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国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律

平成25年法律第48号
最終改正:令和元年5月17日法律第2号
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第1章 総則

(目的)

第1条 この法律は、不法な連れ去り又は不法な留置がされた場合において子をその常居所を有していた国に返還すること等を定めた国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(以下「条約」という。)の的確な実施を確保するため、我が国における中央当局を指定し、その権限等を定めるとともに、子をその常居所を有していた国に迅速に返還するために必要な裁判手続等を定め、もって子の利益に資することを目的とする。


(定義)

第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 条約締約国 日本国及び日本国との間で条約が効力を有している条約の締約国(当該締約国が条約第39条第1項又は第40条第1項の規定による宣言をしている場合にあっては、当該宣言により条約が適用される当該締約国の領域の一部又は領域内の地域)をいう。

 子 父母その他の者に監護される者をいう。

 連れ去り 子をその常居所を有する国から離脱させることを目的として当該子を当該国から出国させることをいう。

 留置 子が常居所を有する国からの当該子の出国の後において、当該子の当該国への渡航が妨げられていることをいう。

 常居所地国 連れ去りの時又は留置の開始の直前に子が常居所を有していた国(当該国が条約の締約国であり、かつ、条約第39条第1項又は第40条第1項の規定による宣言をしている場合にあっては、当該宣言により条約が適用される当該国の領域の一部又は領域内の地域)をいう。

 不法な連れ去り 常居所地国の法令によれば監護の権利を有する者の当該権利を侵害する連れ去りであって、当該連れ去りの時に当該権利が現実に行使されていたもの又は当該連れ去りがなければ当該権利が現実に行使されていたと認められるものをいう。

 不法な留置 常居所地国の法令によれば監護の権利を有する者の当該権利を侵害する留置であって、当該留置の開始の時に当該権利が現実に行使されていたもの又は当該留置がなければ当該権利が現実に行使されていたと認められるものをいう。

 子の返還 子の常居所地国である条約締約国への返還をいう。

第2章 子の返還及び子との面会その他の交流に関する援助

第1節 中央当局の指定

第3条 我が国の条約第6条第1項の中央当局は、外務大臣とする。

第2節 子の返還に関する援助

第1款 外国返還援助

(外国返還援助申請)

第4条 日本国への連れ去りをされ、又は日本国において留置をされている子であって、その常居所地国が条約締約国であるものについて、当該常居所地国の法令に基づき監護の権利を有する者は、当該連れ去り又は留置によって当該監護の権利が侵害されていると思料する場合には、日本国からの子の返還を実現するための援助(以下「外国返還援助」という。)を外務大臣に申請することができる。

 外国返還援助の申請(以下「外国返還援助申請」という。)を行おうとする者は、外務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書(日本語又は英語により記載したものに限る。)を外務大臣に提出しなければならない。

 外国返還援助申請をする者(以下この款において「申請者」という。)の氏名又は名称及び住所若しくは居所又は事務所(外国返還援助申請において返還を求められている子(以下この款において「申請に係る子」という。)の常居所地国におけるものに限る。第7条第1項第4号において同じ。)の所在地

 申請に係る子の氏名、生年月日及び住所又は居所(これらの事項が明らかでないときは、その旨)その他申請に係る子を特定するために必要な事項

 申請に係る子の連れ去りをし、又は留置をしていると思料される者の氏名その他当該者を特定するために必要な事項

 申請に係る子の常居所地国が条約締約国であることを明らかにするために必要な事項

 申請に係る子の常居所地国の法令に基づき申請者が申請に係る子についての監護の権利を有し、かつ、申請に係る子の連れ去り又は留置により当該監護の権利が侵害されていることを明らかにするために必要な事項

 申請に係る子と同居していると思料される者の氏名、住所又は居所その他当該者を特定するために必要な事項(これらの事項が明らかでないときは、その旨)

 前項の申請書には、同項第5号に掲げる事項を証明する書類その他外務省令で定める書類を添付しなければならない。

 外国返還援助申請は、日本国以外の条約締約国の中央当局(条約第6条に規定する中央当局をいう。以下同じ。)を経由してすることができる。この場合において、申請者は、第2項各号に掲げる事項を記載した書面(日本語若しくは英語により記載したもの又は日本語若しくは英語による翻訳文を添付したものに限る。)及び前項に規定する書類を外務大臣に提出しなければならない。


(子の住所等に関する情報の提供の求め等)

第5条 外務大臣は、外国返還援助申請があった場合において、必要と認めるときは、申請に係る子及び申請に係る子と同居している者の氏名及び住所又は居所を特定するため、政令で定めるところにより、次に掲げる機関及び法人(第15条第1項において「国の行政機関等」という。)の長、地方公共団体の長その他の執行機関並びに申請に係る子及び申請に係る子と同居している者に関する情報を有している者として政令で定める者に対し、その有する当該氏名又は当該住所若しくは居所に関する情報の提供を求めることができる。

 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)

 内閣府並びに内閣府設置法(平成11年法律第89号)第49条第1項及び第2項に規定する機関

 国家行政組織法(昭和23年法律第120号)第3条第2項に規定する機関

 内閣府設置法第40条第2項及び第56条の特別の機関

 国家行政組織法第8条の2の施設等機関及び同法第8条の3の特別の機関

 独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人

 国立大学法人法(平成15年法律第112号)第2条第1項に規定する国立大学法人

 前項の場合において、同項に規定する情報の提供を求められた者は、遅滞なく、当該情報を外務大臣に提供するものとする。

 外務大臣は、前項の規定により提供された情報が、申請に係る子が日本国内に所在していることを示すものであるが、申請に係る子及び申請に係る子と同居している者の所在を特定するために十分でない場合には、外務省令で定めるところにより、都道府県警察に対し、当該情報を提供して、これらの者の所在を特定するために必要な措置をとることを求めることができる。

 前項に規定するもののほか、外務大臣からの第2項の規定により提供された情報及び前項の規定による都道府県警察の措置によって得られた情報の提供は、次に掲げる場合に限り、行うことができる。

 第26条の規定による子の返還の申立て又は子との面会その他の交流の定めをすること若しくはその変更を求める家事審判若しくは家事調停の申立てをするために申請に係る子と同居している者の氏名を必要とする申請者から当該氏名の開示を求められた場合において、当該氏名を当該申請者に開示するとき。

 申請に係る子についての第29条に規定する子の返還に関する事件若しくは子の返還の強制執行に係る事件が係属している裁判所又は申請に係る子についての子との面会その他の交流に関する事件若しくは子との面会その他の交流の強制執行に係る事件が係属している裁判所から、その手続を行うために申請に係る子及び申請に係る子と同居している者の住所又は居所の確認を求められた場合において、当該住所又は居所をこれらの裁判所に開示するとき。

 第10条第1項の規定により、市町村、都道府県の設置する福祉事務所(社会福祉法(昭和26年法律第45号)に規定する福祉に関する事務所をいう。以下この号及び同項において同じ。)又は児童相談所(児童福祉法(昭和22年法律第164号)に規定する児童相談所をいう。同号及び同項において同じ。)に対し、申請に係る子が虐待を受けているおそれがあると信ずるに足りる相当な理由がある旨を通告する場合において、申請に係る子及び申請に係る子と同居していると思料される者の氏名及び住所又は居所を当該市町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所に通知するとき。


(外国返還援助の決定及び通知)

第6条 外務大臣は、外国返還援助申請があった場合には、次条第1項の規定によりこれを却下する場合及び第8条第1項の規定により当該外国返還援助申請に係る書類の写しを送付する場合を除き、外国返還援助の決定(以下「外国返還援助決定」という。)をし、遅滞なく、申請者にその旨の通知(申請者が第4条第4項の規定により日本国以外の条約締約国の中央当局を経由して外国返還援助申請をした場合にあっては、当該中央当局を経由してする通知。次条第2項及び第8条第2項において同じ。)をしなければならない。

 外務大臣は、外国返還援助決定をした場合には、必要に応じ、次に掲げる措置をとるものとする。

 第9条又は第10条に規定する措置

 条約の実施のための日本国以外の条約締約国の中央当局との連絡

 この法律に定める手続その他子の返還又は子との面会その他の交流の実現に関連する日本国の法令に基づく制度に関する情報の申請者への提供


(外国返還援助申請の却下)

第7条 外務大臣は、外国返還援助申請が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該外国返還援助申請を却下する。

 申請に係る子が16歳に達していること。

 申請に係る子が日本国内に所在していないことが明らかであり、かつ、申請に係る子が所在している国又は地域が明らかでないこと。

 申請に係る子が条約締約国以外の国又は地域に所在していることが明らかであること。

 申請に係る子の所在地及び申請者の住所又は居所(申請者が法人その他の団体である場合にあっては、事務所の所在地)が同一の条約締約国内にあることが明らかであること。

 申請に係る子の連れ去りの時又は留置の開始の時に、申請に係る子の常居所地国が条約締約国でなかったこと。

 申請に係る子の常居所地国の法令に基づき申請者が申請に係る子についての監護の権利を有していないことが明らかであり、又は申請に係る子の連れ去り若しくは留置により当該監護の権利が侵害されていないことが明らかであること。

 外務大臣は、前項の規定により外国返還援助申請を却下した場合には、申請者に直ちにその旨及びその理由の通知をしなければならない。


(外国返還援助申請に係る書類の写しの条約締約国の中央当局への送付)

第8条 外務大臣は、申請に係る子が日本国以外の条約締約国に所在していることが明らかである場合において、外国返還援助申請が前条第1項第4号に該当しないときは、第4条第2項の申請書(申請者が同条第4項の規定により外国返還援助申請をした場合にあっては、同項に規定する書面)及び同条第3項に規定する書類の写しを当該条約締約国の中央当局に遅滞なく送付しなければならない。

 外務大臣は、前項の規定による送付をした場合には、申請者にその旨の通知をしなければならない。


(合意による子の返還等の促進)

第9条 外務大臣は、外国返還援助決定をした場合には、申請に係る子について子の返還又は申請者との面会その他の交流を申請者及び申請に係る子を監護している者の合意により実現するため、これらの者の間の協議のあっせんその他の必要な措置をとることができる。


(子の虐待に係る通告)

第10条 外務大臣は、申請に係る子が日本国内に所在している場合において、虐待を受けているおそれがあると信ずるに足りる相当な理由があるときは、市町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所に対し、その旨を通告しなければならない。

 前項の規定による通告は、児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号)第6条第1項の規定による通告とみなして、同条第2項及び第3項並びに同法第7条及び第8条の規定を適用する。

第2款 日本国返還援助

(日本国返還援助申請)

第11条 日本国以外の条約締約国への連れ去りをされ、又は日本国以外の条約締約国において留置をされている子であって、その常居所地国が日本国であるものについて、日本国の法令に基づき監護の権利を有する者は、当該連れ去り又は留置によって当該監護の権利が侵害されていると思料する場合には、日本国への子の返還を実現するための援助(以下「日本国返還援助」という。)を外務大臣に申請することができる。

 第4条第2項及び第3項の規定は、日本国返還援助の申請(以下「日本国返還援助申請」という。)について準用する。この場合において、同条第2項第1号中「第7条第1項第4号」とあるのは「第13条第1項第4号」と、同項第4号中「条約締約国」とあり、及び同項第5号中「申請に係る子の常居所地国」とあるのは「日本国」と読み替えるものとする。


(日本国返還援助の決定及び通知)

第12条 外務大臣は、日本国返還援助申請があった場合には、次条第1項の規定によりこれを却下する場合を除き、日本国返還援助の決定(以下「日本国返還援助決定」という。)をし、遅滞なく、日本国返還援助申請をした者(以下この款において「申請者」という。)にその旨を通知しなければならない。

 外務大臣は、日本国返還援助決定をした場合には、第14条に規定する措置をとるものとする。

 外務大臣は、日本国返還援助決定をした場合には、前項に規定するもののほか、必要に応じ、次に掲げる措置をとるものとする。

 第15条に規定する措置

 条約の実施のための日本国以外の条約締約国の中央当局との連絡


(日本国返還援助申請の却下)

第13条 外務大臣は、日本国返還援助申請が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該日本国返還援助申請を却下する。

 日本国返還援助申請において返還を求められている子(以下この款において「申請に係る子」という。)が16歳に達していること。

 申請に係る子が所在している国又は地域が明らかでないこと。

 申請に係る子が日本国又は条約締約国以外の国若しくは地域に所在していることが明らかであること。

 申請に係る子の所在地及び申請者の住所又は居所(申請者が法人その他の団体である場合にあっては、事務所の所在地)が同一の条約締約国内にあることが明らかであること。

 申請に係る子の常居所地国が日本国でないことが明らかであること。

 申請に係る子の連れ去りの時又は留置の開始の時に、申請に係る子が所在していると思料される国又は地域が条約締約国でなかったこと。

 日本国の法令に基づき申請者が申請に係る子についての監護の権利を有していないことが明らかであり、又は申請に係る子の連れ去り若しくは留置により当該監護の権利が侵害されていないことが明らかであること。

 外務大臣は、前項の規定により日本国返還援助申請を却下した場合には、申請者に直ちにその旨及びその理由を通知しなければならない。


(日本国返還援助申請に係る書類の写しの条約締約国の中央当局への送付)

第14条 外務大臣は、日本国返還援助決定をした場合には、第11条第2項において準用する第4条第2項の申請書及び同条第3項に規定する書類の写しを申請に係る子が所在している条約締約国の中央当局に遅滞なく送付しなければならない。

 外務大臣は、前項の規定による送付をした場合には、申請者にその旨の通知をしなければならない。


(子の社会的背景に関する情報の条約締約国の中央当局への提供)

第15条 外務大臣は、日本国への子の返還に関する事件が日本国以外の条約締約国の裁判所又はその他の審判を行う機関(以下この項及び次項において「外国裁判所等」という。)に係属しており、当該条約締約国の中央当局から当該子の返還に係る子の日本国内における心身、養育及び就学の状況その他の生活及び取り巻く環境の状況に関する情報の提供を求められた場合において、次の各号のいずれにも該当するときは、当該条約締約国の中央当局に提供するために、政令で定めるところにより、国の行政機関等の長、地方公共団体の長その他の執行機関及び当該子に関する情報を有している者として政令で定める者に対し、その有する当該情報の提供を求めることができる。

 当該中央当局が、当該外国裁判所等の依頼を受けて当該事件に関する調査を行うために外務大臣に対し当該情報の提供を求めており、かつ、当該調査以外の目的のために当該情報を利用するおそれがないと認められるとき。

 当該事件に係る外国裁判所等の手続の当事者(当該子が当該手続の当事者である場合にあっては、当該子を除く。)が当該情報を当該中央当局に提供することに同意しているとき。

 前項の場合において、同項に規定する情報の提供を求められた者は、次の各号のいずれにも該当するときは、遅滞なく、当該情報を外務大臣に提供するものとする。

 当該情報を前項に規定する中央当局に提供することによって同項に規定する子及び同項に規定する事件に係る外国裁判所等の手続の当事者の権利利益を不当に侵害するおそれがないと認めるとき。

 当該情報が、前項に規定する子及び同項に規定する事件に係る外国裁判所等の手続の当事者の知り得る状態にあり、かつ、これらの者以外の特定の個人を識別することができる情報を含まないとき。

 外務大臣は、前項の規定により提供された情報を、第1項に規定する中央当局に対してのみ提供することができる。

第3節 子との面会その他の交流に関する援助

第1款 日本国面会交流援助

(日本国面会交流援助申請)

第16条 日本国内に所在している子であって、面会その他の交流をすることができなくなる直前に常居所を有していた国又は地域が条約締約国であるものについて、当該国又は地域の法令に基づき面会その他の交流をすることができる者(日本国以外の条約締約国に住所又は居所を有しているものに限る。)は、当該子との面会その他の交流が妨げられていると思料する場合には、当該子との面会その他の交流を実現するための援助(以下「日本国面会交流援助」という。)を外務大臣に申請することができる。

 日本国面会交流援助の申請(以下「日本国面会交流援助申請」という。)を行おうとする者は、外務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書(日本語又は英語により記載したものに限る。)を外務大臣に提出しなければならない。

 日本国面会交流援助申請をする者(以下この款において「申請者」という。)の氏名及び住所又は居所

 日本国面会交流援助申請において面会その他の交流を求められている子(以下この款において「申請に係る子」という。)の氏名、生年月日及び住所又は居所(これらの事項が明らかでないときは、その旨)その他申請に係る子を特定するために必要な事項

 申請に係る子との面会その他の交流を妨げていると思料される者の氏名その他当該者を特定するために必要な事項

 申請者が申請に係る子と面会その他の交流をすることができなくなる直前に申請に係る子が常居所を有していた国又は地域が条約締約国であることを明らかにするために必要な事項

 申請者が申請に係る子と面会その他の交流をすることができなくなる直前に申請に係る子が常居所を有していた国又は地域の法令に基づき申請者が申請に係る子と面会その他の交流をすることができ、かつ、申請者の申請に係る子との面会その他の交流が妨げられていることを明らかにするために必要な事項

 申請に係る子と同居していると思料される者の氏名、住所又は居所その他当該者を特定するために必要な事項(これらの事項が明らかでないときは、その旨)

 前項の申請書には、同項第5号に掲げる事項を証明する書類その他外務省令で定める書類を添付しなければならない。

 日本国面会交流援助申請は、日本国以外の条約締約国の中央当局を経由してすることができる。この場合において、申請者は、第2項各号に掲げる事項を記載した書面(日本語若しくは英語により記載したもの又は日本語若しくは英語による翻訳文を添付したものに限る。)及び前項に規定する書類を外務大臣に提出しなければならない。


(日本国面会交流援助の決定及び通知)

第17条 外務大臣は、日本国面会交流援助申請があった場合には、次条第1項の規定によりこれを却下する場合及び第19条第1項の規定により当該日本国面会交流援助申請に係る書類の写しを送付する場合を除き、日本国面会交流援助の決定(以下「日本国面会交流援助決定」という。)をし、遅滞なく、申請者にその旨の通知(申請者が前条第4項の規定により日本国以外の条約締約国の中央当局を経由して日本国面会交流援助申請をした場合にあっては、当該中央当局を経由してする通知。次条第2項及び第19条第2項において同じ。)をしなければならない。

 外務大臣は、日本国面会交流援助決定をした場合には、必要に応じ、次に掲げる措置をとるものとする。

 第20条において準用する第9条又は第10条に規定する措置

 条約の実施のための日本国以外の条約締約国の中央当局との連絡

 この法律に定める手続その他子との面会その他の交流の実現に関連する日本国の法令に基づく制度に関する情報の申請者への提供


(日本国面会交流援助申請の却下)

第18条 外務大臣は、日本国面会交流援助申請が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該日本国面会交流援助申請を却下する。

 申請に係る子が16歳に達していること。

 申請に係る子が日本国内に所在していないことが明らかであり、かつ、申請に係る子が所在している国又は地域が明らかでないこと。

 申請に係る子が条約締約国以外の国又は地域に所在していることが明らかであること。

 申請に係る子の所在地及び申請者の住所又は居所が同一の条約締約国内にあることが明らかであること。

 申請者が日本国内に住所若しくは居所を有していることが明らかであり、又は日本国以外の条約締約国に住所若しくは居所を有していないことが明らかであること。

 申請者が申請に係る子と面会その他の交流をすることができなくなる直前に申請に係る子が常居所を有していた国又は地域が条約締約国でないこと。

 申請者が申請に係る子と面会その他の交流をすることができなくなる直前に申請に係る子が常居所を有していた国若しくは地域の法令に基づき申請者が申請に係る子と面会その他の交流をすることができないことが明らかであり、又は申請者の申請に係る子との面会その他の交流が妨げられていないことが明らかであること。

 外務大臣は、前項の規定により日本国面会交流援助申請を却下した場合には、申請者に直ちにその旨及びその理由の通知をしなければならない。


(日本国面会交流援助申請に係る書類の写しの条約締約国の中央当局への送付)

第19条 外務大臣は、申請に係る子が日本国以外の条約締約国に所在していることが明らかである場合において、日本国面会交流援助申請が前条第1項第4号に該当しないときは、第16条第2項の申請書(申請者が同条第4項の規定により日本国面会交流援助申請をした場合にあっては、同項に規定する書面)及び同条第3項に規定する書類の写しを当該条約締約国の中央当局に遅滞なく送付しなければならない。

 外務大臣は、前項の規定による送付をした場合には、申請者にその旨の通知をしなければならない。


(日本国面会交流援助に関する準用規定)

第20条 第5条、第9条及び第10条の規定は、外務大臣に対し日本国面会交流援助申請があった場合について準用する。この場合において、第5条第4項第1号中「第26条の規定による子の返還の申立て又は子との面会その他の交流の定めをすること若しくはその変更を求める家事審判若しくは」とあるのは「子との面会その他の交流の定めをすること又はその変更を求める家事審判又は」と、同項第2号中「第29条に規定する子の返還に関する事件若しくは子の返還の強制執行に係る事件が係属している裁判所又は申請に係る子についての子との面会その他の交流に関する事件若しくは」とあるのは「子との面会その他の交流に関する事件又は」と、「これらの」とあるのは「当該」と、第9条中「子の返還又は申請者」とあるのは「申請者」と読み替えるものとする。

第2款 外国面会交流援助

(外国面会交流援助申請)

第21条 日本国以外の条約締約国に所在している子であって、面会その他の交流をすることができなくなる直前に常居所を有していた国又は地域が条約締約国であるものについて、当該国又は地域の法令に基づき面会その他の交流をすることができる者(日本国内に住所又は居所を有しているものに限る。)は、当該子との面会その他の交流が妨げられていると思料する場合には、当該子との面会その他の交流を実現するための援助(以下「外国面会交流援助」という。)を外務大臣に申請することができる。

 第16条第2項及び第3項の規定は、外国面会交流援助の申請(以下「外国面会交流援助申請」という。)について準用する。


(外国面会交流援助の決定及び通知)

第22条 外務大臣は、外国面会交流援助申請があった場合には、次条第1項の規定によりこれを却下する場合を除き、外国面会交流援助の決定(以下「外国面会交流援助決定」という。)をし、遅滞なく、外国面会交流援助申請をした者(以下この款において「申請者」という。)にその旨を通知しなければならない。

 外務大臣は、外国面会交流援助決定をした場合には、第24条に規定する措置をとるものとする。

 外務大臣は、外国面会交流援助決定をした場合には、前項に規定するもののほか、必要に応じ、次に掲げる措置をとるものとする。

 第25条において準用する第15条に規定する措置

 条約の実施のための日本国以外の条約締約国の中央当局との連絡


(外国面会交流援助申請の却下)

第23条 外務大臣は、外国面会交流援助申請が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該外国面会交流援助申請を却下する。

 外国面会交流援助申請において面会その他の交流を求められている子(以下この款において「申請に係る子」という。)が16歳に達していること。

 申請に係る子が所在している国又は地域が明らかでないこと。

 申請に係る子が日本国又は条約締約国以外の国若しくは地域に所在していることが明らかであること。

 申請に係る子の所在地及び申請者の住所又は居所が同一の条約締約国内にあることが明らかであること。

 申請者が日本国内に住所又は居所を有していないことが明らかであること。

 申請者が申請に係る子と面会その他の交流をすることができなくなる直前に申請に係る子が常居所を有していた国又は地域が条約締約国でないこと。

 申請者が申請に係る子と面会その他の交流をすることができなくなる直前に申請に係る子が常居所を有していた国若しくは地域の法令に基づき申請者が申請に係る子と面会その他の交流をすることができないことが明らかであり、又は申請者の申請に係る子との面会その他の交流が妨げられていないことが明らかであること。

 外務大臣は、前項の規定により外国面会交流援助申請を却下した場合には、申請者に直ちにその旨及びその理由を通知しなければならない。


(外国面会交流援助申請に係る書類の写しの条約締約国の中央当局への送付)

第24条 外務大臣は、外国面会交流援助決定をした場合には、第21条第2項において準用する第16条第2項の申請書及び同条第3項に規定する書類の写しを申請に係る子が所在している条約締約国の中央当局に遅滞なく送付しなければならない。

 外務大臣は、前項の規定による送付をした場合には、申請者にその旨を通知しなければならない。


(外国面会交流援助に関する準用規定)

第25条 第15条の規定は、外務大臣に対し外国面会交流援助申請があった場合について準用する。この場合において、同条第1項中「日本国への子の返還」とあるのは「申請に係る子についての子との面会その他の交流」と、「当該子の返還に係る子」とあるのは「申請に係る子」と読み替えるものとする。

第3章 子の返還に関する事件の手続等

第1節 返還事由等

(条約に基づく子の返還)

第26条 日本国への連れ去り又は日本国における留置により子についての監護の権利を侵害された者は、子を監護している者に対し、この法律の定めるところにより、常居所地国に子を返還することを命ずるよう家庭裁判所に申し立てることができる。


(子の返還事由)

第27条 裁判所は、子の返還の申立てが次の各号に掲げる事由のいずれにも該当すると認めるときは、子の返還を命じなければならない。

 子が16歳に達していないこと。

 子が日本国内に所在していること。

 常居所地国の法令によれば、当該連れ去り又は留置が申立人の有する子についての監護の権利を侵害するものであること。

 当該連れ去りの時又は当該留置の開始の時に、常居所地国が条約締約国であったこと。


(子の返還拒否事由等)

第28条 裁判所は、前条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる事由のいずれかがあると認めるときは、子の返還を命じてはならない。ただし、第1号から第3号まで又は第5号に掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して常居所地国に子を返還することが子の利益に資すると認めるときは、子の返還を命ずることができる。

 子の返還の申立てが当該連れ去りの時又は当該留置の開始の時から1年を経過した後にされたものであり、かつ、子が新たな環境に適応していること。

 申立人が当該連れ去りの時又は当該留置の開始の時に子に対して現実に監護の権利を行使していなかったこと(当該連れ去り又は留置がなければ申立人が子に対して現実に監護の権利を行使していたと認められる場合を除く。)

 申立人が当該連れ去りの前若しくは当該留置の開始の前にこれに同意し、又は当該連れ去りの後若しくは当該留置の開始の後にこれを承諾したこと。

 常居所地国に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること。

 子の年齢及び発達の程度に照らして子の意見を考慮することが適当である場合において、子が常居所地国に返還されることを拒んでいること。

 常居所地国に子を返還することが日本国における人権及び基本的自由の保護に関する基本原則により認められないものであること。

 裁判所は、前項第4号に掲げる事由の有無を判断するに当たっては、次に掲げる事情その他の一切の事情を考慮するものとする。

 常居所地国において子が申立人から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(次号において「暴力等」という。)を受けるおそれの有無

 相手方及び子が常居所地国に入国した場合に相手方が申立人から子に心理的外傷を与えることとなる暴力等を受けるおそれの有無

 申立人又は相手方が常居所地国において子を監護することが困難な事情の有無

 裁判所は、日本国において子の監護に関する裁判があったこと又は外国においてされた子の監護に関する裁判が日本国で効力を有する可能性があることのみを理由として、子の返還の申立てを却下する裁判をしてはならない。ただし、これらの子の監護に関する裁判の理由を子の返還の申立てについての裁判において考慮することを妨げない。

第2節 子の返還に関する事件の手続の通則

(子の返還に関する事件の手続)

第29条 子の返還に関する事件(第32条第1項に規定する子の返還申立事件、第121条の規定による調査及び勧告の事件並びに第123条第2項に規定する出国禁止命令事件をいう。以下同じ。)の手続については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。


(裁判所及び当事者の責務)

第30条 裁判所は、子の返還に関する事件の手続が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に子の返還に関する事件の手続を追行しなければならない。


(最高裁判所規則)

第31条 この法律に定めるもののほか、子の返還に関する事件の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

第3節 子の返還申立事件の手続

第1款 総則

第1目 管轄
(管轄)

第32条 子の返還申立事件(第26条の規定による子の返還の申立てに係る事件をいう。以下同じ。)は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める家庭裁判所の管轄に属する。

 子の住所地(日本国内に子の住所がないとき、又は住所が知れないときは、その居所地。次号において同じ。)が東京高等裁判所、名古屋高等裁判所、仙台高等裁判所又は札幌高等裁判所の管轄区域内にある場合 東京家庭裁判所

 子の住所地が大阪高等裁判所、広島高等裁判所、福岡高等裁判所又は高松高等裁判所の管轄区域内にある場合 大阪家庭裁判所

 子の返還申立事件は、日本国内に子の住所がない場合又は住所が知れない場合であって、日本国内に子の居所がないとき又は居所が知れないときは、東京家庭裁判所の管轄に属する。


(併合申立てによる管轄)

第33条 一の申立てにより数人の子についての子の返還を求める場合には、前条の規定により1人の子についての子の返還の申立てについて管轄権を有する家庭裁判所にその申立てをすることができる。


(管轄裁判所の指定)

第34条 管轄裁判所が法律上若しくは事実上裁判権を行うことができないとき、又は裁判所の管轄区域が明確でないため管轄裁判所が定まらないときは、最高裁判所は、申立てにより、管轄裁判所を定める。


(管轄の標準時)

第35条 裁判所の管轄は、子の返還の申立てがあった時を標準として定める。


(管轄の合意)

第36条 当事者は、第一審に限り、合意により第32条第1項各号に定める家庭裁判所の一を管轄裁判所と定めることができる。

 前項の合意は、子の返還の申立てに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。

 第1項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。


(移送等)

第37条 裁判所は、子の返還申立事件がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを管轄権を有する家庭裁判所に移送する。

 家庭裁判所は、前項に規定する場合において、子の返還申立事件を処理するために特に必要があると認めるときは、職権で、当該子の返還申立事件の全部又は一部を管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所(第32条第1項各号に定める家庭裁判所に限る。)に移送することができる。

 第32条第1項各号に定める家庭裁判所は、第1項に規定する場合において、子の返還申立事件を処理するために特に必要があると認めるときは、職権で、当該子の返還申立事件の全部又は一部を自ら処理することができる。

 家庭裁判所は、子の返還申立事件がその管轄に属する場合においても、当該子の返還申立事件を処理するために特に必要があると認めるときは、職権で、当該子の返還申立事件の全部又は一部を他の家庭裁判所(第32条第1項各号に定める家庭裁判所に限る。)に移送することができる。

 第1項、第2項及び前項の規定による移送の裁判並びに第1項の申立てを却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

 前項の規定による移送の裁判に対する即時抗告は、執行停止の効力を有する。

 民事訴訟法(平成8年法律第109号)第22条の規定は、子の返還申立事件の移送の裁判について準用する。

第2目 裁判所職員の除斥及び忌避
(裁判官の除斥)

第38条 裁判官は、次に掲げる場合には、その職務の執行から除斥される。ただし、第6号に掲げる場合にあっては、他の裁判所の嘱託により受託裁判官としてその職務を行うことを妨げない。

 裁判官又はその配偶者若しくは配偶者であった者が、事件の当事者であるとき、又は当事者となる資格を有する者であるとき。

 裁判官が当事者又は子の四親等内の血族、三親等内の姻族若しくは同居の親族であるとき、又はあったとき。

 裁判官が当事者又は子の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき。

 裁判官が事件について証人若しくは鑑定人となったとき、又は審問を受けることとなったとき。

 裁判官が事件について当事者若しくは子の代理人若しくは補佐人であるとき、又はあったとき。

 裁判官が事件について仲裁判断に関与し、又は不服を申し立てられた前審の裁判に関与したとき。

 前項に規定する除斥の原因があるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、除斥の裁判をする。


(裁判官の忌避)

第39条 裁判官について裁判の公正を妨げる事情があるときは、当事者は、その裁判官を忌避することができる。

 当事者は、裁判官の面前において事件について陳述をしたときは、その裁判官を忌避することができない。ただし、忌避の原因があることを知らなかったとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。


(除斥又は忌避の裁判及び手続の停止)

第40条 合議体の構成員である裁判官及び家庭裁判所の1人の裁判官の除斥又は忌避については、その裁判官の所属する裁判所が裁判をする。

 前項の裁判は、合議体でする。

 裁判官は、その除斥又は忌避についての裁判に関与することができない。

 除斥又は忌避の申立てがあったときは、その申立てについての裁判が確定するまで子の返還申立事件の手続を停止しなければならない。ただし、急速を要する行為については、この限りでない。

 次に掲げる事由があるとして忌避の申立てを却下する裁判をするときは、第3項の規定は、適用しない。

 子の返還申立事件の手続を遅滞させる目的のみでされたことが明らかなとき。

 前条第2項の規定に違反するとき。

 最高裁判所規則で定める手続に違反するとき。

 前項の裁判は、第1項及び第2項の規定にかかわらず、忌避された受命裁判官等(受命裁判官、受託裁判官又は子の返還申立事件を取り扱う家庭裁判所の1人の裁判官をいう。次条第3項ただし書において同じ。)がすることができる。

 第5項の裁判をした場合には、第4項本文の規定にかかわらず、子の返還申立事件の手続は、停止しない。

 除斥又は忌避を理由があるとする裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

 除斥又は忌避の申立てを却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。


(裁判所書記官の除斥及び忌避)

第41条 裁判所書記官の除斥及び忌避については、第38条、第39条並びに前条第3項、第5項、第8項及び第9項の規定を準用する。

 裁判所書記官について除斥又は忌避の申立てがあったときは、その裁判所書記官は、その申立てについての裁判が確定するまでその申立てがあった子の返還申立事件に関与することができない。ただし、前項において準用する前条第5項各号に掲げる事由があるとして忌避の申立てを却下する裁判があったときは、この限りでない。

 裁判所書記官の除斥又は忌避についての裁判は、裁判所書記官の所属する裁判所がする。ただし、前項ただし書の裁判は、受命裁判官等(受命裁判官又は受託裁判官にあっては、当該裁判官の手続に立ち会う裁判所書記官が忌避の申立てを受けたときに限る。)がすることができる。


(家庭裁判所調査官の除斥)

第42条 家庭裁判所調査官の除斥については、第38条並びに第40条第2項、第8項及び第9項の規定(忌避に関する部分を除く。)を準用する。

 家庭裁判所調査官について除斥の申立てがあったときは、その家庭裁判所調査官は、その申立てについての裁判が確定するまでその申立てがあった子の返還申立事件に関与することができない。

 家庭裁判所調査官の除斥についての裁判は、家庭裁判所調査官の所属する裁判所がする。

第3目 当事者能力及び手続行為能力
(当事者能力及び手続行為能力の原則等)

第43条 当事者能力、子の返還申立事件の手続における手続上の行為(以下「手続行為」という。)をすることができる能力(以下この項において「手続行為能力」という。)、手続行為能力を欠く者の法定代理、手続行為をするのに必要な授権及び法定代理権の消滅については、民事訴訟法第28条、第29条、第33条、第34条第1項及び第2項並びに第36条第1項の規定を準用する。

 未成年者及び成年被後見人は、法定代理人の同意を要することなく、又は法定代理人によらずに、自ら手続行為をすることができる。被保佐人又は被補助人について、保佐人若しくは保佐監督人又は補助人若しくは補助監督人の同意がない場合も、同様とする。

 後見人が他の者がした子の返還の申立て又は抗告について手続行為をするには、後見監督人の同意を要しない。

 後見人が次に掲げる手続行為をするには、後見監督人の同意がなければならない。

 子の返還の申立ての取下げ又は和解

 終局決定に対する即時抗告、第108条第1項の抗告又は第111条第2項の申立ての取下げ

 第144条の同意


(未成年者又は成年被後見人の法定代理人)

第44条 親権を行う者又は後見人は、未成年者又は成年被後見人を代理して手続行為をすることができる。


(特別代理人)

第45条 裁判長は、未成年者又は成年被後見人について、法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合において、子の返還申立事件の手続が遅滞することにより損害が生ずるおそれがあるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、特別代理人を選任することができる。

 特別代理人の選任の裁判は、疎明に基づいてする。

 裁判所は、いつでも特別代理人を改任することができる。

 特別代理人が手続行為をするには、後見人と同一の授権がなければならない。

 第1項の申立てを却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。


(法人の代表者等への準用)

第46条 法人の代表者及び法人でない社団又は財団で当事者能力を有するものの代表者又は管理人については、この法律中法定代理及び法定代理人に関する規定を準用する。

第4目 参加
(当事者参加)

第47条 当事者となる資格を有する者は、当事者として子の返還申立事件の手続に参加することができる。

 裁判所は、相当と認めるときは、当事者の申立てにより又は職権で、他の当事者となる資格を有する者を、当事者として子の返還申立事件の手続に参加させることができる。

 第1項の規定による参加の申出及び前項の申立ては、参加の趣旨及び理由を記載した書面でしなければならない。

 第1項の規定による参加の申出を却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。


(子の参加)

第48条 子の返還申立事件において返還を求められている子は、子の返還申立事件の手続に参加することができる。

 裁判所は、相当と認めるときは、職権で、返還を求められている子を、子の返還申立事件の手続に参加させることができる。

 第1項の規定による参加の申出は、書面でしなければならない。

 裁判所は、子の返還申立事件の手続に参加しようとする子の年齢及び発達の程度その他一切の事情を考慮して当該子が当該手続に参加することが当該子の利益を害すると認めるときは、第1項の規定による参加の申出を却下しなければならない。

 第1項の規定による参加の申出を却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

 第1項又は第2項の規定により子の返還申立事件の手続に参加した子(以下単に「手続に参加した子」という。)は、当事者がすることができる手続行為(子の返還の申立ての取下げ及び変更並びに裁判に対する不服申立て及び裁判所書記官の処分に対する異議の取下げを除く。)をすることができる。ただし、裁判に対する不服申立て及び裁判所書記官の処分に対する異議の申立てについては、手続に参加した子が不服申立て又は異議の申立てに関するこの法律の他の規定によりすることができる場合に限る。


(手続からの排除)

第49条 裁判所は、当事者となる資格を有しない者及び当事者である資格を喪失した者を子の返還申立事件の手続から排除することができる。

 前項の規定による排除の裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

第5目 手続代理人及び補佐人
(手続代理人の資格)

第50条 法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ手続代理人となることができない。ただし、家庭裁判所においては、その許可を得て、弁護士でない者を手続代理人とすることができる。

 前項ただし書の許可は、いつでも取り消すことができる。


(裁判長による手続代理人の選任等)

第51条 未成年者、成年被後見人、被保佐人及び被補助人(以下この条において「未成年者等」という。)が手続行為をしようとする場合において、必要があると認めるときは、裁判長は、申立てにより、弁護士を手続代理人に選任することができる。

 未成年者等が前項の申立てをしない場合においても、裁判長は、弁護士を手続代理人に選任すべき旨を命じ、又は職権で弁護士を手続代理人に選任することができる。

 前二項の規定により裁判長が手続代理人に選任した弁護士に対し未成年者等が支払うべき報酬の額は、裁判所が相当と認める額とする。


(手続代理人の代理権の範囲)

第52条 手続代理人は、委任を受けた事件について、参加及び強制執行に関する行為をし、かつ、弁済を受領することができる。

 手続代理人は、次に掲げる事項については、特別の委任を受けなければならない。

 子の返還の申立ての取下げ又は和解

 終局決定に対する即時抗告、第108条第1項の抗告若しくは第111条第2項の申立て又はこれらの取下げ

 第122条第3項に規定する出国禁止命令の申立て又はその取下げ

 第144条の同意

 代理人の選任

 手続代理人の代理権は、制限することができない。ただし、弁護士でない手続代理人については、この限りでない。

 前三項の規定は、法令により裁判上の行為をすることができる代理人の権限を妨げない。


(手続代理人及びその代理権に関する民事訴訟法の準用)

第53条 民事訴訟法第34条(第3項を除く。)、第36条第1項及び第56条から第58条まで(同条第3項を除く。)の規定は、手続代理人及びその代理権について準用する。


(補佐人)

第54条 子の返還申立事件の手続における補佐人については、民事訴訟法第60条の規定を準用する。

第6目 手続費用
(手続費用の負担)

第55条 子の返還申立事件の手続の費用(以下「手続費用」という。)は、各自の負担とする。

 裁判所は、事情により、前項の規定によれば当事者及び手続に参加した子がそれぞれ負担すべき手続費用の全部又は一部を、その負担すべき者以外の当事者に負担させることができる。


(手続費用の負担の裁判等)

第56条 裁判所は、事件を完結する裁判において、職権で、その審級における手続費用(裁判所が第144条の規定により事件を家事調停に付した場合にあっては、家事調停に関する手続の費用を含む。)の全部について、その負担の裁判をしなければならない。ただし、事情により、事件の一部又は中間の争いに関する裁判において、その費用についての負担の裁判をすることができる。

 上級の裁判所が本案の裁判を変更する場合には、手続の総費用(裁判所が第144条の規定により事件を家事調停に付した場合にあっては、家事調停に関する手続の費用を含む。)について、その負担の裁判をしなければならない。事件の差戻し又は移送を受けた裁判所がその事件を完結する裁判をする場合も、同様とする。

 裁判所が第144条の規定により事件を家事調停に付した場合において、調停が成立し、子の返還申立事件の手続費用の負担について特別の定めをしなかったときは、その費用は、各自が負担する。


(手続費用の立替え)

第57条 事実の調査、証拠調べ、呼出し、告知その他の子の返還申立事件の手続に必要な行為に要する費用は、国庫において立て替えることができる。


(手続費用に関する民事訴訟法の準用等)

第58条 民事訴訟法第68条から第74条までの規定(裁判所書記官の処分に対する異議の申立てについての決定に対する即時抗告に関する部分を除く。)は、手続費用の負担について準用する。この場合において、同法第73条第1項中「補助参加の申出の取下げ又は補助参加についての異議」とあるのは「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(平成25年法律第48号)第47条第1項又は第48条第1項の規定による参加の申出」と、同条第2項中「第61条から第66条まで及び」とあるのは「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第58条第1項において準用する」と読み替えるものとする。

 前項において準用する民事訴訟法第69条第3項の規定による即時抗告並びに同法第71条第4項(前項において準用する同法第72条後段において準用する場合を含む。)、第73条第2項及び第74条第2項の異議の申立てについての裁判に対する即時抗告は、執行停止の効力を有する。


(手続上の救助)

第59条 子の返還申立事件の手続の準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない者又はその支払により生活に著しい支障を生ずる者に対しては、裁判所は、申立てにより、手続上の救助の裁判をすることができる。ただし、救助を求める者が不当な目的で子の返還の申立てその他の手続行為をしていることが明らかなときは、この限りでない。

 民事訴訟法第82条第2項及び第83条から第86条まで(同法第83条第1項第3号を除く。)の規定は、手続上の救助について準用する。この場合において、同法第84条中「第82条第1項本文」とあるのは、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第59条第1項本文」と読み替えるものとする。

第7目 子の返還申立事件の審理等
(手続の非公開)

第60条 子の返還申立事件の手続は、公開しない。ただし、裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。


(調書の作成等)

第61条 裁判所書記官は、子の返還申立事件の手続の期日について、調書を作成しなければならない。ただし、証拠調べの期日以外の期日については、裁判長においてその必要がないと認めるときは、その経過の要領を記録上明らかにすることをもって、これに代えることができる。


(記録の閲覧等)

第62条 当事者又は利害関係を疎明した第三者は、裁判所の許可を得て、裁判所書記官に対し、子の返還申立事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付(第4項第1号及び第69条第2項において「閲覧等」という。)又は子の返還申立事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。

 前項の規定は、子の返還申立事件の記録中の録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、当事者又は利害関係を疎明した第三者は、裁判所の許可を得て、裁判所書記官に対し、これらの物の複製を請求することができる。

 裁判所は、当事者から前二項の規定による許可の申立てがあったときは、当該申立てに係る許可をしなければならない。

 裁判所は、子の返還申立事件の記録中、第5条第4項(第2号に係る部分に限る。)の規定により外務大臣から提供を受けた相手方又は子の住所又は居所が記載され、又は記録された部分(第1号及び第149条第1項において「住所等表示部分」という。)については、前項の規定にかかわらず、同項の申立てに係る許可をしないものとする。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。

 住所等表示部分の閲覧等又はその複製についての相手方の同意があるとき。

 子の返還を命ずる終局決定が確定した後において、子の返還を命ずる終局決定に関する強制執行をするために必要があるとき。

 裁判所は、子の返還申立事件において返還を求められている子の利益を害するおそれ、当事者若しくは第三者の私生活若しくは業務の平穏を害するおそれ又は当事者若しくは第三者の私生活についての重大な秘密が明らかにされることにより、その者が社会生活を営むのに著しい支障を生じ、若しくはその者の名誉を著しく害するおそれがあると認められるときは、第3項及び前項ただし書の規定にかかわらず、第3項の申立てに係る許可をしないことができる。事件の性質、審理の状況、記録の内容等に照らして当該当事者に同項の申立てに係る許可をすることを不適当とする特別の事情があると認められるときも、同様とする。

 裁判所は、利害関係を疎明した第三者から第1項又は第2項の規定による許可の申立てがあった場合において、相当と認めるときは、当該申立てに係る許可をすることができる。

 裁判書の正本、謄本若しくは抄本又は子の返還申立事件に関する事項の証明書については、当事者は、第1項の規定にかかわらず、裁判所の許可を得ないで、裁判所書記官に対し、その交付を請求することができる。

 子の返還申立事件の記録の閲覧、謄写及び複製の請求は、子の返還申立事件の記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。

 第3項の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

10 前項の規定による即時抗告が子の返還申立事件の手続を不当に遅滞させることを目的としてされたものであると認められるときは、原裁判所は、その即時抗告を却下しなければならない。

11 前項の規定による裁判に対しては、即時抗告をすることができる。


(期日及び期間)

第63条 子の返還申立事件の手続の期日は、職権で、裁判長が指定する。

 子の返還申立事件の手続の期日は、やむを得ない場合に限り、日曜日その他の一般の休日に指定することができる。

 子の返還申立事件の手続の期日の変更は、顕著な事由がある場合に限り、することができる。

 民事訴訟法第94条から第97条までの規定は、子の返還申立事件の手続の期日及び期間について準用する。


(手続の併合等)

第64条 裁判所は、子の返還申立事件の手続を併合し、又は分離することができる。

 裁判所は、前項の規定による裁判を取り消すことができる。

 裁判所は、当事者を異にする子の返還申立事件についての手続の併合を命じた場合において、その前に尋問をした証人について、尋問の機会がなかった当事者が尋問の申出をしたときは、その尋問をしなければならない。


(法令により手続を続行すべき者による受継)

第65条 当事者が子の返還申立事件の手続を続行することができない場合(当事者の死亡による場合を除く。)には、法令により手続を続行する資格のある者は、その手続を受け継がなければならない。

 法令により手続を続行する資格のある者が前項の規定による受継の申立てをした場合において、その申立てを却下する裁判がされたときは、当該裁判に対し、即時抗告をすることができる。

 第1項の場合には、裁判所は、他の当事者の申立てにより又は職権で、法令により手続を続行する資格のある者に子の返還申立事件の手続を受け継がせることができる。


(他の申立権者等による受継)

第66条 子の返還申立事件の申立人の死亡によってその手続を続行することができない場合には、当該子の返還申立事件において申立人となることができる者は、その手続を受け継ぐことができる。

 前項の規定による受継の申立ては、子の返還申立事件の申立人が死亡した日から1月以内にしなければならない。

 子の返還申立事件の相手方の死亡によってその手続を続行することができない場合には、裁判所は、申立てにより又は職権で、相手方が死亡した日から3月以内に限り、相手方の死亡後に子を監護している者に、その手続を受け継がせることができる。


(送達及び手続の中止)

第67条 送達及び子の返還申立事件の手続の中止については、民事訴訟法第1編第5章第4節及び第130条から第132条まで(同条第1項を除く。)の規定を準用する。この場合において、同法第113条中「その訴訟の目的である請求又は防御の方法」とあるのは、「裁判を求める事項」と読み替えるものとする。


(裁判所書記官の処分に対する異議)

第68条 裁判所書記官の処分に対する異議の申立てについては、その裁判所書記官の所属する裁判所が裁判をする。

 前項の裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

第8目 電子情報処理組織による申立て等

第69条 子の返還申立事件の手続における申立てその他の申述(次項において「申立て等」という。)については、民事訴訟法第132条の10第1項から第5項までの規定(支払督促に関する部分を除く。)を準用する。

 前項において準用する民事訴訟法第132条の10第1項本文の規定によりされた申立て等に係る第62条第1項の規定による子の返還申立事件の記録の閲覧等は、同法第132条の10第5項の書面をもってするものとする。当該申立て等に係る書類の送達又は送付も、同様とする。

第2款 第一審裁判所における子の返還申立事件の手続

第1目 子の返還の申立て
(申立ての方式等)

第70条 子の返還の申立ては、申立書(以下「子の返還申立書」という。)を家庭裁判所に提出してしなければならない。

 子の返還申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。この場合において、第2号に掲げる申立ての趣旨は、返還を求める子及び子を返還すべき条約締約国を特定して記載しなければならない。

 当事者及び法定代理人

 申立ての趣旨

 子の返還申立事件の手続による旨

 申立人は、一の申立てにより数人の子についての子の返還を求めることができる。

 子の返還申立書が第2項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。民事訴訟費用等に関する法律(昭和46年法律第40号)の規定に従い子の返還の申立ての手数料を納付しない場合も、同様とする。

 前項の場合において、申立人が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、子の返還申立書を却下しなければならない。

 前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。


(申立ての変更)

第71条 申立人は、申立ての基礎に変更がない限り、申立ての趣旨を変更することができる。ただし、第89条の規定により審理を終結した後は、この限りでない。

 申立ての趣旨の変更は、子の返還申立事件の手続の期日においてする場合を除き、書面でしなければならない。

 家庭裁判所は、申立ての趣旨の変更が不適法であるときは、その変更を許さない旨の裁判をしなければならない。

 申立ての趣旨の変更により子の返還申立事件の手続が著しく遅滞することとなるときは、家庭裁判所は、その変更を許さない旨の裁判をすることができる。


(申立書の写しの送付等)

第72条 子の返還の申立てがあった場合には、家庭裁判所は、申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、子の返還申立書の写しを相手方に送付しなければならない。

 前項の規定による子の返還申立書の写しの送付は、公示送達の方法によっては、することができない。

 第70条第4項から第6項までの規定は、第1項の規定による子の返還申立書の写しの送付をすることができない場合について準用する。

 裁判長は、第1項の規定による子の返還申立書の写しの送付の費用の予納を相当の期間を定めて申立人に命じた場合において、その予納がないときは、命令で、子の返還申立書を却下しなければならない。

 前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。

第2目 子の返還申立事件の手続の期日
(裁判長の手続指揮権)

第73条 子の返還申立事件の手続の期日においては、裁判長が手続を指揮する。

 裁判長は、発言を許し、又はその命令に従わない者の発言を禁止することができる。

 当事者が子の返還申立事件の手続の期日における裁判長の指揮に関する命令に対し異議を述べたときは、家庭裁判所は、その異議について裁判をする。


(受命裁判官による手続)

第74条 家庭裁判所は、受命裁判官に子の返還申立事件の手続の期日における手続を行わせることができる。ただし、事実の調査及び証拠調べについては、第82条第3項の規定又は第86条第1項において準用する民事訴訟法第2編第4章第1節から第6節までの規定により受命裁判官が事実の調査又は証拠調べをすることができる場合に限る。

 前項の場合においては、家庭裁判所及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。


(音声の送受信による通話の方法による手続)

第75条 家庭裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、家庭裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、子の返還申立事件の手続の期日における手続(証拠調べを除く。)を行うことができる。

 子の返還申立事件の手続の期日に出頭しないで前項の手続に関与した者は、その期日に出頭したものとみなす。


(通訳人の立会い等その他の措置)

第76条 子の返還申立事件の手続の期日における通訳人の立会い等については民事訴訟法第154条の規定を、子の返還申立事件の手続関係を明瞭にするために必要な陳述をすることができない当事者、手続に参加した子、代理人及び補佐人に対する措置については同法第155条の規定を、それぞれ準用する。

第3目 事実の調査及び証拠調べ
(事実の調査及び証拠調べ等)

第77条 家庭裁判所は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより又は職権で、必要と認める証拠調べをしなければならない。

 申立人及び相手方は、それぞれ第27条に規定する事由(第28条第1項第2号に規定する場合に関する事由を含む。)についての資料及び同項に規定する事由についての資料を提出するほか、事実の調査及び証拠調べに協力するものとする。


(疎明)

第78条 疎明は、即時に取り調べることができる資料によってしなければならない。


(家庭裁判所調査官による事実の調査)

第79条 家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることができる。

 急迫の事情があるときは、裁判長が、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることができる。

 家庭裁判所調査官は、事実の調査の結果を書面又は口頭で家庭裁判所に報告するものとする。

 家庭裁判所調査官は、前項の規定による報告に意見を付することができる。


(家庭裁判所調査官の期日への立会い等)

第80条 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、子の返還申立事件の手続の期日に家庭裁判所調査官を立ち会わせることができる。

 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項の規定により立ち会わせた家庭裁判所調査官に意見を述べさせることができる。


(裁判所技官による診断等)

第81条 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、医師である裁判所技官に事件の関係人の心身の状況について診断をさせることができる。

 第79条第2項から第4項までの規定は前項の診断について、前条の規定は裁判所技官の期日への立会い及び意見の陳述について、それぞれ準用する。


(事実の調査の嘱託等)

第82条 家庭裁判所は、他の家庭裁判所に事実の調査を嘱託することができる。

 前項の規定による嘱託により職務を行う受託裁判官は、他の家庭裁判所において事実の調査をすることを相当と認めるときは、更に事実の調査の嘱託をすることができる。

 家庭裁判所は、相当と認めるときは、受命裁判官に事実の調査をさせることができる。

 前三項の規定により受託裁判官又は受命裁判官が事実の調査をする場合には、家庭裁判所及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。


(調査の嘱託等)

第83条 家庭裁判所は、必要な調査を外務大臣に嘱託するほか、官庁、公署その他適当と認める者に嘱託し、又は学校、保育所その他適当と認める者に対し子の心身の状態及び生活の状況その他の事項に関して必要な報告を求めることができる。


(事実の調査の通知)

第84条 家庭裁判所は、事実の調査をしたときは、特に必要がないと認める場合を除き、その旨を当事者及び手続に参加した子に通知しなければならない。


(陳述の聴取)

第85条 家庭裁判所は、子の返還の申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、当事者の陳述を聴かなければならない。

 家庭裁判所が審問の期日を開いて当事者の陳述を聴くことにより事実の調査をするときは、他の当事者は、当該期日に立ち会うことができる。ただし、当該他の当事者が当該期日に立ち会うことにより事実の調査に支障を生ずるおそれがあると認められるときは、この限りでない。


(証拠調べ)

第86条 子の返還申立事件の手続における証拠調べについては、民事訴訟法第2編第4章第1節から第6節までの規定(同法第179条、第182条、第187条から第189条まで及び第207条第2項の規定を除く。)を準用する。この場合において、同法第185条第1項中「地方裁判所若しくは簡易裁判所」とあるのは「他の家庭裁判所」と、同条第2項中「地方裁判所又は簡易裁判所」とあるのは「家庭裁判所」と読み替えるものとする。

 前項において準用する民事訴訟法の規定による即時抗告は、執行停止の効力を有する。


(不法を証する文書の提出)

第87条 家庭裁判所は、申立人が不法な連れ去り又は不法な留置があったことを証する文書を常居所地国において得ることができるときは、申立人に対し、当該文書を提出することを求めることができる。

第4目 子の返還申立事件の手続における子の意思の把握等

第88条 家庭裁判所は、子の返還申立事件の手続においては、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、終局決定をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない。

第5目 審理の終結等
(審理の終結)

第89条 家庭裁判所は、子の返還申立事件の手続においては、申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、相当の猶予期間を置いて、審理を終結する日を定めなければならない。ただし、当事者双方が立ち会うことができる子の返還申立事件の手続の期日においては、直ちに審理を終結する旨を宣言することができる。


(裁判日)

第90条 家庭裁判所は、前条の規定により審理を終結したときは、裁判をする日を定めなければならない。

第6目 裁判
(裁判の方式)

第91条 家庭裁判所は、子の返還申立事件の手続においては、決定で、裁判をする。


(終局決定)

第92条 家庭裁判所は、子の返還申立事件が裁判をするのに熟したときは、終局決定をする。

 家庭裁判所は、子の返還申立事件の一部が裁判をするのに熟したときは、その一部について終局決定をすることができる。手続の併合を命じた数個の子の返還申立事件中その一が裁判をするのに熟したときも、同様とする。


(終局決定の告知及び効力の発生等)

第93条 終局決定は、当事者及び子に対し、相当と認める方法で告知しなければならない。ただし、子(手続に参加した子を除く。)に対しては、子の年齢及び発達の程度その他一切の事情を考慮して子の利益を害すると認める場合は、この限りでない。

 終局決定は、当事者に告知することによってその効力を生ずる。ただし、子の返還を命ずる終局決定は、確定しなければその効力を生じない。

 終局決定は、即時抗告の期間の満了前には確定しないものとする。

 終局決定の確定は、前項の期間内にした即時抗告の提起により、遮断される。


(終局決定の方式及び裁判書)

第94条 終局決定は、裁判書を作成してしなければならない。

 終局決定の裁判書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

 主文

 理由

 当事者及び法定代理人

 裁判所


(更正決定)

第95条 終局決定に誤記その他これに類する明白な誤りがあるときは、家庭裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。

 更正決定は、裁判書を作成してしなければならない。

 更正決定に対しては、更正後の終局決定が原決定であるとした場合に即時抗告をすることができる者に限り、即時抗告をすることができる。

 第1項の申立てを不適法として却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

 終局決定に対し適法な即時抗告があったときは、前二項の即時抗告は、することができない。


(終局決定に関する民事訴訟法の準用)

第96条 民事訴訟法第247条、第256条第1項及び第258条(第2項後段を除く。)の規定は、終局決定について準用する。この場合において、同法第256条第1項中「言渡し後」とあるのは、「終局決定が告知を受ける者に最初に告知された日から」と読み替えるものとする。


(中間決定)

第97条 家庭裁判所は、終局決定の前提となる法律関係の争いその他中間の争いについて、裁判をするのに熟したときは、中間決定をすることができる。

 中間決定は、裁判書を作成してしなければならない。


(終局決定以外の裁判)

第98条 終局決定以外の裁判は、これを受ける者に対し、相当と認める方法で告知しなければならない。

 終局決定以外の裁判については、これを受ける者(数人あるときは、そのうちの1人)に告知することによってその効力を生ずる。

 第92条から第96条まで(第93条第1項及び第2項並びに第94条第1項を除く。)の規定は、前項の裁判について準用する。この場合において、第94条第2項第2号中「理由」とあるのは、「理由の要旨」と読み替えるものとする。

 子の返還申立事件の手続の指揮に関する裁判は、いつでも取り消すことができる。

 終局決定以外の裁判は、判事補が単独ですることができる。

第7目 裁判によらない子の返還申立事件の終了
(子の返還の申立ての取下げ)

第99条 子の返還の申立ては、終局決定が確定するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。ただし、申立ての取下げは、終局決定がされた後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。

 前項ただし書の規定により申立ての取下げについて相手方の同意を要する場合においては、家庭裁判所は、相手方に対し、申立ての取下げがあったことを通知しなければならない。ただし、申立ての取下げが子の返還申立事件の手続の期日において口頭でされた場合において、相手方がその期日に出頭したときは、この限りでない。

 前項本文の規定による通知を受けた日から2週間以内に相手方が異議を述べないときは、申立ての取下げに同意したものとみなす。同項ただし書の規定による場合において、申立ての取下げがあった日から2週間以内に相手方が異議を述べないときも、同様とする。

 民事訴訟法第261条第3項及び第262条第1項の規定は、申立ての取下げについて準用する。この場合において、同法第261条第3項ただし書中「口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)」とあるのは、「子の返還申立事件の手続の期日」と読み替えるものとする。


(和解)

第100条 子の返還申立事件における和解については、民事訴訟法第89条、第264条及び第265条の規定を準用する。この場合において、同法第264条及び第265条第3項中「口頭弁論等」とあるのは、「子の返還申立事件の手続」と読み替えるものとする。

 子の返還申立事件においては、子の監護に関する事項、夫婦間の協力扶助に関する事項及び婚姻費用の分担に関する事項についても、和解をすることができる。

 次の各号に掲げる事項についての和解を調書に記載したときは、その記載は、当該各号に定める裁判と同一の効力を有する。

 子の返還 確定した子の返還を命ずる終局決定

 子の監護に関する事項、夫婦間の協力扶助に関する事項及び婚姻費用の分担に関する事項 確定した家事事件手続法(平成23年法律第52号)第39条の規定による審判

 その他の事項 確定判決

第3款 不服申立て

第1目 終局決定に対する即時抗告
(即時抗告をすることができる裁判)

第101条 当事者は、終局決定に対し、即時抗告をすることができる。

 子は、子の返還を命ずる終局決定に対し、即時抗告をすることができる。

 手続費用の負担の裁判に対しては、独立して即時抗告をすることができない。


(即時抗告期間)

第102条 終局決定に対する即時抗告は、2週間の不変期間内にしなければならない。ただし、その期間前に提起した即時抗告の効力を妨げない。

 当事者又は手続に参加した子による即時抗告の期間は、即時抗告をする者が終局決定の告知を受けた日から進行する。

 子(手続に参加した子を除く。)による即時抗告の期間は、当事者が終局決定の告知を受けた日(二以上あるときは、当該日のうち最も遅い日)から進行する。


(即時抗告の提起の方式等)

第103条 即時抗告は、抗告状を原裁判所に提出してしなければならない。

 抗告状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

 当事者及び法定代理人

 原決定の表示及びその決定に対して即時抗告をする旨

 即時抗告が不適法でその不備を補正することができないことが明らかであるときは、原裁判所は、これを却下しなければならない。

 前項の規定による終局決定に対しては、即時抗告をすることができる。

 前項の即時抗告は、1週間の不変期間内にしなければならない。ただし、その期間前に提起した即時抗告の効力を妨げない。

 第70条第4項及び第5項の規定は、抗告状が第2項の規定に違反する場合及び民事訴訟費用等に関する法律の規定に従い即時抗告の提起の手数料を納付しない場合について準用する。


(抗告状の写しの送付等)

第104条 終局決定に対する即時抗告があった場合には、抗告裁判所は、即時抗告が不適法であるとき又は即時抗告に理由がないことが明らかなときを除き、原審における当事者及び手続に参加した子(抗告人を除く。)に対し、抗告状の写しを送付しなければならない。

 裁判長は、前項の規定による抗告状の写しの送付の費用の予納を相当の期間を定めて抗告人に命じた場合において、その予納がないときは、命令で、抗告状を却下しなければならない。


(陳述の聴取)

第105条 抗告裁判所は、即時抗告が不適法であるとき又は即時抗告に理由がないことが明らかなときを除き、原審における当事者(抗告人を除く。)の陳述を聴かなければならない。


(抗告裁判所による裁判)

第106条 抗告裁判所は、即時抗告を理由があると認める場合には、自ら裁判をしなければならない。ただし、次条第3項において準用する民事訴訟法第307条又は第308条第1項の規定により事件を第一審裁判所に差し戻すときは、この限りでない。


(第一審の手続の規定及び民事訴訟法の準用等)

第107条 終局決定に対する即時抗告及びその抗告審に関する手続については、特別の定めがある場合を除き、前款の規定(第70条第6項、第72条第2項及び第5項、第93条第3項及び第4項、第95条第3項から第5項まで並びに第98条第5項を除く。)を準用する。

 抗告裁判所は、第104条第1項の規定による抗告状の写しの送付をすることを要しないときは、前項において準用する第89条の規定による審理の終結の手続を経ることなく、即時抗告を却下し、又は棄却することができる。

 民事訴訟法第283条、第284条、第292条、第298条第1項、第299条、第302条、第303条及び第305条から第309条までの規定は、終局決定に対する即時抗告及びその抗告審に関する手続について準用する。この場合において、同法第292条第2項中「第261条第3項、第262条第1項及び第263条」とあるのは「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第99条第4項」と、同法第299条第2項中「第6条第1項各号」とあるのは「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第32条第1項各号」と、同法第303条第5項中「第189条」とあるのは「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第150条」と読み替えるものとする。

第2目 終局決定に対する特別抗告
(特別抗告をすることができる裁判等)

第108条 高等裁判所の終局決定に対しては、その決定に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、最高裁判所に特に抗告をすることができる。

 前項の抗告(以下「特別抗告」という。)が係属する抗告裁判所は、抗告状又は抗告理由書に記載された特別抗告の理由についてのみ調査をする。


(原裁判の執行停止)

第109条 特別抗告は、執行停止の効力を有しない。ただし、前条第2項の抗告裁判所又は原裁判所は、申立てにより、担保を立てさせて、又は立てさせないで、特別抗告について裁判があるまで、原裁判の執行の停止その他必要な処分を命ずることができる。

 前項ただし書の規定により担保を立てる場合において、供託をするには、担保を立てるべきことを命じた裁判所の所在地を管轄する家庭裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。

 民事訴訟法第76条、第77条、第79条及び第80条の規定は、前項の担保について準用する。


(即時抗告の規定及び民事訴訟法の準用)

第110条 第102条第2項及び第3項、第103条(第4項及び第5項を除く。)、第104条、第105条並びに第107条の規定は、特別抗告及びその抗告審に関する手続について準用する。

 民事訴訟法第314条第2項、第315条、第316条第1項(第2号に係る部分に限る。)、第321条第1項、第322条、第325条第1項前段、第2項、第3項後段及び第4項、第326条並びに第336条第2項の規定は、特別抗告及びその抗告審に関する手続について準用する。この場合において、同法第314条第2項中「前条において準用する第288条及び第289条第2項」とあるのは「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第110条第1項において準用する同法第103条第6項」と、同法第322条中「前二条」とあるのは「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第108条第2項の規定及び同法第110条第2項において準用する第321条第1項」と、同法第325条第1項前段及び第2項中「第312条第1項又は第2項」とあるのは「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第108条第1項」と、同条第3項後段中「この場合」とあるのは「差戻し又は移送を受けた裁判所が裁判をする場合」と、同条第4項中「前項」とあるのは「差戻し又は移送を受けた裁判所」と読み替えるものとする。

第3目 終局決定に対する許可抗告
(許可抗告をすることができる裁判等)

第111条 高等裁判所の終局決定(次項の申立てについての決定を除く。)に対しては、第108条第1項の規定による場合のほか、その高等裁判所が次項の規定により許可したときに限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。

 前項の高等裁判所は、同項の終局決定について、最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは抗告裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある場合その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合には、申立てにより、抗告を許可しなければならない。

 前項の申立てにおいては、第108条第1項に規定する事由を理由とすることはできない。

 第2項の規定による許可があった場合には、第1項の抗告(以下この条及び次条第1項において「許可抗告」という。)があったものとみなす。

 許可抗告が係属する抗告裁判所は、第2項の規定による許可の申立書又は同項の申立てに係る理由書に記載された許可抗告の理由についてのみ調査をする。

 許可抗告が係属する抗告裁判所は、終局決定に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときは、原決定を破棄することができる。


(即時抗告等の規定及び民事訴訟法の準用)

第112条 第102条第2項及び第3項、第103条(第4項及び第5項を除く。)、第104条、第105条、第107条並びに第109条の規定は、許可抗告及びその抗告審に関する手続について準用する。この場合において、第102条第2項及び第3項、第103条第1項、第2項第2号及び第3項、第104条第1項並びに第105条中「即時抗告」とあり、第103条第6項中「即時抗告の提起」とあり、並びに第109条第1項本文中「特別抗告」とあるのは「第111条第2項の申立て」と、第103条第1項、第2項及び第6項、第104条並びに第107条第2項中「抗告状」とあるのは「第111条第2項の規定による許可の申立書」と、同条中「即時抗告」とあり、及び第109条第1項ただし書中「特別抗告」とあるのは「第111条第4項に規定する許可抗告」と読み替えるものとする。

 民事訴訟法第315条及び第336条第2項の規定は前条第2項の申立てについて、同法第318条第3項の規定は前条第2項の規定による許可をする場合について、同法第318条第4項後段、第321条第1項、第322条、第325条第1項前段、第2項、第3項後段及び第4項並びに第326条の規定は前条第2項の規定による許可があった場合について、それぞれ準用する。この場合において、同法第318条第4項後段中「第320条」とあるのは「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第111条第5項」と、同法第322条中「前二条」とあるのは「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第111条第5項の規定及び同法第112条第2項において準用する第321条第1項」と、同法第325条第1項前段及び第2項中「第312条第1項又は第2項」とあるのは「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第111条第2項」と、同条第3項後段中「この場合」とあるのは「差戻し又は移送を受けた裁判所が裁判をする場合」と、同条第4項中「前項」とあるのは「差戻し又は移送を受けた裁判所」と読み替えるものとする。

第4目 終局決定以外の裁判に対する不服申立て
(不服申立ての対象)

第113条 終局決定以外の裁判に対しては、特別の定めがある場合に限り、即時抗告をすることができる。


(受命裁判官又は受託裁判官の裁判に対する異議)

第114条 受命裁判官又は受託裁判官の裁判に対して不服がある当事者は、子の返還申立事件が係属している裁判所に異議の申立てをすることができる。ただし、その裁判が家庭裁判所の裁判であるとした場合に即時抗告をすることができるものであるときに限る。

 前項の異議の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。


(即時抗告期間等)

第115条 終局決定以外の裁判に対する即時抗告は、1週間の不変期間内にしなければならない。ただし、その期間前に提起した即時抗告の効力を妨げない。

 前項の即時抗告は、特別の定めがある場合を除き、執行停止の効力を有しない。ただし、抗告裁判所又は原裁判所は、申立てにより、担保を立てさせて、又は立てさせないで、即時抗告について裁判があるまで、原裁判の執行の停止その他必要な処分を命ずることができる。

 第109条第2項及び第3項の規定は、前項ただし書の規定により担保を立てる場合における供託及び担保について準用する。

 原裁判をした裁判所、裁判官又は裁判長は、即時抗告を理由があると認めるときは、その裁判を更正しなければならない。


(終局決定に対する不服申立ての規定の準用等)

第116条 前三目の規定(第101条第1項及び第2項、第102条第1項並びに同条第3項、第104条及び第105条(これらの規定を第112条第1項において準用する場合を含む。)並びに第110条の規定を除く。)は、裁判所、裁判官又は裁判長がした終局決定以外の裁判に対する不服申立てについて準用する。この場合において、第108条第1項中「高等裁判所の終局決定」とあるのは「家庭裁判所の終局決定以外の裁判で不服を申し立てることができないもの及び高等裁判所の終局決定以外の裁判」と、第111条第1項中「できる」とあるのは「できる。ただし、その決定が家庭裁判所の決定であるとした場合に即時抗告をすることができるものであるときに限る」と読み替えるものとする。

 第102条第2項及び第3項、第103条並びに第107条の規定は、裁判所、裁判官又は裁判長がした終局決定以外の裁判に対する特別抗告及びその抗告審に関する手続について準用する。この場合において、第103条第6項中「及び第5項」とあるのは、「から第6項まで」と読み替えるものとする。

 民事訴訟法第314条第2項、第315条、第316条(第1項第1号を除く。)、第321条第1項、第322条、第325条第1項前段、第2項、第3項後段及び第4項、第326条並びに第336条第2項の規定は、裁判所、裁判官又は裁判長がした終局決定以外の裁判に対する特別抗告及びその抗告審に関する手続について準用する。この場合において、同法第314条第2項中「前条において準用する第288条及び第289条第2項」とあるのは「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第116条第2項において読み替えて準用する同法第103条第6項」と、同法第316条第2項中「対しては」とあるのは「対しては、1週間の不変期間内に」と、同法第322条中「前二条」とあるのは「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第116条第1項において準用する同法第108条第2項の規定及び同法第116条第3項において準用する第321条第1項」と、同法第325条第1項前段及び第2項中「第312条第1項又は第2項」とあるのは「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第116条第1項において読み替えて準用する同法第108条第1項」と、同条第3項後段中「この場合」とあるのは「差戻し又は移送を受けた裁判所が裁判をする場合」と、同条第4項中「前項」とあるのは「差戻し又は移送を受けた裁判所」と読み替えるものとする。

第4款 終局決定の変更

(終局決定の変更)

第117条 子の返還を命ずる終局決定をした裁判所(その決定に対して即時抗告があった場合において、抗告裁判所が当該即時抗告を棄却する終局決定(第107条第2項の規定による決定を除く。以下この項において同じ。)をしたときは、当該抗告裁判所)は、子の返還を命ずる終局決定が確定した後に、事情の変更によりその決定を維持することを不当と認めるに至ったときは、当事者の申立てにより、その決定(当該抗告裁判所が当該即時抗告を棄却する終局決定をした場合にあっては、当該終局決定)を変更することができる。ただし、子が常居所地国に返還された後は、この限りでない。

 前項の規定による終局決定の変更の申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

 当事者及び法定代理人

 変更を求める終局決定の表示及びその決定に対して変更を求める旨

 終局決定の変更を求める理由

 裁判所は、第1項の規定により終局決定を変更するときは、当事者(同項の申立てをした者を除く。)の陳述を聴かなければならない。

 第1項の申立てを却下する終局決定に対しては、当該申立てをした者は、即時抗告をすることができる。

 第1項の規定により終局決定を変更する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

 前各項に規定するもののほか、第1項の規定による終局決定の変更の手続には、その性質に反しない限り、各審級における手続に関する規定を準用する。


(執行停止の裁判)

第118条 裁判所は、前条第1項の申立てがあった場合において、同項の規定による変更の理由として主張した事情が法律上理由があるとみえ、かつ、事実上の点につき疎明があったときは、申立てにより、担保を立てさせて、若しくは立てさせないで強制執行の一時の停止を命じ、又は担保を立てさせて既にした執行処分の取消しを命ずることができる。

 前項の規定による申立てについての裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

 第109条第2項及び第3項の規定は、第1項の規定により担保を立てる場合における供託及び担保について準用する。

第5款 再審

(再審)

第119条 確定した終局決定その他の裁判(事件を完結するものに限る。第5項において同じ。)に対しては、再審の申立てをすることができる。

 再審の手続には、その性質に反しない限り、各審級における手続に関する規定を準用する。

 民事訴訟法第4編の規定(同法第341条及び第349条の規定を除く。)は、第1項の再審の申立て及びこれに関する手続について準用する。この場合において、同法第348条第1項中「不服申立ての限度で、本案の審理及び裁判をする」とあるのは、「本案の審理及び裁判をする」と読み替えるものとする。

 前項において準用する民事訴訟法第346条第1項の再審開始の決定に対する即時抗告は、執行停止の効力を有する。

 第3項において準用する民事訴訟法第348条第2項の規定により終局決定その他の裁判に対する再審の申立てを棄却する決定に対しては、当該終局決定その他の裁判に対し即時抗告をすることができる者に限り、即時抗告をすることができる。


(執行停止の裁判)

第120条 裁判所は、前条第1項の再審の申立てがあった場合において、不服の理由として主張した事情が法律上理由があるとみえ、事実上の点につき疎明があり、かつ、執行により償うことができない損害が生ずるおそれがあることにつき疎明があったときは、申立てにより、担保を立てさせて、若しくは立てさせないで強制執行の一時の停止を命じ、又は担保を立てさせて既にした執行処分の取消しを命ずることができる。

 前項の規定による申立てについての裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

 第109条第2項及び第3項の規定は、第1項の規定により担保を立てる場合における供託及び担保について準用する。

第4節 義務の履行状況の調査及び履行の勧告

第121条 子の返還を命ずる終局決定をした家庭裁判所(抗告裁判所が子の返還を命ずる終局決定をした場合にあっては、第一審裁判所である家庭裁判所。以下同じ。)は、権利者の申出があるときは、子の返還の義務の履行状況を調査し、義務者に対し、その義務の履行を勧告することができる。

 子の返還を命ずる終局決定をした家庭裁判所は、前項の規定による調査及び勧告を他の家庭裁判所に嘱託することができる。

 子の返還を命ずる終局決定をした家庭裁判所並びに前項の規定により調査及び勧告の嘱託を受けた家庭裁判所(次項及び第5項においてこれらの家庭裁判所を「調査及び勧告をする家庭裁判所」という。)は、家庭裁判所調査官に第1項の規定による調査及び勧告をさせることができる。

 調査及び勧告をする家庭裁判所は、第1項の規定による調査及び勧告に必要な調査を外務大臣に嘱託するほか、官庁、公署その他適当と認める者に嘱託し、又は学校、保育所その他適当と認める者に対し子の生活の状況その他の事項に関して必要な報告を求めることができる。

 調査及び勧告をする家庭裁判所は、第1項の規定による調査及び勧告の事件の関係人から当該事件の記録の閲覧、謄写若しくは複製、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は当該事件に関する事項の証明書の交付の請求があった場合において、相当と認めるときは、これを許可することができる。

 第1項の規定による調査及び勧告の手続には、その性質に反しない限り、前節第1款の規定を準用する。

 前各項の規定は、和解によって定められた義務の履行について準用する。

第5節 出国禁止命令

(出国禁止命令)

第122条 子の返還申立事件が係属する家庭裁判所は、子の返還申立事件の当事者が子を日本国外に出国させるおそれがあるときは、子の返還申立事件の一方の当事者の申立てにより、他方の当事者に対し、子を出国させてはならないことを命ずることができる。

 家庭裁判所は、前項の規定による申立てに係る事件の相手方が子が名義人となっている旅券を所持すると認めるときは、申立てにより、同項の規定による裁判において、当該旅券の外務大臣への提出を命じなければならない。

 子の返還申立事件が高等裁判所に係属する場合には、その高等裁判所が、前二項の規定による裁判(以下「出国禁止命令」という。)をする。

 出国禁止命令は、子の返還の申立てについての終局決定の確定により、その効力を失う。


(出国禁止命令の申立て等)

第123条 出国禁止命令の申立ては、その趣旨及び出国禁止命令を求める事由を明らかにしてしなければならない。

 出国禁止命令を求める事由については、出国禁止命令の申立てに係る事件(以下「出国禁止命令事件」という。)の申立人が資料を提出しなければならない。

 前条第2項の規定による裁判の申立ては、出国禁止命令があるまで、取り下げることができる。

 民事訴訟法第261条第3項及び第262条第1項の規定は、出国禁止命令の申立ての取下げについて準用する。この場合において、同法第261条第3項ただし書中「口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)」とあるのは、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第123条第2項に規定する出国禁止命令事件の手続の期日」と読み替えるものとする。


(陳述の聴取)

第124条 出国禁止命令は、出国禁止命令事件の相手方の陳述を聴かなければ、することができない。ただし、その陳述を聴く手続を経ることにより出国禁止命令の目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。


(記録の閲覧等)

第125条 裁判所は、第133条において準用する第62条第3項の規定にかかわらず、出国禁止命令事件について、出国禁止命令事件の当事者から同条第1項又は第2項の規定による許可の申立てがあった場合には、出国禁止命令事件の相手方に対し、出国禁止命令事件が係属したことを通知し、又は出国禁止命令を告知するまでは、相当と認めるときに限り、これを許可することができる。


(出国禁止命令の告知及び効力)

第126条 出国禁止命令の申立てについての裁判は、出国禁止命令事件の当事者に対し、相当と認める方法で告知しなければならない。

 出国禁止命令は、出国禁止命令事件の相手方に告知することによってその効力を生じ、出国禁止命令の申立てを却下する裁判は、出国禁止命令事件の申立人に告知することによってその効力を生ずる。


(即時抗告)

第127条 出国禁止命令事件の当事者は、出国禁止命令の申立てについての裁判に対し、即時抗告をすることができる。


(即時抗告に伴う執行停止)

第128条 前条の規定により即時抗告が提起された場合において、原裁判の取消しの原因となることが明らかな事情及び原裁判の執行により償うことができない損害を生ずるおそれがあることについて疎明があったときは、抗告裁判所は、申立てにより、即時抗告についての裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせて、若しくは担保を立てることを条件として、又は担保を立てさせないで原裁判の執行の停止を命ずることができる。出国禁止命令事件の記録が家庭裁判所に存する間は、家庭裁判所も、この処分を命ずることができる。

 第123条第2項の規定は前項の申立てについて、第109条第2項及び第3項の規定は前項の規定により担保を立てる場合における供託及び担保について、それぞれ準用する。


(出国禁止命令の取消し)

第129条 第122条第1項の規定による裁判が確定した後に、当該裁判を求める事由の消滅その他の事情の変更があるときは、子の返還申立事件が係属する裁判所は、当該裁判を受けた者の申立てにより、当該裁判の取消しの裁判をすることができる。

 裁判所が、第122条第1項の規定による裁判を取り消す場合において、同条第2項の規定による裁判がされているときは、裁判所は、当該裁判をも取り消さなければならない。

 第123条及び前三条の規定は、第1項の申立て及び当該申立てについての裁判について準用する。


(調書の作成)

第130条 裁判所書記官は、出国禁止命令事件及び前条第1項の規定による申立てに係る事件(第133条において「出国禁止命令取消事件」という。)の手続の期日について、調書を作成しなければならない。ただし、裁判長においてその必要がないと認めるときは、この限りでない。


(外務大臣による旅券の保管)

第131条 外務大臣は、第122条第2項の規定による裁判を受けた者から当該裁判に係る旅券の提出を受けたときは、当該旅券を保管しなければならない。

 外務大臣は、出国禁止命令が効力を失ったときは、前項の旅券の提出を行った者の求めにより、当該旅券を返還しなければならない。


(過料の裁判)

第132条 第122条第2項の規定による裁判を受けた者が当該裁判に従わないときは、裁判所は、20万円以下の過料に処する。


(子の返還申立事件の手続規定の準用)

第133条 出国禁止命令事件及び出国禁止命令取消事件の手続については、特別の定めがある場合を除き、第3節第1款から第3款まで及び第5款(第72条、第84条、第85条、第87条、第89条、第90条、第99条及び第100条を除く。)の規定を準用する。この場合において、第94条第2項第2号中「理由」とあるのは、「理由の要旨」と読み替えるものとする。

第4章 子の返還の執行手続に関する民事執行法の特則

(子の返還の強制執行)

第134条 子の返還の強制執行は、民事執行法(昭和54年法律第4号)第171条第1項の規定により執行裁判所が第三者に子の返還を実施させる決定をする方法により行うほか、同法第172条第1項に規定する方法により行う。

 前項の強制執行は、確定した子の返還を命ずる終局決定(確定した子の返還を命ずる終局決定と同一の効力を有するものを含む。)の正本に基づいて実施する。


(子の年齢による子の返還の強制執行の制限)

第135条 子が16歳に達した場合には、民事執行法第171条第1項の規定による子の返還の強制執行(同項の規定による決定に基づく子の返還の実施を含む。以下「子の返還の代替執行」という。)は、することができない。

 民事執行法第172条第1項に規定する方法による子の返還の強制執行の手続において、執行裁判所は、子が16歳に達した日の翌日以降に子を返還しないことを理由として、同項の規定による金銭の支払を命じてはならない。


(子の返還の代替執行と間接強制との関係)

第136条 子の返還の代替執行の申立ては、次の各号のいずれかに該当するときでなければすることができない。

 民事執行法第172条第1項の規定による決定が確定した日から2週間を経過したとき(当該決定において定められた債務を履行すべき一定の期間の経過がこれより後である場合にあっては、その期間を経過したとき)

 民事執行法第172条第1項に規定する方法による強制執行を実施しても、債務者が常居所地国に子を返還する見込みがあるとは認められないとき。

 子の急迫の危険を防止するため直ちに子の返還の代替執行をする必要があるとき。


(子の返還の代替執行の申立て)

第137条 子の返還の代替執行の申立ては、債務者に代わって常居所地国に子を返還する者(以下「返還実施者」という。)となるべき者を特定してしなければならない。


(子の返還を実施させる決定)

第138条 第134条第1項の決定は、債務者による子の監護を解くために必要な行為をする者として執行官を指定し、かつ、返還実施者を指定してしなければならない。

 執行裁判所は、民事執行法第171条第3項の規定にかかわらず、子に急迫した危険があるときその他の審尋をすることにより強制執行の目的を達することができない事情があるときは、債務者を審尋しないで第134条第1項の決定をすることができる。


(子の返還の代替執行の申立ての却下)

第139条 執行裁判所は、第137条の返還実施者となるべき者を前条の規定により返還実施者として指定することが子の利益に照らして相当でないと認めるときは、第137条の申立てを却下しなければならない。


(執行官の権限等)

第140条 民事執行法第175条(第8項を除く。)の規定は子の返還の代替執行における執行官の権限及び当該権限の行使に係る執行裁判所の裁判について、同法第176条の規定は子の返還の代替執行の手続について、それぞれ準用する。この場合において、同法第175条第1項第2号中「債権者若しくはその代理人と子」とあるのは「返還実施者(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(平成25年法律第48号)第137条に規定する返還実施者をいう。以下同じ。)、債権者若しくは同法第140条第1項において準用する第6項に規定する代理人と子」と、「又は債権者若しくはその代理人」とあるのは「又は返還実施者、債権者若しくは同項に規定する代理人」と、同項第3号及び同条第9項中「債権者又はその代理人」とあるのは「返還実施者、債権者又は国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第140条第1項において準用する第6項に規定する代理人」と読み替えるものとする。

 執行官は、前項において準用する民事執行法第175条第1項又は第2項の規定による子の監護を解くために必要な行為をするに際し抵抗を受けるときは、その抵抗を排除するために、威力を用い、又は警察上の援助を求めることができる。

 執行官は、前項の規定にかかわらず、子に対して威力を用いることはできない。子以外の者に対して威力を用いることが子の心身に有害な影響を及ぼすおそれがある場合においては、当該子以外の者についても、同様とする。


(返還実施者の権限等)

第141条 返還実施者は、常居所地国に子を返還するために、子の監護その他の必要な行為をすることができる。

 子の返還の代替執行の手続については、民事執行法第171条第6項の規定は、適用しない。

 前条第1項において準用する民事執行法第176条の規定は、返還実施者について準用する。


(外務大臣の協力)

第142条 外務大臣は、子の返還の代替執行に関し、立会いその他の必要な協力をすることができる。


(執行事件の記録の閲覧等)

第143条 子の返還の強制執行に係る事件の記録の閲覧、謄写若しくは複製、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は当該事件に関する事項の証明書の交付の請求については、第62条の規定を準用する。

第5章 家事事件の手続に関する特則

第1節 子の返還申立事件に係る家事調停の手続等

(付調停)

第144条 家庭裁判所及び高等裁判所は、当事者の同意を得て、いつでも、職権で、子の返還申立事件を家事調停に付することができる。


(家事事件手続法の特則)

第145条 裁判所は、前条の規定により事件を家事調停に付する場合においては、家事調停事件を自ら処理しなければならない。ただし、家事調停事件を処理するために特に必要があると認めるときは、事件を当該裁判所以外の家庭裁判所(第32条第1項各号に定める家庭裁判所に限る。)に処理させることができる。

 第43条第2項の規定は、前条の規定により事件を家事調停に付した場合の家事調停事件の手続における手続上の行為をすることができる能力について準用する。

 前条の規定により事件を家事調停に付した場合において、当事者間に子の返還の合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、子の返還の合意に係る記載部分は、家事事件手続法第268条第1項の規定にかかわらず、確定した子の返還を命ずる終局決定と同一の効力を有する。

 前条の規定により事件を家事調停に付した場合の家事調停事件の手続においてされた家事事件手続法第284条第1項の規定による審判(同法第274条第5項の規定により読み替えて適用される同法第284条第1項の規定による調停に代わる審判に代わる裁判を含む。以下この項及び第147条において「調停に代わる審判」という。)について、同法第286条第1項の規定による異議の申立てがないとき、又は異議の申立てを却下する審判(同法第274条第5項の規定により読み替えて適用される同法第287条に規定する異議の申立てを却下する審判に代わる裁判を含む。)が確定したときは、当該調停に代わる審判のうち子の返還を命ずる部分は、同法第287条の規定にかかわらず、確定した子の返還を命ずる終局決定と同一の効力を有する。


(子の返還申立事件の手続の中止)

第146条 裁判所が第144条の規定により事件を家事調停に付したときは、当該裁判所は、家事調停事件が終了するまで子の返還申立事件の手続を中止することができる。


(子の返還の申立ての取下げの擬制)

第147条 裁判所が第144条の規定により事件を家事調停に付した場合において、調停が成立し、又は調停に代わる審判が確定したときは、子の返還申立事件について申立ての取下げがあったものとみなす。

第2節 面会その他の交流についての家事審判及び家事調停の手続等に関する特則

(管轄の特則)

第148条 外国返還援助決定若しくは日本国面会交流援助決定を受けた者又は子の返還の申立てをした者が、子との面会その他の交流の定めをすること又はその変更を求める家事審判又は家事調停の申立てをする場合において、次の各号に掲げるときには、当該各号に定める家庭裁判所にも、これらの申立てをすることができる。

 子の住所地(日本国内に子の住所がないとき、又は住所が知れないときは、その居所地。次号において同じ。)が東京高等裁判所、名古屋高等裁判所、仙台高等裁判所又は札幌高等裁判所の管轄区域内にあるとき 東京家庭裁判所

 子の住所地が大阪高等裁判所、広島高等裁判所、福岡高等裁判所又は高松高等裁判所の管轄区域内にあるとき 大阪家庭裁判所

 前項の申立てに係る審判事件及び調停事件は、日本国内に子の住所がない場合又は住所が知れない場合であって、日本国内に子の居所がないとき又は居所が知れないときは、東京家庭裁判所の管轄に属する。


(記録の閲覧等の特則)

第149条 子との面会その他の交流の定めをすること又はその変更を求める家事審判の申立てに係る事件の記録中に住所等表示部分がある場合には、裁判所は、当該住所等表示部分については、家事事件手続法第47条第3項の規定にかかわらず、同項の申立てに係る許可をしないものとする。ただし、第62条第4項各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、この限りでない。

 子との面会その他の交流について定め、又はその変更について定める審判書又は調停調書の正本に基づく強制執行の申立てに係る事件の記録中に第5条第4項(第2号に係る部分に限る。)の規定により外務大臣から提供を受けた情報が記載され、又は記録されたものがある場合には、当該事件の記録の閲覧、謄写若しくは複製、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は当該事件に関する事項の証明書の交付の請求については、第62条の規定を準用する。

第6章 過料の裁判の執行等

第150条 この法律の規定による過料の裁判は、裁判官の命令で執行する。この命令は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。

 この法律に規定するもののほか、過料についての裁判に関しては、非訟事件手続法(平成23年法律第51号)第5編の規定(同法第119条及び第121条第1項の規定並びに同法第120条及び第122条の規定中検察官に関する部分を除く。)を準用する。

第7章 雑則

(審理の状況についての説明)

第151条 子の返還申立事件の申立人又は外務大臣は、子の返還の申立てから6週間が経過したときは、当該子の返還申立事件が係属している裁判所に対し、審理の状況について説明を求めることができる。


(親権者の指定等についての審判事件の取扱い)

第152条 親権者の指定若しくは変更又は子の監護に関する処分についての審判事件(人事訴訟法(平成15年法律第109号)第32条第1項に規定する附帯処分についての裁判及び同条第3項の親権者の指定についての裁判に係る事件を含む。以下この条において同じ。)が係属している場合において、当該審判事件が係属している裁判所に対し、当該審判事件に係る子について不法な連れ去り又は不法な留置と主張される連れ去り又は留置があったことが外務大臣又は当該子についての子の返還申立事件が係属する裁判所から通知されたときは、当該審判事件が係属している裁判所は、当該審判事件について裁判をしてはならない。ただし、子の返還の申立てが相当の期間内にされないとき、又は子の返還の申立てを却下する裁判が確定したときは、この限りでない。


(総合法律支援法の適用に関する特例)

第153条 条約締約国の国民又は条約締約国に常居所を有する者(日本国民又は我が国に住所を有し適法に在留する者を除く。)であって、連れ去り又は留置に係る子についての子の返還、子との面会その他の交流その他条約の適用に関係のある事項について民事裁判等手続(我が国の裁判所における民事事件、家事事件又は行政事件に関する手続をいう。)を利用するものは、当該事項に関する限り、総合法律支援法(平成16年法律第74号)の適用については、同法第30条第1項第2号に規定する国民等とみなす。

附 則
(施行期日)

第1条 この法律は、条約が日本国について効力を生ずる日から施行する。


(経過措置)

第2条 この法律は、この法律の施行前にされた不法な連れ去り又はこの法律の施行前に開始された不法な留置には、適用しない。

附 則(令和元年5月17日法律第2号)
(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

 附則第20条の規定 公布の日


(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部改正に伴う経過措置)

第8条 施行日前に申し立てられた子の返還の強制執行の事件については、第2条の規定による改正後の国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第136条、第138条第2項、第140条及び第141条第3項の規定にかかわらず、なお従前の例による。


(政令への委任)

第20条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。