、同条第3項の申立てに代えて、書面による計算の報告をする旨の申立てを裁判所にすることができる。
2 裁判所は、前項の規定による申立てがあり、かつ、前条第1項又は第2項の規定による計算の報告書の提出があったときは、その提出があった旨及びその計算に異議があれば一定の期間内にこれを述べるべき旨を公告しなければならない。この場合においては、その期間は、1月を下ることができない。
3 破産者、破産債権者又は後任の破産管財人(第1項の後任の破産管財人を除く。)は、前項の期間内に前条第1項又は第2項の計算について異議を述べることができる。
4 第2項の期間内に前項の異議がなかった場合には、前条第1項又は第2項の計算は、承認されたものとみなす。
第90条 破産管財人の任務が終了した場合において、急迫の事情があるときは、破産管財人又はその承継人は、後任の破産管財人又は破産者が財産を管理することができるに至るまで必要な処分をしなければならない。
2 破産手続開始の決定の取消し又は破産手続廃止の決定が確定した場合には、破産管財人は、財団債権を弁済しなければならない。ただし、その存否又は額について争いのある財団債権については、その債権を有する者のために供託しなければならない。
第2節 保全管理人
第91条 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、債務者(法人である場合に限る。以下この節、第148条第4項及び第152条第2項において同じ。)の財産の管理及び処分が失当であるとき、その他債務者の財産の確保のために特に必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、債務者の財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分をすることができる。
2 裁判所は、前項の規定による処分(以下「保全管理命令」という。)をする場合には、当該保全管理命令において、1人又は数人の保全管理人を選任しなければならない。
3 前二項の規定は、破産手続開始の申立てを棄却する決定に対して第33条第1項の即時抗告があった場合について準用する。
4 裁判所は、保全管理命令を変更し、又は取り消すことができる。
5 保全管理命令及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
6 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
第92条 裁判所は、保全管理命令を発したときは、その旨を公告しなければならない。保全管理命令を変更し、又は取り消す旨の決定があった場合も、同様とする。
2 保全管理命令、前条第4項の規定による決定及び同条第5項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
3 第10条第4項の規定は、第1項の場合については、適用しない。
第93条 保全管理命令が発せられたときは、債務者の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)の管理及び処分をする権利は、保全管理人に専属する。ただし、保全管理人が債務者の常務に属しない行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。
2 前項ただし書の許可を得ないでした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
3 第78条第2項から第6項までの規定は、保全管理人について準用する。
第94条 保全管理人の任務が終了した場合には、保全管理人は、遅滞なく、裁判所に書面による計算の報告をしなければならない。
2 前項の場合において、保全管理人が欠けたときは、同項の計算の報告は、同項の規定にかかわらず、後任の保全管理人又は破産管財人がしなければならない。
第95条 保全管理人は、必要があるときは、その職務を行わせるため、自己の責任で1人又は数人の保全管理人代理を選任することができる。
2 前項の規定による保全管理人代理の選任については、裁判所の許可を得なければならない。
第96条 第40条の規定は保全管理人の請求について、第47条、第50条及び第51条の規定は保全管理命令が発せられた場合について、第74条第2項、第75条、第76条、第79条、第80条、第82条から第85条まで、第87条第1項及び第2項並びに第90条第1項の規定は保全管理人について、第87条第1項及び第2項の規定は保全管理人代理について準用する。この場合において、第51条中「第32条第1項の規定による公告」とあるのは「第92条第1項の規定による公告」と、第90条第1項中「後任の破産管財人」とあるのは「後任の保全管理人、破産管財人」と読み替えるものとする。
2 債務者の財産に関する訴訟手続及び債務者の財産関係の事件で行政庁に係属するものについては、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める規定を準用する。
一 保全管理命令が発せられた場合 第44条第1項から第3項まで
二 保全管理命令が効力を失った場合(破産手続開始の決定があった場合を除く。) 第44条第4項から第6項まで
第4章 破産債権
第1節 破産債権者の権利
第97条 次に掲げる債権(財団債権であるものを除く。)は、破産債権に含まれるものとする。
一 破産手続開始後の利息の請求権
二 破産手続開始後の不履行による損害賠償又は違約金の請求権
三 破産手続開始後の延滞税、利子税若しくは延滞金の請求権又はこれらに類する共助対象外国租税の請求権
四 国税徴収法(昭和34年法律第147号)又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権(以下「租税等の請求権」という。)であって、破産財団に関して破産手続開始後の原因に基づいて生ずるもの
五 加算税(国税通則法(昭和37年法律第66号)第2条第4号に規定する過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税及び重加算税をいう。)若しくは加算金(地方税法(昭和25年法律第226号)第1条第1項第14号に規定する過少申告加算金、不申告加算金及び重加算金をいう。)の請求権又はこれらに類する共助対象外国租税の請求権
六 罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金又は過料の請求権(以下「罰金等の請求権」という。)
七 破産手続参加の費用の請求権
八 第54条第1項(第58条第3項において準用する場合を含む。)に規定する相手方の損害賠償の請求権
九 第57条に規定する債権
十 第59条第1項の規定による請求権であって、相手方の有するもの
十一 第60条第1項(同条第2項において準用する場合を含む。)に規定する債権
十二 第168条第2項第2号又は第3号に定める権利
第98条 破産財団に属する財産につき一般の先取特権その他一般の優先権がある破産債権(次条第1項に規定する劣後的破産債権及び同条第2項に規定する約定劣後破産債権を除く。以下「優先的破産債権」という。)は、他の破産債権に優先する。
2 前項の場合において、優先的破産債権間の優先順位は、民法、商法その他の法律の定めるところによる。
3 優先権が一定の期間内の債権額につき存在する場合には、その期間は、破産手続開始の時からさかのぼって計算する。
第99条 次に掲げる債権(以下「劣後的破産債権」という。)は、他の破産債権(次項に規定する約定劣後破産債権を除く。)に後れる。
一 第97条第1号から第7号までに掲げる請求権
二 破産手続開始後に期限が到来すべき確定期限付債権で無利息のもののうち、破産手続開始の時から期限に至るまでの期間の年数(その期間に1年に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。)に応じた債権に対する破産手続開始の時における法定利率による利息の額に相当する部分
三 破産手続開始後に期限が到来すべき不確定期限付債権で無利息のもののうち、その債権額と破産手続開始の時における評価額との差額に相当する部分
四 金額及び存続期間が確定している定期金債権のうち、各定期金につき第2号の規定に準じて算定される額の合計額(その額を各定期金の合計額から控除した額が破産手続開始の時における法定利率によりその定期金に相当する利息を生ずべき元本額を超えるときは、その超過額を加算した額)に相当する部分
2 破産債権者と破産者との間において、破産手続開始前に、当該債務者について破産手続が開始されたとすれば当該破産手続におけるその配当の順位が劣後的破産債権に後れる旨の合意がされた債権(以下「約定劣後破産債権」という。)は、劣後的破産債権に後れる。
第100条 破産債権は、この法律に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ、行使することができない。
2 前項の規定は、次に掲げる行為によって破産債権である租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)を行使する場合については、適用しない。
一 破産手続開始の時に破産財団に属する財産に対して既にされている国税滞納処分
二 徴収の権限を有する者による還付金又は過誤納金の充当
第101条 優先的破産債権である給料の請求権又は退職手当の請求権について届出をした破産債権者が、これらの破産債権の弁済を受けなければその生活の維持を図るのに困難を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、最初に第195条第1項に規定する最後配当、第204条第1項に規定する簡易配当、第208条第1項に規定する同意配当又は第209条第1項に規定する中間配当の許可があるまでの間、破産管財人の申立てにより又は職権で、その全部又は一部の弁済をすることを許可することができる。ただし、その弁済により財団債権又は他の先順位若しくは同順位の優先的破産債権を有する者の利益を害するおそれがないときに限る。
2 破産管財人は、前項の破産債権者から同項の申立てをすべきことを求められたときは、直ちにその旨を裁判所に報告しなければならない。この場合において、その申立てをしないこととしたときは、遅滞なく、その事情を裁判所に報告しなければならない。
第102条 破産管財人は、破産財団に属する債権をもって破産債権と相殺することが破産債権者の一般の利益に適合するときは、裁判所の許可を得て、その相殺をすることができる。
第103条 破産債権者は、その有する破産債権をもって破産手続に参加することができる。
2 前項の場合において、破産債権の額は、次に掲げる債権の区分に従い、それぞれ当該各号に定める額とする。
一 次に掲げる債権 破産手続開始の時における評価額
イ 金銭の支払を目的としない債権
ロ 金銭債権で、その額が不確定であるもの又はその額を外国の通貨をもって定めたもの
ハ 金額又は存続期間が不確定である定期金債権
二 前号に掲げる債権以外の債権 債権額
3 破産債権が期限付債権でその期限が破産手続開始後に到来すべきものであるときは、その破産債権は、破産手続開始の時において弁済期が到来したものとみなす。
4 破産債権が破産手続開始の時において条件付債権又は将来の請求権であるときでも、当該破産債権者は、その破産債権をもって破産手続に参加することができる。
5 第1項の規定にかかわらず、共助対象外国租税の請求権をもって破産手続に参加するには、共助実施決定(租税条約等実施特例法第11条第1項に規定する共助実施決定をいう。第134条第2項において同じ。)を得なければならない。
第104条 数人が各自全部の履行をする義務を負う場合において、その全員又はそのうちの数人若しくは1人について破産手続開始の決定があったときは、債権者は、破産手続開始の時において有する債権の全額についてそれぞれの破産手続に参加することができる。
2 前項の場合において、他の全部の履行をする義務を負う者が破産手続開始後に債権者に対して弁済その他の債務を消滅させる行為(以下この条において「弁済等」という。)をしたときであっても、その債権の全額が消滅した場合を除き、その債権者は、破産手続開始の時において有する債権の全額についてその権利を行使することができる。
3 第1項に規定する場合において、破産者に対して将来行うことがある求償権を有する者は、その全額について破産手続に参加することができる。ただし、債権者が破産手続開始の時において有する債権について破産手続に参加したときは、この限りでない。
4 第1項の規定により債権者が破産手続に参加した場合において、破産者に対して将来行うことがある求償権を有する者が破産手続開始後に債権者に対して弁済等をしたときは、その債権の全額が消滅した場合に限り、その求償権を有する者は、その求償権の範囲内において、債権者が有した権利を破産債権者として行使することができる。
5 第2項の規定は破産者の債務を担保するため自己の財産を担保に供した第三者(以下この項において「物上保証人」という。)が破産手続開始後に債権者に対して弁済等をした場合について、前二項の規定は物上保証人が破産者に対して将来行うことがある求償権を有する場合における当該物上保証人について準用する。
第105条 保証人について破産手続開始の決定があったときは、債権者は、破産手続開始の時において有する債権の全額について破産手続に参加することができる。
第106条 法人の債務につき無限の責任を負う者について破産手続開始の決定があったときは、当該法人の債権者は、破産手続開始の時において有する債権の全額について破産手続に参加することができる。
第107条 法人の債務につき有限の責任を負う者について破産手続開始の決定があったときは、当該法人の債権者は、破産手続に参加することができない。この場合においては、当該法人が出資の請求について破産手続に参加することを妨げない。
2 法人の債務につき有限の責任を負う者がある場合において、当該法人について破産手続開始の決定があったときは、当該法人の債権者は、当該法人の債務につき有限の責任を負う者に対してその権利を行使することができない。
第108条 別除権者は、当該別除権に係る第65条第2項に規定する担保権によって担保される債権については、その別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の額についてのみ、破産債権者としてその権利を行使することができる。ただし、当該担保権によって担保される債権の全部又は一部が破産手続開始後に担保されないこととなった場合には、その債権の当該全部又は一部の額について、破産債権者としてその権利を行使することを妨げない。
2 破産財団に属しない破産者の財産につき特別の先取特権、質権若しくは抵当権を有する者又は破産者につき更に破産手続開始の決定があった場合における前の破産手続において破産債権を有する者も、前項と同様とする。
第109条 破産債権者は、破産手続開始の決定があった後に、破産財団に属する財産で外国にあるものに対して権利を行使したことにより、破産債権について弁済を受けた場合であっても、その弁済を受ける前の債権の額について破産手続に参加することができる。
第110条 破産債権者は、裁判所の許可を得て、共同して又は各別に、1人又は数人の代理委員を選任することができる。
2 代理委員は、これを選任した破産債権者のために、破産手続に属する一切の行為をすることができる。
3 代理委員が数人あるときは、共同してその権限を行使する。ただし、第三者の意思表示は、その1人に対してすれば足りる。
4 裁判所は、代理委員の権限の行使が著しく不公正であると認めるときは、第1項の許可を取り消すことができる。
第2節 破産債権の届出
第111条 破産手続に参加しようとする破産債権者は、第31条第1項第1号又は第3項の規定により定められた破産債権の届出をすべき期間(以下「債権届出期間」という。)内に、次に掲げる事項を裁判所に届け出なければならない。
一 各破産債権の額及び原因
二 優先的破産債権であるときは、その旨
三 劣後的破産債権又は約定劣後破産債権であるときは、その旨
四 自己に対する配当額の合計額が最高裁判所規則で定める額に満たない場合においても配当金を受領する意思があるときは、その旨
五 前各号に掲げるもののほか、最高裁判所規則で定める事項
2 別除権者は、前項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を届け出なければならない。
一 別除権の目的である財産
二 別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる債権の額
3 前項の規定は、第108条第2項に規定する特別の先取特権、質権若しくは抵当権又は破産債権を有する者(以下「準別除権者」という。)について準用する。
第112条 破産債権者がその責めに帰することができない事由によって第31条第1項第3号の期間(以下「一般調査期間」という。)の経過又は同号の期日(以下「一般調査期日」という。)の終了までに破産債権の届出をすることができなかった場合には、その事由が消滅した後1月以内に限り、その届出をすることができる。
2 前項に規定する1月の期間は、伸長し、又は短縮することができない。
3 一般調査期間の経過後又は一般調査期日の終了後に生じた破産債権については、その権利の発生した後1月の不変期間内に、その届出をしなければならない。
4 第1項及び第2項の規定は、破産債権者が、その責めに帰することができない事由によって、一般調査期間の経過後又は一般調査期日の終了後に、届け出た事項について他の破産債権者の利益を害すべき変更を加える場合について準用する。
第113条 届出をした破産債権を取得した者は、一般調査期間の経過後又は一般調査期日の終了後でも、届出名義の変更を受けることができる。
2 前項の規定により届出名義の変更を受ける者は、自己に対する配当額の合計額が第111条第1項第4号に規定する最高裁判所規則で定める額に満たない場合においても配当金を受領する意思があるときは、その旨を裁判所に届け出なければならない。
第114条 次に掲げる請求権を有する者は、遅滞なく、当該請求権の額及び原因並びに当該請求権が共助対象外国租税の請求権である場合にはその旨その他最高裁判所規則で定める事項を裁判所に届け出なければならない。この場合において、当該請求権を有する者が別除権者又は準別除権者であるときは、第111条第2項の規定を準用する。
一 租税等の請求権であって、財団債権に該当しないもの
二 罰金等の請求権であって、財団債権に該当しないもの
第3節 破産債権の調査及び確定
第1款 通則
第115条 裁判所書記官は、届出があった破産債権について、破産債権者表を作成しなければならない。
2 前項の破産債権者表には、各破産債権について、第111条第1項第1号から第4号まで及び第2項第2号(同条第3項において準用する場合を含む。)に掲げる事項その他最高裁判所規則で定める事項を記載しなければならない。
3 破産債権者表の記載に誤りがあるときは、裁判所書記官は、申立てにより又は職権で、いつでもその記載を更正する処分をすることができる。
第116条 裁判所による破産債権の調査は、次款の規定により、破産管財人が作成した認否書並びに破産債権者及び破産者の書面による異議に基づいてする。
2 前項の規定にかかわらず、裁判所は、必要があると認めるときは、第3款の規定により、破産債権の調査を、そのための期日における破産管財人の認否並びに破産債権者及び破産者の異議に基づいてすることができる。
3 裁判所は、第121条の規定による一般調査期日における破産債権の調査の後であっても、第119条の規定による特別調査期間における書面による破産債権の調査をすることができ、必要があると認めるときは、第118条の規定による一般調査期間における書面による破産債権の調査の後であっても、第122条の規定による特別調査期日における破産債権の調査をすることができる。
第2款 書面による破産債権の調査
第117条 破産管財人は、一般調査期間が定められたときは、債権届出期間内に届出があった破産債権について、次に掲げる事項についての認否を記載した認否書を作成しなければならない。
一 破産債権の額
二 優先的破産債権であること。
三 劣後的破産債権又は約定劣後破産債権であること。
四 別除権(第108条第2項に規定する特別の先取特権、質権若しくは抵当権又は破産債権を含む。)の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる債権の額
2 破産管財人は、債権届出期間の経過後に届出があり、又は届出事項の変更(他の破産債権者の利益を害すべき事項の変更に限る。以下この節において同じ。)があった破産債権についても、前項各号に掲げる事項(当該届出事項の変更があった場合にあっては、変更後の同項各号に掲げる事項。以下この節において同じ。)についての認否を同項の認否書に記載することができる。
3 破産管財人は、一般調査期間前の裁判所の定める期限までに、前二項の規定により作成した認否書を裁判所に提出しなければならない。
4 第1項の規定により同項の認否書に認否を記載すべき事項であって前項の規定により提出された認否書に認否の記載がないものがあるときは、破産管財人において当該事項を認めたものとみなす。
5 第2項の規定により第1項各号に掲げる事項についての認否を認否書に記載することができる破産債権について、第3項の規定により提出された認否書に当該事項の一部についての認否の記載があるときは、破産管財人において当該事項のうち当該認否書に認否の記載のないものを認めたものとみなす。
第118条 届出をした破産債権者は、一般調査期間内に、裁判所に対し、前条第1項又は第2項に規定する破産債権についての同条第1項各号に掲げる事項について、書面で、異議を述べることができる。
2 破産者は、一般調査期間内に、裁判所に対し、前項の破産債権の額について、書面で、異議を述べることができる。
3 裁判所は、一般調査期間を変更する決定をしたときは、その裁判書を破産管財人、破産者及び届出をした破産債権者(債権届出期間の経過前にあっては、知れている破産債権者)に送達しなければならない。
4 前項の規定による送達は、書類を通常の取扱いによる郵便に付し、又は民間事業者による信書の送達に関する法律第2条第6項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第9項に規定する特定信書便事業者の提供する同条第2項に規定する信書便の役務を利用して送付する方法によりすることができる。
5 前項の規定による送達をした場合においては、その郵便物等が通常到達すべきであった時に、送達があったものとみなす。
第119条 裁判所は、債権届出期間の経過後、一般調査期間の満了前又は一般調査期日の終了前にその届出があり、又は届出事項の変更があった破産債権について、その調査をするための期間(以下「特別調査期間」という。)を定めなければならない。ただし、当該破産債権について、破産管財人が第117条第3項の規定により提出された認否書に同条第1項各号に掲げる事項の全部若しくは一部についての認否を記載している場合又は一般調査期日において調査をすることについて破産管財人及び破産債権者の異議がない場合は、この限りでない。
2 一般調査期間の経過後又は一般調査期日の終了後に第112条第1項若しくは第3項の規定による届出があり、又は同条第4項において準用する同条第1項の規定による届出事項の変更があった破産債権についても、前項本文と同様とする。
3 第1項本文又は前項の場合には、特別調査期間に関する費用は、当該破産債権を有する者の負担とする。
4 破産管財人は、特別調査期間に係る破産債権については、第117条第1項各号に掲げる事項についての認否を記載した認否書を作成し、特別調査期間前の裁判所の定める期限までに、これを裁判所に提出しなければならない。この場合においては、同条第4項の規定を準用する。
5 届出をした破産債権者は前項の破産債権についての第117条第1項各号に掲げる事項について、破産者は当該破産債権の額について、特別調査期間内に、裁判所に対し、書面で、異議を述べることができる。
6 前条第3項から第5項までの規定は、特別調査期間を定める決定又はこれを変更する決定があった場合における裁判書の送達について準用する。
第120条 前条第1項本文又は第2項の場合には、裁判所書記官は、相当の期間を定め、同条第3項の破産債権を有する者に対し、同項の費用の予納を命じなければならない。
2 前項の規定による処分は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生ずる。
3 第1項の規定による処分に対しては、その告知を受けた日から1週間の不変期間内に、異議の申立てをすることができる。
4 前項の異議の申立ては、執行停止の効力を有する。
5 第1項の場合において、同項の破産債権を有する者が同項の費用の予納をしないときは、裁判所は、決定で、その者がした破産債権の届出又は届出事項の変更に係る届出を却下しなければならない。
6 前項の規定による却下の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第3款 期日における破産債権の調査
第121条 破産管財人は、一般調査期日が定められたときは、当該一般調査期日に出頭し、債権届出期間内に届出があった破産債権について、第117条第1項各号に掲げる事項についての認否をしなければならない。
2 届出をした破産債権者又はその代理人は、一般調査期日に出頭し、前項の破産債権についての同項に規定する事項について、異議を述べることができる。
3 破産者は、一般調査期日に出頭しなければならない。ただし、正当な事由があるときは、代理人を出頭させることができる。
4 前項本文の規定により出頭した破産者は、第1項の破産債権の額について、異議を述べることができる。
5 第3項本文の規定により出頭した破産者は、必要な事項に関し意見を述べなければならない。
6 前二項の規定は、第3項ただし書の代理人について準用する。
7 前各項の規定は、債権届出期間の経過後に届出があり、又は届出事項の変更があった破産債権について一般調査期日において調査をすることにつき破産管財人及び破産債権者の異議がない場合について準用する。
8 一般調査期日における破産債権の調査は、破産管財人が出頭しなければ、することができない。
9 裁判所は、一般調査期日を変更する決定をしたときは、その裁判書を破産管財人、破産者及び届出をした破産債権者(債権届出期間の経過前にあっては、知れている破産債権者)に送達しなければならない。
10 裁判所は、一般調査期日における破産債権の調査の延期又は続行の決定をしたときは、当該一般調査期日において言渡しをした場合を除き、その裁判書を破産管財人、破産者及び届出をした破産債権者に送達しなければならない。
11 第118条第4項及び第5項の規定は、前二項の規定による送達について準用する。
第122条 裁判所は、債権届出期間の経過後、一般調査期間の満了前又は一般調査期日の終了前に届出があり、又は届出事項の変更があった破産債権について、必要があると認めるときは、その調査をするための期日(以下「特別調査期日」という。)を定めることができる。ただし、当該破産債権について、破産管財人が第117条第3項の規定により提出された認否書に同条第1項各号に掲げる事項の全部若しくは一部についての認否を記載している場合又は一般調査期日において調査をすることについて破産管財人及び破産債権者の異議がない場合は、この限りでない。
2 第119条第2項及び第3項、同条第6項において準用する第118条第3項から第5項まで、第120条並びに前条(第7項及び第9項を除く。)の規定は、前項本文の場合における特別調査期日について準用する。
第123条 破産者がその責めに帰することができない事由によって一般調査期日又は特別調査期日に出頭することができなかったときは、破産者は、その事由が消滅した後1週間以内に限り、裁判所に対し、当該一般調査期日又は特別調査期日における調査に係る破産債権の額について、書面で、異議を述べることができる。
2 前項に規定する1週間の期間は、伸長し、又は短縮することができない。
第4款 破産債権の確定
第124条 第117条第1項各号(第4号を除く。)に掲げる事項は、破産債権の調査において、破産管財人が認め、かつ、届出をした破産債権者が一般調査期間内若しくは特別調査期間内又は一般調査期日若しくは特別調査期日において異議を述べなかったときは、確定する。
2 裁判所書記官は、破産債権の調査の結果を破産債権者表に記載しなければならない。
3 第1項の規定により確定した事項についての破産債権者表の記載は、破産債権者の全員に対して確定判決と同一の効力を有する。
第125条 破産債権の調査において、破産債権の額又は優先的破産債権、劣後的破産債権若しくは約定劣後破産債権であるかどうかの別(以下この条及び第127条第1項において「額等」という。)について破産管財人が認めず、又は届出をした破産債権者が異議を述べた場合には、当該破産債権(以下「異議等のある破産債権」という。)を有する破産債権者は、その額等の確定のために、当該破産管財人及び当該異議を述べた届出をした破産債権者(以下この款において「異議者等」という。)の全員を相手方として、裁判所に、その額等についての査定の申立て(以下「破産債権査定申立て」という。)をすることができる。ただし、第127条第1項並びに第129条第1項及び第2項の場合は、この限りでない。
2 破産債権査定申立ては、異議等のある破産債権に係る一般調査期間若しくは特別調査期間の末日又は一般調査期日若しくは特別調査期日から1月の不変期間内にしなければならない。
3 破産債権査定申立てがあった場合には、裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、決定で、異議等のある破産債権の存否及び額等を査定する裁判(次項において「破産債権査定決定」という。)をしなければならない。
4 裁判所は、破産債権査定決定をする場合には、異議者等を審尋しなければならない。
5 破産債権査定申立てについての決定があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
第126条 破産債権査定申立てについての決定に不服がある者は、その送達を受けた日から1月の不変期間内に、異議の訴え(以下「破産債権査定異議の訴え」という。)を提起することができる。
2 破産債権査定異議の訴えは、破産裁判所が管轄する。
3 破産債権査定異議の訴えが提起された第一審裁判所は、破産裁判所が破産事件を管轄することの根拠となる法令上の規定が第5条第8項又は第9項の規定のみである場合(破産裁判所が第7条第4号の規定により破産事件の移送を受けた場合において、移送を受けたことの根拠となる規定が同号ロ又はハの規定のみであるときを含む。)において、著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、前項の規定にかかわらず、職権で、当該破産債権査定異議の訴えに係る訴訟を第5条第1項に規定する地方裁判所(同項に規定する地方裁判所がない場合にあっては、同条第2項に規定する地方裁判所)に移送することができる。
4 破産債権査定異議の訴えは、これを提起する者が、異議等のある破産債権を有する破産債権者であるときは異議者等の全員を、当該異議者等であるときは当該破産債権者を、それぞれ被告としなければならない。
5 破産債権査定異議の訴えの口頭弁論は、第1項の期間を経過した後でなければ開始することができない。
6 同一の破産債権に関し破産債権査定異議の訴えが数個同時に係属するときは、弁論及び裁判は、併合してしなければならない。この場合においては、民事訴訟法第40条第1項から第3項までの規定を準用する。
7 破産債権査定異議の訴えについての判決においては、訴えを不適法として却下する場合を除き、破産債権査定申立てについての決定を認可し、又は変更する。
第127条 異議等のある破産債権に関し破産手続開始当時訴訟が係属する場合において、破産債権者がその額等の確定を求めようとするときは、異議者等の全員を当該訴訟の相手方として、訴訟手続の受継の申立てをしなければならない。
2 第125条第2項の規定は、前項の申立てについて準用する。
第128条 破産債権査定申立てに係る査定の手続又は破産債権査定異議の訴えの提起若しくは前条第1項の規定による受継に係る訴訟手続においては、破産債権者は、異議等のある破産債権についての第111条第1項第1号から第3号までに掲げる事項について、破産債権者表に記載されている事項のみを主張することができる。
第129条 異議等のある破産債権のうち執行力ある債務名義又は終局判決のあるものについては、異議者等は、破産者がすることのできる訴訟手続によってのみ、異議を主張することができる。
2 前項に規定する異議等のある破産債権に関し破産手続開始当時訴訟が係属する場合において、同項の異議者等が同項の規定による異議を主張しようとするときは、当該異議者等は、当該破産債権を有する破産債権者を相手方とする訴訟手続を受け継がなければならない。
3 第125条第2項の規定は第1項の規定による異議の主張又は前項の規定による受継について、第126条第5項及び第6項並びに前条の規定は前二項の場合について準用する。この場合においては、第126条第5項中「第1項の期間」とあるのは、「異議等のある破産債権に係る一般調査期間若しくは特別調査期間の末日又は一般調査期日若しくは特別調査期日から1月の不変期間」と読み替えるものとする。
4 前項において準用する第125条第2項に規定する期間内に第1項の規定による異議の主張又は第2項の規定による受継がされなかった場合には、異議者等が破産債権者であるときは第118条第1項、第119条第5項又は第121条第2項(同条第7項又は第122条第2項において準用する場合を含む。)の異議はなかったものとみなし、異議者等が破産管財人であるときは破産管財人においてその破産債権を認めたものとみなす。
第130条 裁判所書記官は、破産管財人又は破産債権者の申立てにより、破産債権の確定に関する訴訟の結果(破産債権査定申立てについての決定に対する破産債権査定異議の訴えが、第126条第1項に規定する期間内に提起されなかったとき、又は却下されたときは、当該決定の内容)を破産債権者表に記載しなければならない。
第131条 破産債権の確定に関する訴訟についてした判決は、破産債権者の全員に対して、その効力を有する。
2 破産債権査定申立てについての決定に対する破産債権査定異議の訴えが、第126条第1項に規定する期間内に提起されなかったとき、又は却下されたときは、当該決定は、破産債権者の全員に対して、確定判決と同一の効力を有する。
第132条 破産財団が破産債権の確定に関する訴訟(破産債権査定申立てについての決定を含む。)によって利益を受けたときは、異議を主張した破産債権者は、その利益の限度において財団債権者として訴訟費用の償還を請求することができる。
第133条 破産手続が終了した際現に係属する破産債権査定申立ての手続は、破産手続開始の決定の取消し又は破産手続廃止の決定の確定により破産手続が終了したときは終了するものとし、破産手続終結の決定により破産手続が終了したときは引き続き係属するものとする。
2 破産手続終結の決定により破産手続が終了した場合において、破産手続終了後に破産債権査定申立てについての決定があったときは、第126条第1項の規定により破産債権査定異議の訴えを提起することができる。
3 破産手続が終了した際現に係属する破産債権査定異議の訴えに係る訴訟手続又は第127条第1項若しくは第129条第2項の規定による受継があった訴訟手続であって、破産管財人が当事者であるものは、破産手続終結の決定により破産手続が終了したときは、第44条第4項の規定にかかわらず、中断しないものとする。
4 破産手続が終了した際現に係属する破産債権査定異議の訴えに係る訴訟手続であって、破産管財人が当事者でないものは、破産手続開始の決定の取消し又は破産手続廃止の決定の確定により破産手続が終了したときは終了するものとし、破産手続終結の決定により破産手続が終了したときは引き続き係属するものとする。
5 破産手続が終了した際現に係属する第127条第1項又は第129条第2項の規定による受継があった訴訟手続であって、破産管財人が当事者でないものは、破産手続開始の決定の取消し又は破産手続廃止の決定の確定により破産手続が終了したときは中断するものとし、破産手続終結の決定により破産手続が終了したときは引き続き係属するものとする。
6 前項の規定により訴訟手続が中断する場合においては、第44条第5項の規定を準用する。
第5款 租税等の請求権等についての特例
第134条 租税等の請求権及び罰金等の請求権については、第1款(第115条を除く。)から前款までの規定は、適用しない。
2 第114条の規定による届出があった請求権(罰金、科料及び刑事訴訟費用の請求権を除く。)の原因(共助対象外国租税の請求権にあっては、共助実施決定)が審査請求、訴訟(刑事訴訟を除く。次項において同じ。)その他の不服の申立てをすることができる処分である場合には、破産管財人は、当該届出があった請求権について、当該不服の申立てをする方法で、異議を主張することができる。
3 前項の場合において、当該届出があった請求権に関し破産手続開始当時訴訟が係属するときは、同項に規定する異議を主張しようとする破産管財人は、当該届出があった請求権を有する破産債権者を相手方とする訴訟手続を受け継がなければならない。当該届出があった請求権に関し破産手続開始当時破産財団に関する事件が行政庁に係属するときも、同様とする。
4 第2項の規定による異議の主張又は前項の規定による受継は、破産管財人が第2項に規定する届出があったことを知った日から1月の不変期間内にしなければならない。
5 第124条第2項の規定は第114条の規定による届出があった請求権について、第128条、第130条、第131条第1項及び前条第3項の規定は第2項の規定による異議又は第3項の規定による受継があった場合について準用する。
第4節 債権者集会及び債権者委員会
第1款 債権者集会
第135条 裁判所は、次の各号に掲げる者のいずれかの申立てがあった場合には、債権者集会を招集しなければならない。ただし、知れている破産債権者の数その他の事情を考慮して債権者集会を招集することを相当でないと認めるときは、この限りでない。
一 破産管財人
二 第144条第2項に規定する債権者委員会
三 知れている破産債権者の総債権について裁判所が評価した額の十分の一以上に当たる破産債権を有する破産債権者
2 裁判所は、前項本文の申立てがない場合であっても、相当と認めるときは、債権者集会を招集することができる。
第136条 債権者集会の期日には、破産管財人、破産者及び届出をした破産債権者を呼び出さなければならない。ただし、第31条第5項の決定があったときは、届出をした破産債権者を呼び出すことを要しない。
2 前項本文の規定にかかわらず、届出をした破産債権者であって議決権を行使することができないものは、呼び出さないことができる。財産状況報告集会においては、第32条第3項の規定により通知を受けた者も、同様とする。
3 裁判所は、第32条第1項第3号及び第3項の規定により財産状況報告集会の期日の公告及び通知をするほか、各債権者集会(財産状況報告集会を除く。以下この項において同じ。)の期日及び会議の目的である事項を公告し、かつ、各債権者集会の期日を労働組合等に通知しなければならない。
4 債権者集会の期日においてその延期又は続行について言渡しがあったときは、第1項本文及び前項の規定は、適用しない。
第137条 債権者集会は、裁判所が指揮する。
第138条 債権者集会の決議を要する事項を可決するには、議決権を行使することができる破産債権者(以下この款において「議決権者」という。)で債権者集会の期日に出席し又は次条第2項第2号に規定する書面等投票をしたものの議決権の総額の二分の一を超える議決権を有する者の同意がなければならない。
第139条 裁判所は、第135条第1項各号に掲げる者が債権者集会の決議を要する事項を決議に付することを目的として同項本文の申立てをしたときは、当該事項を債権者集会の決議に付する旨の決定をする。
2 裁判所は、前項の決議に付する旨の決定において、議決権者の議決権行使の方法として、次に掲げる方法のいずれかを定めなければならない。
一 債権者集会の期日において議決権を行使する方法
二 書面等投票(書面その他の最高裁判所規則で定める方法のうち裁判所の定めるものによる投票をいう。)により裁判所の定める期間内に議決権を行使する方法
三 前二号に掲げる方法のうち議決権者が選択するものにより議決権を行使する方法。この場合において、前号の期間の末日は、第1号の債権者集会の期日より前の日でなければならない。
3 裁判所は、議決権行使の方法として前項第2号又は第3号に掲げる方法を定めたときは、その旨を公告し、かつ、議決権者に対して、同項第2号に規定する書面等投票は裁判所の定める期間内に限りすることができる旨を通知しなければならない。ただし、第31条第5項の決定があったときは、当該通知をすることを要しない。
第140条 裁判所が議決権行使の方法として前条第2項第1号又は第3号に掲げる方法を定めた場合においては、議決権者は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める額に応じて、議決権を行使することができる。
一 前節第4款の規定によりその額が確定した破産債権を有する届出をした破産債権者(別除権者、準別除権者又は停止条件付債権若しくは将来の請求権である破産債権を有する者(次項及び次条第1項第1号において「別除権者等」という。)を除く。) 確定した破産債権の額
二 次項本文の異議のない議決権を有する届出をした破産債権者 届出の額(別除権者又は準別除権者にあっては、第111条第2項第2号(同条第3項又は第114条において準用する場合を含む。)に掲げる額)
三 次項本文の異議のある議決権を有する届出をした破産債権者 裁判所が定める額。ただし、裁判所が議決権を行使させない旨を定めたときは、議決権を行使することができない。
2 届出をした破産債権者の前項の規定による議決権については、破産管財人又は届出をした破産債権者は、債権者集会の期日において、異議を述べることができる。ただし、前節第4款の規定により破産債権の額が確定した届出をした破産債権者(別除権者等を除く。)の議決権については、この限りでない。
3 裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、いつでも第1項第3号の規定による定めを変更することができる。
第141条 裁判所が議決権行使の方法として第139条第2項第2号に掲げる方法を定めた場合においては、議決権者は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める額に応じて、議決権を行使することができる。
一 前節第4款の規定により破産債権の額が確定した破産債権を有する届出をした破産債権者(別除権者等を除く。) 確定した破産債権の額
二 届出をした破産債権者(前号に掲げるものを除く。) 裁判所が定める額。ただし、裁判所が議決権を行使させない旨を定めたときは、議決権を行使することができない。
2 裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、いつでも前項第2号の規定による定めを変更することができる。
第142条 破産債権者は、劣後的破産債権及び約定劣後破産債権については、議決権を有しない。
2 第101条第1項の規定により弁済を受けた破産債権者及び第109条に規定する弁済を受けた破産債権者は、その弁済を受けた債権の額については、議決権を行使することができない。
第143条 議決権者は、代理人をもってその議決権を行使することができる。
第2款 債権者委員会
第144条 裁判所は、破産債権者をもって構成する委員会がある場合には、利害関係人の申立てにより、当該委員会が、この法律の定めるところにより、破産手続に関与することを承認することができる。ただし、次の各号のいずれにも該当する場合に限る。
一 委員の数が、3人以上最高裁判所規則で定める人数以内であること。
二 破産債権者の過半数が当該委員会が破産手続に関与することについて同意していると認められること。
三 当該委員会が破産債権者全体の利益を適切に代表すると認められること。
2 裁判所は、必要があると認めるときは、破産手続において、前項の規定により承認された委員会(以下「債権者委員会」という。)に対して、意見の陳述を求めることができる。
3 債権者委員会は、破産手続において、裁判所又は破産管財人に対して、意見を述べることができる。
4 債権者委員会に破産手続の円滑な進行に貢献する活動があったと認められるときは、裁判所は、当該活動のために必要な費用を支出した破産債権者の申立てにより、破産財団から当該破産債権者に対して相当と認める額の費用を償還することを許可することができる。この場合においては、当該費用の請求権は、財団債権とする。
5 裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、いつでも第1項の規定による承認を取り消すことができる。
第145条 裁判所書記官は、前条第1項の規定による承認があったときは、遅滞なく、破産管財人に対して、その旨を通知しなければならない。
2 破産管財人は、前項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、破産財団に属する財産の管理及び処分に関する事項について、債権者委員会の意見を聴かなければならない。
第146条 破産管財人は、第153条第2項又は第157条の規定により報告書等(報告書、財産目録又は貸借対照表をいう。以下この条において同じ。)を裁判所に提出したときは、遅滞なく、当該報告書等を債権者委員会にも提出しなければならない。
2 破産管財人は、前項の場合において、当該報告書等に第12条第1項に規定する支障部分に該当する部分があると主張して同項の申立てをしたときは、当該部分を除いた報告書等を債権者委員会に提出すれば足りる。
第147条 債権者委員会は、破産債権者全体の利益のために必要があるときは、裁判所に対し、破産管財人に破産財団に属する財産の管理及び処分に関し必要な事項について第157条第2項の規定による報告をすることを命ずるよう申し出ることができる。
2 前項の規定による申出を受けた裁判所は、当該申出が相当であると認めるときは、破産管財人に対し、第157条第2項の規定による報告をすることを命じなければならない。
第5章 財団債権
第148条 次に掲げる請求権は、財団債権とする。
一 破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権
二 破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権
三 破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権及び第97条第5号に掲げる請求権を除く。)であって、破産手続開始当時、まだ納期限の到来していないもの又は納期限から1年(その期間中に包括的禁止命令が発せられたことにより国税滞納処分をすることができない期間がある場合には、当該期間を除く。)を経過していないもの
四 破産財団に関し破産管財人がした行為によって生じた請求権
五 事務管理又は不当利得により破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権
六 委任の終了又は代理権の消滅の後、急迫の事情があるためにした行為によって破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権
七 第53条第1項の規定により破産管財人が債務の履行をする場合において相手方が有する請求権
八 破産手続の開始によって双務契約の解約の申入れ(第53条第1項又は第2項の規定による賃貸借契約の解除を含む。)があった場合において破産手続開始後その契約の終了に至るまでの間に生じた請求権
2 破産管財人が負担付遺贈の履行を受けたときは、その負担した義務の相手方が有する当該負担の利益を受けるべき請求権は、遺贈の目的の価額を超えない限度において、財団債権とする。
3 第103条第2項及び第3項の規定は、第1項第7号及び前項に規定する財団債権について準用する。この場合において、当該財団債権が無利息債権又は定期金債権であるときは、当該債権の額は、当該債権が破産債権であるとした場合に第99条第1項第2号から第4号までに掲げる劣後的破産債権となるべき部分に相当する金額を控除した額とする。
4 保全管理人が債務者の財産に関し権限に基づいてした行為によって生じた請求権は、財団債権とする。
第149条 破産手続開始前3月間の破産者の使用人の給料の請求権は、財団債権とする。
2 破産手続の終了前に退職した破産者の使用人の退職手当の請求権(当該請求権の全額が破産債権であるとした場合に劣後的破産債権となるべき部分を除く。)は、退職前3月間の給料の総額(その総額が破産手続開始前3月間の給料の総額より少ない場合にあっては、破産手続開始前3月間の給料の総額)に相当する額を財団債権とする。
第150条 社債管理者又は社債管理補助者が破産債権である社債の管理に関する事務を行おうとする場合には、裁判所は、破産手続の円滑な進行を図るために必要があると認めるときは、当該社債管理者又は社債管理補助者の当該事務の処理に要する費用の請求権を財団債権とする旨の許可をすることができる。
2 社債管理者又は社債管理補助者が前項の許可を得ないで破産債権である社債の管理に関する事務を行った場合であっても、裁判所は、当該社債管理者又は社債管理補助者が破産手続の円滑な進行に貢献したと認められるときは、当該事務の処理に要した費用の償還請求権のうちその貢献の程度を考慮して相当と認める額を財団債権とする旨の許可をすることができる。
3 裁判所は、破産手続開始後の原因に基づいて生じた社債管理者又は社債管理補助者の報酬の請求権のうち相当と認める額を財団債権とする旨の許可をすることができる。
4 前三項の規定による許可を得た請求権は、財団債権とする。
5 第1項から第3項までの規定による許可の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
6 前各項の規定は、次の各号に掲げる者の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める債権で破産債権であるものの管理に関する事務につき生ずる費用又は報酬に係る請求権について準用する。
一 担保付社債信託法(明治38年法律第52号)第2条第1項に規定する信託契約の受託会社 同項に規定する社債
二 医療法(昭和23年法律第205号)第54条の5に規定する社会医療法人債管理者又は同法第54条の5の2に規定する社会医療法人債管理補助者 同法第54条の2第1項に規定する社会医療法人債
三 投資信託及び投資法人に関する法律(昭和26年法律第198号)第139条の8に規定する投資法人債管理者又は同法第139条の9の2第1項に規定する投資法人債管理補助者 同法第2条第19項に規定する投資法人債
四 保険業法第61条の6に規定する社債管理者又は同法第61条の7の2に規定する社債管理補助者 相互会社が発行する社債
五 資産の流動化に関する法律(平成10年法律第105号)第126条に規定する特定社債管理者又は同法第127条の2第1項に規定する特定社債管理補助者 同法第2条第7項に規定する特定社債
第151条 財団債権は、破産債権に先立って、弁済する。
第152条 破産財団が財団債権の総額を弁済するのに足りないことが明らかになった場合における財団債権は、法令に定める優先権にかかわらず、債権額の割合により弁済する。ただし、財団債権を被担保債権とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権の効力を妨げない。
2 前項の規定にかかわらず、同項本文に規定する場合における第148条第1項第1号及び第2号に掲げる財団債権(債務者の財産の管理及び換価に関する費用の請求権であって、同条第4項に規定するものを含む。)は、他の財団債権に先立って、弁済する。
第6章 破産財団の管理
第1節 破産者の財産状況の調査
第153条 破産管財人は、破産手続開始後遅滞なく、破産財団に属する一切の財産につき、破産手続開始の時における価額を評定しなければならない。この場合においては、破産者をその評定に立ち会わせることができる。
2 破産管財人は、前項の規定による評定を完了したときは、直ちに破産手続開始の時における財産目録及び貸借対照表を作成し、これらを裁判所に提出しなければならない。
3 破産財団に属する財産の総額が最高裁判所規則で定める額に満たない場合には、前項の規定にかかわらず、破産管財人は、裁判所の許可を得て、同項の貸借対照表の作成及び提出をしないことができる。
第154条 破産管財人は、別除権者に対し、当該別除権の目的である財産の提示を求めることができる。
2 破産管財人が前項の財産の評価をしようとするときは、別除権者は、これを拒むことができない。
第155条 破産管財人は、必要があると認めるときは、裁判所書記官、執行官又は公証人に、破産財団に属する財産に封印をさせ、又はその封印を除去させることができる。
2 裁判所書記官は、必要があると認めるときは、破産管財人の申出により、破産財団に関する帳簿を閉鎖することができる。
第156条 裁判所は、破産管財人の申立てにより、決定で、破産者に対し、破産財団に属する財産を破産管財人に引き渡すべき旨を命ずることができる。
2 裁判所は、前項の決定をする場合には、破産者を審尋しなければならない。
3 第1項の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。
4 第1項の申立てについての決定及び前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
5 第1項の決定は、確定しなければその効力を生じない。
第157条 破産管財人は、破産手続開始後遅滞なく、次に掲げる事項を記載した報告書を、裁判所に提出しなければならない。
一 破産手続開始に至った事情
二 破産者及び破産財団に関する経過及び現状
三 第177条第1項の規定による保全処分又は第178条第1項に規定する役員責任査定決定を必要とする事情の有無
四 その他破産手続に関し必要な事項
2 破産管財人は、前項の規定によるもののほか、裁判所の定めるところにより、破産財団に属する財産の管理及び処分の状況その他裁判所の命ずる事項を裁判所に報告しなければならない。
第158条 財産状況報告集会においては、破産管財人は、前条第1項各号に掲げる事項の要旨を報告しなければならない。
第159条 破産管財人は、債権者集会がその決議で定めるところにより、破産財団の状況を債権者集会に報告しなければならない。
第2節 否認権
第160条 次に掲げる行為(担保の供与又は債務の消滅に関する行為を除く。)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
一 破産者が破産債権者を害することを知ってした行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、破産債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
二 破産者が支払の停止又は破産手続開始の申立て(以下この節において「支払の停止等」という。)があった後にした破産債権者を害する行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、支払の停止等があったこと及び破産債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
2 破産者がした債務の消滅に関する行為であって、債権者の受けた給付の価額が当該行為によって消滅した債務の額より過大であるものは、前項各号に掲げる要件のいずれかに該当するときは、破産手続開始後、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分に限り、破産財団のために否認することができる。
3 破産者が支払の停止等があった後又はその前6月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
第161条 破産者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、その行為の相手方から相当の対価を取得しているときは、その行為は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
一 当該行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、破産者において隠匿、無償の供与その他の破産債権者を害することとなる処分(以下「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。
二 破産者が、当該行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
三 相手方が、当該行為の当時、破産者が前号の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。
2 前項の規定の適用については、当該行為の相手方が次に掲げる者のいずれかであるときは、その相手方は、当該行為の当時、破産者が同項第2号の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたものと推定する。
一 破産者が法人である場合のその理事、取締役、執行役、監事、監査役、清算人又はこれらに準ずる者
二 破産者が法人である場合にその破産者について次のイからハまでに掲げる者のいずれかに該当する者
イ 破産者である株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者
ロ 破産者である株式会社の総株主の議決権の過半数を子株式会社又は親法人及び子株式会社が有する場合における当該親法人
ハ 株式会社以外の法人が破産者である場合におけるイ又はロに掲げる者に準ずる者
三 破産者の親族又は同居者
第162条 次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
一 破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした行為。ただし、債権者が、その行為の当時、次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実を知っていた場合に限る。
イ 当該行為が支払不能になった後にされたものである場合 支払不能であったこと又は支払の停止があったこと。
ロ 当該行為が破産手続開始の申立てがあった後にされたものである場合 破産手続開始の申立てがあったこと。
二 破産者の義務に属せず、又はその時期が破産者の義務に属しない行為であって、支払不能になる前30日以内にされたもの。ただし、債権者がその行為の当時他の破産債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
2 前項第1号の規定の適用については、次に掲げる場合には、債権者は、同号に掲げる行為の当時、同号イ又はロに掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実(同号イに掲げる場合にあっては、支払不能であったこと及び支払の停止があったこと)を知っていたものと推定する。
一 債権者が前条第2項各号に掲げる者のいずれかである場合
二 前項第1号に掲げる行為が破産者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が破産者の義務に属しないものである場合
3 第1項各号の規定の適用については、支払の停止(破産手続開始の申立て前1年以内のものに限る。)があった後は、支払不能であったものと推定する。
第163条 前条第1項第1号の規定は、破産者から手形の支払を受けた者がその支払を受けなければ手形上の債務者の1人又は数人に対する手形上の権利を失う場合には、適用しない。
2 前項の場合において、最終の償還義務者又は手形の振出しを委託した者が振出しの当時支払の停止等があったことを知り、又は過失によって知らなかったときは、破産管財人は、これらの者に破産者が支払った金額を償還させることができる。
3 前条第1項の規定は、破産者が租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)又は罰金等の請求権につき、その徴収の権限を有する者に対してした担保の供与又は債務の消滅に関する行為には、適用しない。
第164条 支払の停止等があった後権利の設定、移転又は変更をもって第三者に対抗するために必要な行為(仮登記又は仮登録を含む。)をした場合において、その行為が権利の設定、移転又は変更があった日から15日を経過した後支払の停止等のあったことを知ってしたものであるときは、破産手続開始後、破産財団のためにこれを否認することができる。ただし、当該仮登記又は仮登録以外の仮登記又は仮登録があった後にこれらに基づいて本登記又は本登録をした場合は、この限りでない。
2 前項の規定は、権利取得の効力を生ずる登録について準用する。
第165条 否認権は、否認しようとする行為について執行力のある債務名義があるとき、又はその行為が執行行為に基づくものであるときでも、行使することを妨げない。
第166条 破産手続開始の申立ての日から1年以上前にした行為(第160条第3項に規定する行為を除く。)は、支払の停止があった後にされたものであること又は支払の停止の事実を知っていたことを理由として否認することができない。
第167条 否認権の行使は、破産財団を原状に復させる。
2 第160条第3項に規定する行為が否認された場合において、相手方は、当該行為の当時、支払の停止等があったこと及び破産債権者を害することを知らなかったときは、その現に受けている利益を償還すれば足りる。
第168条 第160条第1項若しくは第3項又は第161条第1項に規定する行為が否認されたときは、相手方は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。
一 破産者の受けた反対給付が破産財団中に現存する場合 当該反対給付の返還を請求する権利
二 破産者の受けた反対給付が破産財団中に現存しない場合 財団債権者として反対給付の価額の償還を請求する権利
2 前項第2号の規定にかかわらず、同号に掲げる場合において、当該行為の当時、破産者が対価として取得した財産について隠匿等の処分をする意思を有し、かつ、相手方が破産者がその意思を有していたことを知っていたときは、相手方は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。
一 破産者の受けた反対給付によって生じた利益の全部が破産財団中に現存する場合 財団債権者としてその現存利益の返還を請求する権利
二 破産者の受けた反対給付によって生じた利益が破産財団中に現存しない場合 破産債権者として反対給付の価額の償還を請求する権利
三 破産者の受けた反対給付によって生じた利益の一部が破産財団中に現存する場合 財団債権者としてその現存利益の返還を請求する権利及び破産債権者として反対給付と現存利益との差額の償還を請求する権利
3 前項の規定の適用については、当該行為の相手方が第161条第2項各号に掲げる者のいずれかであるときは、その相手方は、当該行為の当時、破産者が前項の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたものと推定する。
4 破産管財人は、第160条第1項若しくは第3項又は第161条第1項に規定する行為を否認しようとするときは、前条第1項の規定により破産財団に復すべき財産の返還に代えて、相手方に対し、当該財産の価額から前三項の規定により財団債権となる額(第1項第1号に掲げる場合にあっては、破産者の受けた反対給付の価額)を控除した額の償還を請求することができる。
第169条 第162条第1項に規定する行為が否認された場合において、相手方がその受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、相手方の債権は、これによって原状に復する。
第170条 次の各号に掲げる場合において、否認しようとする行為の相手方に対して否認の原因があるときは、否認権は、当該各号に規定する転得者に対しても、行使することができる。ただし、当該転得者が他の転得者から転得した者である場合においては、当該転得者の前に転得した全ての転得者に対しても否認の原因があるときに限る。
一 転得者が転得の当時、破産者がした行為が破産債権者を害することを知っていたとき。
二 転得者が第161条第2項各号に掲げる者のいずれかであるとき。ただし、転得の当時、破産者がした行為が破産債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
三 転得者が無償行為又はこれと同視すべき有償行為によって転得した者であるとき。
2 第167条第2項の規定は、前項第3号の規定により否認権の行使があった場合について準用する。
第170条の2 破産者がした第160条第1項若しくは第3項又は第161条第1項に規定する行為が転得者に対する否認権の行使によって否認されたときは、転得者は、第168条第1項各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。ただし、同項第1号に掲げる場合において、破産者の受けた反対給付の価額が、第4項に規定する転得者がした反対給付又は消滅した転得者の債権の価額を超えるときは、転得者は、財団債権者として破産者の受けた反対給付の価額の償還を請求する権利を行使することができる。
2 前項の規定にかかわらず、第168条第1項第2号に掲げる場合において、当該行為の当時、破産者が対価として取得した財産について隠匿等の処分をする意思を有し、かつ、当該行為の相手方が破産者がその意思を有していたことを知っていたときは、転得者は、同条第2項各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。
3 前項の規定の適用については、当該行為の相手方が第161条第2項各号に掲げる者のいずれかであるときは、その相手方は、当該行為の当時、破産者が前項の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたものと推定する。
4 第1項及び第2項の規定による権利の行使は、転得者がその前者から財産を取得するためにした反対給付又はその前者から財産を取得することによって消滅した債権の価額を限度とする。
5 破産管財人は、第1項に規定する行為を転得者に対する否認権の行使によって否認しようとするときは、第167条第1項の規定により破産財団に復すべき財産の返還に代えて、転得者に対し、当該財産の価額から前各項の規定により財団債権となる額(第168条第1項第1号に掲げる場合(第1項ただし書に該当するときを除く。)にあっては、破産者の受けた反対給付の価額)を控除した額の償還を請求することができる。
第170条の3 破産者がした第162条第1項に規定する行為が転得者に対する否認権の行使によって否認された場合において、転得者がその受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、転得者は、当該行為がその相手方に対する否認権の行使によって否認されたとすれば第169条の規定により原状に復すべき相手方の債権を行使することができる。この場合には、前条第4項の規定を準用する。
第171条 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった時から当該申立てについての決定があるまでの間において、否認権を保全するため必要があると認めるときは、利害関係人(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより又は職権で、仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。
2 前項の規定による保全処分は、担保を立てさせて、又は立てさせないで命ずることができる。
3 裁判所は、申立てにより又は職権で、第1項の規定による保全処分を変更し、又は取り消すことができる。
4 第1項の規定による保全処分及び前項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
6 第4項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
7 前各項の規定は、破産手続開始の申立てを棄却する決定に対して第33条第1項の即時抗告があった場合について準用する。
第172条 前条第1項(同条第7項において準用する場合を含む。)の規定による保全処分が命じられた場合において、破産手続開始の決定があったときは、破産管財人は、当該保全処分に係る手続を続行することができる。
2 破産管財人が破産手続開始の決定後1月以内に前項の規定により同項の保全処分に係る手続を続行しないときは、当該保全処分は、その効力を失う。
3 破産管財人は、第1項の規定により同項の保全処分に係る手続を続行しようとする場合において、前条第2項(同条第7項において準用する場合を含む。)に規定する担保の全部又は一部が破産財団に属する財産でないときは、その担保の全部又は一部を破産財団に属する財産による担保に変換しなければならない。
4 民事保全法(平成元年法律第91号)第18条並びに第2章第4節(第37条第5項から第7項までを除く。)及び第5節の規定は、第1項の規定により破産管財人が続行する手続に係る保全処分について準用する。
第173条 否認権は、訴え、否認の請求又は抗弁によって、破産管財人が行使する。
2 前項の訴え及び否認の請求事件は、破産裁判所が管轄する。
第174条 否認の請求をするときは、その原因となる事実を疎明しなければならない。
2 否認の請求を認容し、又はこれを棄却する裁判は、理由を付した決定でしなければならない。
3 裁判所は、前項の決定をする場合には、相手方又は転得者を審尋しなければならない。
4 否認の請求を認容する決定があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
5 否認の請求の手続は、破産手続が終了したときは、終了する。
第175条 否認の請求を認容する決定に不服がある者は、その送達を受けた日から1月の不変期間内に、異議の訴えを提起することができる。
2 前項の訴えは、破産裁判所が管轄する。
3 第1項の訴えについての判決においては、訴えを不適法として却下する場合を除き、同項の決定を認可し、変更し、又は取り消す。
4 第1項の決定を認可する判決が確定したときは、その決定は、確定判決と同一の効力を有する。同項の訴えが、同項に規定する期間内に提起されなかったとき、又は却下されたときも、同様とする。
5 第1項の決定を認可し、又は変更する判決については、受訴裁判所は、民事訴訟法第259条第1項の定めるところにより、仮執行の宣言をすることができる。
6 第1項の訴えに係る訴訟手続は、破産手続が終了したときは、第44条第4項の規定にかかわらず、終了する。
第176条 否認権は、破産手続開始の日から2年を経過したときは、行使することができない。否認しようとする行為の日から10年を経過したときも、同様とする。
第3節 法人の役員の責任の追及等
第177条 裁判所は、法人である債務者について破産手続開始の決定があった場合において、必要があると認めるときは、破産管財人の申立てにより又は職権で、当該法人の理事、取締役、執行役、監事、監査役、清算人又はこれらに準ずる者(以下この節において「役員」という。)の責任に基づく損害賠償請求権につき、当該役員の財産に対する保全処分をすることができる。
2 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった時から当該申立てについての決定があるまでの間においても、緊急の必要があると認めるときは、債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより又は職権で、前項の規定による保全処分をすることができる。
3 裁判所は、前二項の規定による保全処分を変更し、又は取り消すことができる。
4 第1項若しくは第2項の規定による保全処分又は前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
6 第4項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
7 第2項から前項までの規定は、破産手続開始の申立てを棄却する決定に対して第33条第1項の即時抗告があった場合について準用する。
第178条 裁判所は、法人である債務者について破産手続開始の決定があった場合において、必要があると認めるときは、破産管財人の申立てにより又は職権で、決定で、役員の責任に基づく損害賠償請求権の査定の裁判(以下この節において「役員責任査定決定」という。)をすることができる。
2 前項の申立てをするときは、その原因となる事実を疎明しなければならない。
3 裁判所は、職権で役員責任査定決定の手続を開始する場合には、その旨の決定をしなければならない。
4 第1項の申立て又は前項の決定があったときは、時効の完成猶予及び更新に関しては、裁判上の請求があったものとみなす。
5 役員責任査定決定の手続(役員責任査定決定があった後のものを除く。)は、破産手続が終了したときは、終了する。
第179条 役員責任査定決定及び前条第1項の申立てを棄却する決定には、理由を付さなければならない。
2 裁判所は、前項に規定する裁判をする場合には、役員を審尋しなければならない。
3 役員責任査定決定があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
第180条 役員責任査定決定に不服がある者は、その送達を受けた日から1月の不変期間内に、異議の訴えを提起することができる。
2 前項の訴えは、破産裁判所が管轄する。
3 第1項の訴えは、これを提起する者が、役員であるときは破産管財人を、破産管財人であるときは役員を、それぞれ被告としなければならない。
4 第1項の訴えについての判決においては、訴えを不適法として却下する場合を除き、役員責任査定決定を認可し、変更し、又は取り消す。
5 役員責任査定決定を認可し、又は変更した判決は、強制執行に関しては、給付を命ずる判決と同一の効力を有する。
6 役員責任査定決定を認可し、又は変更した判決については、受訴裁判所は、民事訴訟法第259条第1項の定めるところにより、仮執行の宣言をすることができる。
第181条 前条第1項の訴えが、同項の期間内に提起されなかったとき、又は却下されたときは、役員責任査定決定は、給付を命ずる確定判決と同一の効力を有する。
第182条 会社法第663条の規定は、法人である債務者につき破産手続開始の決定があった場合について準用する。この場合において、同条中「当該清算持分会社」とあるのは、「破産管財人」と読み替えるものとする。
第183条 匿名組合契約が営業者が破産手続開始の決定を受けたことによって終了したときは、破産管財人は、匿名組合員に、その負担すべき損失の額を限度として、出資をさせることができる。
第7章 破産財団の換価
第1節 通則
第184条 第78条第2項第1号及び第2号に掲げる財産の換価は、これらの規定により任意売却をする場合を除き、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定によってする。
2 破産管財人は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定により、別除権の目的である財産の換価をすることができる。この場合においては、別除権者は、その換価を拒むことができない。
3 前二項の場合には、民事執行法第63条及び第129条(これらの規定を同法その他強制執行の手続に関する法令において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。
4 第2項の場合において、別除権者が受けるべき金額がまだ確定していないときは、破産管財人は、代金を別に寄託しなければならない。この場合においては、別除権は、寄託された代金につき存する。
第185条 別除権者が法律に定められた方法によらないで別除権の目的である財産の処分をする権利を有するときは、裁判所は、破産管財人の申立てにより、別除権者がその処分をすべき期間を定めることができる。
2 別除権者は、前項の期間内に処分をしないときは、同項の権利を失う。
3 第1項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
4 第1項の申立てについての裁判及び前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
第2節 担保権の消滅
第186条 破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき担保権(特別の先取特権、質権、抵当権又は商法若しくは会社法の規定による留置権をいう。以下この節において同じ。)が存する場合において、当該財産を任意に売却して当該担保権を消滅させることが破産債権者の一般の利益に適合するときは、破産管財人は、裁判所に対し、当該財産を任意に売却し、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める額に相当する金銭が裁判所に納付されることにより当該財産につき存するすべての担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができる。ただし、当該担保権を有する者の利益を不当に害することとなると認められるときは、この限りでない。
一 破産管財人が、売却によってその相手方から取得することができる金銭(売買契約の締結及び履行のために要する費用のうち破産財団から現に支出し又は将来支出すべき実費の額並びに当該財産の譲渡に課されるべき消費税額等(当該消費税額及びこれを課税標準として課されるべき地方消費税額をいう。以下この節において同じ。)に相当する額であって、当該売買契約において相手方の負担とされるものに相当する金銭を除く。以下この節において「売得金」という。)の一部を破産財団に組み入れようとする場合 売得金の額から破産財団に組み入れようとする金銭(以下この節において「組入金」という。)の額を控除した額
二 前号に掲げる場合以外の場合 売得金の額
2 前項第1号に掲げる場合には、同項の申立てをしようとする破産管財人は、組入金の額について、あらかじめ、当該担保権を有する者と協議しなければならない。
3 第1項の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面(以下この節において「申立書」という。)でしなければならない。
一 担保権の目的である財産の表示
二 売得金の額(前号の財産が複数あるときは、売得金の額及びその各財産ごとの内訳の額)
三 第1号の財産の売却の相手方の氏名又は名称
四 消滅すべき担保権の表示
五 前号の担保権によって担保される債権の額
六 第1項第1号に掲げる場合には、組入金の額(第1号の財産が複数あるときは、組入金の額及びその各財産ごとの内訳の額)
七 前項の規定による協議の内容及びその経過
4 申立書には、前項第1号の財産の売却に係る売買契約の内容(売買契約の締結及び履行のために要する費用のうち破産財団から現に支出し又は将来支出すべき実費の額並びに当該財産の譲渡に課されるべき消費税額等に相当する額であって、当該売買契約において相手方の負担とされるものを含む。)を記載した書面を添付しなければならない。
5 第1項の申立てがあった場合には、申立書及び前項の書面を、当該申立書に記載された第3項第4号の担保権を有する者(以下この節において「被申立担保権者」という。)に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
第187条 被申立担保権者は、前条第1項の申立てにつき異議があるときは、同条第5項の規定によりすべての被申立担保権者に申立書及び同条第4項の書面の送達がされた日から1月以内に、担保権の実行の申立てをしたことを証する書面を裁判所に提出することができる。
2 裁判所は、被申立担保権者につきやむを得ない事由がある場合に限り、当該被申立担保権者の申立てにより、前項の期間を伸長することができる。
3 破産管財人と被申立担保権者との間に売得金及び組入金の額(前条第1項第2号に掲げる場合にあっては、売得金の額)について合意がある場合には、当該被申立担保権者は、担保権の実行の申立てをすることができない。
4 被申立担保権者は、第1項の期間(第2項の規定により伸長されたときは、その伸長された期間。以下この節において同じ。)が経過した後は、第190条第6項の規定により第189条第1項の許可の決定が取り消され、又は同項の不許可の決定が確定した場合を除き、担保権の実行の申立てをすることができない。
5 第1項の担保権の実行の申立てをしたことを証する書面が提出された後に、当該担保権の実行の申立てが取り下げられ、又は却下された場合には、当該書面は提出されなかったものとみなす。民事執行法第188条において準用する同法第63条又は同法第192条において準用する同法第129条(これらの規定を同法その他強制執行の手続に関する法令において準用する場合を含む。)の規定により同項の担保権の実行の手続が取り消された場合も、同様とする。
6 第189条第1項の不許可の決定が確定した後に、第1項の担保権の実行の申立てが取り下げられ、又は却下された場合において、破産管財人が前条第1項の申立てをしたときは、当該担保権の実行の申立てをした被申立担保権者は、第1項の規定にかかわらず、同項の担保権の実行の申立てをしたことを証する書面を提出することができない。
第188条 被申立担保権者は、第186条第1項の申立てにつき異議があるときは、前条第1項の期間内に、破産管財人に対し、当該被申立担保権者又は他の者が第186条第3項第1号の財産を買い受ける旨の申出(以下この節において「買受けの申出」という。)をすることができる。
2 買受けの申出は、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一 第186条第3項第1号の財産を買い受けようとする者(以下この節において「買受希望者」という。)の氏名又は名称
二 破産管財人が第186条第3項第1号の財産の売却によって買受希望者から取得することができる金銭の額(売買契約の締結及び履行のために要する費用のうち破産財団から現に支出し又は将来支出すべき実費の額並びに当該財産の譲渡に課されるべき消費税額等に相当する額であって、当該売買契約において買受希望者の負担とされるものに相当する金銭を除く。以下この節において「買受けの申出の額」という。)
三 第186条第3項第1号の財産が複数あるときは、買受けの申出の額の各財産ごとの内訳の額
3 買受けの申出の額は、申立書に記載された第186条第3項第2号の売得金の額にその二十分の一に相当する額を加えた額以上でなければならない。
4 第186条第3項第1号の財産が複数あるときは、第2項第3号の買受けの申出の額の各財産ごとの内訳の額は、当該各財産につき、同条第3項第2号の売得金の額の各財産ごとの内訳の額を下回ってはならない。
5 買受希望者は、買受けの申出に際し、最高裁判所規則で定める額及び方法による保証を破産管財人に提供しなければならない。
6 前条第3項の規定は、買受けの申出について準用する。
7 買受けの申出をした者(その者以外の者が買受希望者である場合にあっては、当該買受希望者)は、前条第1項の期間内は、当該買受けの申出を撤回することができる。
8 破産管財人は、買受けの申出があったときは、前条第1項の期間が経過した後、裁判所に対し、第186条第3項第1号の財産を買受希望者に売却する旨の届出をしなければならない。この場合において、買受けの申出が複数あったときは、最高の買受けの申出の額に係る買受希望者(最高の買受けの申出の額に係る買受けの申出が複数あった場合にあっては、そのうち最も先にされたものに係る買受希望者)に売却する旨の届出をしなければならない。
9 前項の場合においては、破産管財人は、前条第1項の期間内にされた買受けの申出に係る第2項の書面を裁判所に提出しなければならない。
10 買受けの申出があったときは、破産管財人は、第186条第1項の申立てを取り下げるには、買受希望者(次条第1項の許可の決定が確定した後にあっては、同条第2項に規定する買受人)の同意を得なければならない。
第189条 裁判所は、被申立担保権者が第187条第1項の期間内に同項の担保権の実行の申立てをしたことを証する書面を提出したことにより不許可の決定をする場合を除き、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者を当該許可に係る売却の相手方とする第186条第1項の許可の決定をしなければならない。
一 前条第8項に規定する届出がされなかった場合 第186条第3項第3号の売却の相手方
二 前条第8項に規定する届出がされた場合 同項に規定する買受希望者
2 前項第2号に掲げる場合において、同項の許可の決定が確定したときは、破産管財人と当該許可に係る同号に定める買受希望者(以下この節において「買受人」という。)との間で、第186条第4項の書面に記載された内容と同一の内容(売却の相手方を除く。)の売買契約が締結されたものとみなす。この場合においては、買受けの申出の額を売買契約の売得金の額とみなす。
3 第186条第1項の申立てについての裁判があった場合には、その裁判が確定するまでの間、買受希望者(第1項第2号に定める買受希望者を除く。)は、当該買受希望者に係る買受けの申出を撤回することができる。
4 第186条第1項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5 第186条第1項の申立てについての裁判又は前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
第190条 前条第1項の許可の決定が確定したときは、当該許可に係る売却の相手方は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める額に相当する金銭を裁判所の定める期限までに裁判所に納付しなければならない。
一 前条第1項第1号に掲げる場合 第186条第1項各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める額
二 前条第1項第2号に掲げる場合 同条第2項後段に規定する売得金の額から第188条第5項の規定により買受人が提供した保証の額を控除した額
2 前項第2号の規定による金銭の納付があったときは、第188条第5項の規定により買受人が提供した保証の額に相当する金銭は、売得金に充てる。
3 前項の場合には、破産管財人は、同項の保証の額に相当する金銭を直ちに裁判所に納付しなければならない。
4 被申立担保権者の有する担保権は、第1項第1号の場合にあっては同号の規定による金銭の納付があった時に、同項第2号の場合にあっては同号の規定による金銭の納付及び前項の規定による金銭の納付があった時に、それぞれ消滅する。
5 前項に規定する金銭の納付があったときは、裁判所書記官は、消滅した担保権に係る登記又は登録の抹消を嘱託しなければならない。
6 第1項の規定による金銭の納付がなかったときは、裁判所は、前条第1項の許可の決定を取り消さなければならない。
7 前項の場合には、買受人は、第2項の保証の返還を請求することができない。
第191条 裁判所は、前条第4項に規定する金銭の納付があった場合には、次項に規定する場合を除き、当該金銭の被申立担保権者に対する配当に係る配当表に基づいて、その配当を実施しなければならない。
2 被申立担保権者が1人である場合又は被申立担保権者が2人以上であって前条第4項に規定する金銭で各被申立担保権者の有する担保権によって担保される債権を弁済することができる場合には、裁判所は、当該金銭の交付計算書を作成して、被申立担保権者に弁済金を交付し、剰余金を破産管財人に交付する。
3 民事執行法第85条及び第88条から第92条までの規定は第1項の配当の手続について、同法第88条、第91条及び第92条の規定は前項の規定による弁済金の交付の手続について準用する。
第3節 商事留置権の消滅
第192条 破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき商法又は会社法の規定による留置権がある場合において、当該財産が第36条の規定により継続されている事業に必要なものであるとき、その他当該財産の回復が破産財団の価値の維持又は増加に資するときは、破産管財人は、留置権者に対して、当該留置権の消滅を請求することができる。
2 前項の規定による請求をするには、同項の財産の価額に相当する金銭を、同項の留置権者に弁済しなければならない。
3 第1項の規定による請求及び前項に規定する弁済をするには、裁判所の許可を得なければならない。
4 前項の許可があった場合における第2項に規定する弁済の額が第1項の財産の価額を満たすときは、当該弁済の時又は同項の規定による請求の時のいずれか遅い時に、同項の留置権は消滅する。
5 前項の規定により第1項の留置権が消滅したことを原因とする同項の財産の返還を求める訴訟においては、第2項に規定する弁済の額が当該財産の価額を満たさない場合においても、原告の申立てがあり、当該訴訟の受訴裁判所が相当と認めるときは、当該受訴裁判所は、相当の期間内に不足額を弁済することを条件として、第1項の留置権者に対して、当該財産を返還することを命ずることができる。
第8章 配当
第1節 通則
第193条 破産債権者は、この章の定めるところに従い、破産財団から、配当を受けることができる。
2 破産債権者は、破産管財人がその職務を行う場所において配当を受けなければならない。ただし、破産管財人と破産債権者との合意により別段の定めをすることを妨げない。
3 破産管財人は、配当をしたときは、その配当をした金額を破産債権者表に記載しなければならない。
第194条 配当の順位は、破産債権間においては次に掲げる順位に、第1号の優先的破産債権間においては第98条第2項に規定する優先順位による。
一 優先的破産債権
二 前号、次号及び第4号に掲げるもの以外の破産債権
三 劣後的破産債権
四 約定劣後破産債権
2 同一順位において配当をすべき破産債権については、それぞれその債権の額の割合に応じて、配当をする。
第2節 最後配当
第195条 破産管財人は、一般調査期間の経過後又は一般調査期日の終了後であって破産財団に属する財産の換価の終了後においては、第217条第1項に規定する場合を除き、遅滞なく、届出をした破産債権者に対し、この節の規定による配当(以下この章及び次章において「最後配当」という。)をしなければならない。
2 破産管財人は、最後配当をするには、裁判所書記官の許可を得なければならない。
3 裁判所は、破産管財人の意見を聴いて、あらかじめ、最後配当をすべき時期を定めることができる。
第196条 破産管財人は、前条第2項の規定による許可があったときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した配当表を作成し、これを裁判所に提出しなければならない。
一 最後配当の手続に参加することができる破産債権者の氏名又は名称及び住所
二 最後配当の手続に参加することができる債権の額
三 最後配当をすることができる金額
2 前項第2号に掲げる事項は、優先的破産債権、劣後的破産債権及び約定劣後破産債権をそれぞれ他の破産債権と区分し、優先的破産債権については第98条第2項に規定する優先順位に従い、これを記載しなければならない。
3 破産管財人は、別除権に係る根抵当権によって担保される破産債権については、当該破産債権を有する破産債権者が、破産管財人に対し、当該根抵当権の行使によって弁済を受けることができない債権の額を証明しない場合においても、これを配当表に記載しなければならない。この場合においては、前条第2項の規定による許可があった日における当該破産債権のうち極度額を超える部分の額を最後配当の手続に参加することができる債権の額とする。
4 前項の規定は、第108条第2項に規定する抵当権(根抵当権であるものに限る。)を有する者について準用する。
第197条 破産管財人は、前条第1項の規定により配当表を裁判所に提出した後、遅滞なく、最後配当の手続に参加することができる債権の総額及び最後配当をすることができる金額を公告し、又は届出をした破産債権者に通知しなければならない。
2 前項の規定による通知は、その通知が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。
3 第1項の規定による通知が届出をした各破産債権者に通常到達すべきであった時を経過したときは、破産管財人は、遅滞なく、その旨を裁判所に届け出なければならない。
第198条 異議等のある破産債権(第129条第1項に規定するものを除く。)について最後配当の手続に参加するには、当該異議等のある破産債権を有する破産債権者が、前条第1項の規定による公告が効力を生じた日又は同条第3項の規定による届出があった日から起算して2週間以内に、破産管財人に対し、当該異議等のある破産債権の確定に関する破産債権査定申立てに係る査定の手続、破産債権査定異議の訴えに係る訴訟手続又は第127条第1項の規定による受継があった訴訟手続が係属していることを証明しなければならない。
2 停止条件付債権又は将来の請求権である破産債権について最後配当の手続に参加するには、前項に規定する期間(以下この節及び第5節において「最後配当に関する除斥期間」という。)内にこれを行使することができるに至っていなければならない。
3 別除権者は、最後配当の手続に参加するには、次項の場合を除き、最後配当に関する除斥期間内に、破産管財人に対し、当該別除権に係る第65条第2項に規定する担保権によって担保される債権の全部若しくは一部が破産手続開始後に担保されないこととなったことを証明し、又は当該担保権の行使によって弁済を受けることができない債権の額を証明しなければならない。
4 第196条第3項前段(同条第4項において準用する場合を含む。)の規定により配当表に記載された根抵当権によって担保される破産債権については、最後配当に関する除斥期間内に当該担保権の行使によって弁済を受けることができない債権の額の証明がされた場合を除き、同条第3項後段(同条第4項において準用する場合を含む。)の規定により配当表に記載された最後配当の手続に参加することができる債権の額を当該弁済を受けることができない債権の額とみなす。
5 第3項の規定は、準別除権者について準用する。
第199条 次に掲げる場合には、破産管財人は、直ちに、配当表を更正しなければならない。
一 破産債権者表を更正すべき事由が最後配当に関する除斥期間内に生じたとき。
二 前条第1項に規定する事項につき最後配当に関する除斥期間内に証明があったとき。
三 前条第3項に規定する事項につき最後配当に関する除斥期間内に証明があったとき。
2 前項第3号の規定は、準別除権者について準用する。
第200条 届出をした破産債権者で配当表の記載に不服があるものは、最後配当に関する除斥期間が経過した後1週間以内に限り、裁判所に対し、異議を申し立てることができる。
2 裁判所は、前項の規定による異議の申立てを理由があると認めるときは、破産管財人に対し、配当表の更正を命じなければならない。
3 第1項の規定による異議の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。この場合においては、配当表の更正を命ずる決定に対する即時抗告の期間は、第11条第1項の規定により利害関係人がその裁判書の閲覧を請求することができることとなった日から起算する。
4 第1項の規定による異議の申立てを却下する裁判及び前項前段の即時抗告についての裁判(配当表の更正を命ずる決定を除く。)があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
第201条 破産管財人は、前条第1項に規定する期間が経過した後(同項の規定による異議の申立てがあったときは、当該異議の申立てに係る手続が終了した後)、遅滞なく、最後配当の手続に参加することができる破産債権者に対する配当額を定めなければならない。
2 破産管財人は、第70条の規定により寄託した金額で第198条第2項の規定に適合しなかったことにより最後配当の手続に参加することができなかった破産債権者のために寄託したものの配当を、最後配当の一部として他の破産債権者に対してしなければならない。
3 解除条件付債権である破産債権について、その条件が最後配当に関する除斥期間内に成就しないときは、第69条の規定により供した担保はその効力を失い、同条の規定により寄託した金額は当該破産債権を有する破産債権者に支払わなければならない。
4 第101条第1項の規定により弁済を受けた破産債権者又は第109条に規定する弁済を受けた破産債権者は、他の同順位の破産債権者が自己の受けた弁済と同一の割合の配当を受けるまでは、最後配当を受けることができない。
5 第1項の規定により破産債権者に対する配当額を定めた場合において、第111条第1項第4号及び第113条第2項の規定による届出をしなかった破産債権者について、その定めた配当額が同号に規定する最高裁判所規則で定める額に満たないときは、破産管財人は、当該破産債権者以外の他の破産債権者に対して当該配当額の最後配当をしなければならない。この場合においては、当該配当額について、当該他の破産債権者に対する配当額を定めなければならない。
6 次項の規定による配当額の通知を発する前に、新たに最後配当に充てることができる財産があるに至ったときは、破産管財人は、遅滞なく、配当表を更正しなければならない。
7 破産管財人は、第1項から前項までの規定により定めた配当額を、最後配当の手続に参加することができる破産債権者(第5項の規定により最後配当を受けることができない破産債権者を除く。)に通知しなければならない。
第202条 破産管財人は、次に掲げる配当額を、これを受けるべき破産債権者のために供託しなければならない。
一 異議等のある破産債権であって前条第7項の規定による配当額の通知を発した時にその確定に関する破産債権査定申立てに係る査定の手続、破産債権査定異議の訴えに係る訴訟手続、第127条第1項若しくは第129条第2項の規定による受継があった訴訟手続又は同条第1項の規定による異議の主張に係る訴訟手続が係属しているものに対する配当額
二 租税等の請求権又は罰金等の請求権であって前条第7項の規定による配当額の通知を発した時に審査請求、訴訟(刑事訴訟を除く。)その他の不服の申立ての手続が終了していないものに対する配当額
三 破産債権者が受け取らない配当額
第203条 第201条第7項の規定による配当額の通知を発した時に破産管財人に知れていない財団債権者は、最後配当をすることができる金額をもって弁済を受けることができない。
第3節 簡易配当
第204条 裁判所書記官は、第195条第1項の規定により最後配当をすることができる場合において、次に掲げるときは、破産管財人の申立てにより、最後配当に代えてこの節の規定による配当(以下この章及び次章において「簡易配当」という。)をすることを許可することができる。
一 配当をすることができる金額が1000万円に満たないと認められるとき。
二 裁判所が、第32条第1項の規定により同項第5号に掲げる事項を公告し、かつ、その旨を知れている破産債権者に対し同条第3項第1号の規定により通知した場合において、届出をした破産債権者が同条第1項第5号に規定する時までに異議を述べなかったとき。
三 前二号に掲げるもののほか、相当と認められるとき。
2 破産管財人は、前項の規定による許可があった場合には、次条において読み替えて準用する第196条第1項の規定により配当表を裁判所に提出した後、遅滞なく、届出をした破産債権者に対する配当見込額を定めて、簡易配当の手続に参加することができる債権の総額、簡易配当をすることができる金額及び当該配当見込額を届出をした破産債権者に通知しなければならない。
3 前項の規定による通知は、その通知が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。
4 第2項の規定による通知が届出をした各破産債権者に通常到達すべきであった時を経過したときは、破産管財人は、遅滞なく、その旨を裁判所に届け出なければならない。
第205条 簡易配当については、前節(第195条、第197条、第200条第3項及び第4項並びに第201条第7項を除く。)の規定を準用する。この場合において、第196条第1項及び第3項中「前条第2項の規定による許可」とあるのは「第204条第1項の規定による許可」と、第198条第1項中「前条第1項の規定による公告が効力を生じた日又は同条第3項」とあるのは「第204条第4項」と、「2週間以内に」とあるのは「1週間以内に」と、第201条第1項中「当該異議の申立てに係る手続が終了した後」とあるのは「当該異議の申立てについての決定があった後」と、同条第6項中「次項の規定による配当額の通知を発する前に」とあるのは「前条第1項に規定する期間内に」と、第202条第1号及び第2号中「前条第7項の規定による配当額の通知を発した時に」とあり、並びに第203条中「第201条第7項の規定による配当額の通知を発した時に」とあるのは「第200条第1項に規定する期間を経過した時に」と読み替えるものとする。
第206条 破産管財人は、第204条第1項第3号の規定による許可があった場合において、同条第2項の規定による通知をするときは、同時に、簡易配当をすることにつき異議のある破産債権者は裁判所に対し同条第4項の規定による届出の日から起算して1週間以内に異議を述べるべき旨をも通知しなければならない。この場合において、届出をした破産債権者が同項の規定による届出の日から起算して1週間以内に異議を述べたときは、裁判所書記官は、当該許可を取り消さなければならない。
第207条 第204条第1項の規定による簡易配当の許可は、第209条第1項に規定する中間配当をした場合は、することができない。
第4節 同意配当
第208条 裁判所書記官は、第195条第1項の規定により最後配当をすることができる場合において、破産管財人の申立てがあったときは、最後配当に代えてこの条の規定による配当(以下この章及び次章において「同意配当」という。)をすることを許可することができる。この場合において、破産管財人の申立ては、届出をした破産債権者の全員が、破産管財人が定めた配当表、配当額並びに配当の時期及び方法について同意している場合に限り、することができる。
2 前項の規定による許可があった場合には、破産管財人は、同項後段の配当表、配当額並びに配当の時期及び方法に従い、同項後段の届出をした破産債権者に対して同意配当をすることができる。
3 同意配当については、第196条第1項及び第2項並びに第203条の規定を準用する。この場合において、第196条第1項中「前条第2項の規定による許可があったときは、遅滞なく」とあるのは「あらかじめ」と、第203条中「第201条第7項の規定による配当額の通知を発した時に」とあるのは「第208条第1項の規定による許可があった時に」と読み替えるものとする。
第5節 中間配当
第209条 破産管財人は、一般調査期間の経過後又は一般調査期日の終了後であって破産財団に属する財産の換価の終了前において、配当をするのに適当な破産財団に属する金銭があると認めるときは、最後配当に先立って、届出をした破産債権者に対し、この節の規定による配当(以下この節において「中間配当」という。)をすることができる。
2 破産管財人は、中間配当をするには、裁判所の許可を得なければならない。
3 中間配当については、第196条第1項及び第2項、第197条、第198条第1項、第199条第1項第1号及び第2号、第200条、第201条第4項並びに第203条の規定を準用する。この場合において、第196条第1項中「前条第2項の規定による許可」とあるのは「第209条第2項の規定による許可」と、第199条第1項各号及び第200条第1項中「最後配当に関する除斥期間」とあるのは「第210条第1項に規定する中間配当に関する除斥期間」と、第203条中「第201条第7項の規定による配当額」とあるのは「第211条の規定による配当率」と読み替えるものとする。
第210条 別除権者は、中間配当の手続に参加するには、前条第3項において準用する第198条第1項に規定する期間(以下この節において「中間配当に関する除斥期間」という。)に、破産管財人に対し、当該別除権の目的である財産の処分に着手したことを証明し、かつ、当該処分によって弁済を受けることができない債権の額を疎明しなければならない。
2 前項の規定は、準別除権者について準用する。
3 破産管財人は、第1項(前項において準用する場合を含む。)に規定する事項につき中間配当に関する除斥期間内に証明及び疎明があったときは、直ちに、配当表を更正しなければならない。
第211条 破産管財人は、第209条第3項において準用する第200条第1項に規定する期間が経過した後(同項の規定による異議の申立てがあったときは、当該異議の申立てについての決定があった後)、遅滞なく、配当率を定めて、その配当率を中間配当の手続に参加することができる破産債権者に通知しなければならない。
第212条 解除条件付債権である破産債権については、相当の担保を供しなければ、中間配当を受けることができない。
2 前項の破産債権について、その条件が最後配当に関する除斥期間内に成就しないときは、同項の規定により供した担保は、その効力を失う。
第213条 第209条第3項において準用する第198条第1項に規定する事項につき証明をしなかったことにより中間配当の手続に参加することができなかった破産債権について、当該破産債権を有する破産債権者が最後配当に関する除斥期間又はその中間配当の後に行われることがある中間配当に関する除斥期間内に当該事項につき証明をしたときは、その中間配当において受けることができた額について、当該最後配当又はその中間配当の後に行われることがある中間配当において、他の同順位の破産債権者に先立って配当を受けることができる。第210条第1項(同条第2項において準用する場合を含む。)に規定する事項につき証明又は疎明をしなかったことにより中間配当の手続に参加することができなかった別除権者(準別除権者を含む。)がその中間配当の後に行われることがある中間配当に関する除斥期間内に当該事項につき証明及び疎明をしたときも、同様とする。
第214条 中間配当を行おうとする破産管財人は、次に掲げる破産債権に対する配当額を寄託しなければならない。
一 異議等のある破産債権であって、第202条第1号に規定する手続が係属しているもの
二 租税等の請求権又は罰金等の請求権であって、第211条の規定による配当率の通知を発した時に第202条第2号に規定する手続が終了していないもの
三 中間配当に関する除斥期間内に第210条第1項(同条第2項において準用する場合を含む。)の規定による証明及び疎明があった債権のうち、当該疎明があった額に係る部分
四 停止条件付債権又は将来の請求権である破産債権
五 解除条件付債権である破産債権であって、第212条第1項の規定による担保が供されていないもの
六 第111条第1項第4号及び第113条第2項の規定による届出をしなかった破産債権者が有する破産債権
2 前項第1号又は第2号の規定により当該各号に掲げる破産債権に対する配当額を寄託した場合において、第202条第1号又は第2号の規定により当該破産債権に対する配当額を供託するときは、破産管財人は、その寄託した配当額をこれを受けるべき破産債権者のために供託しなければならない。
3 第1項第3号又は第4号の規定により当該各号に掲げる破産債権に対する配当額を寄託した場合において、当該破産債権を有する破産債権者又は別除権者(準別除権者を含む。)が第198条第2項の規定に適合しなかったこと又は同条第3項(同条第5項において準用する場合を含む。)に規定する事項につき証明をしなかったことにより最後配当の手続に参加することができなかったときは、破産管財人は、その寄託した配当額の最後配当を他の破産債権者に対してしなければならない。
4 第1項第5号の規定により同号に掲げる破産債権に対する配当額を寄託した場合において、当該破産債権の条件が最後配当に関する除斥期間内に成就しないときは、破産管財人は、その寄託した配当額を当該破産債権を有する破産債権者に支払わなければならない。
5 第1項第6号の規定により同号に掲げる破産債権に対する配当額を寄託した場合における第201条第5項の規定の適用については、同項中「その定めた配当額が同号に」とあるのは「その定めた配当額及び破産管財人が第214条第1項第6号の規定により寄託した同号に掲げる破産債権に対する配当額の合計額が第111条第1項第4号に」と、「当該配当額」とあるのは「当該合計額」とする。
第6節 追加配当
第215条 第201条第7項の規定による配当額の通知を発した後(簡易配当にあっては第205条において準用する第200条第1項に規定する期間を経過した後、同意配当にあっては第208条第1項の規定による許可があった後)、新たに配当に充てることができる相当の財産があることが確認されたときは、破産管財人は、裁判所の許可を得て、最後配当、簡易配当又は同意配当とは別に、届出をした破産債権者に対し、この条の規定による配当(以下この条において「追加配当」という。)をしなければならない。破産手続終結の決定があった後であっても、同様とする。
2 追加配当については、第201条第4項及び第5項、第202条並びに第203条の規定を準用する。この場合において、第201条第5項中「第1項の規定」とあるのは「第215条第4項の規定」と、第202条第1号及び第2号中「前条第7項」とあり、並びに第203条中「第201条第7項」とあるのは「第215条第5項」と読み替えるものとする。
3 追加配当は、最後配当、簡易配当又は同意配当について作成した配当表によってする。
4 破産管財人は、第1項の規定による許可があったときは、遅滞なく、追加配当の手続に参加することができる破産債権者に対する配当額を定めなければならない。
5 破産管財人は、前項の規定により定めた配当額を、追加配当の手続に参加することができる破産債権者(第2項において読み替えて準用する第201条第5項の規定により追加配当を受けることができない破産債権者を除く。)に通知しなければならない。
6 追加配当をした場合には、破産管財人は、遅滞なく、裁判所に書面による計算の報告をしなければならない。
7 前項の場合において、破産管財人が欠けたときは、当該計算の報告は、同項の規定にかかわらず、後任の破産管財人がしなければならない。
第9章 破産手続の終了
第216条 裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。
2 前項の規定は、破産手続の費用を支弁するのに足りる金額の予納があった場合には、適用しない。
3 裁判所は、第1項の規定により破産手続開始の決定と同時に破産手続廃止の決定をしたときは、直ちに、次に掲げる事項を公告し、かつ、これを破産者に通知しなければならない。
一 破産手続開始の決定の主文
二 破産手続廃止の決定の主文及び理由の要旨
4 第1項の規定による破産手続廃止の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
6 第31条及び第32条の規定は、第1項の規定による破産手続廃止の決定を取り消す決定が確定した場合について準用する。
第217条 裁判所は、破産手続開始の決定があった後、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産管財人の申立てにより又は職権で、破産手続廃止の決定をしなければならない。この場合においては、裁判所は、債権者集会の期日において破産債権者の意見を聴かなければならない。
2 前項後段の規定にかかわらず、裁判所は、相当と認めるときは、同項後段に規定する債権者集会の期日における破産債権者の意見の聴取に代えて、書面によって破産債権者の意見を聴くことができる。この場合においては、当該意見の聴取を目的とする第135条第1項第2号又は第3号に掲げる者による同項の規定による債権者集会の招集の申立ては、することができない。
3 前二項の規定は、破産手続の費用を支弁するのに足りる金額の予納があった場合には、適用しない。
4 裁判所は、第1項の規定による破産手続廃止の決定をしたときは、直ちに、その主文及び理由の要旨を公告し、かつ、その裁判書を破産者及び破産管財人に送達しなければならない。
5 裁判所は、第1項の申立てを棄却する決定をしたときは、その裁判書を破産管財人に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
6 第1項の規定による破産手続廃止の決定及び同項の申立てを棄却する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
7 第1項の規定による破産手続廃止の決定を取り消す決定が確定したときは、当該破産手続廃止の決定をした裁判所は、直ちに、その旨を公告しなければならない。
8 第1項の規定による破産手続廃止の決定は、確定しなければその効力を生じない。
第218条 裁判所は、次の各号に掲げる要件のいずれかに該当する破産者の申立てがあったときは、破産手続廃止の決定をしなければならない。
一 破産手続を廃止することについて、債権届出期間内に届出をした破産債権者の全員の同意を得ているとき。
二 前号の同意をしない破産債権者がある場合において、当該破産債権者に対して裁判所が相当と認める担保を供しているとき。ただし、破産財団から当該担保を供した場合には、破産財団から当該担保を供したことについて、他の届出をした破産債権者の同意を得ているときに限る。
2 前項の規定にかかわらず、裁判所は、まだ確定していない破産債権を有する破産債権者について同項第1号及び第2号ただし書の同意を得ることを要しない旨の決定をすることができる。この場合における同項第1号及び第2号ただし書の規定の適用については、これらの規定中「届出をした破産債権者」とあるのは、「届出をした破産債権者(まだ確定していない破産債権を有する破産債権者であって、裁判所の決定によりその同意を得ることを要しないとされたものを除く。)」とする。
3 裁判所は、第1項の申立てがあったときは、その旨を公告しなければならない。
4 届出をした破産債権者は、前項に規定する公告が効力を生じた日から起算して2週間以内に、裁判所に対し、第1項の申立てについて意見を述べることができる。
5 前条第4項から第8項までの規定は、第1項の規定による破産手続廃止の決定について準用する。この場合において、同条第5項中「破産管財人」とあるのは、「破産者」と読み替えるものとする。
第219条 法人である破産者が前条第1項の申立てをするには、定款その他の基本約款の変更に関する規定に従い、あらかじめ、当該法人を継続する手続をしなければならない。
第220条 裁判所は、最後配当、簡易配当又は同意配当が終了した後、第88条第4項の債権者集会が終結したとき、又は第89条第2項に規定する期間が経過したときは、破産手続終結の決定をしなければならない。
2 裁判所は、前項の規定により破産手続終結の決定をしたときは、直ちに、その主文及び理由の要旨を公告し、かつ、これを破産者に通知しなければならない。
第221条 第217条第1項若しくは第218条第1項の規定による破産手続廃止の決定が確定したとき、又は前条第1項の規定による破産手続終結の決定があったときは、確定した破産債権については、破産債権者表の記載は、破産者に対し、確定判決と同一の効力を有する。この場合において、破産債権者は、確定した破産債権について、当該破産者に対し、破産債権者表の記載により強制執行をすることができる。
2 前項の規定は、破産者(第121条第3項ただし書の代理人を含む。)が第118条第2項、第119条第5項、第121条第4項(同条第6項(同条第7項又は第122条第2項において準用する場合を含む。)若しくは第7項又は第122条第2項において準用する場合を含む。)又は第123条第1項の規定による異議を述べた場合には、適用しない。
第10章 相続財産の破産等に関する特則
第1節 相続財産の破産
第222条 相続財産についてのこの法律の規定による破産手続開始の申立ては、被相続人の相続開始の時の住所又は相続財産に属する財産が日本国内にあるときに限り、することができる。
2 相続財産に関する破産事件は、被相続人の相続開始の時の住所地を管轄する地方裁判所が管轄する。
3 前項の規定による管轄裁判所がないときは、相続財産に関する破産事件は、相続財産に属する財産の所在地(債権については、裁判上の請求をすることができる地)を管轄する地方裁判所が管轄する。
4 相続財産に関する破産事件に対する第5条第8項及び第9項並びに第7条第5号の規定の適用については、第5条第8項及び第9項中「第1項及び第2項」とあるのは「第222条第2項及び第3項」と、第7条第5号中「同条第1項又は第2項」とあるのは「第222条第2項又は第3項」とする。
5 前三項の規定により二以上の地方裁判所が管轄権を有するときは、相続財産に関する破産事件は、先に破産手続開始の申立てがあった地方裁判所が管轄する。
第223条 相続財産に対する第30条第1項の規定の適用については、同項中「破産手続開始の原因となる事実があると認めるとき」とあるのは、「相続財産をもって相続債権者及び受遺者に対する債務を完済することができないと認めるとき」とする。
第224条 相続財産については、相続債権者又は受遺者のほか、相続人、相続財産の管理人又は遺言執行者(相続財産の管理に必要な行為をする権利を有する遺言執行者に限る。以下この節において同じ。)も、破産手続開始の申立てをすることができる。
2 次の各号に掲げる者が相続財産について破産手続開始の申立てをするときは、それぞれ当該各号に定める事実を疎明しなければならない。
一 相続債権者又は受遺者 その有する債権の存在及び当該相続財産の破産手続開始の原因となる事実
二 相続人、相続財産の管理人又は遺言執行者 当該相続財産の破産手続開始の原因となる事実
第225条 相続財産については、民法第941条第1項の規定により財産分離の請求をすることができる間に限り、破産手続開始の申立てをすることができる。ただし、限定承認又は財産分離があったときは、相続債権者及び受遺者に対する弁済が完了するまでの間も、破産手続開始の申立てをすることができる。
第226条 裁判所は、破産手続開始の申立て後破産手続開始の決定前に債務者について相続が開始したときは、相続債権者、受遺者、相続人、相続財産の管理人又は遺言執行者の申立てにより、当該相続財産についてその破産手続を続行する旨の決定をすることができる。
2 前項に規定する続行の申立ては、相続が開始した後1月以内にしなければならない。
3 第1項に規定する破産手続は、前項の期間内に第1項に規定する続行の申立てがなかった場合はその期間が経過した時に、前項の期間内に第1項に規定する続行の申立てがあった場合で当該申立てを却下する裁判が確定したときはその時に、それぞれ終了する。
4 第1項に規定する続行の申立てを却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
第227条 裁判所は、破産手続開始の決定後に破産者について相続が開始したときは、当該相続財産についてその破産手続を続行する。
第228条 相続財産についての破産手続開始の決定は、限定承認又は財産分離を妨げない。ただし、破産手続開始の決定の取消し若しくは破産手続廃止の決定が確定し、又は破産手続終結の決定があるまでの間は、限定承認又は財産分離の手続は、中止する。
第229条 相続財産について破産手続開始の決定があった場合には、相続財産に属する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。この場合においては、被相続人が相続人に対して有していた権利は、消滅しなかったものとみなす。
2 相続人が相続財産の全部又は一部を処分した後に相続財産について破産手続開始の決定があったときは、相続人が反対給付について有する権利は、破産財団に属する。
3 前項に規定する場合において、相続人が既に同項の反対給付を受けているときは、相続人は、当該反対給付を破産財団に返還しなければならない。ただし、相続人が当該反対給付を受けた当時、破産手続開始の原因となる事実又は破産手続開始の申立てがあったことを知らなかったときは、その現に受けている利益を返還すれば足りる。
第230条 相続財産について破産手続開始の決定があった場合には、次に掲げる者は、破産管財人若しくは債権者委員会の請求又は債権者集会の決議に基づく請求があったときは、破産に関し必要な説明をしなければならない。
一 被相続人の代理人であった者
二 相続人及びその代理人
三 相続財産の管理人及び遺言執行者
2 前項の規定は、同項第2号又は第3号に掲げる者であった者について準用する。
3 第37条及び第38条の規定は、相続財産について破産手続開始の決定があった場合における相続人並びにその法定代理人及び支配人について準用する。
第231条 相続財産について破産手続開始の決定があった場合には、相続債権者及び受遺者は、相続人について破産手続開始の決定があったときでも、その債権の全額について破産手続に参加することができる。
2 相続財産について破産手続開始の決定があったときは、相続債権者の債権は、受遺者の債権に優先する。
第232条 相続財産について破産手続開始の決定があった場合には、相続人が被相続人に対して有していた権利は、消滅しなかったものとみなす。この場合においては、相続人は、被相続人に対して有していた債権について、相続債権者と同一の権利を有する。
2 前項に規定する場合において、相続人が相続債権者に対して自己の固有財産をもって弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、相続人は、その出えんの額の範囲内において、当該相続債権者が被相続人に対して有していた権利を行使することができる。
第233条 相続財産について破産手続開始の決定があったときは、相続人の債権者は、破産債権者としてその権利を行使することができない。
第234条 相続財産について破産手続開始の決定があった場合における第6章第2節の規定の適用については、被相続人、相続人、相続財産の管理人又は遺言執行者が相続財産に関してした行為は、破産者がした行為とみなす。
第235条 相続財産について破産手続開始の決定があった場合において、受遺者に対する担保の供与又は債務の消滅に関する行為がその債権に優先する債権を有する破産債権者を害するときは、当該行為を否認することができる。
2 第167条第2項の規定は、前項の行為が同項の規定により否認された場合について準用する。この場合において、同条第2項中「破産債権者を害すること」とあるのは、「第235条第1項の破産債権者を害すること」と読み替えるものとする。
第236条 相続財産について破産手続開始の決定があった場合において、被相続人、相続人、相続財産の管理人又は遺言執行者が相続財産に関してした行為が否認されたときは、破産管財人は、相続債権者に弁済をした後、否認された行為の相手方にその権利の価額に応じて残余財産を分配しなければならない。
第237条 相続財産の破産についての第218条第1項の申立ては、相続人がする。
2 相続人が数人あるときは、前項の申立ては、各相続人がすることができる。
第2節 相続人の破産
第238条 破産手続開始の決定前に破産者のために相続の開始があった場合において、破産者が破産手続開始の決定後にした単純承認は、破産財団に対しては、限定承認の効力を有する。破産者が破産手続開始の決定後にした相続の放棄も、同様とする。
2 破産管財人は、前項後段の規定にかかわらず、相続の放棄の効力を認めることができる。この場合においては、相続の放棄があったことを知った時から3月以内に、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
第239条 相続人についての破産手続開始の決定は、限定承認又は財産分離を妨げない。ただし、当該相続人のみが相続財産につき債務の弁済に必要な行為をする権限を有するときは、破産手続開始の決定の取消し若しくは破産手続廃止の決定が確定し、又は破産手続終結の決定があるまでの間は、限定承認又は財産分離の手続は、中止する。
第240条 相続人について破産手続開始の決定があった場合には、相続債権者及び受遺者は、財産分離があったとき、又は相続財産について破産手続開始の決定があったときでも、その債権の全額について破産手続に参加することができる。
2 相続人について破産手続開始の決定があり、かつ、相続財産について破産手続開始の決定があったときは、相続人の債権者の債権は、相続人の破産財団については、相続債権者及び受遺者の債権に優先する。
3 第225条に規定する期間内にされた破産手続開始の申立てにより相続人について破産手続開始の決定があったときは、相続人の固有財産については相続人の債権者の債権が相続債権者及び受遺者の債権に優先し、相続財産については相続債権者及び受遺者の債権が相続人の債権者の債権に優先する。
4 相続人について破産手続開始の決定があり、かつ、当該相続人が限定承認をしたときは、相続債権者及び受遺者は、相続人の固有財産について、破産債権者としてその権利を行使することができない。第238条第1項の規定により限定承認の効力を有するときも、同様とする。
第241条 相続債権者又は受遺者は、相続人について破産手続開始の決定があった後に、限定承認又は財産分離の手続において権利を行使したことにより、破産債権について弁済を受けた場合であっても、その弁済を受ける前の債権の額について破産手続に参加することができる。相続人の債権者が、相続人について破産手続開始の決定があった後に、財産分離の手続において権利を行使したことにより、破産債権について弁済を受けた場合も、同様とする。
2 前項の相続債権者若しくは受遺者又は相続人の債権者は、他の同順位の破産債権者が自己の受けた弁済(相続人が数人ある場合には、当該破産手続開始の決定を受けた相続人の相続分に応じた部分に限る。次項において同じ。)と同一の割合の配当を受けるまでは、破産手続により、配当を受けることができない。
3 第1項の相続債権者若しくは受遺者又は相続人の債権者は、前項の弁済を受けた債権の額については、議決権を行使することができない。
第242条 相続人について破産手続開始の決定があった後、当該相続人が限定承認をしたとき、又は当該相続人について財産分離があったときは、破産管財人は、当該相続人の固有財産と分別して相続財産の管理及び処分をしなければならない。限定承認又は財産分離があった後に相続人について破産手続開始の決定があったときも、同様とする。
2 破産管財人が前項の規定による相続財産の管理及び処分を終えた場合において、残余財産があるときは、その残余財産のうち当該相続人に帰属すべき部分は、当該相続人の固有財産とみなす。この場合において、破産管財人は、その残余財産について、破産財団の財産目録及び貸借対照表を補充しなければならない。
3 第1項前段及び前項の規定は、第238条第1項の規定により限定承認の効力を有する場合及び第240条第3項の場合について準用する。
第3節 受遺者の破産
第243条 前節の規定は、包括受遺者について破産手続開始の決定があった場合について準用する。
第244条 破産手続開始の決定前に破産者のために特定遺贈があった場合において、破産者が当該決定の時においてその承認又は放棄をしていなかったときは、破産管財人は、破産者に代わって、その承認又は放棄をすることができる。
2 民法第987条の規定は、前項の場合について準用する。
第10章の2 信託財産の破産に関する特則
第244条の2 信託財産についてのこの法律の規定による破産手続開始の申立ては、信託財産に属する財産又は受託者の住所が日本国内にあるときに限り、することができる。
2 信託財産に関する破産事件は、受託者の住所地(受託者が数人ある場合にあっては、そのいずれかの住所地)を管轄する地方裁判所が管轄する。
3 前項の規定による管轄裁判所がないときは、信託財産に関する破産事件は、信託財産に属する財産の所在地(債権については、裁判上の請求をすることができる地)を管轄する地方裁判所が管轄する。
4 信託財産に関する破産事件に対する第5条第8項及び第9項並びに第7条第5号の規定の適用については、第5条第8項及び第9項中「第1項及び第2項」とあるのは「第244条の2第2項及び第3項」と、第7条第5号中「同条第1項又は第2項」とあるのは「第244条の2第2項又は第3項」とする。
5 前三項の規定により二以上の地方裁判所が管轄権を有するときは、信託財産に関する破産事件は、先に破産手続開始の申立てがあった地方裁判所が管轄する。
第244条の3 信託財産に対する第15条第1項の規定の適用については、同項中「支払不能」とあるのは、「支払不能又は債務超過(受託者が、信託財産責任負担債務につき、信託財産に属する財産をもって完済することができない状態をいう。)」とする。
第244条の4 信託財産については、信託債権(信託法第21条第2項第2号に規定する信託債権をいう。次項第1号及び第244条の7において同じ。)を有する者又は受益者のほか、受託者又は信託財産管理者、信託財産法人管理人若しくは同法第170条第1項の管理人(以下「受託者等」と総称する。)も、破産手続開始の申立てをすることができる。
2 次の各号に掲げる者が信託財産について破産手続開始の申立てをするときは、それぞれ当該各号に定める事実を疎明しなければならない。
一 信託債権を有する者又は受益者 その有する信託債権又は受益債権の存在及び当該信託財産の破産手続開始の原因となる事実
二 受託者等 当該信託財産の破産手続開始の原因となる事実
3 前項第2号の規定は、受託者等が1人であるとき、又は受託者等が数人ある場合において受託者等の全員が破産手続開始の申立てをしたときは、適用しない。
4 信託財産については、信託が終了した後であっても、残余財産の給付が終了するまでの間は、破産手続開始の申立てをすることができる。
第244条の5 信託財産について破産手続開始の決定があった場合には、破産手続開始の時において信託財産に属する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
第244条の6 信託財産について破産手続開始の決定があった場合には、次に掲げる者は、破産管財人若しくは債権者委員会の請求又は債権者集会の決議に基づく請求があったときは、破産に関し必要な説明をしなければならない。
一 受託者等
二 会計監査人(信託法第248条第1項又は第2項の会計監査人をいう。以下この章において同じ。)
2 前項の規定は、同項各号に掲げる者であった者について準用する。
3 第37条及び第38条の規定は、信託財産について破産手続開始の決定があった場合における受託者等(個人である受託者等に限る。)について準用する。
4 第41条の規定は、信託財産について破産手続開始の決定があった場合における受託者等について準用する。
第244条の7 信託財産について破産手続開始の決定があった場合には、信託債権を有する者及び受益者は、受託者について破産手続開始の決定があったときでも、破産手続開始の時において有する債権の全額について破産手続に参加することができる。
2 信託財産について破産手続開始の決定があったときは、信託債権は、受益債権に優先する。
3 受益債権と約定劣後破産債権は、同順位とする。ただし、信託行為の定めにより、約定劣後破産債権が受益債権に優先するものとすることができる。
第244条の8 信託法第49条第1項(同法第53条第2項及び第54条第4項において準用する場合を含む。)の規定により受託者が有する権利は、信託財産についての破産手続との関係においては、金銭債権とみなす。
第244条の9 信託財産について破産手続開始の決定があったときは、固有財産等責任負担債務(信託法第22条第1項に規定する固有財産等責任負担債務をいう。)に係る債権を有する者は、破産債権者としてその権利を行使することができない。
第244条の10 信託財産について破産手続開始の決定があった場合における第6章第2節の規定の適用については、受託者等が信託財産に関してした行為は、破産者がした行為とみなす。
2 前項に規定する場合における第161条第1項の規定の適用については、当該行為の相手方が受託者等又は会計監査人であるときは、その相手方は、当該行為の当時、受託者等が同項第2号の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたものと推定する。
3 第1項に規定する場合における第162条第1項第1号の規定の適用については、債権者が受託者等又は会計監査人であるときは、その債権者は、同号に掲げる行為の当時、同号イ又はロに掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実(同号イに掲げる場合にあっては、支払不能であったこと及び支払の停止があったこと)を知っていたものと推定する。
4 第1項に規定する場合における第168条第2項及び第170条の2第2項の規定の適用については、当該行為の相手方が受託者等又は会計監査人であるときは、その相手方は、当該行為の当時、受託者等がこれらの規定に規定する隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたものと推定する。
第244条の11 信託財産について破産手続開始の決定があった場合には、次に掲げるものは、破産管財人がする。
一 信託法第27条第1項又は第2項の規定による取消権の行使
二 信託法第31条第5項の規定による追認
三 信託法第31条第6項又は第7項の規定による取消権の行使
四 信託法第32条第4項の規定による権利の行使
五 信託法第40条又は第41条の規定による責任の追及
六 信託法第42条(同法第254条第3項において準用する場合を含む。)の規定による責任の免除
七 信託法第226条第1項、第228条第1項又は第254条第1項の規定による責任の追及
2 前項の規定は、保全管理人について準用する。
3 第177条の規定は信託財産について破産手続開始の決定があった場合における受託者等又は会計監査人の財産に対する保全処分について、第178条から第181条までの規定は信託財産についての破産手続における受託者等又は会計監査人の責任に基づく損失のてん補又は原状の回復の請求権の査定について、それぞれ準用する。
第244条の12 信託財産について破産手続開始の申立てがあった場合における第3章第2節の規定の適用については、第91条第1項中「債務者(法人である場合に限る。以下この節、第148条第4項及び第152条第2項において同じ。)の財産」とあり、並びに同項、第93条第1項及び第96条第2項中「債務者の財産」とあるのは、「信託財産に属する財産」とする。
第244条の13 信託財産の破産についての第218条第1項の申立ては、受託者等がする。
2 受託者等が数人あるときは、前項の申立ては、各受託者等がすることができる。
3 信託財産の破産について第1項の申立てをするには、信託の変更に関する規定に従い、あらかじめ、当該信託を継続する手続をしなければならない。
第11章 外国倒産処理手続がある場合の特則
第245条 破産管財人は、破産者についての外国倒産処理手続(外国で開始された手続で、破産手続又は再生手続に相当するものをいう。以下この章において同じ。)がある場合には、外国管財人(当該外国倒産処理手続において破産者の財産の管理及び処分をする権利を有する者をいう。以下この章において同じ。)に対し、破産手続の適正な実施のために必要な協力及び情報の提供を求めることができる。
2 前項に規定する場合には、破産管財人は、外国管財人に対し、外国倒産処理手続の適正な実施のために必要な協力及び情報の提供をするよう努めるものとする。
第246条 外国管財人は、債務者について破産手続開始の申立てをすることができる。
2 外国管財人は、前項の申立てをするときは、破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない。
3 外国管財人は、破産者の破産手続において、債権者集会の期日に出席し、意見を述べることができる。
4 第1項の規定により外国管財人が破産手続開始の申立てをした場合において、包括的禁止命令又はこれを変更し、若しくは取り消す旨の決定があったときはその主文を、破産手続開始の決定があったときは第32条第1項の規定により公告すべき事項を、同項第2号又は第3号に掲げる事項に変更を生じたときはその旨を、破産手続開始の決定を取り消す決定が確定したときはその主文を、それぞれ外国管財人に通知しなければならない。
第247条 外国管財人は、届出をしていない破産債権者であって、破産者についての外国倒産処理手続に参加しているものを代理して、破産者の破産手続に参加することができる。ただし、当該外国の法令によりその権限を有する場合に限る。
2 破産管財人は、届出をした破産債権者であって、破産者についての外国倒産処理手続に参加していないものを代理して、当該外国倒産処理手続に参加することができる。
3 破産管財人は、前項の規定による参加をした場合には、同項の規定により代理した破産債権者のために、外国倒産処理手続に属する一切の行為をすることができる。ただし、届出の取下げ、和解その他の破産債権者の権利を害するおそれがある行為をするには、当該破産債権者の授権がなければならない。
第12章 免責手続及び復権
第1節 免責手続
第248条 個人である債務者(破産手続開始の決定後にあっては、破産者。第4項を除き、以下この節において同じ。)は、破産手続開始の申立てがあった日から破産手続開始の決定が確定した日以後1月を経過する日までの間に、破産裁判所に対し、免責許可の申立てをすることができる。
2 前項の債務者(以下この節において「債務者」という。)は、その責めに帰することができない事由により同項に規定する期間内に免責許可の申立てをすることができなかった場合には、その事由が消滅した後1月以内に限り、当該申立てをすることができる。
3 免責許可の申立てをするには、最高裁判所規則で定める事項を記載した債権者名簿を提出しなければならない。ただし、当該申立てと同時に債権者名簿を提出することができないときは、当該申立ての後遅滞なくこれを提出すれば足りる。
4 債務者が破産手続開始の申立てをした場合には、当該申立てと同時に免責許可の申立てをしたものとみなす。ただし、当該債務者が破産手続開始の申立ての際に反対の意思を表示しているときは、この限りでない。
5 前項本文の規定により免責許可の申立てをしたものとみなされたときは、第20条第2項の債権者一覧表を第3項本文の債権者名簿とみなす。
6 債務者は、免責許可の申立てをしたときは、第218条第1項の申立て又は再生手続開始の申立てをすることができない。
7 債務者は、次の各号に掲げる申立てをしたときは、第1項及び第2項の規定にかかわらず、当該各号に定める決定が確定した後でなければ、免責許可の申立てをすることができない。
一 第218条第1項の申立て 当該申立ての棄却の決定
二 再生手続開始の申立て 当該申立ての棄却、再生手続廃止又は再生計画不認可の決定
第249条 免責許可の申立てがあり、かつ、第216条第1項の規定による破産手続廃止の決定、第217条第1項の規定による破産手続廃止の決定の確定又は第220条第1項の規定による破産手続終結の決定があったときは、当該申立てについての裁判が確定するまでの間は、破産者の財産に対する破産債権に基づく強制執行、仮差押え、仮処分若しくは外国租税滞納処分若しくは破産債権を被担保債権とする一般の先取特権の実行若しくは留置権(商法又は会社法の規定によるものを除く。)による競売(以下この条において「破産債権に基づく強制執行等」という。)、破産債権に基づく財産開示手続若しくは第三者からの情報取得手続の申立て又は破産者の財産に対する破産債権に基づく国税滞納処分(外国租税滞納処分を除く。)はすることができず、破産債権に基づく強制執行等の手続又は処分で破産者の財産に対して既にされているもの並びに破産者について既にされている破産債権に基づく財産開示手続及び第三者からの情報取得手続は中止する。
2 免責許可の決定が確定したときは、前項の規定により中止した破産債権に基づく強制執行等の手続又は処分並びに破産債権に基づく財産開示手続及び第三者からの情報取得手続は、その効力を失う。
3 第1項の場合において、次の各号に掲げる破産債権については、それぞれ当該各号に定める決定が確定した日の翌日から2月を経過する日までの間は、時効は、完成しない。
一 第253条第1項各号に掲げる請求権 免責許可の申立てについての決定
二 前号に掲げる請求権以外の破産債権 免責許可の申立てを却下した決定又は免責不許可の決定
第250条 裁判所は、破産管財人に、第252条第1項各号に掲げる事由の有無又は同条第2項の規定による免責許可の決定をするかどうかの判断に当たって考慮すべき事情についての調査をさせ、その結果を書面で報告させることができる。
2 破産者は、前項に規定する事項について裁判所が行う調査又は同項の規定により破産管財人が行う調査に協力しなければならない。
第251条 裁判所は、免責許可の申立てがあったときは、破産手続開始の決定があった時以後、破産者につき免責許可の決定をすることの当否について、破産管財人及び破産債権者(第253条第1項各号に掲げる請求権を有する者を除く。次項、次条第3項及び第254条において同じ。)が裁判所に対し意見を述べることができる期間を定めなければならない。
2 裁判所は、前項の期間を定める決定をしたときは、その期間を公告し、かつ、破産管財人及び知れている破産債権者にその期間を通知しなければならない。
3 第1項の期間は、前項の規定による公告が効力を生じた日から起算して1月以上でなければならない。
第252条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
二 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
四 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
五 破産手続開始の申立てがあった日の1年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
六 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
七 虚偽の債権者名簿(第248条第5項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第1項第6号において同じ。)を提出したこと。
八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
九 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から7年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法(平成11年法律第225号)第239条第1項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第235条第1項(同法第244条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
十一 第40条第1項第1号、第41条又は第250条第2項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。
2 前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。
3 裁判所は、免責許可の決定をしたときは、直ちに、その裁判書を破産者及び破産管財人に、その決定の主文を記載した書面を破産債権者に、それぞれ送達しなければならない。この場合において、裁判書の送達については、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
4 裁判所は、免責不許可の決定をしたときは、直ちに、その裁判書を破産者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
5 免責許可の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
6 前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
7 免責許可の決定は、確定しなければその効力を生じない。
第253条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
四 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第752条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第766条(同法第749条、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第877条から第880条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
七 罰金等の請求権
2 免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさない。
3 免責許可の決定が確定した場合において、破産債権者表があるときは、裁判所書記官は、これに免責許可の決定が確定した旨を記載しなければならない。
4 第1項の規定にかかわらず、共助対象外国租税の請求権についての同項の規定による免責の効力は、租税条約等実施特例法第11条第1項の規定による共助との関係においてのみ主張することができる。
第254条 第265条の罪について破産者に対する有罪の判決が確定したときは、裁判所は、破産債権者の申立てにより又は職権で、免責取消しの決定をすることができる。破産者の不正の方法によって免責許可の決定がされた場合において、破産債権者が当該免責許可の決定があった後1年以内に免責取消しの申立てをしたときも、同様とする。
2 裁判所は、免責取消しの決定をしたときは、直ちに、その裁判書を破産者及び申立人に、その決定の主文を記載した書面を破産債権者に、それぞれ送達しなければならない。この場合において、裁判書の送達については、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
3 第1項の申立てについての裁判及び職権による免責取消しの決定に対しては、即時抗告をすることができる。
4 前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
5 免責取消しの決定が確定したときは、免責許可の決定は、その効力を失う。
6 免責取消しの決定が確定した場合において、免責許可の決定の確定後免責取消しの決定が確定するまでの間に生じた原因に基づいて破産者に対する債権を有するに至った者があるときは、その者は、新たな破産手続において、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
7 前条第3項の規定は、免責取消しの決定が確定した場合について準用する。
第2節 復権
第255条 破産者は、次に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、復権する。次条第1項の復権の決定が確定したときも、同様とする。
一 免責許可の決定が確定したとき。
二 第218条第1項の規定による破産手続廃止の決定が確定したとき。
三 再生計画認可の決定が確定したとき。
四 破産者が、破産手続開始の決定後、第265条の罪について有罪の確定判決を受けることなく10年を経過したとき。
2 前項の規定による復権の効果は、人の資格に関する法令の定めるところによる。
3 免責取消しの決定又は再生計画取消しの決定が確定したときは、第1項第1号又は第3号の規定による復権は、将来に向かってその効力を失う。
第256条 破産者が弁済その他の方法により破産債権者に対する債務の全部についてその責任を免れたときは、破産裁判所は、破産者の申立てにより、復権の決定をしなければならない。
2 裁判所は、前項の申立てがあったときは、その旨を公告しなければならない。
3 破産債権者は、前項の規定による公告が効力を生じた日から起算して3月以内に、裁判所に対し、第1項の申立てについて意見を述べることができる。
4 裁判所は、第1項の申立てについての裁判をしたときは、その裁判書を破産者に、その主文を記載した書面を破産債権者に、それぞれ送達しなければならない。この場合において、裁判書の送達については、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
5 第1項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
6 前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
第13章 雑則
第257条 法人である債務者について破産手続開始の決定があったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、破産手続開始の登記を当該破産者の本店又は主たる事務所の所在地を管轄する登記所に嘱託しなければならない。ただし、破産者が外国法人であるときは、外国会社にあっては日本における各代表者(日本に住所を有するものに限る。)の住所地(日本に営業所を設けた外国会社にあっては、当該各営業所の所在地)、その他の外国法人にあっては各事務所の所在地を管轄する登記所に嘱託しなければならない。
2 前項の登記には、破産管財人の氏名又は名称及び住所、破産管財人がそれぞれ単独にその職務を行うことについて第76条第1項ただし書の許可があったときはその旨並びに破産管財人が職務を分掌することについて同項ただし書の許可があったときはその旨及び各破産管財人が分掌する職務の内容をも登記しなければならない。
3 第1項の規定は、前項に規定する事項に変更が生じた場合について準用する。
4 第1項の債務者について保全管理命令が発せられたときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、保全管理命令の登記を同項に規定する登記所に嘱託しなければならない。
5 前項の登記には、保全管理人の氏名又は名称及び住所、保全管理人がそれぞれ単独にその職務を行うことについて第96条第1項において準用する第76条第1項ただし書の許可があったときはその旨並びに保全管理人が職務を分掌することについて第96条第1項において準用する第76条第1項ただし書の許可があったときはその旨及び各保全管理人が分掌する職務の内容をも登記しなければならない。
6 第4項の規定は、同項に規定する裁判の変更若しくは取消しがあった場合又は前項に規定する事項に変更が生じた場合について準用する。
7 第1項の規定は、同項の破産者につき、破産手続開始の決定の取消し若しくは破産手続廃止の決定が確定した場合又は破産手続終結の決定があった場合について準用する。
8 前各項の規定は、限定責任信託に係る信託財産について破産手続開始の決定があった場合について準用する。この場合において、第1項中「当該破産者の本店又は主たる事務所の所在地」とあるのは、「当該限定責任信託の事務処理地(信託法第216条第2項第4号に規定する事務処理地をいう。)」と読み替えるものとする。
第258条 個人である債務者について破産手続開始の決定があった場合において、次に掲げるときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、破産手続開始の登記を登記所に嘱託しなければならない。
一 当該破産者に関する登記があることを知ったとき。
二 破産財団に属する権利で登記がされたものがあることを知ったとき。
2 前項の規定は、当該破産者につき、破産手続開始の決定の取消し若しくは破産手続廃止の決定が確定した場合又は破産手続終結の決定があった場合について準用する。
3 裁判所書記官は、第1項第2号の規定により破産手続開始の登記がされた権利について、第34条第4項の決定により破産財団に属しないこととされたときは、職権で、遅滞なく、その登記の抹消を嘱託しなければならない。破産管財人がその登記がされた権利を放棄し、その登記の抹消の嘱託の申立てをしたときも、同様とする。
4 第1項第2号(第2項において準用する場合を含む。)及び前項後段の規定は、相続財産又は信託財産について破産手続開始の決定があった場合について準用する。
5 第1項第2号の規定は、信託財産について保全管理命令があった場合又は当該保全管理命令の変更若しくは取消しがあった場合について準用する。
第259条 次に掲げる場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、当該保全処分の登記を嘱託しなければならない。
一 債務者の財産に属する権利で登記されたものに関し第28条第1項(第33条第2項において準用する場合を含む。)の規定による保全処分があったとき。
二 登記のある権利に関し第171条第1項(同条第7項において準用する場合を含む。)又は第177条第1項若しくは第2項(同条第7項において準用する場合を含む。)の規定による保全処分があったとき。
2 前項の規定は、同項に規定する保全処分の変更若しくは取消しがあった場合又は当該保全処分が効力を失った場合について準用する。
第260条 登記の原因である行為が否認されたときは、破産管財人は、否認の登記を申請しなければならない。登記が否認されたときも、同様とする。
2 登記官は、前項の否認の登記に係る権利に関する登記をするときは、職権で、次に掲げる登記を抹消しなければならない。
一 当該否認の登記
二 否認された行為を登記原因とする登記又は否認された登記
三 前号の登記に後れる登記があるときは、当該登記
3 前項に規定する場合において、否認された行為の後否認の登記がされるまでの間に、同項第2号に掲げる登記に係る権利を目的とする第三者の権利に関する登記(破産手続の関係において、その効力を主張することができるものに限る。)がされているときは、同項の規定にかかわらず、登記官は、職権で、当該否認の登記の抹消及び同号に掲げる登記に係る権利の破産者への移転の登記をしなければならない。
4 裁判所書記官は、第1項の否認の登記がされている場合において、破産者について、破産手続開始の決定の取消し若しくは破産手続廃止の決定が確定したとき、又は破産手続終結の決定があったときは、職権で、遅滞なく、当該否認の登記の抹消を嘱託しなければならない。破産管財人が、第2項第2号に掲げる登記に係る権利を放棄し、否認の登記の抹消の嘱託の申立てをしたときも、同様とする。
第261条 第257条から前条までの規定による登記については、登録免許税を課さない。
第262条 第258条第1項第2号及び同条第2項において準用する同号(これらの規定を同条第4項において準用する場合を含む。)、同条第3項(同条第4項において同条第3項後段の規定を準用する場合を含む。)並びに前三条の規定は、登録のある権利について準用する。
第263条 破産者のために開始した責任制限手続について責任制限手続廃止の決定があったときは、破産手続は、その決定が確定するまで中止する。
第264条 破産者のために開始した責任制限手続について責任制限手続廃止の決定が確定した場合には、裁判所は、制限債権者のために、債権の届出をすべき期間及び債権の調査をするための期間又は期日を定めなければならない。
2 裁判所は、前項の規定により定めた期間又は期日を公告しなければならない。
3 知れている制限債権者には、第32条第1項第1号及び第2号並びに前項の規定により公告すべき事項を通知しなければならない。
4 破産管財人、破産者及び届出をした破産債権者には、第2項の規定により公告すべき事項を通知しなければならない。ただし、第1項の規定により定めた債権の調査をするための期間又は期日(当該期間又は期日に変更があった場合にあっては、変更後の期間又は期日)が第31条第1項第3号の規定により定めた期間又は期日と同一であるときは、届出をした破産債権者に対しては、当該通知をすることを要しない。
5 前三項の規定は第1項の規定により定めた債権の届出をすべき期間に変更を生じた場合について、第118条第3項から第5項までの規定は第1項の規定により定めた債権の調査をするための期間を変更する決定があった場合について、第121条第9項から第11項までの規定は第1項の規定により定めた債権の調査をするための期日を変更する決定があった場合又は当該期日における債権の調査の延期若しくは続行の決定があった場合について準用する。この場合において、第118条第3項及び第121条第9項中「破産管財人」とあるのは「届出をした制限債権者(第264条第1項の規定により定められた債権の届出をすべき期間の経過前にあっては、知れている制限債権者)、破産管財人」と、同条第10項中「破産管財人」とあるのは「届出をした制限債権者、破産管財人」と読み替えるものとする。
6 第31条第2項及び第3項の規定は、第1項に規定する期間及び期日について準用する。
第14章 罰則
第265条 破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(相続財産の破産にあっては相続財産、信託財産の破産にあっては信託財産。次項において同じ。)について破産手続開始の決定が確定したときは、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第4号に掲げる行為の相手方となった者も、破産手続開始の決定が確定したときは、同様とする。
一 債務者の財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産、信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産。以下この条において同じ。)を隠匿し、又は損壊する行為
二 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
三 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
四 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為
2 前項に規定するもののほか、債務者について破産手続開始の決定がされ、又は保全管理命令が発せられたことを認識しながら、債権者を害する目的で、破産管財人の承諾その他の正当な理由がなく、その債務者の財産を取得し、又は第三者に取得させた者も、同項と同様とする。
第266条 債務者(相続財産の破産にあっては相続人、相続財産の管理人又は遺言執行者を、信託財産の破産にあっては受託者等を含む。以下この条において同じ。)が、破産手続開始の前後を問わず、特定の債権者に対する債務について、他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって債務者の義務に属せず又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをし、破産手続開始の決定が確定したときは、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第267条 破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理が、自己若しくは第三者の利益を図り又は債権者に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、債権者に財産上の損害を加えたときは、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 破産管財人又は保全管理人が法人であるときは、前項の規定は、破産管財人又は保全管理人の職務を行う役員又は職員に適用する。
第268条 第40条第1項(同条第2項において準用する場合を含む。)、第230条第1項(同条第2項において準用する場合を含む。)又は第244条の6第1項(同条第2項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、説明を拒み、又は虚偽の説明をした者は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。第96条第1項において準用する第40条第1項(同条第2項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、説明を拒み、又は虚偽の説明をした者も、同様とする。
2 第40条第1項第2号から第5号までに掲げる者若しくは当該各号に掲げる者であった者、第230条第1項各号に掲げる者(相続人を除く。)若しくは同項第2号若しくは第3号に掲げる者(相続人を除く。)であった者又は第244条の6第1項各号に掲げる者若しくは同項各号に掲げる者であった者(以下この項において「説明義務者」という。)の代表者、代理人、使用人その他の従業者(以下この項及び第4項において「代表者等」という。)が、その説明義務者の業務に関し、第40条第1項(同条第2項において準用する場合を含む。)、第230条第1項(同条第2項において準用する場合を含む。)又は第244条の6第1項(同条第2項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたときも、前項前段と同様とする。説明義務者の代表者等が、その説明義務者の業務に関し、第96条第1項において準用する第40条第1項(同条第2項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたときも、同様とする。
3 破産者が第83条第1項(第96条第1項において準用する場合を含む。)の規定による検査を拒んだとき、相続財産について破産手続開始の決定があった場合において第230条第1項第2号若しくは第3号に掲げる者が第83条第1項の規定による検査を拒んだとき又は信託財産について破産手続開始の決定があった場合において受託者等が同項(第96条第1項において準用する場合を含む。)の規定による検査を拒んだときも、第1項前段と同様とする。
4 第83条第2項に規定する破産者の子会社等(同条第3項において破産者の子会社等とみなされるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者等が、その破産者の子会社等の業務に関し、同条第2項(第96条第1項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による説明を拒み、若しくは虚偽の説明をし、又は第83条第2項の規定による検査を拒んだときも、第1項前段と同様とする。
第269条 破産者(信託財産の破産にあっては、受託者等)が第41条(第244条の6第4項において準用する場合を含む。)の規定による書面の提出を拒み、又は虚偽の書面を裁判所に提出したときは、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第270条 破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、債務者の業務及び財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産、信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産)の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造した者は、債務者(相続財産の破産にあっては相続財産、信託財産の破産にあっては信託財産)について破産手続開始の決定が確定したときは、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。第155条第2項の規定により閉鎖された破産財団に関する帳簿を隠滅し、偽造し、又は変造した者も、同様とする。
第271条 債務者が、破産手続開始の申立て(債務者以外の者がしたものを除く。)又は免責許可の申立てについての審尋において、裁判所が説明を求めた事項について説明を拒み、又は虚偽の説明をしたときは、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第272条 偽計又は威力を用いて、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害した者は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第273条 破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理(次項において「破産管財人等」という。)が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 前項の場合において、その破産管財人等が不正の請託を受けたときは、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
3 破産管財人又は保全管理人が法人である場合において、破産管財人又は保全管理人の職務を行うその役員又は職員が、その破産管財人又は保全管理人の職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。破産管財人又は保全管理人が法人である場合において、その役員又は職員が、その破産管財人又は保全管理人の職務に関し、破産管財人又は保全管理人に賄賂を収受させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときも、同様とする。
4 前項の場合において、その役員又は職員が不正の請託を受けたときは、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
5 破産債権者若しくは代理委員又はこれらの者の代理人、役員若しくは職員が、債権者集会の期日における議決権の行使又は第139条第2項第2号に規定する書面等投票による議決権の行使に関し、不正の請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
6 前各項の場合において、犯人又は法人である破産管財人若しくは保全管理人が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
第274条 前条第1項又は第3項に規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 前条第2項、第4項又は第5項に規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第275条 破産者(個人である破産者に限り、相続財産の破産にあっては、相続人。以下この条において同じ。)又はその親族その他の者に破産債権(免責手続の終了後にあっては、免責されたものに限る。以下この条において同じ。)を弁済させ、又は破産債権につき破産者の親族その他の者に保証をさせる目的で、破産者又はその親族その他の者に対し、面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第276条 第265条、第266条、第270条、第272条及び第274条の罪は、刑法(明治40年法律第45号)第2条の例に従う。
2 第267条及び第273条(第5項を除く。)の罪は、刑法第4条の例に従う。
3 第273条第5項の罪は、日本国外において同項の罪を犯した者にも適用する。
第277条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、第265条、第266条、第268条(第1項を除く。)、第269条から第272条まで、第274条又は第275条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第2条 破産法(大正11年法律第71号)は、廃止する。
第3条 この法律(以下「新法」という。)の施行前にされた破産の申立て又は新法の施行前に職権でされた破産の宣告に係る破産事件については、なお従前の例による。
2 新法の施行前にされた破産の申立て又は新法の施行前に職権でされた破産の宣告に係る破産者の免責に関する事件については、なお従前の例による。
3 新法の施行前にされた復権の申立てに係る事件については、なお従前の例による。
第4条 新法の施行前にされた行為の否認については、新法第6章第2節(新法第171条から第175条までを除く。)及び第234条から第236条までの規定にかかわらず、なお従前の例による。
第5条 新法の施行前に破産債権者につき破産者に対する債務負担の原因が生じた場合における破産債権者による相殺の禁止及び新法の施行前に破産者に対して債務を負担する者につき破産債権の取得の原因が生じた場合における当該者による相殺の禁止については、新法第71条及び第72条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
第6条 新法の施行前にした行為及び附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によることとされる場合における新法の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。この場合における附則第2条の規定による廃止前の破産法(以下この条及び次条において「旧法」という。)第374条から第376条まで及び第378条の規定の適用については、新法の規定によりされた破産手続開始の決定は、旧法の規定によりされた破産の宣告とみなす。
第7条 新法第254条第1項及び第255条第1項第4号の規定の適用については、旧法第374条の罪は、新法第265条の罪とみなす。
第8条 附則第3条から前条までに規定するもののほか、新法の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
第1条 この法律は、平成17年3月1日(以下「施行日」という。)から施行する。
第1条 この法律は、新不動産登記法の施行の日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
この法律は、会社法の施行の日から施行する。
この法律は、一般社団・財団法人法の施行の日から施行する。
この法律は、平成18年証券取引法改正法の施行の日から施行する。
第1条 この法律は、平成19年4月1日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 附則第16条の規定、附則第31条の規定及び附則第32条の規定 公布の日
第31条 この法律(附則第1条各号に掲げる規定については、当該各規定)の施行前にした行為並びにこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為及びこの附則の規定によりなお効力を有することとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第32条 附則第3条から第16条まで及び前条に定めるもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定める。
この法律は、新信託法の施行の日から施行する。
この法律は、新非訟事件手続法の施行の日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日(以下「施行日」という。)から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して20日を経過した日から施行する。
第1条 この法律は、平成24年4月1日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一から五まで 略
六 次に掲げる規定 平成25年7月1日
イ及びロ 略
ハ 第7条の規定及び附則第72条から第78条までの規定
第79条 この法律(附則第1条各号に掲げる規定にあっては、当該規定。以下この条において同じ。)の施行前にした行為及びこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第80条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第1条中金融商品取引法第197条の2の次に一条を加える改正規定、同法第198条第2号の次に二号を加える改正規定並びに同法第198条の3、第198条の6第2号、第205条第14号並びに第207条第1項第2号及び第2項の改正規定、第3条の規定、第4条中農業協同組合法第11条の4第4項の次に一項を加える改正規定、第5条のうち水産業協同組合法第11条の11中第5項を第6項とし、第4項の次に一項を加える改正規定、第8条の規定(投資信託及び投資法人に関する法律第252条の改正規定を除く。)、第14条のうち銀行法第13条中第5項を第6項とし、第4項の次に一項を加える改正規定及び同法第52条の22第4項中「前三項」を「前各項」に改め、同項を同条第5項とし、同条第3項の次に一項を加える改正規定、第15条の規定、第19条のうち農林中央金庫法第58条中第5項を第6項とし、第4項の次に一項を加える改正規定、第21条中信託業法第91条、第93条、第96条及び第98条第1項の改正規定、第22条の規定並びに附則第30条(株式会社地域経済活性化支援機構法(平成21年法律第63号)第23条第2項の改正規定に限る。)、第31条(株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法(平成23年法律第113号)第17条第2項の改正規定に限る。)、第32条、第36条及び第37条の規定 公布の日から起算して20日を経過した日
二 略
三 第2条の規定、第4条中農業協同組合法第11条の4第1項及び第3項並びに第93条第2項の改正規定、第5条中水産業協同組合法第11条の11第1項及び第3項並びに第122条第2項の改正規定、第9条の規定、第14条中銀行法第13条第1項及び第3項、第24条第2項、第52条の22第1項及び第2項並びに第52条の31第2項の改正規定、第16条中保険業法第128条第2項、第200条第2項、第201条第2項、第226条第2項、第271条の27第1項、第272条の22第2項及び第272条の40第2項の改正規定、第18条の規定、第19条中農林中央金庫法第58条第1項及び第3項並びに第83条第2項の改正規定、第21条中信託業法第42条第3項及び第58条第2項の改正規定並びに附則第7条から第13条まで、第15条、第16条及び第26条の規定 公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日
第36条 この法律(附則第1条各号に掲げる規定にあっては、当該規定。以下この条において同じ。)の施行前にした行為及びこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
この法律は、民法改正法の施行の日から施行する。ただし、第103条の2、第103条の3、第267条の2、第267条の3及び第362条の規定は、公布の日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 附則第20条の規定 公布の日
第20条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
第1条 この法律は、2001年の燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約及び2007年の難破物の除去に関するナイロビ国際条約が日本国について効力を生ずる日から施行する。
第1条 この法律は、平成32年4月1日から施行する。
この法律は、会社法改正法の施行の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第9条中社債、株式等の振替に関する法律第269条の改正規定(「第68条第2項」を「第86条第1項」に改める部分に限る。)、第21条中民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律第56条第2項及び附則第4条の改正規定、第41条中保険業法附則第1条の2の14第1項の改正規定、第47条中保険業法等の一部を改正する法律附則第16条第1項の改正規定、第51条中株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構法第27条の改正規定、第78条及び第79条の規定、第89条中農林中央金庫及び特定農水産業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律附則第26条第1項の改正規定並びに第124条及び第125条の規定 公布の日