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滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律

昭和32年法律第94号
最終改正:令和元年5月17日法律第2号
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第1章 総則

(趣旨)

第1条 この法律は、滞納処分と強制執行、仮差押えの執行又は担保権の実行としての競売(以下単に「競売」という。)との手続の調整を図るため、これらの手続に関する規定の特例を定めるものとする。


(定義)

第2条 この法律において「滞納処分」とは、国税徴収法(昭和34年法律第147号)による滞納処分及びその例による滞納処分をいう。

 この法律において「徴収職員等」とは、徴収職員、徴税吏員その他滞納処分を執行する権限を有する者をいう。

 この法律において「動産」とは民事執行法(昭和54年法律第4号)第122条第1項に規定する動産をいい、「不動産」とは同法第43条第1項に規定する不動産(同条第2項の規定により不動産とみなされるものを含む。)をいい、「船舶」とは同法第112条に規定する船舶をいい、「航空機」とは航空法(昭和27年法律第231号)第5条に規定する新規登録がされた飛行機及び回転翼航空機をいい、「自動車」とは道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第13条第1項に規定する登録自動車(自動車抵当法(昭和26年法律第187号)第2条ただし書に規定する大型特殊自動車を除く。)をいい、「建設機械」とは建設機械抵当法(昭和29年法律第97号)第3条第1項の登記がされた建設機械をいい、「小型船舶」とは小型船舶の登録等に関する法律(平成13年法律第102号)第9条第1項に規定する登録小型船舶をいい、「債権」とは民事執行法第143条に規定する債権をいい、「その他の財産権」とは動産、不動産、船舶、航空機、自動車、建設機械、小型船舶及び債権以外の財産権をいう。

第2章 滞納処分による差押えがされている財産に対する強制執行等

第1節 動産に対する強制執行等

(強制執行による差押え)

第3条 強制執行による差押えは、滞納処分による差押えがされている動産に対してもすることができる。

 滞納処分による差押えがされている動産に対する強制執行による差押えは、執行官がその物を差し押さえる旨の書面を徴収職員等に交付することによつてする。

 執行官は、前項の規定による差押をしたときは、その旨を債務者に通知しなければならない。


(売却手続の制限)

第4条 滞納処分による差押え後に強制執行による差押えをした動産については、入札、競り売りその他強制執行による売却のための手続は、滞納処分による差押えが解除された後でなければ、することができない。ただし、強制執行続行の決定があつたときは、この限りでない。


(滞納処分による差押えの解除時の処置等)

第5条 前条の動産について滞納処分による差押えを解除すべきときは、徴収職員等は、その動産を執行官に引き渡さなければならない。ただし、滞納処分による差押えの際債権者及び債務者以外の第三者が占有していた動産で、その者が執行官に引き渡すことを拒んだものについては、この限りでない。

 前項ただし書の動産について滞納処分による差押えが解除されたときは、強制執行による差押えは、その効力を失う。ただし、その動産について滞納処分による参加差押えがされているときは、この限りでない。

 前条の動産について滞納処分による差押えを解除すべき場合において、その動産について強制執行による差押え前に滞納処分による参加差押えがされているときは、その参加差押えに係る滞納処分による差押えの効力の発生は、この法律の適用については、強制執行による差押えの時以前にさかのぼらないものとする。ただし、第1項ただし書の動産については、この限りでない。

 第1項ただし書の動産について強制執行による差押え後に滞納処分による参加差押えがされているときは、強制執行による差押えは、この法律の適用については、その参加差押えに係る滞納処分による差押え後にされたものとみなす。


(売却代金の残余の交付等)

第6条 第4条の動産の滞納処分による売却代金又は有価証券の取立金について滞納者に交付すべき残余が生じたときは、徴収職員等は、これを執行官に交付しなければならない。

 前項の規定により執行官が交付を受けた金銭及びその交付を受けた時は、配当又は弁済金の交付(以下「配当等」という。)に関しては、それぞれ動産の強制執行による売得金及び売得金の交付を受けた時とみなす。

 第1項の売却代金又は取立金の残余が生じなかつたときは、徴収職員等は、その旨を執行官に通知しなければならない。


(強制執行による差押えの取消しの方法)

第7条 第4条の動産に対する強制執行による差押えの取消しは、執行官が差押えを取り消す旨の書面を徴収職員等に交付することによつてする。


(強制執行続行の決定の申請)

第8条 差押債権者又は民事執行法第125条第3項前段の規定により配当要求の効力が生じた申立てに係る債権者は、次の場合には、第4条の動産について、執行裁判所に強制執行続行の決定を申請することができる。

 法令の規定又はこれに基く処分により滞納処分の手続が進行しないとき。

 国税徴収法第159条第1項、国税通則法(昭和37年法律第66号)第38条第3項又は地方税法(昭和25年法律第226号)第16条の4第1項(同条第12項において準用する場合を含む。)の規定による差押(その例による差押を含む。)がされているとき。

 前二号の場合を除き、相当期間内に公売その他滞納処分による売却がされないとき。


(強制執行続行の決定)

第9条 裁判所は、前条の申請があつた場合において、相当と認めるときは、強制執行を続行する旨の決定をしなければならない。

 裁判所は、強制執行続行の決定をするには、あらかじめ徴収職員等の意見をきかなければならない。

 強制執行続行の決定は、徴収職員等に告知することによつてその効力を生ずる。

 強制執行続行の決定に対しては、不服を申し立てることができない。


第10条 強制執行続行の決定があつたときは、この法律の適用については、滞納処分による差押は、強制執行による差押後にされたものとみなす。

 第5条第1項の規定は、強制執行続行の決定があつた場合に準用する。

 強制執行続行の決定があつたときは、徴収職員等は、滞納処分による差押えに係る国税及びその滞納処分費並びに地方税その他の徴収金(以下「差押え国税等」という。)を徴収するには、執行官にその交付を求めなければならない。

 国税徴収法第12条又は地方税法第14条の6の規定は、前項の規定による交付の要求があつた場合についても適用があるものとする。


(仮差押えの執行)

第11条 第3条、第5条第1項及び第2項、第6条第1項及び第3項並びに第7条の規定は、滞納処分による差押えがされている動産に対する仮差押えの執行に関して準用する。ただし、第5条第1項本文の規定は、その動産で仮差押えの執行がされているものについて滞納処分による参加差押えがされているときは、この限りでない。

 第5条第4項の規定は、前項の動産で仮差押えの執行後に滞納処分による参加差押えがされているものに関して準用する。

 第1項において準用する第6条第1項の規定により執行官が交付を受けた金銭は、仮差押えの執行がされている動産を他の債権のための強制執行により売却した場合における売得金とみなす。


(競売)

第11条の2 第3条、第4条、第5条第1項本文及び第3項本文並びに第6条から第10条までの規定は、滞納処分による差押えがされている動産を目的とする競売について準用する。

第2節 不動産又は船舶等に対する強制執行等

(強制競売開始の通知)

第12条 強制競売の開始決定は、滞納処分による差押えがされている不動産に対してもすることができる。

 滞納処分による差押えがされている不動産に対し強制競売の開始決定があつたときは、裁判所書記官は、その旨を徴収職員等に通知しなければならない。


(強制競売の手続の制限)

第13条 滞納処分による差押え後に強制競売の開始決定をした不動産については、民事執行法第49条の規定による手続その他売却のための手続は、滞納処分による差押えが解除された後でなければ、することができない。ただし、強制執行続行の決定があつたときは、この限りでない。

 第5条第3項本文の規定は、前項の不動産に関して準用する。


(滞納処分による差押の解除の通知)

第14条 徴収職員等は、前条第1項の不動産について滞納処分による差押を解除したときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。


(強制競売の申立ての取下げ等の通知)

第15条 第13条第1項の不動産について、強制競売の申立てが取り下げられたとき、又は強制競売の手続を取り消す決定が効力を生じたときは、裁判所書記官は、その旨を徴収職員等に通知しなければならない。


(差押えの登記のまつ消)

第16条 登記官は、第13条第1項の不動産について公売処分による権利移転の登記をしたときは、強制競売に係る差押えの登記をまつ消しなければならない。


(売却代金の残余の交付等の規定の準用)

第17条 第6条、第8条、第9条並びに第10条第1項、第3項及び第4項の規定は、第13条第1項の不動産に関して準用する。この場合において、第6条及び第10条第3項中「執行官」とあるのは「裁判所」と、第6条第2項中「売得金の交付を受けた時」とあるのは「配当要求の終期」と読み替えるものとする。


(仮差押えの執行)

第18条 第12条及び第15条の規定は、滞納処分による差押えがされている不動産に対する仮差押えの執行に関して準用する。

 滞納処分による差押後に仮差押の執行をした不動産の滞納処分による売却代金について滞納者に交付すべき残余を生じたときは、徴収職員等は、これをその不動産に対する強制執行について管轄権を有する裁判所に交付しなければならない。

 前項の規定により裁判所が交付を受けた金銭は、仮差押の執行がされている不動産を他の債権のための強制競売により売却した場合における売却代金とみなす。


(船舶に対する強制執行及び仮差押の執行)

第19条 第12条から前条までの規定は、滞納処分による差押がされている船舶で登記されるものに対する強制執行又は仮差押の執行に関して準用する。


(競売)

第20条 第12条から第17条までの規定は、滞納処分による差押えがされている不動産又は船舶を目的とする競売に関して準用する。


(航空機等に対する強制執行等)

第20条の2 強制執行、仮差押えの執行又は競売は、滞納処分による差押えがされている航空機、自動車、建設機械又は小型船舶に対してもすることができる。

 前項の場合における滞納処分と強制執行、仮差押えの執行又は競売との手続の調整について必要な事項は、この節の定めるところに準じて、政令で定める。ただし、強制執行、仮差押えの執行及び競売に関する事項は、最高裁判所が定める。

第3節 債権又はその他の財産権に対する強制執行等

(強制執行による差押命令の通知)

第20条の3 強制執行による差押命令又は差押処分は、滞納処分による差押えがされている債権に対しても発することができる。

 滞納処分による差押えがされている債権に対し強制執行による差押命令又は差押処分が発せられた場合において、差押命令を発した執行裁判所又は差押処分をした裁判所書記官がその滞納処分を知つたときは、差押命令を発した執行裁判所の裁判所書記官又は差押処分をした裁判所書記官は、差押命令又は差押処分が発せられた旨を徴収職員等に通知しなければならない。ただし、第20条の6第3項の規定による通知があつたときは、この限りでない。


(差押えが一部競合した場合の効力)

第20条の4 債権の一部について滞納処分による差押えがされている場合において、その残余の部分を超えて強制執行による差押命令又は差押処分が発せられたときは、強制執行による差押えの効力は、その債権の全部に及ぶ。債権の全部について滞納処分による差押えがされている場合において、その債権の一部について強制執行による差押命令又は差押処分が発せられたときの強制執行による差押えの効力も、同様とする。


(取立て等の制限)

第20条の5 滞納処分による差押えがされている債権に対し強制執行による差押命令又は差押処分が発せられたときは、強制執行による差押えをした債権者は、差押えに係る債権のうち滞納処分による差押えがされている部分については、滞納処分による差押えが解除された後でなければ、取立て又は民事執行法第163条第1項の規定による請求をすることができない。


(第三債務者の供託)

第20条の6 第三債務者は、滞納処分による差押えがされている金銭の支払を目的とする債権(以下「金銭債権」という。)について強制執行による差押命令又は差押処分の送達を受けたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる。

 第三債務者は、前項の規定による供託をしたときは、その事情を徴収職員等に届け出なければならない。

 徴収職員等は、前項の規定による事情の届出を受けたときは、その旨を執行裁判所(差押処分がされている場合にあつては、当該差押処分をした裁判所書記官)に通知しなければならない。


(配当等の実施)

第20条の7 前条第1項の規定による供託がされた場合においては、差押命令を発した執行裁判所又は差押処分をした裁判所書記官は、供託された金銭のうち、滞納処分による差押えがされた金銭債権の額に相当する部分については次条第1項において準用する第6条第1項の規定により払渡金の残余が交付され、又は滞納処分による差押えが解除されたときに、その余の部分については供託されたときに配当等を実施しなければならない。

 前項の場合において、民事執行法第165条(同法第167条の14第1項において同法第165条(第3号及び第4号を除く。)の規定を準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定の適用については、同条第1号中「第156条第1項又は第2項」とあるのは、「滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律(昭和32年法律第94号)第20条の6第1項」とする。

 次条第1項において準用する第6条第1項の規定による取立金又は売却代金の残余の交付及びその交付を受けた時は、配当等に関しては、それぞれ債権の強制執行による売却命令による売却及び売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時とみなす。


(売却代金の残余の交付等の規定の準用)

第20条の8 第6条第1項及び第3項、第8条、第9条、第10条第1項、第14条並びに第15条の規定は滞納処分による差押え後に強制執行による差押命令又は差押処分が発せられた債権(以下この条において「差押え競合債権」という。)について、第5条第1項本文(第10条第2項において準用する場合を含む。)の規定は差押え競合債権で動産の引渡しを目的とするものについて、第13条第1項の規定は差押え競合債権で条件付若しくは期限付であるもの又は反対給付に係ることその他の事由によりその取立てが困難であるもの(以下この条において「差押え競合の条件付等債権」という。)について、第10条第3項及び第4項の規定は差押え競合債権で動産の引渡しを目的とするもの及び差押え競合の条件付等債権で動産の引渡しを目的としないものについて、第16条の規定は差押え競合債権で民事執行法第150条に規定するものについて準用する。この場合において、第6条第1項中「売却代金又は有価証券の取立金」とあるのは「第三債務者からの取立金若しくは第20条の6第1項の規定により供託された金銭の払渡金又は売却代金」と、第6条第1項及び第3項並びに第10条第3項中「執行官」とあるのは「執行裁判所(差押処分がされている場合にあつては、当該差押処分をした裁判所書記官)」と、第6条第3項中「売却代金又は取立金」とあるのは「取立金若しくは払渡金又は売却代金」と、第14条中「滞納処分による差押を」とあるのは「、第20条の3第2項本文の規定による通知又は第20条の6第2項の規定による事情の届出があつた場合において、滞納処分による差押えを」と、「裁判所」とあるのは「裁判所(差押処分がされている場合にあつては、当該差押処分をした裁判所書記官)」と、第15条中「強制競売の申立てが」とあるのは「第20条の3第2項本文又は第20条の6第3項の規定による通知があつた場合において、強制執行による差押命令又は差押処分の申立てが」と、「強制競売の手続を取り消す決定」とあるのは「差押命令若しくは差押処分を取り消す決定又は差押処分を取り消す旨の裁判所書記官の処分」と、「裁判所書記官」とあるのは「差押命令を発した執行裁判所の裁判所書記官又は差押処分をした裁判所書記官」と読み替えるものとする。

 前項において準用する第9条第1項の規定による強制執行続行の決定があつたときは、滞納処分による差押えについては、第36条の3第2項本文の規定による通知があつたものとみなす。


(仮差押えの執行)

第20条の9 第15条、第18条第2項、第20条の3、第20条の4及び第20条の6の規定は、滞納処分による差押えがされている債権に対する仮差押えの執行について準用する。この場合において、第15条中「強制競売の申立てが」とあるのは「第20条の9第1項において準用する第20条の3第2項本文又は第20条の6第3項の規定による通知があつた場合において、仮差押えの執行の申立てが」と、「強制競売の手続」とあるのは「仮差押えの執行」と、第18条第2項中「売却代金」とあるのは「第三債務者からの取立金若しくは第20条の9第1項において準用する第20条の6第1項の規定により供託された金銭の払渡金又は売却代金」と読み替えるものとする。

 第20条の7第3項の規定は、前項において準用する第18条第2項の規定により取立金若しくは払渡金又は売却代金の残余が交付された場合について準用する。


(担保権の実行又は行使)

第20条の10 第20条の3から第20条の8までの規定は、滞納処分による差押えがされている債権を目的とする担保権の実行又は行使について準用する。


(その他の財産権に対する強制執行等)

第20条の11 滞納処分による差押えがされているその他の財産権に対する強制執行、仮差押えの執行又は担保権の実行については、特別の定めがあるもののほか、滞納処分による差押えがされている債権に対する強制執行、仮差押えの執行又は担保権の実行の例による。

 第5条第3項本文(第11条の2において準用する場合を含む。)の規定は電話加入権について、第16条(第20条において準用する場合を含む。)の規定はその他の財産権で権利の移転について登記又は登録を要するものについて準用する。

第3章 強制執行等がされている財産に対する滞納処分

第1節 動産に対する滞納処分

(滞納処分による差押え)

第21条 滞納処分による差押えは、強制執行による差押えがされている動産に対してもすることができる。

 強制執行による差押えがされている動産に対する滞納処分による差押えは、徴収職員等がその物を差し押さえる旨の書面を執行官に交付することによつてする。

 徴収職員等は、前項の規定による差押をしたときは、その旨を滞納者に通知しなければならない。


(公売手続の制限)

第22条 強制執行による差押え後に滞納処分による差押えをした動産については、公売その他滞納処分による売却のための手続は、強制執行による差押えが取り消された後でなければ、することができない。ただし、滞納処分続行承認の決定があつたときは、この限りでない。


(強制執行による差押えの取消し時の処置)

第23条 前条の動産について強制執行による差押えを取り消すべきときは、執行官は、その動産を徴収職員等に引き渡さなければならない。


(滞納処分による差押えの解除の方法)

第24条 第22条の動産に対する滞納処分による差押えの解除は、徴収職員等が差押えを解除する旨の書面を執行官に交付することによつてする。


(滞納処分続行承認の決定の請求)

第25条 第22条の動産について強制執行が中止又は停止されたときは、徴収職員等は、執行裁判所に滞納処分続行承認の決定を請求することができる。


(滞納処分続行承認の決定)

第26条 裁判所は、前条の請求があつた場合において、相当と認めるときは、滞納処分の続行を承認する旨の決定をしなければならない。

 滞納処分続行承認の決定は、執行官に告知することによつてその効力を生ずる。

 滞納処分続行承認の決定に対しては、不服を申し立てることができない。


第27条 滞納処分続行承認の決定があつたときは、この法律の適用については、強制執行による差押は、滞納処分による差押後にされたものとみなす。

 第23条の規定は、滞納処分続行承認の決定があつた場合に準用する。


(仮差押物に対する滞納処分)

第28条 第5条第1項本文、第6条第1項及び第3項、第7条並びに第11条第3項の規定は、仮差押えの執行後に滞納処分による差押えをした動産に関して準用する。


(競売による差押えがされている動産に対する滞納処分)

第28条の2 第21条から第27条までの規定は、競売による差押えがされている動産に対する滞納処分について準用する。

第2節 不動産又は船舶等に対する滞納処分

(滞納処分の通知)

第29条 滞納処分による差押えは、強制競売の開始決定があつた不動産に対してもすることができる。

 徴収職員等は、強制競売の開始決定があつた不動産に対し滞納処分による差押えをしたときは、その旨を執行裁判所に通知しなければならない。


(公売手続の制限)

第30条 強制競売の開始決定後に滞納処分による差押えをした不動産については、公売その他滞納処分による売却のための手続は、強制競売の申立てが取り下げられた後又は強制競売の手続を取り消す決定が効力を生じた後でなければ、することができない。ただし、滞納処分続行承認の決定があつたときは、この限りでない。


(強制競売の申立ての取下げ等の通知)

第31条 前条の不動産について、強制競売の申立てが取り下げられたとき、又は強制競売の手続を取り消す決定が効力を生じたときは、裁判所書記官は、その旨を徴収職員等に通知しなければならない。


(差押登記のまつ消)

第32条 登記官は、第30条の不動産について強制競売による権利移転の登記をしたときは、滞納処分に関する差押及び参加差押の登記をまつ消しなければならない。


(滞納処分続行承認の決定等の規定の準用)

第33条 第25条、第26条第1項及び第3項並びに第27条第1項の規定は、第30条の不動産に関して準用する。

 民事執行法第87条第3項、第91条第1項第6号及び第92条の規定は、強制執行による差押えの登記後滞納処分による差押えの登記前に登記された同法第87条第1項第4号に規定する権利の存する不動産について前項において準用する第26条第1項の規定による滞納処分続行承認の決定があつた場合の滞納処分に関して準用する。この場合において、同法第91条第1項中「裁判所書記官」とあり、及び同法第92条中「執行裁判所」とあるのは、「徴収職員等」と読み替えるものとする。


(仮差押不動産に対する滞納処分)

第34条 第18条第2項及び第3項並びに第31条の規定は、仮差押えの執行後に滞納処分による差押えをした不動産に関して準用する。

 民事執行法第87条第2項、第91条第1項第6号及び第92条の規定は、仮差押えの登記後滞納処分による差押えの登記前に登記された同法第87条第1項第4号に規定する権利の存する不動産に対する滞納処分に関して準用する。この場合において、同法第91条第1項中「裁判所書記官」とあり、及び同法第92条中「執行裁判所」とあるのは、「徴収職員等」と読み替えるものとする。


(船舶に対する滞納処分)

第35条 第29条から前条までの規定は、強制執行又は仮差押の執行がされている船舶で登記されるものに対する滞納処分に関して準用する。


(競売の開始決定後の滞納処分)

第36条 第29条から第33条までの規定は、競売の開始決定があつた不動産又は船舶に対する滞納処分に関して準用する。


(航空機等に対する滞納処分)

第36条の2 滞納処分による差押えは、強制執行又は競売が開始されている航空機、自動車、建設機械又は小型船舶に対してもすることができる。

 第20条の2第2項の規定は、前項の場合及び仮差押えの執行がされている航空機、自動車、建設機械又は小型船舶に対して滞納処分による差押えがされた場合における滞納処分と強制執行、仮差押えの執行又は競売との手続の調整について準用する。

第3節 債権又はその他の財産権に対する滞納処分

(滞納処分による差押えの通知)

第36条の3 滞納処分による差押えは、強制執行による差押えがされている債権に対してもすることができる。

 徴収職員等は、強制執行による差押えがされている債権に対して滞納処分による差押えをした場合において、その強制執行を知つたときは、滞納処分による差押えをした旨を執行裁判所(差押処分がされている場合にあつては、当該差押処分をした裁判所書記官)に通知しなければならない。ただし、第36条の6第3項の規定による通知があつたときは、この限りでない。


(差押えが一部競合した場合の効力)

第36条の4 債権の一部について強制執行による差押えがされている場合において、その残余の部分を超えて滞納処分による差押えがされたときは、強制執行による差押えの効力は、その債権の全部に及ぶ。


(転付命令等の効力が生じない場合)

第36条の5 強制執行による転付命令又は譲渡命令(以下「転付命令等」という。)が第三債務者に送達される時までに転付命令等に係る債権について滞納処分による差押えがされたときは、転付命令等は、その効力を生じない。


(第三債務者の供託義務)

第36条の6 第三債務者は、強制執行による差押えをした債権者が提起した次条に規定する訴えの訴状の送達を受ける時までに、その差押えがされている金銭債権について滞納処分による差押えがされたときは、その債権の全額(強制執行による差押えの前に他の滞納処分による差押えがされているときは、その滞納処分による差押えがされた部分を差し引いた残額)に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託しなければならない。

 第三債務者は、前項の規定による供託をしたときは、その事情を執行裁判所(差押処分がされている場合にあつては、当該差押処分をした裁判所書記官)に届け出なければならない。

 前項の規定による事情の届出があつたときは、執行裁判所の裁判所書記官又は差押処分をした裁判所書記官は、その旨を徴収職員等に通知しなければならない。

 第1項の規定により供託された金銭については、徴収職員等は、強制執行による差押命令若しくは差押処分の申立てが取り下げられた後又は差押命令若しくは差押処分を取り消す決定若しくは差押処分を取り消す旨の裁判所書記官の処分が効力を生じた後でなければ、払渡しを受けることができない。


(取立訴訟)

第36条の7 民事執行法第157条(同法第167条の14第1項において準用する場合を含む。以下この条、第36条の9及び第36条の10第1項において同じ。)の規定は、強制執行による差押えがされている金銭債権について滞納処分による差押えがされた場合において、強制執行又は滞納処分による差押えをした債権者が差押えをした債権に係る給付を求める訴えを提起したときについて準用する。この場合において、同法第157条第1項中「訴状」とあるのは「強制執行による差押えをした債権者の訴状又はその者の共同訴訟人としての参加の申出の書面」と、同条第4項中「前条第2項」とあるのは「滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律第36条の6第1項」と読み替えるものとする。


(取立ての制限)

第36条の8 強制執行による差押えがされている動産の引渡しを目的とする債権に対し滞納処分による差押えがされたときは、徴収職員等は、強制執行による差押命令の申立てが取り下げられた後又は差押命令を取り消す決定が効力を生じた後でなければ、その債権の取立てをすることができない。


(配当等の実施)

第36条の9 第36条の6第1項の規定又は第36条の7において準用する民事執行法第157条第5項の規定による供託及び滞納処分による差押えをした債権者が提起した第36条の7に規定する訴えにおいて強制執行による差押えをした債権者が提出した共同訴訟人としての参加の申出の書面は、配当等に関しては、それぞれ同法第156条第2項(同法第167条の14第1項において準用する場合を含む。)の規定による供託及び同法第157条第1項に規定する訴えの訴状とみなす。


(みなし交付要求等)

第36条の10 第36条の6第1項の規定又は第36条の7において準用する民事執行法第157条第5項の規定により供託された金銭について執行裁判所が配当等を実施し、又は裁判所書記官が弁済金の交付を実施する場合においては、配当期日若しくは弁済金の交付の日までにされた第36条の3第2項本文の規定による通知又は第36条の6第2項の規定による事情の届出に係る差押え国税等については、滞納処分による差押えの時に交付要求があつたものとみなす。

 徴収職員等は、前項の差押え国税等について滞納処分による差押えを解除したときは、その旨を執行裁判所(差押処分がされている場合にあつては、当該差押処分をした裁判所書記官)に通知しなければならない。


(滞納処分続行承認の決定等の規定の準用)

第36条の11 第25条、第26条第1項及び第3項、第27条第1項並びに第31条の規定は強制執行による差押えの後に滞納処分による差押えがされた債権(以下この条において「差押え競合債権」という。)について、第23条(第27条第2項において準用する場合を含む。)の規定は差押え競合債権で動産の引渡しを目的とするものについて、第30条の規定は差押え競合債権で条件付若しくは期限付であるもの又は反対給付に係ることその他の事由によりその取立てが困難であるものについて、第32条の規定は差押え競合債権で民事執行法第150条に規定するものについて準用する。この場合において、第31条中「強制競売の申立てが」とあるのは「第36条の3第2項本文の規定による通知又は第36条の6第2項の規定による事情の届出があつた場合において、強制執行による差押命令若しくは差押処分の申立てが」と、「強制競売の手続を取り消す決定」とあるのは「差押命令若しくは差押処分を取り消す決定若しくは差押処分を取り消す旨の裁判所書記官の処分」と、「裁判所書記官」とあるのは「差押命令を発した執行裁判所の裁判所書記官又は差押処分をした裁判所書記官」と、第30条中「強制競売の申立てが」とあるのは「強制執行による差押命令若しくは差押処分の申立てが」と、「強制競売の手続を取り消す決定」とあるのは「差押命令若しくは差押処分を取り消す決定若しくは差押処分を取り消す旨の裁判所書記官の処分」と読み替えるものとする。

 前項において準用する第26条第1項の規定による滞納処分続行承認の決定があつたときは、強制執行による差押命令又は差押処分については、第20条の3第2項本文の規定による通知があつたものとみなす。


(仮差押えの執行がされている債権に対する滞納処分)

第36条の12 第18条第2項、第20条の6、第31条及び第36条の4の規定は、仮差押えの執行後に滞納処分による差押えをした債権について準用する。この場合において、第18条第2項中「売却代金」とあるのは「第三債務者からの取立金若しくは第36条の12第1項において準用する第20条の6第1項の規定により供託された金銭の払渡金又は売却代金」と、第31条中「強制競売の申立てが」とあるのは「滞納処分による差押えの通知があつた場合において、仮差押えの執行の申立てが」と、「強制競売の手続」とあるのは「仮差押えの執行」と読み替えるものとする。

 第20条の7第3項の規定は、前項において準用する第18条第2項の規定により取立金若しくは払渡金又は売却代金の残余が交付された場合について準用する。


(担保権の実行又は行使による差押えがされている債権に対する滞納処分)

第36条の13 第36条の3から第36条の11までの規定は、担保権の実行又は行使による差押えがされている債権に対する滞納処分について準用する。


(その他の財産権に対する滞納処分)

第36条の14 強制執行若しくは担保権の実行による差押え又は仮差押えの執行がされているその他の財産権に対する滞納処分については、特別の定めがあるもののほか、強制執行若しくは担保権の実行による差押え又は仮差押えの執行がされている債権に対する滞納処分の例による。

 第32条(第36条において準用する場合を含む。)の規定は、その他の財産権で権利の移転について登記又は登録を要するものについて準用する。

第4章 雑則

(政令等への委任)

第37条 この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。ただし、強制執行、仮差押の執行及び競売に関する事項は、最高裁判所が定める。

附 則

 この法律は、昭和32年10月1日から施行する。

附 則(昭和34年4月20日法律第148号)
(施行期日)

 この法律は、国税徴収法(昭和34年法律第147号)の施行の日から施行する。

附 則(昭和34年4月20日法律第149号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して9月をこえない範囲内で政令で定める日から施行する。

附 則(昭和37年4月2日法律第67号)
(施行期日)

第1条 この法律は、昭和37年4月1日から施行する。

附 則(昭和38年4月1日法律第80号)
(施行期日)

第1条 この法律は、昭和38年10月1日から施行する。

附 則(昭和38年7月9日法律第126号)

この法律は、商業登記法の施行の日(昭和39年4月1日)から施行する。

附 則(昭和41年7月1日法律第111号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して6月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。

附 則(昭和54年3月30日法律第5号)
(施行期日)

 この法律は、民事執行法(昭和54年法律第4号)の施行の日(昭和55年10月1日)から施行する。

(経過措置)

 この法律の施行前に申し立てられた民事執行、企業担保権の実行及び破産の事件については、なお従前の例による。

 前項の事件に関し執行官が受ける手数料及び支払又は償還を受ける費用の額については、同項の規定にかかわらず、最高裁判所規則の定めるところによる。

附 則(昭和55年5月17日法律第50号)
(施行期日)

 この法律は、昭和55年10月1日から施行する。

(経過措置)

 この法律による改正後の滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律は、この法律の施行後に民事執行の申立てがされた場合について適用する。

附 則(平成10年10月16日法律第128号)
(施行期日)

 この法律は、公布の日から起算して2月を経過した日から施行する。

(滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律の一部改正に伴う経過措置)

 この法律の施行前にされた強制執行続行の決定の申請については、なお従前の例による。

附 則(平成13年7月4日法律第102号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日(以下「施行日」という。)から施行する。

附 則(平成16年12月3日法律第152号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。


(政令への委任)

第40条 附則第3条から第10条まで、第29条及び前二条に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。

附 則(令和元年5月17日法律第2号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

 附則第20条の規定 公布の日


(政令への委任)

第20条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。