裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
第1章 総則
第1条 この法律は、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することにかんがみ、裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法(昭和22年法律第59号)及び刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)の特則その他の必要な事項を定めるものとする。
第2条 地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条又は第3条の2の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第26条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
一 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
二 裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)
2 前項の合議体の裁判官の員数は3人、裁判員の員数は6人とし、裁判官のうち1人を裁判長とする。ただし、次項の決定があったときは、裁判官の員数は1人、裁判員の員数は4人とし、裁判官を裁判長とする。
3 第1項の規定により同項の合議体で取り扱うべき事件(以下「対象事件」という。)のうち、公判前整理手続による争点及び証拠の整理において公訴事実について争いがないと認められ、事件の内容その他の事情を考慮して適当と認められるものについては、裁判所は、裁判官1人及び裁判員4人から成る合議体を構成して審理及び裁判をする旨の決定をすることができる。
4 裁判所は、前項の決定をするには、公判前整理手続において、検察官、被告人及び弁護人に異議のないことを確認しなければならない。
5 第3項の決定は、第27条第1項に規定する裁判員等選任手続の期日までにしなければならない。
6 地方裁判所は、第3項の決定があったときは、裁判所法第26条第2項の規定にかかわらず、当該決定の時から第3項に規定する合議体が構成されるまでの間、1人の裁判官で事件を取り扱う。
7 裁判所は、被告人の主張、審理の状況その他の事情を考慮して、事件を第3項に規定する合議体で取り扱うことが適当でないと認めたときは、決定で、同項の決定を取り消すことができる。
第3条 地方裁判所は、前条第1項各号に掲げる事件について、被告人の言動、被告人がその構成員である団体の主張若しくは当該団体の他の構成員の言動又は現に裁判員候補者若しくは裁判員に対する加害若しくはその告知が行われたことその他の事情により、裁判員候補者、裁判員若しくは裁判員であった者若しくはその親族若しくはこれに準ずる者の生命、身体若しくは財産に危害が加えられるおそれ又はこれらの者の生活の平穏が著しく侵害されるおそれがあり、そのため裁判員候補者又は裁判員が畏怖し、裁判員候補者の出頭を確保することが困難な状況にあり又は裁判員の職務の遂行ができずこれに代わる裁判員の選任も困難であると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、これを裁判官の合議体で取り扱う決定をしなければならない。
2 前項の決定又は同項の請求を却下する決定は、合議体でしなければならない。ただし、当該前条第1項各号に掲げる事件の審判に関与している裁判官は、その決定に関与することはできない。
3 第1項の決定又は同項の請求を却下する決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
4 前条第1項の合議体が構成された後は、職権で第1項の決定をするには、あらかじめ、当該合議体の裁判長の意見を聴かなければならない。
5 刑事訴訟法第43条第3項及び第4項並びに第44条第1項の規定は、第1項の決定及び同項の請求を却下する決定について準用する。
6 第1項の決定又は同項の請求を却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。この場合においては、即時抗告に関する刑事訴訟法の規定を準用する。
第3条の2 地方裁判所は、第2条第1項各号に掲げる事件について、次のいずれかに該当するときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、これを裁判官の合議体で取り扱う決定をしなければならない。
一 公判前整理手続による当該事件の争点及び証拠の整理を経た場合であって、審判に要すると見込まれる期間が著しく長期にわたること又は裁判員が出頭しなければならないと見込まれる公判期日若しくは公判準備が著しく多数に上ることを回避することができないときにおいて、他の事件における裁判員の選任又は解任の状況、第27条第1項に規定する裁判員等選任手続の経過その他の事情を考慮し、裁判員の選任が困難であり又は審判に要すると見込まれる期間の終了に至るまで裁判員の職務の遂行を確保することが困難であると認めるとき。
二 第2条第1項の合議体を構成する裁判員の員数に不足が生じ、かつ、裁判員に選任すべき補充裁判員がない場合であって、その後の審判に要すると見込まれる期間が著しく長期にわたること又はその期間中に裁判員が出頭しなければならないと見込まれる公判期日若しくは公判準備が著しく多数に上ることを回避することができないときにおいて、他の事件における裁判員の選任又は解任の状況、第46条第2項及び同項において準用する第38条第1項後段の規定による裁判員及び補充裁判員の選任のための手続の経過その他の事情を考慮し、裁判員の選任が困難であり又は審判に要すると見込まれる期間の終了に至るまで裁判員の職務の遂行を確保することが困難であると認めるとき。
2 前条第2項、第3項、第5項及び第6項の規定は、前項の決定及び同項の請求を却下する決定について準用する。
3 第1項の決定又は同項の請求を却下する決定をするには、あらかじめ、当該第2条第1項各号に掲げる事件の係属する裁判所の裁判長の意見を聴かなければならない。
第4条 裁判所は、対象事件以外の事件であって、その弁論を対象事件の弁論と併合することが適当と認められるものについては、決定で、これを第2条第1項の合議体で取り扱うことができる。
2 裁判所は、前項の決定をした場合には、刑事訴訟法の規定により、同項の決定に係る事件の弁論と対象事件の弁論とを併合しなければならない。
第5条 裁判所は、第2条第1項の合議体で取り扱っている事件の全部又は一部について刑事訴訟法第312条の規定により罰条が撤回又は変更されたため対象事件に該当しなくなったときであっても、当該合議体で当該事件を取り扱うものとする。ただし、審理の状況その他の事情を考慮して適当と認めるときは、決定で、裁判所法第26条の定めるところにより、当該事件を1人の裁判官又は裁判官の合議体で取り扱うことができる。
第6条 第2条第1項の合議体で事件を取り扱う場合において、刑事訴訟法第333条の規定による刑の言渡しの判決、同法第334条の規定による刑の免除の判決若しくは同法第336条の規定による無罪の判決又は少年法(昭和23年法律第168号)第55条の規定による家庭裁判所への移送の決定に係る裁判所の判断(次項第1号及び第2号に掲げるものを除く。)のうち次に掲げるもの(以下「裁判員の関与する判断」という。)は、第2条第1項の合議体の構成員である裁判官(以下「構成裁判官」という。)及び裁判員の合議による。
一 事実の認定
二 法令の適用
三 刑の量定
2 前項に規定する場合において、次に掲げる裁判所の判断は、構成裁判官の合議による。
一 法令の解釈に係る判断
二 訴訟手続に関する判断(少年法第55条の決定を除く。)
三 その他裁判員の関与する判断以外の判断
3 裁判員の関与する判断をするための審理は構成裁判官及び裁判員で行い、それ以外の審理は構成裁判官のみで行う。
第7条 第2条第3項の決定があった場合においては、構成裁判官の合議によるべき判断は、構成裁判官が行う。
第2章 裁判員
第1節 総則
第8条 裁判員は、独立してその職権を行う。
第9条 裁判員は、法令に従い公平誠実にその職務を行わなければならない。
2 裁判員は、第70条第1項に規定する評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。
3 裁判員は、裁判の公正さに対する信頼を損なうおそれのある行為をしてはならない。
4 裁判員は、その品位を害するような行為をしてはならない。
第10条 裁判所は、審判の期間その他の事情を考慮して必要があると認めるときは、補充裁判員を置くことができる。ただし、補充裁判員の員数は、合議体を構成する裁判員の員数を超えることはできない。
2 補充裁判員は、裁判員の関与する判断をするための審理に立ち会い、第2条第1項の合議体を構成する裁判員の員数に不足が生じた場合に、あらかじめ定める順序に従い、これに代わって、裁判員に選任される。
3 補充裁判員は、訴訟に関する書類及び証拠物を閲覧することができる。
4 前条の規定は、補充裁判員について準用する。
第11条 裁判員及び補充裁判員には、最高裁判所規則で定めるところにより、旅費、日当及び宿泊料を支給する。
第12条 裁判所は、第26条第3項(第28条第2項(第38条第2項(第46条第2項において準用する場合を含む。)、第47条第2項及び第92条第2項において準用する場合を含む。)、第38条第2項(第46条第2項において準用する場合を含む。)、第47条第2項及び第92条第2項において準用する場合を含む。)の規定により選定された裁判員候補者又は裁判員若しくは補充裁判員について、裁判員又は補充裁判員の選任又は解任の判断のため必要があると認めるときは、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
2 地方裁判所は、裁判員候補者について、裁判所の前項の判断に資するため必要があると認めるときは、公務所に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
第2節 選任
第13条 裁判員は、衆議院議員の選挙権を有する者の中から、この節の定めるところにより、選任するものとする。
第14条 国家公務員法(昭和22年法律第120号)第38条の規定に該当する場合のほか、次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員となることができない。
一 学校教育法(昭和22年法律第26号)に定める義務教育を終了しない者。ただし、義務教育を終了した者と同等以上の学識を有する者は、この限りでない。
二 禁錮以上の刑に処せられた者
三 心身の故障のため裁判員の職務の遂行に著しい支障がある者
第15条 次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員の職務に就くことができない。
一 国会議員
二 国務大臣
三 次のいずれかに該当する国の行政機関の職員
イ 一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)別表第十一指定職俸給表の適用を受ける職員(ニに掲げる者を除く。)
ロ 一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(平成12年法律第125号)第7条第1項に規定する俸給表の適用を受ける職員であって、同表七号俸の俸給月額以上の俸給を受けるもの
ハ 特別職の職員の給与に関する法律(昭和24年法律第252号)別表第一及び別表第二の適用を受ける職員
ニ 防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和27年法律第266号。以下「防衛省職員給与法」という。)第4条第1項の規定により一般職の職員の給与に関する法律別表第十一指定職俸給表の適用を受ける職員、防衛省職員給与法第4条第2項の規定により一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律第7条第1項の俸給表に定める額の俸給(同表七号俸の俸給月額以上のものに限る。)を受ける職員及び防衛省職員給与法第4条第5項の規定の適用を受ける職員
四 裁判官及び裁判官であった者
五 検察官及び検察官であった者
六 弁護士(外国法事務弁護士を含む。以下この項において同じ。)及び弁護士であった者
七 弁理士
八 司法書士
九 公証人
十 司法警察職員としての職務を行う者
十一 裁判所の職員(非常勤の者を除く。)
十二 法務省の職員(非常勤の者を除く。)
十三 国家公安委員会委員及び都道府県公安委員会委員並びに警察職員(非常勤の者を除く。)
十四 判事、判事補、検事又は弁護士となる資格を有する者
十五 学校教育法に定める大学の学部、専攻科又は大学院の法律学の教授又は准教授
十六 司法修習生
十七 都道府県知事及び市町村(特別区を含む。以下同じ。)の長
十八 自衛官
2 次のいずれかに該当する者も、前項と同様とする。
一 禁錮以上の刑に当たる罪につき起訴され、その被告事件の終結に至らない者
二 逮捕又は勾留されている者
第16条 次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員となることについて辞退の申立てをすることができる。
一 年齢70年以上の者
二 地方公共団体の議会の議員(会期中の者に限る。)
三 学校教育法第1条、第124条又は第134条の学校の学生又は生徒(常時通学を要する課程に在学する者に限る。)
四 過去5年以内に裁判員又は補充裁判員の職にあった者
五 過去3年以内に選任予定裁判員であった者
六 過去1年以内に裁判員候補者として第27条第1項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭したことがある者(第34条第7項(第38条第2項(第46条第2項において準用する場合を含む。)、第47条第2項及び第92条第2項において準用する場合を含む。第26条第3項において同じ。)の規定による不選任の決定があった者を除く。)
七 過去5年以内に検察審査会法(昭和23年法律第147号)の規定による検察審査員又は補充員の職にあった者
八 次に掲げる事由その他政令で定めるやむを得ない事由があり、裁判員の職務を行うこと又は裁判員候補者として第27条第1項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭することが困難な者
イ 重い疾病又は傷害により裁判所に出頭することが困難であること。
ロ 介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族の介護又は養育を行う必要があること。
ハ その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがあること。
ニ 父母の葬式への出席その他の社会生活上の重要な用務であって他の期日に行うことができないものがあること。
ホ 重大な災害により生活基盤に著しい被害を受け、その生活の再建のための用務を行う必要があること。
第17条 次の各号のいずれかに該当する者は、当該事件について裁判員となることができない。
一 被告人又は被害者
二 被告人又は被害者の親族又は親族であった者
三 被告人又は被害者の法定代理人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人
四 被告人又は被害者の同居人又は被用者
五 事件について告発又は請求をした者
六 事件について証人又は鑑定人になった者
七 事件について被告人の代理人、弁護人又は補佐人になった者
八 事件について検察官又は司法警察職員として職務を行った者
九 事件について検察審査員又は審査補助員として職務を行い、又は補充員として検察審査会議を傍聴した者
十 事件について刑事訴訟法第266条第2号の決定、略式命令、同法第398条から第400条まで、第412条若しくは第413条の規定により差し戻し、若しくは移送された場合における原判決又はこれらの裁判の基礎となった取調べに関与した者。ただし、受託裁判官として関与した場合は、この限りでない。
第18条 前条のほか、裁判所がこの法律の定めるところにより不公平な裁判をするおそれがあると認めた者は、当該事件について裁判員となることができない。
第19条 第13条から前条までの規定(裁判員の選任資格、欠格事由、就職禁止事由、辞退事由、事件に関連する不適格事由及びその他の不適格事由)は、補充裁判員に準用する。
第20条 地方裁判所は、最高裁判所規則で定めるところにより、毎年9月1日までに、次年に必要な裁判員候補者の員数をその管轄区域内の市町村に割り当て、これを市町村の選挙管理委員会に通知しなければならない。
2 前項の裁判員候補者の員数は、最高裁判所規則で定めるところにより、地方裁判所が対象事件の取扱状況その他の事項を勘案して算定した数とする。
第21条 市町村の選挙管理委員会は、前条第1項の通知を受けたときは、選挙人名簿に登録されている者の中から裁判員候補者の予定者として当該通知に係る員数の者(公職選挙法(昭和25年法律第100号)第27条第1項の規定により選挙人名簿に同法第11条第1項若しくは第252条又は政治資金規正法(昭和23年法律第194号)第28条の規定により選挙権を有しなくなった旨の表示がなされている者を除く。)をくじで選定しなければならない。
2 市町村の選挙管理委員会は、前項の規定により選定した者について、選挙人名簿に記載(公職選挙法第19条第3項の規定により磁気ディスクをもって調製する選挙人名簿にあっては、記録)をされている氏名、住所及び生年月日の記載(次項の規定により磁気ディスクをもって調製する裁判員候補者予定者名簿にあっては、記録)をした裁判員候補者予定者名簿を調製しなければならない。
3 裁判員候補者予定者名簿は、磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物を含む。以下同じ。)をもって調製することができる。
第22条 市町村の選挙管理委員会は、第20条第1項の通知を受けた年の10月15日までに裁判員候補者予定者名簿を当該通知をした地方裁判所に送付しなければならない。
第23条 地方裁判所は、前条の規定により裁判員候補者予定者名簿の送付を受けたときは、これに基づき、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判員候補者の氏名、住所及び生年月日の記載(次項の規定により磁気ディスクをもって調製する裁判員候補者名簿にあっては、記録。第25条及び第26条第3項において同じ。)をした裁判員候補者名簿を調製しなければならない。
2 裁判員候補者名簿は、磁気ディスクをもって調製することができる。
3 地方裁判所は、裁判員候補者について、死亡したことを知ったとき、第13条に規定する者に該当しないと認めたとき、第14条の規定により裁判員となることができない者であると認めたとき又は第15条第1項各号に掲げる者に該当すると認めたときは、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判員候補者名簿から消除しなければならない。
4 市町村の選挙管理委員会は、第21条第1項の規定により選定した裁判員候補者の予定者について、死亡したこと又は衆議院議員の選挙権を有しなくなったことを知ったときは、前条の規定により裁判員候補者予定者名簿を送付した地方裁判所にその旨を通知しなければならない。ただし、当該裁判員候補者予定者名簿を送付した年の次年が経過したときは、この限りでない。
第24条 地方裁判所は、第20条第1項の規定により通知をした年の次年において、その年に必要な裁判員候補者を補充する必要があると認めたときは、最高裁判所規則で定めるところにより、速やかに、その補充する裁判員候補者の員数をその管轄区域内の市町村に割り当て、これを市町村の選挙管理委員会に通知しなければならない。
2 前三条の規定は、前項の場合に準用する。この場合において、第22条中「第20条第1項の通知を受けた年の10月15日までに」とあるのは「速やかに」と、前条第1項中「した裁判員候補者名簿」とあるのは「追加した裁判員候補者名簿」と、同条第4項ただし書中「送付した年の次年」とあるのは「送付した年」と読み替えるものとする。
第25条 地方裁判所は、第23条第1項(前条第2項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定による裁判員候補者名簿の調製をしたときは、当該裁判員候補者名簿に記載をされた者にその旨を通知しなければならない。
第26条 対象事件につき第一回の公判期日が定まったときは、裁判所は、必要な員数の補充裁判員を置く決定又は補充裁判員を置かない決定をしなければならない。
2 裁判所は、前項の決定をしたときは、審判に要すると見込まれる期間その他の事情を考慮して、呼び出すべき裁判員候補者の員数を定めなければならない。
3 地方裁判所は、裁判員候補者名簿に記載をされた裁判員候補者の中から前項の規定により定められた員数の呼び出すべき裁判員候補者をくじで選定しなければならない。ただし、裁判所の呼出しに応じて次条第1項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者(第34条第7項の規定による不選任の決定があった者を除く。)については、その年において再度選定することはできない。
4 地方裁判所は、検察官及び弁護人に対し前項のくじに立ち会う機会を与えなければならない。
第27条 裁判所は、裁判員及び補充裁判員の選任のための手続(以下「裁判員等選任手続」という。)を行う期日を定めて、前条第3項の規定により選定された裁判員候補者を呼び出さなければならない。ただし、裁判員等選任手続を行う期日から裁判員の職務が終了すると見込まれる日までの間(以下「職務従事予定期間」という。)において次の各号に掲げるいずれかの事由があると認められる裁判員候補者については、この限りでない。
一 第13条に規定する者に該当しないこと。
二 第14条の規定により裁判員となることができない者であること。
三 第15条第1項各号若しくは第2項各号又は第17条各号に掲げる者に該当すること。
四 第16条の規定により裁判員となることについて辞退の申立てがあった裁判員候補者について同条各号に掲げる者に該当すること。
2 前項の呼出しは、呼出状の送達によってする。
3 呼出状には、出頭すべき日時、場所、呼出しに応じないときは過料に処せられることがある旨その他最高裁判所規則で定める事項を記載しなければならない。
4 裁判員等選任手続の期日と裁判員候補者に対する呼出状の送達との間には、最高裁判所規則で定める猶予期間を置かなければならない。
5 裁判所は、第1項の規定による呼出し後その出頭すべき日時までの間に、職務従事予定期間において同項各号に掲げるいずれかの事由があると認められるに至った裁判員候補者については、直ちにその呼出しを取り消さなければならない。
6 裁判所は、前項の規定により呼出しを取り消したときは、速やかに当該裁判員候補者にその旨を通知しなければならない。
第27条の2 裁判所は、前条第1項本文の規定にかかわらず、第26条第3項の規定により選定された裁判員候補者のうち、著しく異常かつ激甚な非常災害により、郵便物の配達若しくは取集が極めて困難である地域又は交通が途絶し若しくは遮断された地域に住所を有する者については、前条第1項の規定による呼出しをしないことができる。
第28条 裁判所は、裁判員等選任手続において裁判員及び必要な員数の補充裁判員を選任するために必要があると認めるときは、追加して必要な員数の裁判員候補者を呼び出すことができる。
2 第26条第3項及び第4項、第27条第1項ただし書及び第2項から第6項まで並びに前条の規定は、前項の場合に準用する。この場合において、第26条第3項中「前項の規定により定められた員数」とあるのは、「裁判所が必要と認めた員数」と読み替えるものとする。
第29条 呼出しを受けた裁判員候補者は、裁判員等選任手続の期日に出頭しなければならない。
2 裁判所の呼出しに応じて裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者には、最高裁判所規則で定めるところにより、旅費、日当及び宿泊料を支給する。
3 地方裁判所は、裁判所の呼出しに応じて裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者については、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判員候補者名簿から消除しなければならない。ただし、第34条第7項の規定による不選任の決定があった裁判員候補者については、この限りでない。
第30条 裁判所は、裁判員等選任手続に先立ち、第26条第3項(第28条第2項において準用する場合を含む。)の規定により選定された裁判員候補者が、職務従事予定期間において、第13条に規定する者に該当するかどうか、第14条の規定により裁判員となることができない者でないかどうか、第15条第1項各号若しくは第2項各号又は第17条各号に掲げる者に該当しないかどうか及び第16条各号に掲げる者に該当するかどうか並びに不公平な裁判をするおそれがないかどうかの判断に必要な質問をするため、質問票を用いることができる。
2 裁判員候補者は、裁判員等選任手続の期日の日前に質問票の送付を受けたときは、裁判所の指定に従い、当該質問票を返送し又は持参しなければならない。
3 裁判員候補者は、質問票に虚偽の記載をしてはならない。
4 前三項及び次条第2項に定めるもののほか、質問票の記載事項その他の質問票に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第31条 裁判長(第2条第3項の決定があった場合は、裁判官。第39条を除き、以下この節において同じ。)は、裁判員等選任手続の期日の2日前までに、呼び出した裁判員候補者の氏名を記載した名簿を検察官及び弁護人に送付しなければならない。
2 裁判長は、裁判員等選任手続の期日の日に、裁判員等選任手続に先立ち、裁判員候補者が提出した質問票の写しを検察官及び弁護人に閲覧させなければならない。
第32条 裁判員等選任手続は、裁判官及び裁判所書記官が列席し、かつ、検察官及び弁護人が出席して行うものとする。
2 裁判所は、必要と認めるときは、裁判員等選任手続に被告人を出席させることができる。
第33条 裁判員等選任手続は、公開しない。
2 裁判員等選任手続の指揮は、裁判長が行う。
3 裁判員等選任手続は、第34条第4項及び第36条第1項の規定による不選任の決定の請求が裁判員候補者の面前において行われないようにすることその他裁判員候補者の心情に十分配慮して、これを行わなければならない。
4 裁判所は、裁判員等選任手続の続行のため、新たな期日を定めることができる。この場合において、裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者に対し当該新たな期日を通知したときは、呼出状の送達があった場合と同一の効力を有する。
第33条の2 裁判官、検察官、被告人及び弁護人は、刑事訴訟法第290条の2第1項又は第3項の決定があった事件の裁判員等選任手続においては、裁判員候補者に対し、正当な理由がなく、被害者特定事項(同条第1項に規定する被害者特定事項をいう。以下この条において同じ。)を明らかにしてはならない。
2 裁判長は、前項に規定する裁判員等選任手続において裁判員候補者に対して被害者特定事項が明らかにされた場合には、当該裁判員候補者に対し、当該被害者特定事項を公にしてはならない旨を告知するものとする。
3 前項の規定による告知を受けた裁判員候補者又は当該裁判員候補者であった者は、裁判員等選任手続において知った被害者特定事項を公にしてはならない。
第34条 裁判員等選任手続において、裁判長は、裁判員候補者が、職務従事予定期間において、第13条に規定する者に該当するかどうか、第14条の規定により裁判員となることができない者でないかどうか、第15条第1項各号若しくは第2項各号若しくは第17条各号に掲げる者に該当しないかどうか若しくは第16条の規定により裁判員となることについて辞退の申立てがある場合において同条各号に掲げる者に該当するかどうか又は不公平な裁判をするおそれがないかどうかの判断をするため、必要な質問をすることができる。
2 陪席の裁判官、検察官、被告人又は弁護人は、裁判長に対し、前項の判断をするために必要と思料する質問を裁判長が裁判員候補者に対してすることを求めることができる。この場合において、裁判長は、相当と認めるときは、裁判員候補者に対して、当該求めに係る質問をするものとする。
3 裁判員候補者は、前二項の質問に対して正当な理由なく陳述を拒み、又は虚偽の陳述をしてはならない。
4 裁判所は、裁判員候補者が、職務従事予定期間において、第13条に規定する者に該当しないと認めたとき、第14条の規定により裁判員となることができない者であると認めたとき又は第15条第1項各号若しくは第2項各号若しくは第17条各号に掲げる者に該当すると認めたときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、当該裁判員候補者について不選任の決定をしなければならない。裁判員候補者が不公平な裁判をするおそれがあると認めたときも、同様とする。
5 弁護人は、前項後段の場合において同項の請求をするに当たっては、被告人の明示した意思に反することはできない。
6 第4項の請求を却下する決定には、理由を付さなければならない。
7 裁判所は、第16条の規定により裁判員となることについて辞退の申立てがあった裁判員候補者について、職務従事予定期間において同条各号に掲げる者に該当すると認めたときは、当該裁判員候補者について不選任の決定をしなければならない。
第35条 前条第4項の請求を却下する決定に対しては、対象事件が係属する地方裁判所に異議の申立てをすることができる。
2 前項の異議の申立ては、当該裁判員候補者について第37条第1項又は第2項の規定により裁判員又は補充裁判員に選任する決定がされるまでに、原裁判所に対し、申立書を差し出し、又は裁判員等選任手続において口頭で申立ての趣旨及び理由を明らかにすることによりしなければならない。
3 第1項の異議の申立てを受けた地方裁判所は、合議体で決定をしなければならない。
4 第1項の異議の申立てに関しては、即時抗告に関する刑事訴訟法の規定を準用する。この場合において、同法第423条第2項中「受け取つた日から3日」とあるのは、「受け取り又は口頭による申立てがあつた時から24時間」と読み替えるものとする。
第36条 検察官及び被告人は、裁判員候補者について、それぞれ、4人(第2条第3項の決定があった場合は、3人)を限度として理由を示さずに不選任の決定の請求(以下「理由を示さない不選任の請求」という。)をすることができる。
2 前項の規定にかかわらず、補充裁判員を置くときは、検察官及び被告人が理由を示さない不選任の請求をすることができる員数は、それぞれ、同項の員数にその選任すべき補充裁判員の員数が1人又は2人のときは1人、3人又は4人のときは2人、5人又は6人のときは3人を加えた員数とする。
3 理由を示さない不選任の請求があったときは、裁判所は、当該理由を示さない不選任の請求に係る裁判員候補者について不選任の決定をする。
4 刑事訴訟法第21条第2項の規定は、理由を示さない不選任の請求について準用する。
第37条 裁判所は、くじその他の作為が加わらない方法として最高裁判所規則で定める方法に従い、裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者で不選任の決定がされなかったものから、第2条第2項に規定する員数(当該裁判員候補者の員数がこれに満たないときは、その員数)の裁判員を選任する決定をしなければならない。
2 裁判所は、補充裁判員を置くときは、前項の規定により裁判員を選任する決定をした後、同項に規定する方法に従い、その余の不選任の決定がされなかった裁判員候補者から、第26条第1項の規定により決定した員数(当該裁判員候補者の員数がこれに満たないときは、その員数)の補充裁判員を裁判員に選任されるべき順序を定めて選任する決定をしなければならない。
3 裁判所は、前二項の規定により裁判員又は補充裁判員に選任された者以外の不選任の決定がされなかった裁判員候補者については、不選任の決定をするものとする。
第38条 裁判所は、前条第1項の規定により選任された裁判員の員数が選任すべき裁判員の員数に満たないときは、不足する員数の裁判員を選任しなければならない。この場合において、裁判所は、併せて必要と認める員数の補充裁判員を選任することができる。
2 第26条(第1項を除く。)から前条までの規定は、前項の規定による裁判員及び補充裁判員の選任について準用する。この場合において、第36条第1項中「4人(第2条第3項の決定があった場合は、3人)」とあるのは「選任すべき裁判員の員数が1人又は2人のときは1人、3人又は4人のときは2人、5人又は6人のときは3人」と、前条第1項中「第2条第2項に規定する員数」とあるのは「選任すべき裁判員の員数」と読み替えるものとする。
第39条 裁判長は、裁判員及び補充裁判員に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判員及び補充裁判員の権限、義務その他必要な事項を説明するものとする。
2 裁判員及び補充裁判員は、最高裁判所規則で定めるところにより、法令に従い公平誠実にその職務を行うことを誓う旨の宣誓をしなければならない。
第40条 第32条から前条までに定めるもののほか、裁判員等選任手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第3節 解任等
第41条 検察官、被告人又は弁護人は、裁判所に対し、次の各号のいずれかに該当することを理由として裁判員又は補充裁判員の解任を請求することができる。ただし、第7号に該当することを理由とする請求は、当該裁判員又は補充裁判員についてその選任の決定がされた後に知り、又は生じた原因を理由とするものに限る。
一 裁判員又は補充裁判員が、第39条第2項の宣誓をしないとき。
二 裁判員が、第52条若しくは第63条第1項に定める出頭義務又は第66条第2項に定める評議に出席する義務に違反し、引き続きその職務を行わせることが適当でないとき。
三 補充裁判員が、第52条に定める出頭義務に違反し、引き続きその職務を行わせることが適当でないとき。
四 裁判員が、第9条、第66条第4項若しくは第70条第1項に定める義務又は第66条第2項に定める意見を述べる義務に違反し、引き続きその職務を行わせることが適当でないとき。
五 補充裁判員が、第10条第4項において準用する第9条に定める義務又は第70条第1項に定める義務に違反し、引き続きその職務を行わせることが適当でないとき。
六 裁判員又は補充裁判員が、第13条(第19条において準用する場合を含む。)に規定する者に該当しないとき、第14条(第19条において準用する場合を含む。)の規定により裁判員若しくは補充裁判員となることができない者であるとき又は第15条第1項各号若しくは第2項各号若しくは第17条各号(これらの規定を第19条において準用する場合を含む。)に掲げる者に該当するとき。
七 裁判員又は補充裁判員が、不公平な裁判をするおそれがあるとき。
八 裁判員又は補充裁判員が、裁判員候補者であったときに、質問票に虚偽の記載をし、又は裁判員等選任手続における質問に対して正当な理由なく陳述を拒み、若しくは虚偽の陳述をしていたことが明らかとなり、引き続きその職務を行わせることが適当でないとき。
九 裁判員又は補充裁判員が、公判廷において、裁判長が命じた事項に従わず又は暴言その他の不穏当な言動をすることによって公判手続の進行を妨げたとき。
2 裁判所は、前項の請求を受けたときは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に規定する決定をし、その余の場合には、構成裁判官の所属する地方裁判所に当該請求に係る事件を送付しなければならない。
一 請求に理由がないことが明らかなとき又は請求が前項ただし書の規定に違反してされたものであるとき 当該請求を却下する決定
二 前項第1号から第3号まで、第6号又は第9号に該当すると認めるとき 当該裁判員又は補充裁判員を解任する決定
3 前項の規定により事件の送付を受けた地方裁判所は、第1項各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該裁判員又は補充裁判員を解任する決定をする。
4 前項の地方裁判所による第1項の請求についての決定は、合議体でしなければならない。ただし、同項の請求を受けた裁判所の構成裁判官は、その決定に関与することはできない。
5 第1項の請求についての決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
6 第2項第2号又は第3項の規定により裁判員又は補充裁判員を解任する決定をするには、当該裁判員又は補充裁判員に陳述の機会を与えなければならない。ただし、第1項第1号から第3号まで又は第9号に該当することを理由として解任する決定をするときは、この限りでない。
7 第1項の請求を却下する決定には、理由を付さなければならない。
第42条 前条第1項の請求を却下する決定に対しては、当該決定に関与した裁判官の所属する地方裁判所に異議の申立てをすることができる。
2 前項の異議の申立てを受けた地方裁判所は、合議体で決定をしなければならない。ただし、前条第1項の請求を受けた裁判所の構成裁判官は、当該異議の申立てがあった決定に関与していない場合であっても、その決定に関与することはできない。
3 第1項の異議の申立てに関しては、即時抗告に関する刑事訴訟法の規定を準用する。この場合において、同法第422条及び第423条第2項中「3日」とあるのは、「1日」と読み替えるものとする。
第43条 裁判所は、第41条第1項第1号から第3号まで、第6号又は第9号に該当すると認めるときは、職権で、裁判員又は補充裁判員を解任する決定をする。
2 裁判所が、第41条第1項第4号、第5号、第7号又は第8号に該当すると疑うに足りる相当な理由があると思料するときは、裁判長は、その所属する地方裁判所に対し、理由を付してその旨を通知するものとする。
3 前項の規定による通知を受けた地方裁判所は、第41条第1項第4号、第5号、第7号又は第8号に該当すると認めるときは、当該裁判員又は補充裁判員を解任する決定をする。
4 前項の決定は合議体でしなければならない。ただし、第2項の裁判所の構成裁判官は、その決定に関与することはできない。
5 第1項及び第3項の規定による決定については、第41条第5項及び第6項の規定を準用する。
第44条 裁判員又は補充裁判員は、裁判所に対し、その選任の決定がされた後に生じた第16条第8号に規定する事由により裁判員又は補充裁判員の職務を行うことが困難であることを理由として辞任の申立てをすることができる。
2 裁判所は、前項の申立てを受けた場合において、その理由があると認めるときは、当該裁判員又は補充裁判員を解任する決定をしなければならない。
第45条 裁判所は、補充裁判員に引き続きその職務を行わせる必要がないと認めるときは、当該補充裁判員を解任する決定をすることができる。
第46条 裁判所は、第2条第1項の合議体を構成する裁判員の員数に不足が生じた場合において、補充裁判員があるときは、その補充裁判員の選任の決定において定められた順序に従い、補充裁判員を裁判員に選任する決定をするものとする。
2 前項の場合において、裁判員に選任すべき補充裁判員がないときは、裁判所は、不足する員数の裁判員を選任しなければならない。この場合においては、第38条の規定を準用する。
第47条 裁判所は、補充裁判員を新たに置き、又は追加する必要があると認めるときは、必要と認める員数の補充裁判員を選任することができる。
2 裁判員の選任に関する第26条(第1項を除く。)から第35条まで及び第36条(第2項を除く。)の規定並びに第37条第2項及び第3項の規定は、前項の規定による補充裁判員の選任について準用する。この場合において、第36条第1項中「4人(第2条第3項の決定があった場合は、3人)」とあるのは、「選任すべき補充裁判員の員数が1人又は2人のときは1人、3人又は4人のときは2人、5人又は6人のときは3人」と読み替えるものとする。
第48条 裁判員及び補充裁判員の任務は、次のいずれかに該当するときに終了する。
一 終局裁判を告知したとき。
二 第3条第1項、第3条の2第1項又は第5条ただし書の決定により、第2条第1項の合議体が取り扱っている事件又は同項の合議体で取り扱うべき事件の全てを1人の裁判官又は裁判官の合議体で取り扱うこととなったとき。
第3章 裁判員の参加する裁判の手続
第1節 公判準備及び公判手続
第49条 裁判所は、対象事件については、第一回の公判期日前に、これを公判前整理手続に付さなければならない。
第50条 裁判所は、第2条第1項の合議体で取り扱うべき事件につき、公判前整理手続において鑑定を行うことを決定した場合において、当該鑑定の結果の報告がなされるまでに相当の期間を要すると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、公判前整理手続において鑑定の手続(鑑定の経過及び結果の報告を除く。)を行う旨の決定(以下この条において「鑑定手続実施決定」という。)をすることができる。
2 鑑定手続実施決定をし、又は前項の請求を却下する決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
3 鑑定手続実施決定があった場合には、公判前整理手続において、鑑定の手続のうち、鑑定の経過及び結果の報告以外のものを行うことができる。
第51条 裁判官、検察官及び弁護人は、裁判員の負担が過重なものとならないようにしつつ、裁判員がその職責を十分に果たすことができるよう、審理を迅速で分かりやすいものとすることに努めなければならない。
第52条 裁判員及び補充裁判員は、裁判員の関与する判断をするための審理をすべき公判期日並びに公判準備において裁判所がする証人その他の者の尋問及び検証の日時及び場所に出頭しなければならない。
第53条 前条の規定により裁判員及び補充裁判員が出頭しなければならない公判期日並びに公判準備において裁判所がする証人その他の者の尋問及び検証の日時及び場所は、あらかじめ、裁判員及び補充裁判員に通知しなければならない。
第54条 裁判員の関与する判断をするための審理をすべき公判期日においては、公判廷は、裁判官、裁判員及び裁判所書記官が列席し、かつ、検察官が出席して開く。
2 前項の場合を除き、公判廷は、裁判官及び裁判所書記官が列席し、かつ、検察官が出席して開く。
第55条 検察官が刑事訴訟法第296条の規定により証拠により証明すべき事実を明らかにするに当たっては、公判前整理手続における争点及び証拠の整理の結果に基づき、証拠との関係を具体的に明示しなければならない。被告人又は弁護人が同法第316条の30の規定により証拠により証明すべき事実を明らかにする場合も、同様とする。
第56条 裁判所が証人その他の者を尋問する場合には、裁判員は、裁判長に告げて、裁判員の関与する判断に必要な事項について尋問することができる。
第57条 裁判員の関与する判断に必要な事項について裁判所外で証人その他の者を尋問すべき場合において、構成裁判官にこれをさせるときは、裁判員及び補充裁判員はこれに立ち会うことができる。この尋問に立ち会った裁判員は、構成裁判官に告げて、証人その他の者を尋問することができる。
2 裁判員の関与する判断に必要な事項について公判廷外において検証をすべき場合において、構成裁判官にこれをさせるときも、前項前段と同様とする。
第58条 刑事訴訟法第292条の2第1項の規定により被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。)又は当該被害者の法定代理人が意見を陳述したときは、裁判員は、その陳述の後に、その趣旨を明確にするため、これらの者に質問することができる。
第59条 刑事訴訟法第311条の規定により被告人が任意に供述をする場合には、裁判員は、裁判長に告げて、いつでも、裁判員の関与する判断に必要な事項について被告人の供述を求めることができる。
第60条 裁判所は、裁判員の関与する判断をするための審理以外の審理についても、裁判員及び補充裁判員の立会いを許すことができる。
第61条 公判手続が開始された後新たに第2条第1項の合議体に加わった裁判員があるときは、公判手続を更新しなければならない。
2 前項の更新の手続は、新たに加わった裁判員が、争点及び取り調べた証拠を理解することができ、かつ、その負担が過重にならないようなものとしなければならない。
第62条 裁判員の関与する判断に関しては、証拠の証明力は、それぞれの裁判官及び裁判員の自由な判断にゆだねる。
第63条 刑事訴訟法第333条の規定による刑の言渡しの判決、同法第334条の規定による刑の免除の判決及び同法第336条の規定による無罪の判決並びに少年法第55条の規定による家庭裁判所への移送の決定の宣告をする場合には、裁判員は公判期日に出頭しなければならない。ただし、裁判員が出頭しないことは、当該判決又は決定の宣告を妨げるものではない。
2 前項に規定する場合には、あらかじめ、裁判員に公判期日を通知しなければならない。
第2節 刑事訴訟法等の適用に関する特例等
第64条 第2条第1項の合議体で事件が取り扱われる場合における刑事訴訟法の規定の適用については、次の表の上欄に掲げる同法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句とする。
第43条第4項、第69条、第76条第3項、第85条、第108条第3項、第125条第1項、第163条第1項、第169条、第278条の2第2項、第297条第2項、第316条の11 |
合議体の構成員 |
合議体の構成員である裁判官 |
第81条 |
逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由 |
逃亡し若しくは罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由又は裁判員、補充裁判員若しくは選任予定裁判員に、面会、文書の送付その他の方法により接触すると疑うに足りる相当な理由 |
第89条第5号 |
被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。 |
被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくはこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき、又は裁判員、補充裁判員若しくは選任予定裁判員に、面会、文書の送付その他の方法により接触すると疑うに足りる相当な理由があるとき。 |
第96条第1項第4号 |
被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。 |
被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、若しくはこれらの者を畏怖させる行為をしたとき、又は裁判員、補充裁判員若しくは選任予定裁判員に、面会、文書の送付その他の方法により接触したとき。 |
第157条の4、第157条の6第1項、第316条の39第1項から第3項まで、第435条第7号ただし書 |
裁判官 |
裁判官、裁判員 |
第256条第6項 |
裁判官 |
裁判官又は裁判員 |
第304条第1項 |
裁判長又は陪席の裁判官 |
裁判長、陪席の裁判官又は裁判員 |
第316条の15第1項第2号 |
裁判所又は裁判官 |
裁判所、裁判官又は裁判官及び裁判員 |
第321条第2項 |
裁判所若しくは裁判官 |
裁判所、裁判官若しくは裁判官及び裁判員 |
第377条第1号 |
法律に従つて判決裁判所を構成しなかつたこと。 |
法律に従つて判決裁判所を構成しなかつたこと。ただし、裁判員の構成にのみ違法がある場合であつて、判決が裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成16年法律第63号)第6条第1項に規定する裁判員の関与する判断を含まないものであるとき、又はその違法が裁判員が同法第15条第1項各号若しくは第2項各号に掲げる者に該当することであるときは、この限りでない。 |
第435条第7号本文 |
原判決に関与した裁判官 |
原判決に関与した裁判官若しくは裁判員 |
2 第2条第1項の合議体で事件が取り扱われる場合における組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成11年法律第136号)第22条第4項の規定の適用については、同項中「合議体の構成員」とあるのは、「合議体の構成員である裁判官」とする。
第65条 裁判所は、対象事件(第5条本文の規定により第2条第1項の合議体で取り扱うものとされた事件を含む。)及び第4条第1項の決定に係る事件の審理における裁判官、裁判員又は訴訟関係人の尋問及び証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の供述、刑事訴訟法第292条の2第1項の規定による意見の陳述並びに裁判官、裁判員又は訴訟関係人による被告人の供述を求める行為及び被告人の供述並びにこれらの状況(以下「訴訟関係人の尋問及び供述等」という。)について、審理又は評議における裁判員の職務の的確な遂行を確保するため必要があると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、これを記録媒体(映像及び音声を同時に記録することができる物をいう。以下同じ。)に記録することができる。ただし、事案の内容、審理の状況、供述又は陳述をする者に与える心理的な負担その他の事情を考慮し、記録媒体に記録することが相当でないと認めるときは、この限りでない。
2 前項の規定による訴訟関係人の尋問及び供述等の記録は、刑事訴訟法第157条の6第1項及び第2項に規定する方法により証人を尋問する場合(同項第4号の規定による場合を除く。)においては、その証人の同意がなければ、これをすることができない。
3 前項の場合において、その訴訟関係人の尋問及び供述等を記録した記録媒体は、訴訟記録に添付して調書の一部とするものとする。ただし、その証人が後の刑事手続において同一の事実につき再び証人として供述を求められることがないと明らかに認められるときは、この限りでない。
4 刑事訴訟法第40条第2項、第180条第2項及び第270条第2項の規定は前項の規定により訴訟記録に添付して調書の一部とした記録媒体の謄写について、同法第305条第5項及び第6項の規定は当該記録媒体がその一部とされた調書の取調べについて、それぞれ準用する。
第4章 評議
第66条 第2条第1項の合議体における裁判員の関与する判断のための評議は、構成裁判官及び裁判員が行う。
2 裁判員は、前項の評議に出席し、意見を述べなければならない。
3 裁判長は、必要と認めるときは、第1項の評議において、裁判員に対し、構成裁判官の合議による法令の解釈に係る判断及び訴訟手続に関する判断を示さなければならない。
4 裁判員は、前項の判断が示された場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。
5 裁判長は、第1項の評議において、裁判員に対して必要な法令に関する説明を丁寧に行うとともに、評議を裁判員に分かりやすいものとなるように整理し、裁判員が発言する機会を十分に設けるなど、裁判員がその職責を十分に果たすことができるように配慮しなければならない。
第67条 前条第1項の評議における裁判員の関与する判断は、裁判所法第77条の規定にかかわらず、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。
2 刑の量定について意見が分かれ、その説が各々、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見にならないときは、その合議体の判断は、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見になるまで、被告人に最も不利な意見の数を順次利益な意見の数に加え、その中で最も利益な意見による。
第68条 構成裁判官の合議によるべき判断のための評議は、構成裁判官のみが行う。
2 前項の評議については、裁判所法第75条第1項及び第2項前段、第76条並びに第77条の規定に従う。
3 構成裁判官は、その合議により、裁判員に第1項の評議の傍聴を許し、第6条第2項各号に掲げる判断について裁判員の意見を聴くことができる。
第69条 補充裁判員は、構成裁判官及び裁判員が行う評議並びに構成裁判官のみが行う評議であって裁判員の傍聴が許されたものを傍聴することができる。
2 構成裁判官は、その合議により、補充裁判員の意見を聴くことができる。
第70条 構成裁判官及び裁判員が行う評議並びに構成裁判官のみが行う評議であって裁判員の傍聴が許されたものの経過並びにそれぞれの裁判官及び裁判員の意見並びにその多少の数(以下「評議の秘密」という。)については、これを漏らしてはならない。
2 前項の場合を除き、構成裁判官のみが行う評議については、裁判所法第75条第2項後段の規定に従う。
第5章 区分審理決定がされた場合の審理及び裁判の特例等
第1節 審理及び裁判の特例
第1款 区分審理決定
第71条 裁判所は、被告人を同じくする数個の対象事件の弁論を併合した場合又は第4条第1項の決定に係る事件と対象事件の弁論を併合した場合において、併合した事件(以下「併合事件」という。)を一括して審判することにより要すると見込まれる審判の期間その他の裁判員の負担に関する事情を考慮し、その円滑な選任又は職務の遂行を確保するため特に必要があると認められるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、併合事件の一部を一又は二以上の被告事件ごとに区分し、この区分した一又は二以上の被告事件ごとに、順次、審理する旨の決定(以下「区分審理決定」という。)をすることができる。ただし、犯罪の証明に支障を生ずるおそれがあるとき、被告人の防御に不利益を生ずるおそれがあるときその他相当でないと認められるときは、この限りでない。
2 区分審理決定又は前項の請求を却下する決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
3 区分審理決定又は第1項の請求を却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第72条 裁判所は、被告人の主張、審理の状況その他の事情を考慮して、区分事件(区分審理決定により区分して審理することとされた一又は二以上の被告事件をいう。以下同じ。)ごとに審理することが適当でないと認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、区分審理決定を取り消す決定をすることができる。ただし、区分事件につき部分判決がされた後は、この限りでない。
2 裁判所は、被告人の主張、審理の状況その他の事情を考慮して、適当と認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、区分審理決定を変更する決定をすることができる。この場合においては、前条第1項ただし書の規定を準用する。
3 前二項の決定又はこれらの項の請求を却下する決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
4 前条第3項の規定は、前項に規定する決定について準用する。
第73条 裁判所は、二以上の区分事件があるときは、決定で、区分事件を審理する順序を定めなければならない。
2 裁判所は、被告人の主張、審理の状況その他の事情を考慮して、適当と認めるときは、決定で、前項の決定を変更することができる。
3 前二項の決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
第74条 裁判所は、区分事件に含まれる被告事件の全部が、対象事件に該当しないとき又は刑事訴訟法第312条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため対象事件に該当しなくなったときは、構成裁判官のみで構成する合議体でその区分事件の審理及び裁判を行う旨の決定をすることができる。
第75条 区分審理決定並びに第72条第1項及び第2項、第73条第1項及び第2項並びに前条の決定は、公判前整理手続及び期日間整理手続において行うことができる。第71条第1項並びに第72条第1項及び第2項の請求を却下する決定についても、同様とする。
第76条 裁判所は、区分審理決定をした場合において、第26条第1項に規定する必要な員数の補充裁判員を置く決定又は補充裁判員を置かない決定をするときは、各区分事件の審理及び裁判(以下「区分事件審判」という。)並びに第86条第1項に規定する併合事件審判について、それぞれ、これをしなければならない。
第2款 区分事件審判
第77条 区分事件の審理において、証拠調べが終わった後、検察官は、次条第2項第1号及び第3号から第5号まで並びに第3項各号に掲げる事項に係る事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。
2 区分事件の審理において、証拠調べが終わった後、被告人及び弁護人は、当該区分事件について意見を陳述することができる。
3 区分事件の審理において、裁判所は、区分事件に含まれる被告事件に係る被害者参加人(刑事訴訟法第316条の33第3項に規定する被害者参加人をいう。第89条第1項において同じ。)又はその委託を受けた弁護士から、第1項に規定する事項に係る事実又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において、審理の状況、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公判期日において、同項の規定による検察官の意見の陳述の後に、訴因として特定された事実の範囲内で、申出をした者がその意見を陳述することを許すものとする。
4 刑事訴訟法第316条の38第2項から第4項までの規定は、前項の規定による意見の陳述について準用する。
5 刑事訴訟法第316条の37の規定は、第3項の規定による意見の陳述をするための被告人に対する質問について準用する。
第78条 区分事件に含まれる被告事件について、犯罪の証明があったときは、刑事訴訟法第333条及び第334条の規定にかかわらず、部分判決で有罪の言渡しをしなければならない。
2 部分判決で有罪の言渡しをするには、刑事訴訟法第335条第1項の規定にかかわらず、次に掲げる事項を示さなければならない。
一 罪となるべき事実
二 証拠の標目
三 罰条の適用並びに刑法(明治40年法律第45号)第54条第1項の規定の適用及びその適用に係る判断
四 法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実に係る判断
五 法律上刑を減免し又は減免することができる理由となる事実に係る判断
3 部分判決で有罪の言渡しをする場合は、次に掲げる事項を示すことができる。
一 犯行の動機、態様及び結果その他の罪となるべき事実に関連する情状に関する事実
二 没収、追徴及び被害者還付の根拠となる事実並びにこれらに関する規定の適用に係る判断
4 区分事件の審理において第2項第4号又は第5号に規定する事実が主張されたときは、刑事訴訟法第335条第2項の規定にかかわらず、部分判決において、これに対する判断を示さなければならない。
5 第63条の規定は、第1項の規定による部分判決の宣告をする場合について準用する。
第79条 区分事件に含まれる被告事件について、刑事訴訟法第329条の規定による管轄違いの判決、同法第336条の規定による無罪の判決、同法第337条の規定による免訴の判決又は同法第338条の規定による公訴棄却の判決の言渡しをしなければならない事由があるときは、部分判決でその旨の言渡しをしなければならない。
第80条 部分判決に対しては、刑事訴訟法第372条の規定にかかわらず、控訴をすることができない。
第81条 第79条の部分判決は、当該部分判決をした事件に係る弁論を刑事訴訟法第313条第1項の決定により分離した場合には、その決定を告知した時に、終局の判決となるものとする。
第82条 区分事件審判に関する公判調書は、刑事訴訟法第48条第3項の規定にかかわらず、各公判期日後速やかに、遅くとも当該区分事件についての部分判決を宣告するまでにこれを整理しなければならない。ただし、部分判決を宣告する公判期日の調書及び公判期日から部分判決を宣告する日までの期間が10日に満たない場合における当該公判期日の調書は、それぞれその公判期日後10日以内に、整理すれば足りる。
2 前項の公判調書に係る刑事訴訟法第51条第1項の規定による異議の申立ては、同条第2項の規定にかかわらず、遅くとも当該区分事件審判における最終の公判期日後14日以内(前項ただし書の規定により部分判決を宣告する公判期日後に整理された調書については、整理ができた日から14日以内)にこれをしなければならない。
第83条 区分事件に含まれる被告事件についての公訴は、刑事訴訟法第257条の規定にかかわらず、当該区分事件について部分判決の宣告があった後は、これを取り消すことができない。
2 刑事訴訟法第465条第1項の規定による正式裁判の請求があった被告事件について、区分審理決定があったときは、同法第466条の規定にかかわらず、当該被告事件を含む区分事件について部分判決の宣告があった後は、当該請求を取り下げることができない。
3 前項の区分審理決定があった場合には、同項の請求に係る略式命令は、刑事訴訟法第469条の規定にかかわらず、当該被告事件について終局の判決があったときに、その効力を失う。
第84条 区分事件審判に係る職務を行う裁判員及び補充裁判員の任務は、第48条の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当するときに終了する。
一 当該区分事件について部分判決の宣告をしたとき。
二 当該区分事件に含まれる被告事件の全部について刑事訴訟法第339条第1項の規定による公訴を棄却する決定がされたとき。
三 当該区分事件について第74条の決定がされたとき。
第85条 前条の規定により区分事件審判に係る職務を行う裁判員の任務が終了し、新たに第2条第1項の合議体に他の区分事件審判に係る職務を行う裁判員が加わった場合には、第61条第1項の規定にかかわらず、公判手続の更新は行わないものとする。
第3款 併合事件審判
第86条 裁判所は、すべての区分事件審判が終わった後、区分事件以外の被告事件の審理及び区分事件の審理(当該区分事件に含まれる被告事件に係る部分判決で示された事項に係るもの(第3項の決定があった場合を除く。)を除く。)並びに併合事件の全体についての裁判(以下「併合事件審判」という。)をしなければならない。
2 裁判所は、前項の規定により併合事件の全体についての裁判をする場合においては、部分判決がされた被告事件に係る当該部分判決で示された事項については、次項の決定があった場合を除き、これによるものとする。
3 裁判所は、構成裁判官の合議により、区分事件の審理又は部分判決について刑事訴訟法第377条各号、第378条各号又は第383条各号に掲げる事由があると認めるときは、職権で、その旨の決定をしなければならない。
第87条 第84条の規定により区分事件審判に係る職務を行う裁判員の任務が終了し、新たに第2条第1項の合議体に併合事件審判に係る職務を行う裁判員が加わった場合には、第61条第1項の規定にかかわらず、併合事件審判をするのに必要な範囲で、区分事件の公判手続を更新しなければならない。
第88条 区分事件に含まれる被告事件についての刑事訴訟法第292条の2第1項の規定による意見の陳述又は同条第7項の規定による意見を記載した書面の提出は、併合事件審判における審理において行うものとする。ただし、併合事件審判における審理において行うことが困難である場合その他当該被告事件を含む区分事件の審理において行うことが相当と認めるときは、当該区分事件の審理において行うことができる。
第89条 併合事件審判における審理において行う刑事訴訟法第293条第1項の規定による検察官の意見の陳述、同条第2項の規定による被告人及び弁護人の意見の陳述並びに同法第316条の38第1項の規定による区分事件に含まれる被告事件に係る被害者参加人又はその委託を受けた弁護士の意見の陳述は、部分判決で示された事項については、することができない。
2 裁判長は、前項に規定する意見の陳述が部分判決で示された事項にわたるときは、これを制限することができる。
第2節 選任予定裁判員
第1款 選任予定裁判員の選定
第90条 裁判所は、区分審理決定をした場合において、必要があると認めるときは、裁判員等選任手続において、第84条の規定により区分事件審判に係る職務を行う裁判員又は補充裁判員の任務が終了した後に他の区分事件審判又は併合事件審判に係る職務を行う裁判員又は補充裁判員に選任されるべき必要な員数の選任予定裁判員を、各区分事件審判又は併合事件審判ごとに、あらかじめ選定することができる。この場合において、選任予定裁判員の員数は、裁判所が定めるものとする。
2 前項の規定により選任予定裁判員を選定する場合における第26条第2項、第27条第1項ただし書、第35条第2項及び第36条第2項の規定の適用については、第26条第2項中「前項の決定をした」とあるのは「選任予定裁判員を選定することとした」と、第27条第1項ただし書中「期日から」とあるのは「期日及び第97条第1項の規定により選任予定裁判員を裁判員に選任する決定がされると見込まれる日から」と、第35条第2項中「第37条第1項又は第2項の規定により裁判員又は補充裁判員に選任する」とあるのは「第91条第1項の規定により選任予定裁判員に選定する」と、第36条第2項中「補充裁判員を置く」とあるのは「裁判員の員数を超える員数の選任予定裁判員を選定する」と、「選任すべき補充裁判員の」とあるのは「選定すべき選任予定裁判員の員数のうち裁判員の員数を超える」と、「3人又は4人のときは2人、5人又は6人のときは3人」とあるのは「3人以上の奇数及びそれに続く偶数の員数のときは当該偶数の員数の二分の一の員数」とする。
第91条 裁判所は、くじその他の作為が加わらない方法として最高裁判所規則で定める方法に従い、裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者で不選任の決定がされなかったものから、前条第1項の規定により裁判所が定めた員数(当該裁判員候補者の員数がこれに満たないときは、その員数)の選任予定裁判員を裁判員(補充裁判員を置くときは、補充裁判員を含む。)に選任されるべき順序を定めて選定する決定をしなければならない。
2 裁判所は、前項の規定により選任予定裁判員に選定された者以外の不選任の決定がされなかった裁判員候補者については、不選任の決定をするものとする。
第92条 裁判所は、前条第1項の規定により選定された選任予定裁判員の員数が選定すべき選任予定裁判員の員数に満たないときは、不足する員数の選任予定裁判員を選定することができる。
2 第26条(第1項を除く。)から第36条(第2項を除く。)まで及び前条の規定は、前項の規定による選任予定裁判員の選定について準用する。この場合において、第26条第2項中「前項の決定をした」とあるのは「不足する員数の選任予定裁判員を選定することとした」と、第27条第1項ただし書中「期日から」とあるのは「期日及び第97条第1項の規定により選任予定裁判員を裁判員に選任する決定がされると見込まれる日から」と、第35条第2項中「第37条第1項又は第2項の規定により裁判員又は補充裁判員に選任する」とあるのは「第92条第2項において読み替えて準用する第91条第1項の規定により選任予定裁判員に選定する」と、第36条第1項中「4人(第2条第3項の決定があった場合は、3人)」とあるのは「選定すべき選任予定裁判員の員数が1人又は2人のときは1人、3人以上の奇数及びそれに続く偶数の員数のときは当該偶数の員数の二分の一の員数」と、前条第1項中「前条第1項の規定により裁判所が定めた」とあるのは「不足する」と読み替えるものとする。
第2款 選任予定裁判員の選定の取消し
第93条 検察官、被告人又は弁護人は、裁判所に対し、次の各号のいずれかに該当することを理由として選任予定裁判員の選定の取消しを請求することができる。ただし、第2号に該当することを理由とする請求は、当該選任予定裁判員についてその選定の決定がされた後に知り、又は生じた原因を理由とするものに限る。
一 選任予定裁判員が、第13条に規定する者に該当しないとき、第14条の規定により裁判員となることができない者であるとき、又は第15条第1項各号若しくは第2項各号若しくは第17条各号に掲げる者に該当するとき。
二 選任予定裁判員が、不公平な裁判をするおそれがあるとき。
三 選任予定裁判員が、裁判員候補者であったときに、質問票に虚偽の記載をし、又は裁判員等選任手続における質問に対して正当な理由なく陳述を拒み、若しくは虚偽の陳述をしていたことが明らかとなり、裁判員又は補充裁判員の職務を行わせることが適当でないとき。
2 前項の請求を受けた裁判所は、同項各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該選任予定裁判員の選定を取り消す決定をする。
3 前項の決定又は第1項の請求を却下する決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
4 第2項の規定により選任予定裁判員の選定を取り消す決定をするには、当該選任予定裁判員に陳述の機会を与えなければならない。
5 第1項の請求を却下する決定には、理由を付さなければならない。
第94条 前条第1項の請求を却下する決定に対しては、当該決定に関与した裁判官の所属する地方裁判所に異議の申立てをすることができる。
2 前項の異議の申立てを受けた地方裁判所は、合議体で決定をしなければならない。
3 第1項の異議の申立てに関しては、即時抗告に関する刑事訴訟法の規定を準用する。
第95条 裁判所は、第93条第1項各号のいずれかに該当すると認めるときは、職権で、選任予定裁判員の選定を取り消す決定をする。
2 第93条第3項及び第4項の規定は、前項の規定による決定について準用する。
3 裁判所は、次の各号に掲げるいずれかの事由が生じたことにより、選任予定裁判員をその選定に係る区分事件審判又は併合事件審判に係る職務を行う裁判員又は補充裁判員に選任する必要がなくなった場合には、職権で、当該選任予定裁判員の選定を取り消す決定をする。
一 第72条第1項の規定により区分審理決定が取り消されたとき。
二 第72条第2項の規定により区分審理決定が変更され、区分事件に含まれる被告事件の全部についての審判が他の区分事件審判又は併合事件審判として行われることとなったとき。
三 第1号に掲げる場合のほか、その職務を行うべき区分事件に含まれる被告事件の全部又は区分事件以外の被告事件の全部について刑事訴訟法第339条第1項の規定による公訴を棄却する決定がされたとき。
四 区分事件について第74条の決定がされたとき。
4 裁判所は、前項に規定する場合のほか、選任予定裁判員をその選定に係る区分事件審判又は併合事件審判に係る職務を行う裁判員又は補充裁判員に選任する必要がなくなったと認めるときは、当該選任予定裁判員の選定を取り消す決定をすることができる。
第96条 選任予定裁判員は、裁判所に対し、第16条第8号に規定する事由(その選定がされた後に知り、又は生じた原因を理由とするものに限る。)により裁判員又は補充裁判員の職務を行うことが困難であることを理由として選定の取消しの申立てをすることができる。
2 裁判所は、前項の申立てを受けた場合において、その理由があると認めるときは、当該選任予定裁判員の選定を取り消す決定をしなければならない。
第3款 選任予定裁判員の裁判員等への選任
第97条 裁判所は、第84条の規定により区分事件審判に係る職務を行う裁判員及び補充裁判員の任務が終了したときは、第37条の規定にかかわらず、当該区分事件審判の次の区分事件審判又は併合事件審判に係る職務を行う裁判員又は補充裁判員に選任されるために選定されている選任予定裁判員で、指定する裁判員等選任手続の期日に出頭したものから、その選定において定められた順序に従い、当該職務を行う裁判員(補充裁判員を置くときは、補充裁判員を含む。第5項において同じ。)を選任する決定をするものとする。
2 裁判所は、前項に規定する選任予定裁判員を同項に規定する期日に呼び出さなければならない。
3 前項の呼出しは、選任予定裁判員に通知して行う。
4 裁判所は、第1項に規定する区分事件審判又は併合事件審判に係る職務を行う裁判員又は補充裁判員に選任されるために選定されている選任予定裁判員のうち、同項の規定により裁判員又は補充裁判員に選任された者以外の者については、選定を取り消す決定をしなければならない。
5 第1項の規定により選任予定裁判員を裁判員に選任する場合における第27条の2、第29条第1項及び第2項並びに第38条第1項の規定の適用については、第27条の2中「前条第1項本文」とあるのは「第97条第2項」と、「第26条第3項の規定により選定された裁判員候補者」とあるのは「同条第1項に規定する選任予定裁判員」と、「前条第1項の」とあるのは「同条第2項の」と、第29条第1項及び第2項中「裁判員候補者」とあるのは「選任予定裁判員」と、第38条第1項中「前条第1項」とあるのは「第97条第1項」とする。
第4款 雑則
第98条 第12条第1項の規定は、選任予定裁判員についてその選定の取消しの判断のため必要がある場合について準用する。
第99条 前三款に定めるもののほか、選任予定裁判員の選定及び裁判員又は補充裁判員への選任に関する手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第6章 裁判員等の保護のための措置
第100条 労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したことその他裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員若しくは裁判員候補者であること又はこれらの者であったことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
第101条 何人も、裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員又は裁判員候補者若しくはその予定者の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報を公にしてはならない。これらであった者の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報についても、本人がこれを公にすることに同意している場合を除き、同様とする。
2 前項の規定の適用については、区分事件審判に係る職務を行う裁判員又は補充裁判員の職にあった者で第84条の規定によりその任務が終了したものは、すべての区分事件審判の後に行われる併合事件の全体についての裁判(以下「併合事件裁判」という。)がされるまでの間は、なお裁判員又は補充裁判員であるものとみなす。
第102条 何人も、被告事件に関し、当該被告事件を取り扱う裁判所に選任され、又は選定された裁判員若しくは補充裁判員又は選任予定裁判員に接触してはならない。
2 何人も、裁判員又は補充裁判員が職務上知り得た秘密を知る目的で、裁判員又は補充裁判員の職にあった者に接触してはならない。
3 前二項の規定の適用については、区分事件審判に係る職務を行う裁判員又は補充裁判員の職にあった者で第84条の規定によりその任務が終了したものは、併合事件裁判がされるまでの間は、なお裁判員又は補充裁判員であるものとみなす。
第7章 雑則
第103条 最高裁判所は、毎年、対象事件の取扱状況、裁判員及び補充裁判員の選任状況その他この法律の実施状況に関する資料を公表するものとする。
第104条 地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市においては、第20条第1項並びに第21条第1項及び第2項、第22条並びに第23条第4項(これらの規定を第24条第2項において準用する場合を含む。)並びに第24条第1項の規定中市に関する規定は、区及び総合区にこれを適用する。
第105条 第21条第1項及び第2項、第22条並びに第23条第4項(これらの規定を第24条第2項において準用する場合を含む。)の規定により市町村が処理することとされている事務は、地方自治法第2条第9項第1号に規定する第1号法定受託事務とする。
第8章 罰則
第106条 法令の定める手続により行う場合を除き、裁判員又は補充裁判員に対し、その職務に関し、請託をした者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
2 法令の定める手続により行う場合を除き、被告事件の審判に影響を及ぼす目的で、裁判員又は補充裁判員に対し、事実の認定、刑の量定その他の裁判員として行う判断について意見を述べ又はこれについての情報を提供した者も、前項と同様とする。
3 選任予定裁判員に対し、裁判員又は補充裁判員として行うべき職務に関し、請託をした者も、第1項と同様とする。
4 被告事件の審判に影響を及ぼす目的で、選任予定裁判員に対し、事実の認定その他の裁判員として行うべき判断について意見を述べ又はこれについての情報を提供した者も、第1項と同様とする。
第107条 被告事件に関し、当該被告事件の審判に係る職務を行う裁判員若しくは補充裁判員若しくはこれらの職にあった者又はその親族に対し、面会、文書の送付、電話をかけることその他のいかなる方法をもってするかを問わず、威迫の行為をした者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
2 被告事件に関し、当該被告事件の審判に係る職務を行う裁判員若しくは補充裁判員の選任のために選定された裁判員候補者若しくは当該裁判員若しくは補充裁判員の職務を行うべき選任予定裁判員又はその親族に対し、面会、文書の送付、電話をかけることその他のいかなる方法をもってするかを問わず、威迫の行為をした者も、前項と同様とする。
第108条 裁判員又は補充裁判員が、評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2 裁判員又は補充裁判員の職にあった者が次の各号のいずれかに該当するときも、前項と同様とする。
一 職務上知り得た秘密(評議の秘密を除く。)を漏らしたとき。
二 評議の秘密のうち構成裁判官及び裁判員が行う評議又は構成裁判官のみが行う評議であって裁判員の傍聴が許されたもののそれぞれの裁判官若しくは裁判員の意見又はその多少の数を漏らしたとき。
三 財産上の利益その他の利益を得る目的で、評議の秘密(前号に規定するものを除く。)を漏らしたとき。
3 前項第3号の場合を除き、裁判員又は補充裁判員の職にあった者が、評議の秘密(同項第2号に規定するものを除く。)を漏らしたときは、50万円以下の罰金に処する。
4 前三項の規定の適用については、区分事件審判に係る職務を行う裁判員又は補充裁判員の職にあった者で第84条の規定によりその任務が終了したものは、併合事件裁判がされるまでの間は、なお裁判員又は補充裁判員であるものとみなす。
5 裁判員又は補充裁判員が、構成裁判官又は現にその被告事件の審判に係る職務を行う他の裁判員若しくは補充裁判員以外の者に対し、当該被告事件において認定すべきであると考える事実若しくは量定すべきであると考える刑を述べたとき、又は当該被告事件において裁判所により認定されると考える事実若しくは量定されると考える刑を述べたときも、第1項と同様とする。
6 裁判員又は補充裁判員の職にあった者が、その職務に係る被告事件の審判における判決(少年法第55条の決定を含む。以下この項において同じ。)に関与した構成裁判官であった者又は他の裁判員若しくは補充裁判員の職にあった者以外の者に対し、当該判決において示された事実の認定又は刑の量定の当否を述べたときも、第1項と同様とする。
7 区分事件審判に係る職務を行う裁判員又は補充裁判員の職にあった者で第84条の規定によりその任務が終了したものが、併合事件裁判がされるまでの間に、当該区分事件審判における部分判決に関与した構成裁判官であった者又は他の裁判員若しくは補充裁判員の職にあった者以外の者に対し、併合事件審判において認定すべきであると考える事実(当該区分事件以外の被告事件に係るものを除く。)若しくは量定すべきであると考える刑を述べたとき、又は併合事件審判において裁判所により認定されると考える事実(当該区分事件以外の被告事件に係るものを除く。)若しくは量定されると考える刑を述べたときも、第1項と同様とする。
第109条 検察官若しくは弁護人若しくはこれらの職にあった者又は被告人若しくは被告人であった者が、正当な理由がなく、被告事件の裁判員候補者の氏名、裁判員候補者が第30条(第38条第2項(第46条第2項において準用する場合を含む。)、第47条第2項及び第92条第2項において準用する場合を含む。次条において同じ。)に規定する質問票に記載した内容又は裁判員等選任手続における裁判員候補者の陳述の内容を漏らしたときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第110条 裁判員候補者が、第30条に規定する質問票に虚偽の記載をして裁判所に提出し、又は裁判員等選任手続における質問に対して虚偽の陳述をしたときは、50万円以下の罰金に処する。
第111条 裁判員候補者が、第30条第3項又は第34条第3項(これらの規定を第38条第2項(第46条第2項において準用する場合を含む。)、第47条第2項及び第92条第2項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、質問票に虚偽の記載をし、又は裁判員等選任手続における質問に対して正当な理由なく陳述を拒み、若しくは虚偽の陳述をしたときは、裁判所は、決定で、30万円以下の過料に処する。
第112条 次の各号のいずれかに当たる場合には、裁判所は、決定で、10万円以下の過料に処する。
一 呼出しを受けた裁判員候補者が、第29条第1項(第38条第2項(第46条第2項において準用する場合を含む。)、第47条第2項及び第92条第2項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、正当な理由がなく出頭しないとき。
二 呼出しを受けた選任予定裁判員が、第97条第5項の規定により読み替えて適用する第29条第1項の規定に違反して、正当な理由がなく出頭しないとき。
三 裁判員又は補充裁判員が、正当な理由がなく第39条第2項の宣誓を拒んだとき。
四 裁判員又は補充裁判員が、第52条の規定に違反して、正当な理由がなく、公判期日又は公判準備において裁判所がする証人その他の者の尋問若しくは検証の日時及び場所に出頭しないとき。
五 裁判員が、第63条第1項(第78条第5項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、正当な理由がなく、公判期日に出頭しないとき。
第113条 前二条の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第1条 この法律は、公布の日から起算して5年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 次条及び附則第3条の規定 公布の日
二 第20条から第23条まで、第25条、第100条、第101条、第104条、第105条及び附則第6条の規定 公布の日から起算して4年6月を超えない範囲内において政令で定める日
三 第17条第9号の規定(審査補助員に係る部分に限る。) 刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成16年法律第62号)附則第1条第2号に定める日又はこの法律の施行の日のいずれか遅い日
四 第77条第3項から第5項までの規定 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成19年法律第95号)の施行の日又はこの法律の施行の日のいずれか遅い日
第2条 政府及び最高裁判所は、裁判員の参加する刑事裁判の制度が司法への参加についての国民の自覚とこれに基づく協力の下で初めて我が国の司法制度の基盤としての役割を十全に果たすことができるものであることにかんがみ、この法律の施行までの期間において、国民が裁判員として裁判に参加することの意義、裁判員の選任の手続、事件の審理及び評議における裁判員の職務等を具体的に分かりやすく説明するなど、裁判員の参加する刑事裁判の制度についての国民の理解と関心を深めるとともに、国民の自覚に基づく主体的な刑事裁判への参加が行われるようにするための措置を講じなければならない。
2 前条の政令を定めるに当たっては、前項の規定による措置の成果を踏まえ、裁判員の参加する刑事裁判が円滑かつ適正に実施できるかどうかについての状況に配慮しなければならない。
第3条 国は、裁判員の参加する刑事裁判の制度を円滑に運用するためには、国民がより容易に裁判員として裁判に参加することができるようにすることが不可欠であることにかんがみ、そのために必要な環境の整備に努めなければならない。
第4条 この法律の施行の際現に係属している事件については、第2条第1項及び第4条の規定は適用しない。この法律の施行前判決が確定した事件であってこの法律の施行後再審開始の決定が確定したものについても、同様とする。
2 前項の規定にかかわらず、裁判所は、この法律の施行の際現に係属している事件であってその弁論を対象事件の弁論と併合することが適当と認められるものについては、決定で、これを第2条第1項の合議体で取り扱うことができる。
3 裁判所は、前項の決定をした場合には、刑事訴訟法の規定により、当該決定に係る事件の弁論と当該対象事件の弁論とを併合しなければならない。
第5条 この法律の施行の日が犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律の施行の日前となる場合には、同法の施行の日の前日までの間における第89条第1項の規定の適用については、同項中「、同条第2項の規定による被告人及び弁護人の意見の陳述並びに同法第316条の38第1項の規定による区分事件に含まれる被告事件に係る被害者参加人又はその委託を受けた弁護士」とあるのは、「並びに同条第2項の規定による被告人及び弁護人」とする。
2 この法律の施行の日が犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律附則第1条第2号に掲げる規定の施行の日前となる場合には、同号に掲げる規定の施行の日の前日までの間における第65条第4項の規定の適用については、同項中「第305条第4項及び第5項」とあるのは、「第305条第3項及び第4項」とする。
第9条 政府は、この法律の施行後3年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、裁判員の参加する刑事裁判の制度が我が国の司法制度の基盤としての役割を十全に果たすことができるよう、所要の措置を講ずるものとする。
第1条 この法律は、平成19年4月1日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日の属する月の翌月の初日(公布の日が月の初日であるときは、その日)から施行する。ただし、第2条、第3条、第5条及び第7条並びに附則第6条から第15条まで及び第17条から第32条までの規定は、平成18年4月1日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日の属する月の翌月の初日(公布の日が月の初日であるときは、その日)から施行する。ただし、第2条並びに附則第8条から第19条まで及び第21条から第25条までの規定は、平成18年4月1日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して4月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、それぞれ当該各号に定める日から施行する。
一 第1条(刑事訴訟法第292条の2の改正規定に限る。)並びに次条及び附則第6条(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成16年法律第63号)第58条の改正規定に限る。)の規定 公布の日から起算して20日を経過した日
第7条 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律(平成19年法律第60号)の施行の日がこの法律の施行の日後となる場合には、前条のうち裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第64条第1項の表の改正規定中「第64条第1項」とあるのは、「第64条」とする。
第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第2条、第3条及び附則第6条から第10条までの規定は、平成20年4月1日から施行する。
第1条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 略
二 第3条並びに附則第7条、第8条及び第10条の規定 平成20年4月1日
第1条 この法律は、平成22年3月31日までの間において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 次に掲げる規定 公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日
イ~ハ 略
ニ 附則第3条、第10条及び第11条の規定
第1条 この法律は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
1 この法律は、公布の日から起算して6月を経過した日から施行する。
2 この法律による改正後の裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(以下「新法」という。)第33条の2(新法第38条第2項(新法第46条第2項において準用する場合を含む。)、第47条第2項及び第92条第2項において準用する場合を含む。)の規定は、この法律の施行の日以後に開始された裁判員及び補充裁判員の選任のための手続並びに選任予定裁判員の選定のための手続について適用する。
3 政府は、この法律の施行後3年を経過した場合において、新法の施行の状況等について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、裁判員の参加する裁判の制度が我が国の司法制度の基盤としてより重要な役割を果たすものとなるよう、所要の措置を講ずるものとする。
第1条 この法律は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一・二 略
三 第1条(前号に掲げる改正規定を除く。)及び第6条の規定並びに次条並びに附則第4条、第6条、第8条、第10条、第11条(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成16年法律第63号)第64条第1項の表第43条第4項、第69条、第76条第2項、第85条、第108条第3項、第125条第1項、第163条第1項、第169条、第278条の2第2項、第297条第2項、第316条の11の項及び第65条第4項の改正規定に限る。)及び第12条から第15条までの規定 公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日
四 第2条(刑事訴訟法第301条の次に一条を加える改正規定を除く。)及び第4条の規定並びに附則第7条及び第11条(前号に掲げる改正規定を除く。)の規定 公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日